4 サラヴィ支部
「こんにちは~」
いつも付与魔法ギルドへ入るように勇馬が入口に入るとロビーは客でごった返していた。
その大部分が冒険者と思われる風情をしている。
「さすがはダンジョン都市。冒険者が多いだけあってこの時間でも人が多いなぁ……」
メルミドやレスティでは冒険者は基本的には日中活動をするため付与魔法ギルドには朝夕に来客が集中して日中は基本閑散としていた。
しかし、ダンジョン都市ではダンジョン内での活動がメインであり昼夜にこだわらず活動する冒険者もそれなりにいる。
そのため日中であっても来客が多い。
「う~ん、まあ列に並ぶしかないか……。みんなはあっちのテーブル席に座って待っていていいよ」
勇馬はそう言うと受付の前に並んでいる冒険者の列の最後尾に並んだ。
「次の方どうぞ」
しばらく経って勇馬の番となった。
「こんにちは。この街で付与師として活動したいのですがどうしたらいいですか?」
「えっ? あなたは付与師の方ですか!? では付与師の身分証をお持ちでしたら拝見します。一からのご登録であれば推薦状があればお出し下さい」
「付与師の身分証を持っていますのでどうぞ」
そう言って勇馬は受付嬢に付与師の身分証を提示した。
受付嬢は出された身分証を目にするとぴたりと動きが止まった。
「じょっ、上級付与師!?」
受付嬢が一際大きな声を上げたので何事かとバックヤードからギルドの他の職員たちが受付にやってきた。
受付嬢は勇馬の顔と身分証を交互に見て未だ信じられないという表情をしている。
「アンナさん、ちょっとギルドマスターのところへ行ってきますので代わりに受付をお願いします。それから、え~と、ユーマさん? 直ぐに戻ってきますのでちょっとそちらに掛けてお待ち下さい」
受付嬢はバックヤードからやってきたアンナという名の職員に受付業務を委ねるとすぐにバックヤードに消えていった。
「お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるそうです。どうぞこちらに」
数分して戻ってきた受付嬢に案内されて何故だかギルドマスターに会うことになった。
「ようこそダンジョン都市サラヴィへ。当ギルドはあなたを歓迎します」
マスタールームで勇馬を待っていたのは線の細い長身のギルドマスターだった。
「ええっと、初めまして。ユーマといいます」
「ユーマくんか。どうぞ、掛けて下さい。私はこのダンジョン都市の付与魔法ギルドのギルドマスターでコランという者です。今日はこの街での活動登録ということでいいでしょうか?」
「はい。しばらくはこの街で活動できたらと思っていまして」
「身分証がアミュール王国支部の発行となっていますね。これまではアミュール王国にいたのですか?」
「はい」
「まあ、何でこの街に? などと野暮なことは聞きませんので。今、うちはとにかく人手不足ですから仕事ならいっぱいありますよ。好きなだけいてくれていいですから頑張って下さい」
勇馬は以前メルミドで冒険者のトニーからラムダ公国では付与魔法ギルドの受付が自国民優先で他国出身者は受付制限となっているという話を思い出した。
「ちょっと質問なんですけど、今このギルドでは受付制限をされてますか?」
「受付制限ですか? そうですね。他国出身者については受付を停止していますし、自国民相手でも上級ランクの受注は停止しています。何か気になることでも?」
「様子を見ながらでもいいので、できれば他国出身者の仕事も受けさせてもらえませんか? 私も他国出身者ですし」
「う~ん、そうですねぇ。では、ギルドから回すその日の仕事を全てやり終わったら他国出身者向けの窓口を臨時で開くことを認めましょう。あくまでもあなたがその日にできる分だけ限定して受け付けるという条件でいかがでしょう?」
「それでいいです。では明日からよろしくお願いします」
そう言って勇馬はコランと握手を交わした。




