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浄我の形(じょうがのかた)【改稿前】  作者: 砂上 巳水
虚偽不還(きょぎふげん)
41/41

第四十一章 エピローグ

 

1


 体が全く動かない。

 血液の全てが鉛となり、そのまま固定されてしまったかのような感覚だ。

 視界はぐるぐると勝手に動き続け、意識していても特定の場所に留まろうとはしない。猛烈な倦怠感と吐き気、それに寒気が全身を支配している。

 背中に重い感触。どうやら千花も力を使い果たして動けないらしい。微かに苦しそうな息使いが僕の耳を刺激してくる。

 ただ辛うじて差し込む光から、朝日が昇り始めたことだけは理解できた。

 ……これ以上は何もできそうにはない。けれど、流石の一業も……。

 拳に残った感触。僕の拳は、幻ではなく確かに一業の胸を打った。完全な“蟲喰い”ではないとはいえ、健全な肉体を行動不能にするには十分過ぎるダメージだ。死ぬことは決してないだろうが、あんな傷を胸に作っては痛みでまともに動けるはずがない。

 もはやどうあがいても一業が千花を連れて逃げることは不可能。僕はそう確信していたのだけれど、――感じる日の温かさを、影が遮った。

 布をこすらせ、砂を踏みしめ、何者かが立ち上がる音。それを聞いて、僕は安堵しかけていた心のゆるみを、引き延ばさざるおえなくなった。

 焦点の定まらない視界の中、胸を抑えながら立ち上がった白い少年の姿が見える。

 僕から受けた傷のせいか、それとも現象を酷使し過ぎた反動のせいか、流石の一業も疲弊しきっている様子だった。呼吸は荒く、体の力は抜け、しかしなおその瞳の強さは消えない。

「……まったく、信じられないなお前は。よくもまあ、あの状況からここまで……」

 ぼろぼろの身体で口から血を垂らしながら、何がおかしいのか知らないが、楽しそうに口元を歪ませる。それは敵対者に向けるというより、親しい何かに向ける目だった。

「バーベキューで初めて目にしたときは頼りなさそうな奴だと思っていたんだが……流石に、あれほどカナラがこだわっていただけのことはある」

 ガラスを踏みしめ、足を前に進める一業。

 おぼつかない足取りではあるが、しっかりとそこには力が籠っていた。

「まったくお前のせいで計画がめちゃくちゃだ。これじゃあ、ただ自分の状況を悪くしただけじゃないか」

 金色に近い朝日の線を背景に、満身創痍の僕と千花の前に立つ。

 彼は僕を見据えたまま、言葉を続けた。

「計画は失敗した。お前の勝ちだ。ぼくは真壁教授の信者から追われる立場になり、これまでのように自由には行動できなくなるだろう。だが、頭の中でカナラと繋がっている限り、まだチャンスはある。時間は限られているがな。……悪いが、情報漏えいはできるだけ減らしたいんだ。今回はお前の勝ちだが、その命は殺させてもらうぞ」

 一業が右手を上げ、それが背後の光と重なり僕の視界を眩しさで見えなくする。

 抗おうにも逃げようのない僕は、どうすることもできずただその瞬間に耐えることしか出来ない。

歯を食いしばり、イタチの最後っ屁よろしく見えない一業の顔に目を向け続けたところで、どこからか、聞きなれた声が響いた。


「やめて、一業」


 落ち着いた、鈴の音のような凛とした声。

 明社町に来てから何度か耳にはしていたものの、ここまで強くはっきりと、彼女の声だと実感できたのは初めてだ。

 右方向。展望台の残骸の上に、カナラが立っていた。

 その姿を目にした途端、一業は目を奪われたように固まったが、すぐに冷静さに満ちた表情をとり戻した。

「幻影か。既に力は限界だろうに。一体何をしに来たんだ」

 カナラは最後に見た時と同様、一切の汚れのない綺麗な黒いドレスを着ている。それで、僕も彼女が本当に幻影であると察知することができた。

 一業と僕と千花を見つめながら、カナラは何かが吹っ切れたような瞳で口を開いた。

「――ずっと、いいように使われてきた。ずっと自由を奪われていた。でも、もう好きにはさせない。今度は、私があんたを縛る」

 差し込む朝日が一瞬強烈に強くなったと思った途端、一業が頭を抱えよろけた。

 一体何が起きたのかはわからないが、かすかに憎しみの籠った目で彼女を見返す。

「カナラ……お前……!」

「あんたがここまで弱っていなければ、真理の精神との繋がりができていなければ、こんな真似はできなかった。でも今なら、私はあんたの支配を逃れることができる。今なら、あんたに暗示をかけることができる」

