再突入! 海底神殿!
飛竜の空爆が水面へ激しい水柱を上げさせる。
しかしリヴァイアのモンスターもただ手をこまねて居ているだけではなかった。
次々と海面から姿を現すキングクラブはウォーターガンで対空攻撃を加え続けていた。
更にサハギンが海底神殿から馬車のように巨大な車輪付きの”投石器”を運び出してくる。
まるで術者のような衣装を身にまとったゲルコマンドが杖を掲げると、投石器の皿へ水の塊のようなものが現われ、そして放たれた。
水の塊は放物線を描きながら飛び、竜騎兵隊の隊列を乱した。
一騎の竜騎兵が編隊を外れてしまったところへ、キングクラブがすかさずウォーターガンを放って撃墜する。
それでも勇敢なシュターゼンの竜騎兵隊は海底神殿の上空を飛び回り、必死に爆撃を加え続ける。
彼らのお陰で注意はそちら側に逸れ、海底神殿へ突撃する俺達への注意は最小限に思われた。
突然先行するユウ団長の前へ激しい水柱が立った。
海面から見上げるほど巨大なキングクラブが姿を現し、行く手を塞ぐ。
しかし刹那、背後から緑の閃光が幾つも走って、キングクラブを打ちのめす。
最後に白い閃光が脇を過って、キングクラブの腹へ風穴を開けた。
「先へ進め!」
「ここは俺たちが!」
キングクラブの死骸に降り立ったミキオとウィンドはすぐさま飛び、周囲で蠢く敵の掃討に取り掛かる。
幸いなことに海底神殿までの道筋が、まるで花道のようにまっすぐと開いている。
爆炎と閃光の中、俺達はユウ団長を先頭にして駆け抜けた。
海中からサハギンが飛び出し、刃物のように鋭い腕のヒレで襲い掛かってくる。
幾ら援護射撃があっても、ここは敵の本拠地。
呆れてしまう程の数の敵が、わんさわんさと姿を表す。
それでも俺たちはひたすら海底神殿だけを目指して、まっすぐと水面の上を滑空して突き進んでゆく。
敵の猛攻を掻い潜り、やっとの思いでほの暗い海底神殿の中へと飛び込む。
そして神殿内部で早速俺達を迎えたのは、行く手を塞ぐたくさんのゲルコマンドだった。
「一気に突破します! 続いてください!」
ユウ団長は真っ先に飛び込み、剣を振りかざす。
闇の中でユウ団長の紫電を帯びた剣が並み居るゲルコマンドを切り倒す。
さすがシュターゼン近衛団長。伊達じゃない!
俺も、杏奈も、そしてアイス姉妹も、それぞれの武器を駆使して、押し寄せるリヴァイアのモンスター軍団をちぎっては投げ捨てる。
だけどもさすがは敵の本拠地。
ゲルコマンドは倒しても、すぐに床から新しい個体が出現する始末だった。
「ああもう! 多すぎ! 全然先に進めないじゃない!!」
この中で一番短気なシャギは爪を振りながら、ブチ切れてた。
「……確かに多いですね」
いつもはあんまり怒らないオウバも、さすがにこの状況には嫌気がさしているようだった。
びゅんびゅん振り回している鉄球の速度がいつもより鋭いように見える。
「杏奈、大丈夫?」
俺は背中合わせで立つ杏奈に問いかけた。
「だ、大丈夫、これくらい!」
と、強気な言葉を返してくる杏奈だったが、実際は肩で息をしていた。
(このままだと消耗戦だ。どうしようかなぁ……)
すると考えている俺の脇で突然”ドンッ!”と破砕音が鳴り響く。
ユウ団長が腕に括り付けた丸盾で岩壁を粉砕していた。
狭い回廊に砂煙が充満し、ゲルコマンドが一斉に動揺をする。
「皆さん! こちらです!」
砂煙の中からユウ団長の声が聞こえた。
俺たちは遮二無二駆けて行き、ユウ団長を信じて、壁に開けられた大きな穴へと飛び込む。
そこはスロープのような、滑り台のような。
俺達五人は物凄いスピードで、暗闇の中を滑ってゆく。
「安心してください! これは最深部へ行くための近道です!」
続くユウ団長が自信ありげに叫んだ。
(なんだろ、この違和感?)
