関東大震災・後編
次に気がついたのは誰かの呼ぶ声だった
強制終了されず、終章は続いている。
「令人さん、しっかりして!」
頬に熱い雫が落ちて来た。どうやら千代子が俺を見つけたようだ。
「姉さん……」
「令人さん、良かった」
千代子が泣いている。お嬢様は、どうなった?
「お嬢様は?」
「この先のお屋敷に逃げ込んで無事ですよ」
涙を拭いながら千代子が答える。そうか、助かったのか。
けどこれが助かったと言えるのか?
「お嬢様を助けてくれた家に、お礼に行こう」
「令人さん、大丈夫ですか?」
痛みもないし大丈夫だろう。普通に歩ける。
「かすり傷だ」
気絶していた者の台詞ではないな。俺たちはお嬢様を保護してくれた家、葉室家に向かった。門が開いており、玄関先から和服に着替えた飛鳥お嬢様がやって来る。
「令人、無事だったのね」
「お嬢様、ご無事で何よりです」
「飛鳥さん、同級生のあなたを助けられて良かったわ」
どうやら育成中に何かの条件を立てていたようだ。
「この度は、飛鳥お嬢様をお助け頂きありがとうございます。小野家の主に代わりまして御礼申し上げます」
「いいえ、助けられたのは私たちの方ですわ」
京子お嬢様は何を仰っているのだ?
あれだけの暴徒を撃退とか無理だ。何があった?
「そちらのお姉様の美事な振る舞い、感動致しました」
振り返ると千代子が真っ赤になって俯いている。
本気で、何があった?
「令人さんには、後で説明します」
千代子は話題を変えようとしている。
「姉さんは、飛鳥お嬢様と共に、ここで待っていて下さい。屋敷の様子を見て来ます」
「令人さん、こちらを持って行って」
千代子が眼鏡を渡して来る。
「旦那様から、あなたに渡すよう頼まれていました」
俺がその眼鏡を受け取ると意識が遠退いて、再び第三者目線で終章を観覧する状態に戻った。
終章に選択肢でも隠されていたのだろうか?
眼鏡を受け取った後、屋敷に戻ると旦那様も使用人も全員が無事に、屋敷を守り通していた。
しかし飛鳥お嬢様は行方不明になってしまう。
大団円を迎えると思っていたのに、何だよこの大どんでん返し。
しかし、あの眼鏡は何だったんだ?
表題画面から、執事の控え室を選ぶと『おまけ』という項目が増えていた。
登場人物の紹介や名場面を集めた閲覧室になっている。
さっき貰った眼鏡は?
眼鏡、眼鏡……。
眼鏡、眼鏡……。
あった、執事の眼鏡は、執事の真眼が使えるようになる道具か。
これでお嬢様たちの真実を見て、夢を叶えていけば、飛鳥お嬢様を本当の意味で助けられるのだろう。
最後が行方不明って、これまた衝撃的な結末だった。
ゲームを終了し、現実世界に帰って来る。
「次こそ助ける」
決意も新たに、俺は頭部端末と手袋を外して、本体の電源を切った。
声の想定
伊集院 令人 小林祐介さん
伊集院 千代子 今井麻美さん
小野 飛鳥 ゆかなさん
小野 潔 子安武人さん
葉室 京子 生天目仁美さん




