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25 誇りと矜持

 戦闘は夜明け前。


 まだ日が昇る前の闇の中で始まった。



 防衛側は城壁にかがり火をたき視界を確保する。


 今回は一般市民の義勇兵1000人を加えての防衛戦である。


 義勇兵には武具が貸与されそれぞれが鎧・盾・兜を装備し剣や槍、斧を手に持った。


「あれっ? もっと重いのかと思っていたけど思ったほどじゃないな」

「そうだな。この剣なんて本当に鉄なのか? 木刀か何かだと思ったぞ」

「それにこの鎧、すごくフィットしていて本当に着やすい。何だこれ?」


 集まった義勇兵たちは口ぐちにそう感想を漏らした。


 義勇兵を統括する騎士団は自前の武具、つまり常識的な付与しか施されていない武具を身に着けている。

 そのため集まった義勇兵たちが何を言っているのかはさっぱり理解できていなかった。


 あくまでも今回限りの戦闘参加である義勇兵だけが勇馬の施した『常軌を逸した付与が施された武具』を使ったことで結果としては勇馬たちが心配するような噂にはならなかったのである。

 

 しかしそのことを勇馬もトーマスも知るよしもなかった。



「第三騎士団、突撃!」


 団長であるマリア・ミズガルドの号令で騎馬隊たちが魔物に突進していく。


「騎士の誇りに掛けてレスティを防衛せよ!」


 騎馬隊に続くのは歩兵の騎士隊だ。

 歩兵とはいえ騎士であり騎士団の端くれである。

 騎士としての誇りは騎馬隊にも負けるものではない。

 今回の敵はアンデッドではなく普通の魔物である。

 物理攻撃が普通に効く相手であれば騎士たちも遅れをとることはない。



 今回、義勇兵とともに昨日は招集されなかったDランク以下の冒険者たちも戦闘に参加していた。


 武具については自前の、つまり日頃から使い慣れたものである。



「素人の市民に遅れをとるな! 冒険者の矜持きょうじを見せてやれ!」



 Cランク以上の冒険者が招集された第一戦では蚊帳の外に置かれたDランク以下の冒険者たちがそう気勢を上げる。


 Cランクに到達していなくても自分たちはいっぱしの冒険者のつもりだ。


 冒険者として日々魔物や魔獣と戦い危険に接している。その中で冒険者として生き残っていること自体が彼らの誇りである。


 こうして騎士と冒険者たちは己の誇りと矜持を、市民の義勇兵たちは己の故郷と愛する家族たちの存亡をかけて目の前の魔物の群れとぶつかり合った。




 戦闘は当初昨日の戦闘での疲れの残る騎士を抱える防衛側が押し込まれていた。

 

 しかし、徐々に戦闘に慣れてきた義勇兵、それに触発された騎士と冒険者の気力で逆に押し返す状況となった。


 その後さらに昨日のアンデッドとの戦いで負傷するなどして戦線から離脱していた騎士やC級以上の冒険者たちが戦線に復帰すると戦闘の流れは一方的となった。


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