 一業は抵抗しようとカナラに向かって現象を行使しかけたが、その前にカナラの言葉が宙を切った。

「あんたの超能力を封じた。もう二度と、現象を使うことはできない」

「なん、だと……!?」

 一業は動揺したように、大きく目を見開いた。

 すぐに伸ばした手から空間を塗り替えようとしたようだったが、いくら力を込めても何も起きない。ただ、真っ白な手がそこにあるだけだ。

 相当なショックだったのだろう。いつも余裕の表情を見せていた一業が、いつも冷静そのものだった一業が、その瞬間、酷い恐怖を感じたように表情を歪めた。生きる意味を、価値を見失ってしまったっかのような顔だった。

 一業はふらふらと後ずらりながら、僅かに震えを帯びた声でカナラに問いかけた。

「……お前、このために遠ざかったふりをして、ずっと機会を伺っていたのか……!」

「違う。私は穿たちが心配だったから。少しでも助けになりたかった。だから、リスクを負ってまであなたの意識に侵入したの。結果として、それが吉と出ただけ」

「よくもこんな、これじゃあぼくは……」

 本人は教授の意思を否定し、自由になりたいと話していたが、それでも心のどこかではきっと、超能力というものに価値を、憧れを感じ続けていたのだろう。だって彼はそのために作られた存在なのだから。それが親から与えられた、明確な原初の生きる意味だった。

「何もできず逃げまどうことしかできない人間の気持ちを理解すればいい。すぐに捕まらなければだけど」

 そんな一業に対し、実に冷たい口調で皮肉を飛ばすカナラ。

 一業は彼女に怒りの目を向けたが、しばらくして、興味を無くしたようにだらりと手を下ろした。超能力を失った今、彼がカナラに勝てないことも、カナラを捕まえる意味もなくなってしまった。つまり一業の目的は、どうあがいても実現不可能になってしまったのだ。頭のいい彼のこととだ。歯向かう意味がないことも、もう状況を変えることが不可能であることも、すぐに理解できてしまったのだろう。

 立ち尽くす一業の姿は、まるで意識の無い人形のようだった。


 カナラはどこか憐みの籠った目を彼に向けると、視線を一度伏せ、僕たちに向き直った。

「穿。今、何台もパトカーがこっちに向かっていってる。早く逃げないと面倒なことになるよ」

「面倒? 何で……」

「こんだけここをぼろぼろにしたんだもの。教授の信者が見れば、すぐに超能力者がやったんだと気が付く。私の力が回復すればごまかすことも可能だけど、それでも何かしらの不審な痕跡は残る」

「逃げたところで……僕の血液はそこら中に落ちてるんだ。検査されればすぐに特定されてしまう」

「それは私があとで警察に侵入してサンプルをすり替えるから心配しないで。だから今は、とにかく早く逃げないと」

 カナラの幻影がノイズが走ったようにぶれ始める。力の限界が来たからか、どんどんその姿が薄くなっていく。

「カナラさん……!」

 何か言いたいことがあるのか、千花が呼びかける。

 すると彼女は、真剣な表情で千花と僕を見つめ、声を出した。

「あの公園。灯台のあるあの公園で待っているから」

 集まっていた蛍が飛び散るように、姿を消すカナラ。彼女の幻が完全になくなると、待っていたかのように、天井の一部が落盤した。

「警察云々以前に、ここ崩れるかもしれない。動ける? 千花」

「うん。私は穿くんとは違って精神的な疲労だけだから。でも、――あの人はどうするの」

 一業はぼうっと突っ立ったまま、割れた窓の反対側に浮かぶ金色の地平線を眺めている。

 あれだけのことをした人間なのだ。別に構う必要はないと思ったが、いざ歩き出そうとすると、足が地面にへばりつき、持ち上がらなかった。

 やはり誰が相手でもどんな状況でも、僕は人を殺すことができないらしい。

 「くそっ」と呟きながら駆け寄ろうとしたが、それを察知した一業が僕を制した。

「寄るな。お前の同情なんていらない」

「ここに残っていたら死ぬぞ。一業」

「超能力を失ったんだ。それも一つの末路だろう」

 自身をあざ笑うように、一業は言葉を続けた。

「よく、死を前にすると後悔が浮かぶという者がいる。それは人生のために、多くのしがらみに捕らわれ苦痛を我慢して生きているからだ。だがもし明日世界が滅ぶとすれば、誰もが好き勝手に行動し、好き勝手な真似をするだろう。後悔を残さず死ぬために、満足して死を迎えるために。実に滑稽な姿だ。死を現実のものとして実感しなければ、人は自身の本当の望みにすら意識を向けることができない。

