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失われし水の国――亡国のリヴァイア――


「よ、よくあんなことされたことに食べられるわね……」


シャギはかなり引き気味にそう云いながらも、細かく切り様れたタコの脚を口へ運び、


「例えどんなことをされようとも命は食にありです! それに食べて体の一部にしちゃえばされたことも無かったことになります!」


逞しいオウバは自ら調理をした”オクトエンペラー”の胴体部分の切れ端をパクンと食べた。


「トカゲ、あーん」


更に杏奈は俺へ、ビネガーと御塩で和えられて、程よい”マリネ”となったオクトエンペラーの肉片を、フォークで突き刺し、差し出している。



「あ、いや、良いよ。あれは明らかに事故だったし……」

「だめ! ん! 殴ったお詫び!」

「じゃ、じゃあ……」


 嬉し恥ずかしいな俺だけど、杏奈が差し出してくれた”オクトエンペラーのマリネ”をパクンと一口。 


 サクッとした歯ごたえと共に、よくなじんだビネガーの酸味と、海水由来の優しい塩味が口の中に広がる。

素材の味も良く、相変わらずオウバのお料理の腕も上々。

散々追っかけまわしてくれたオクトエンペラーは宣言通り、俺達パーティーが全部美味しくいただいたのだった。



 腹も膨れてすっかり元気になった俺たちは本題である”海底遺跡”の探索に乗り出す。


 海底に沈んでいると聞いて、少しかび臭さを覚悟していたが、そんなことは全くなかった。

綺麗に切って積み上げられた回廊にはコケこそ生えてはいるが、不思議と空気が、まるで静かな森の中に居るように住んでいる。


 だけどもここは炎の精霊である俺にとっては反属性の巣窟。


 もし耐水装備を装着していなかったらきっと、不快感で卒倒していたような気がする。


「ねぇ、この遺跡ってなんなの?」

「一千年前に滅んだ水の国”リヴァイア”の神殿で、かつては水の精霊様を祀っていたところらしいわ」


 杏奈の問いにシャギが応える。

シャギは具に”水の国リヴァイア”について語り始める。




 今から約一千年ほど前のこと――この地には水の精霊ウンディーネを信奉する国家が存在した。その名を【リヴァイア】というらしい。


 同じ大陸には、その頃から俺こと炎の精霊サラマンダ―を信奉するシュターゼンが存在してい居たらしい。


 反属性が、同じ大陸に。当然、リヴァイアとシュターゼンは仲が悪く、ずっと長い間小競り合いを繰り返していたと言う。

 

 そんな状況の末期、リヴァイアに妙な噂が立っていたと言う。


【リヴァイア王の妃は、水の精霊ウンディーネである】と。


 末期のリヴァイアは大陸を捨てて、海の上に巨大な島を作り、そこを領土としていたそうだ。

現在のこの世界の文化レベルが典型的なファンタジー世界風。

で、その一千年前なのだから、海に浮かぶ島なんて、人知を明らかに凌駕している。

 俺って言う存在がある以上、きっとウンディーネはリヴァイアに本当にいたんだと思う。


 むしろ精霊の加護が強いからこそ、リヴァイアは海上の巨大な島の上に存在していた。

だけどそんな精霊の強い籠を受けた海上国家に、とんでもない事件が起こってしまったのだという。


――時のリヴァイア王が、妃以外の若い娘と恋に落ちてしまったそうだ。


 良くある話だとは思うけど、リヴァイアにとっては大変なことだったらしい。

 魂を持たない精霊は契りを結んだただ一人の相手の心が離れしまったとき、消える運命にあるらしい。

そして裏切り者には死、あるのみ。


 ウンディーネは裏切りの王を殺し、彼を誘惑した若い娘さえも殺害する。

そうしてウンディーネ自身も泡と消える。


 精霊の加護を失った海上都市は一晩にして崩壊し、深い海の底へ沈んでしまった。



 というのが、今のところシャギ達が知っている、リヴァイアの末路だった。



「なんか、哀しいお話……」


 話を聞いて、杏奈は少し辛そうな声を上げる。


「そうね。でも、大体こういう話は、遺跡の神秘性を強調するための創作だろうから気にしなくて良いわ。もしかすると大きな戦争があって滅んで、勝利したシュターゼンが自分達を正当化するために喧伝したのかしれないわね」


(昔の日本も戦後もそんなことことがあったっけ。歴史とは事実は勝った方が都合よく解釈したり、改変するからなぁ)


 シュターゼンも国である以上、色んな明暗があるんだろう。


 と、そんなことを考えていた俺の手の爪を、杏奈が握ってきた。


「どしたの?」

「大丈夫。私は、トカゲを、裏切らない。絶対に!」


 きっと今の昔話で浮気がどうのこうのとか出たからなんだと思った。

正直、杏奈がこんなにも強い俺を想っていることが嬉しい。


「ありがとう杏奈! これからも仲良くしてこうね!」

「うん。だけど、トカゲ人間ばっかじゃ嫌だから」

「わ、わかった! 今度からできるだけトカゲの姿でいるよ!」


 そんな俺たちを見て、オウバは優しい笑顔をおくってくれた。


「さぁ、最深部まで一気に行くわよ!」


 そう宣言するシャギの目の前には、まるでウォータースライダーのように水が流れるトンネルがあった。


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