確かユウ団長は昔この遺跡に入って、ニムを発見したんだっけか。
だからこんな妙な通路のことを知ってるのか。
そういわれればなんとなく納得はできるんだけど……
「「「「わぁ~~~~!!」」」」
っと、滑り台通路を抜けた俺たちは、いつぞやみたいに宙へふわっと投げ出された。
そのまま下にある水たまりへバシャりと落ちて行く。
「皆さま、ご無事ですか!」
真っ先に水たまりから立ち上がったユウ団長が声を上げた。
「またこのパターン……耐水装備の方がよかったかしら?」
「わーん、びしょびしょ~」
アイス姉妹は元気そうだった。
「トカゲ、大丈夫?」
「うん! 耐水装備様様だね!」
杏奈も無傷で、サ○ヤ人プロテクターみたいな耐水装備を身に付けていた俺も平気だった。
気を取り直して周囲をぐるりと見渡してみる。
見覚えのある大空洞に水たまり。重々しい二枚扉に既視感を覚える。
どうやらここは”海底神殿の深層部前”らしい。
物凄いショートカットであった。
そんな中、ユウ団長の背中がビクンと震える。
「すぐに上がって下さい! 奴が来ます!」
次いで背後の水たまりが割れ、巨大でうねうねした影が、俺たちを覆う。
「ふしゅるぅ~!」
「あ、あ、あ……! オクトエンペラーいやぁ~~~!!」
オウバが絶叫し、オクトエンペラーは人のような顔をニタニタ歪ませていた。
しかも水たまりから、二つ、三つと――合計3匹のオクトエンペラーが現れ、触手を気持ち悪くわななかせている。
すると急いで水たまりから這い上がる俺たちと反対方向にユウ団長が飛んだ。
「私が牽制します! 皆さまは然る後に一斉攻撃を!」
ユウ団長は驚異的な跳躍力で、宙に弧を描く。
団長の引き締まった体つきに悪戯したいのか、オクトエンペラーはニタニタ顔で見上げ、触手を伸ばす。
「汚らわしい! 触れるなッ!」
「ぶじゅ!?」
そんなスケベな触手は、ユウ団長の鋭い剣一閃で、バラバラに切り裂かれた。
振り切った剣には、既に紫電が浮かんでいる。
触手を切り裂かれて、涙目のようにみえるオクトエンペラーが眩しい輝きで照らし出される。
「魔法剣二ノ太刀! 電光雷撃剣!」
剣が稲妻を呼び起こし、オクトエンペラーの巨体を”カッ!”と輝かせた。
「「「ふじゅるぅぅぅ~~っ!!」」」
三体のオクトエンペラーはユウ団長の雷撃を受け、ピタリと動きを止める。
丁度いいタイミングで、俺と杏奈は”炎の力”を溜め終わって、身体から真っ赤なオーラのようなものを放っていた。
「シャギ、オウバ!」
「GAA!!」
杏奈と俺の力を合わせた火球を、上へ向けて吐きだす。
既に宙へ舞い上がっていたアイス姉妹は、俺の火球を背中から浴びる。
爆ぜた火球はすぐさま、光輝く魔力に分解されて、アイス姉妹の背中へ吸収されて行く。
シャギとオウバから輝かしい光が迸った。
「「これで終わりだタコ野郎! サテライト・レイ・ソーラ!」」
シャギとオウバ、そして杏奈と俺の力が一つになった時、全てを焼き尽くす閃光が放たれた。
壮絶な輝きがオクトエンペラーを飲み込む。
光は巨大な蛸のモンスターを溶かすように消し去ってゆく。
おまけに水たまりの水さえも蒸発させている。
光が吐けた先に残っていたのは僅かな水のみ。オクトエンペラーの影も形も残ってはいない。
扉を守るボスも今の俺たちにとっては雑魚でしかない!
そして静寂が訪れ、俺たちは揃って巨大な扉を見上げた。
(この先ではニムが待っている)
会ってどうなるか――絶対に戦うことになるんだろう。じゃあ、その先は? ニムをどうやって助けたら? 同時にリヴァイアとの戦いを終わらせるには? 具体的にどうしたら良いか、今の俺は答えを持っていない。
そんな俺の心情を察したのか、ユウ団長は僅かに頷き、自信のある表情を見せる。
団長が何を考えているのかは分からない。でも、今はユウ団長を信じて進むしかない。
「みんな行こう! そしてニムを助け出して、みんなでシュターゼンへ帰ろう!」
俺の叫びにみんなが首肯した。俺たちは巨大な扉を押し開けて、ガランとした前室へ入ってゆく。
そして最深部の祭壇へ続く扉を押し開いた。
水の清々しい香りが炎の精霊である俺の背筋を凍らせた。
目の前のピラミッドみたいな高い祭壇からは激しく水属性を感じさせる力が放たれている。正直、少しでも気を許せば卒倒してしまいそうな苦手な空間。それでも俺は平然を装って、祭壇を見上げた。
「やはり来たか。炎の愚か者共め。ここを貴様らの墓場としてくれよう」
立派な青い法衣を着たニムこと、リヴァイアの支配者:ウンディーネは錫杖を手に、俺達を冷たい瞳で睥睨していた。
しかし彼女以上に鋭い視線を投げかけている、脇にいる彼
「……」
ワカメのようなもじゃもじゃヘヤーの男:ガロンドホエールは、殺意に満ちた視線で俺達を睨んでいたのだった。