 ……ぼくは、常に今日が人生最後の日だと思って生きてきた。下らないしがらみやルールに捕らわれることなく、好きなことを好きなようにして過ごしてきた。だからこうなってしまったことに悔しさを感じはしても、後悔はない。超能力が使えないのなら、生きる意味がないというのなら、それを甘んじて受け入れるだけだ」

「受け入れる? そんなの逃げているだけだろ。自分で言っていたじゃないか。生きる意味を自分で決められることは、幸せなことだって。君の命はまだ残っているんだろ。まだ三か月生きられるんだったら、超能力が使えないんだったら、その状態での生きる意味を探せばいいじゃないか」

「言っているだろう。ぼくに後悔はない。もうそんなものを探す必要なんてないんだ」

 全てに満足しきったと、そういうように一業はこちらを見た。

 その背後に天井瓦礫が落下し、大きな音を鳴らす。

 僕は何故かむきになって一業に叫んだ。

「君が求めていたものは、人としての人生なんかじゃない。君はただ、新しい生きる目的を得るための殻が欲しかっただけだ。真壁教授が人類全てに対してやろうとしたことと同じだよ」

 意外な点を突かれたように、一業の表情が固まった。

「今の人生に耐えられないから、今の人生が嫌だから、違う隣の芝生を求めていただけだ。その道が辛いから、その道が嫌だから、足を止めてよそ見をしているだけに過ぎない」

 僕は一度瞬きをし、

「……前を向いて歩かなきゃ、前に進むわけがないだろ、一業」

 雲が退いたのだろうか。一瞬差し込む陽射しが強くなる。僕は思わず目を覆ったが、その刹那に、一瞬だけ一業の驚いた表情が見えた気がした。

 強い振動が足元に走り、文化センターそのものが震える。これは展望台だけの損傷によるものではない。おそらく真理と二業が戦ったときのダメージも影響しているのだろう。

「穿くん。――もう」

 かなり焦った顔で千花がこちらを見る。僕は頷き、再度顔を上げたが、――そこに一業の姿はもうなかった。

 床の上に落ちていた石がゆっくりと横へ滑っていく。これ以上この場に残り続けるのは、本格的にまずそうだ。

「行こう千花……!」

 僕は腹部の痛みを押し殺すように、そう力みながら声を出した。







2


 ~数日後~

 

 眼下を一台のトラックが通りすぎた。

 小学生の身長くらいはある大きなタイヤに、二階の屋根に届きそうな巨体。何かの運送を行っているのか、こんな田舎町のど真ん中だというのに、ありえないほどの速度で走り去っていく。

 その真横を、通りすがりの老婆が恐々とした様子で歩いていた。

「危ないな」

 こうして病院の屋上から見て危険だとわかるほどの運転なのだ。あの老婆からすればたまったものではないだろうに。

 僕は小さなため息を吐き、視線を駐車場の向こうにある細い道路から逸らした。

 体中に巻かれている包帯の奥にある傷のおかげで、こうしして身を反転させるだけでも痛みが走り一苦労だ。頭上に輝いている太陽のせいでその疲労はさらに増す。

 僕が背を道路へ向けると同時に、目の前のベンチに座っていた千花が話しかけてきた。

「どうしたの?」

「いや、ちょっと危ない運転をしているトラックがいてさ。気になっただけ」

 僕は苦笑いを浮かべながら答えた。

 彼女は風に揺らされた前髪を整えると、いつも付けているお馴染みの白いヘアピンでそれを留めなおす。彼女の動作を僕は何となく見つめ続けた。

「なにかな? じっと見て」

 少しだけ照れたように、千花が口を尖らせた。

「いや別に、そのヘアピン、いつもつけているなって思って」

「お気に入りなの。昔、お母さんが買ってくれたやつだから」

 少しだけ寂しそうに千花はヘアピンを撫でた。

「そういえば、穿くんのお母さんかなり回復してるんだって? 聞いたよ」

「ああ、うん。……父さんは大喜びだよ。まるで初心な中学生みたいに母さんのことを意識してる。昨日だって、母さんの病室に入る前にトイレで何度も自分の姿を確認してたんだ」

