6 いつもの無双
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勇馬たちがサラヴィに着いた翌日。
早速朝から勇馬はアイリスたちがダンジョンに潜るための準備を始めた。
勇馬の意向でダンジョン内での野営は当面の間は禁止にしておりアイリスたちは日没の時間までには宿に戻ることになっている。
ダンジョン内では太陽の位置から時間を把握することができないため時間を把握するための道具として時計が重宝されている。
この世界の時計は魔力結晶を動力とした魔道具だ。
結構な値段がしたものの必要経費として勇馬は魔道具屋で買ってアイリスに持たせた。
「「「「それでは行ってきます」」」」
「気を付けてね」
勇馬はダンジョンへと向かう4人を見送ると自分は付与魔法ギルドへと向かった。
「おはようございます」
勇馬が付与魔法ギルドへやってくると昨日対応してくれた受付嬢が対応してくれた。
「おはようございます、お名前はユーマさんでよかったでしょうか? 私の名前はマリベルといいます。今日からよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「さっそくですがユーマさん用の仕事はお部屋にご用意しています。ご案内しますのでこちらへどうぞ」
勇馬はマリベルに案内されてロビーの近くにある比較的広い部屋を案内された。
「ここは普段は作業部屋ではないのですがギルドマスターの指示でユーマさん用の作業部屋にさせていただきました。ギルドからお願いした仕事が終わりましたらユーマさんの希望でこれまで受注が制限されていた業務の受付をしますので」
勇馬の部屋の前には臨時の受付業務もできるように長机と椅子も置かれていた。
「それではよろしくお願いします」
マリベルに見送られて勇馬は用意されていた部屋へと入った。
「さて、どんな仕事が待っているのかな?」
勇馬は部屋の中央にある作業台に置かれていた依頼書の束を手に取るとぱらぱらと目をとおした。
「全部二重付与の案件か。それにしても『自動洗浄』が人気だな」
勇馬が目を通した依頼書の内8割程度は自動洗浄機能を求める内容となっていた。
そのうえで重量軽減と強化を求めるものに分かれるという感じであり、重量軽減の方が若干多いという塩梅だった。
「さすがにダンジョンに潜るとなったら普通とは求めるものが違うのかな」
冒険者の中でも意識の高い者は日ごろ自分の武具は自分で毎日手入れをしている。
その手入れをする過程で武器の破損や異常を把握して、次の仕事で慌てることがないように準備をするのだ。
そのため自動洗浄機能については普段は付けないという冒険者もそれなりの数存在する。
しかし、ダンジョンの中ではやはり時間は勿論、水も貴重となることから日頃は自分で手入れをしている冒険者であってもダンジョンに潜るときにはこの機能を求めるという。
「まあ、いつもとやること自体は変わらないか。ちゃっちゃと始めよう」
勇馬はマジックペンを右手に顕現させるといつものように依頼書の指示どおり武具に付与を施していく。
そうして1時間も経たないうちに用意されていた50個の武具への付与は全て終わった。
終了の連絡をするため部屋を出るとちょうどマリベルに出くわした。
「あれっ、ユーマさん。ご休憩ですか?」
「はい、それも兼ねてますね。それから作業が終わりましたけど部屋に台車がなかったので持っていってもらえませんか? まだやる仕事があればついでに持ってきていただいても結構ですよ」
「あっ、もう終わったんですか……終わった!?」
勇馬としては「この反応久しぶりだな」というものであったが悪い気はしないので余裕そうな表情をしてみた。
「いや~、これでも一応上級ですからね~」
ちょっと調子に乗ってみたかった勇馬であったがマリベルは驚きの表情を隠せない。
「……では追加でお願いするものがないかを確認してきます」
そう言ってマリベルが追加の仕事を20個ほど持ってきたので勇馬はやはり短時間で作業を終えた。
「ギルドから今日はこれ以上お願いする仕事はありません」
「では事前にギルドマスターにご相談していたとおり、他の国の方たちを対象にした仕事を受けさせて欲しいのですが」
「ええ、それも伺っています。では今から受け付けを開始したいと思います。ユーマさんの部屋の前が臨時の受付になります」
「わかりました。それではしばらく外で時間をつぶしてお昼を食べてから1時に戻ってきます」
「一応受付は私が担当することになっていますがギルマスからはその日にできる分だけしか受けないようにと言われています。先ほどかなりの作業をされましたがどの程度作業ができそうですか?」
「そうですね、まあ、最初ですから様子を見ながらですかね。取り敢えずは50個くらいにしておきましょうか」
その言葉を聞いたマリベルは「えっ?」と口にすると信じられないといった表情を浮かべてその場に固まった。




