ゲーム起動
大正執事物語。
何とも言えない表題だ。
売る気があるのか?
今時、こんな表題で売れるはずがないだろ!
とか文句を言いたいが、俺の手元にこれがあるのは会社の先輩から貸して貰ったからだ。
「ビジネスマナーがなっていない」
そう指摘されて貸して貰ったんだが、こちとら大学卒業したての社会人1年生だっつーの。
まあいい、早速始めよう。
遊戯機本体に記録媒体を投入して、起動させた。頭部端末と手袋を装着したら、寝台へ横になって準備完了だ。
「接続開始」
全感覚型としては今時珍しい、閉鎖型の遊戯だが内容は至って簡単だ。利用者は執事として名家に勤め、お嬢様を育成して玉の輿を目指す。
まずは自らの名前の入力を求められた。
んー、本名でもいいが、ここは既存設定にしよう。
「伊集院 令人」
入力完了。顔立ちとか、全部既存設定でいいや。面倒だ。
次は、相棒の女中の名前?
これも既存設定でいいだろう。
「千代子」
これで良し。
次は勤め先か、簡単、普通、難しいと難易度があるんだな。
初めてのゲームだし、簡単にしよう。
早速、ゲーム開始だ。
「大正四年三月、令人は新任の執事として葉室家に雇い入れられた」
ナレーション、いい声だな。この葉室家ってのは平安時代から続く貴族の家柄で、子爵家らしい。
んで、育成する御令嬢が、京子さん、十歳。
メチャメチャ可愛いし、黒髪が和服姿に似合っている。
おっと、お嬢様とは挨拶しかできないんだな。屋敷の奥に案内されて、ここが俺の部屋か。
「令人さん、無事に就職できて良かったですわね」
相棒の千代子だ。彼女は設定上、姉ということになっていて、この令人と共に流れの執事と女中をしている。
手順解説が始まった。
ゲームの流れは、毎日の午前、午後、夜の行動予定を組んで、屋敷の運営と、お嬢様の予定に合わせることか。
例えば自分自身の行動予定として、午前中は屋敷で勉学に励み、午後はお嬢様のお迎え、夜は旦那様のお供。
お嬢様は学校に通っているので、夜は自習や習い事をさせるなどして成長させる。
このゲームでは執事自身にも能力値や技能があって、それに応じた行動しかできない。
屋敷の運営では、食事の献立と女中の予定、庭師の手配なんかもある。かなり忙しくないか?
まあ、取り敢えず相棒が組んでくれた予定で決定。
「おはようございます、旦那様」
うおお、行動を決めると勝手に動くのか、ちょっと面食らったぞ。勝手にお嬢様の部屋まで移動するし。
「おはようございます、お嬢様」
「伊集院さん、おはようございます」
京子お嬢様、かわえー。
ん、何か光ってる、何だこれ?
執事の慧眼?
使ってみるか。
葉室 京子 十歳
身長132.7cm 体重32.5kg
B55.2cm W30.4cm H50.2cm
筋 力 8
体 力 8
知 力 10
敏捷性 7
気 品 15
色 気 7
モラル 20
信頼度 5
攻撃力 8
防御力 7
芸術性 12
礼 法 15
能力値が見えるのか、これは便利だな、……と、お嬢様の体格まで把握するとか、とんだ変質者執事だぜ。
つかこれ、絶対に目が光る演出効果がついているに違いない。
「朝食のお時間でございます」
「はい、すぐに向かいますわ」
十歳とは思えない物腰だな。このゲーム、こんな感じで半自動なんだろうか?
画面の上に「自動」と表示されている。どうやら手動にもできるようだ。この後、お嬢様を送り出してから自由時間があるはずだから、その時に試してみるか。
「行ってらっしゃいませ、旦那様、お嬢様」
使用人一同が玄関先で親子を見送る。ランドセルを担いでいたお嬢様、可愛かったな。
さて、手動を試してみるか。まずは自室に戻ろう。それからだ。
「令人さん、お仕事には慣れましたか?」
千代子がやって来た。彼女の説明によると、初心者の為に自動の機能があるのだという。手動にすると言葉遣いも全て地で行われるらしい。
「本気かよ」
「ほら、そのような言葉遣いでは解雇されてしまいますわよ」
現在の設定は手動だから、俺の口調そのままで台詞になってしまうようだ。これは難しい。
「それから、持ち物に手帳があるでしょう?」
持ち物、手帳。これか。
開くと最初に千代子のプロフィールが掲載されている。
「その手帳は大切に扱って下さいね。出会った人や、新しく知ったことなどを書き記して、後で見返すこともできますから」
パラパラとめくると、千代子以外にも葉室家の御令嬢と父親が掲載されていた。
「それと、これはお姉さんからの贈り物」
手帳に栞が挟まる。その頁を開くとそこには「お姉さんの特製オムライス」なるものが掲載されていた。
「新しい献立を知ったら、教えて下さいね。お姉さん、頑張って作りますから」
千代子、可愛いよ千代子。
ふと画面の端を見ると、例のアレが点滅していた。
これは使うしかない。
執事の慧眼!
伊集院 千代子 二十五歳
身長162.1cm 体重48.5kg
B89.3cm W50.2cm H82.6cm
筋 力 100
体 力 120
知 力 90
敏捷性 115
気 品 150
色 気 100
モラル 200
信頼度 30
攻撃力 110
防御力 117
芸術性 120
礼 法 145
「そんなに見詰められると、お姉さん照れちゃうから……」
心なしか頬が紅潮している。これってもしかして、体格まで知られるのに気付いているのか?
だとしたら……
……エロいな。
声の想定
伊集院令人 小林祐介さん
伊集院千代子 今井麻美さん
葉室京子 生天目仁美さん
ナレーション 宮野真守さん