「かわいいじゃない。いいなそういうお父さん」

 千花はくすくすと楽しそうに笑った。

 僕は背を屋上の柵に寄りかからせながら千花を見つめ、真面目な表情を作った。

「修玄さんの話によると、母さんが回復しつつあるのは、この明社町の土地の影響が大きいみたいなんだ。ほら、この病院はあの文化センターに近いから、薄っすらとだけど、超次場の影響を受けているのかもしれないって。だから父さんたちの願いを受けて回復し始めた」

 ちろりと背後を振り返る。左斜め前、数百メートルほど先に、展望台エリアの半壊した文化センターの姿が見えた。既に業者の人間が入っているようで、ブルーシートらしき膜が張られている。

「……あの場所は、まだ力を持っているのかな」

「土地自体が無くなったわけじゃないからね。強い超能力者が影響を与えれば、またいつでも強力な道具になりうる。もっとも一業が強引に力を利用しようとしたせいで、地上に近い部分の影響力は軒並み薄れてしまったらしいんだけど」

「ふ~ん。じゃあ、しばらくの間は問題はないのかな」

 千花は不安そうに足を組み直した。白い太ももが目の前で上下の位置を逆転させる。

 僕はそっと視線を外しながら、

「まあ、全て修玄さんの受け入りだけどね。本当のところはわからない。でも、あれだけの騒ぎになったんだ。真壁教授の信者やそういった研究者の注目も集まっているだろうし、今後どうどうとあそこを利用する奴なんて、きっともう現れはしないよ」

 予想と期待の入り混じった感想を、僕は口に出した。

 千花は一旦間を置いてから、

「一業はどうなったと思う?」

「あいつのことだから、簡単に捕まることはないだろうね。真壁教授たちの手の内を知り尽くしているんだし。それでも逃げきるにはかなりの苦労を強いられると思うけれど」

「……なんか、一業に逃げて欲しいみたいな言い方だね」

「僕が? ……そんなつもりは別にないよ。ただ誰かが嫌な目に合うと分かっていてそれを容認するのは、いい気はしないだろ。例えそれが一業だとしても」

「そう思えるところは、穿くんのいいところだと思う」

 真正面からこっぱずかしい台詞を吐く千花。その綺麗な瞳を見て、僕は反応に困った。

 間が開き、妙な空気になる。僕が対応に困っていると、激しい音を響かせて屋上の扉が開いた。

「あ、いたいた! やっほ。お疲れ~」

 のっけから明るい声を上げて飛び出してきたのは、日比野さんだ。まだ全身の包帯はとれておらず、安静を言い渡されていたはずなのだけれど、原っぱを走る小学生のように元気にこちらにやってくる。それを背後から心配そうな目で見つめつつ、緑也や皐月さん、スタイリッシュや桂場たちがやってきた。

「あ、みんな」

 嬉しそうに微笑む千花。彼女の笑顔を見て、日比野さんたちも大きな笑顔を見せた。

「ひゅう、アツアツだねお二人さん。こんな真昼間から二人っきりで寄り添って」

「ちょっと穿くんと話したいことがあっただけ。別にそんなんじゃないよ」

 からかうような日比野さんに対し、若干困ったように千花は返した。

「悪いなぁ。お邪魔だった?」

 申し訳なさそうに目を軽く伏せ、こちらの様子を伺い見るスタイリッシュ。僕は肩の力を抜きながら、

「大丈夫だよ。もう話は終わったから。それよりよくここにいるってわかったね」

「大きな病院でもないし、いける場所は限られてるだろ。穿ってあんまり知らない人と同じ場所に一緒にいるの苦手だろ」

「人と話すのは好きなんだけどね。あんまり個人的な話をあそこでしたくなくて。部屋の中に声が響くからさ」

 僕は自分の会話を見知らぬ人間に聞かれるのがあまり好きではないのだ。

 そう答えると、共感したようにスタイリッシュが乗っかってきた。

「わかるな。聞き耳立てるのが好きなやつとかいるもんな。俺、そういうの苦手なんよ。ほっといてくれって思うわ」

 何か過去に嫌なことでもあったのか、しきりに頷くスタイリッシュ。これから彼の過去話でも語らっるのかと思いきや、それを桂場がぶった切った。

「それよりさ、ちょっと聞いてくれよ。お前ら」

 僕と千花を見て、相変わらず濃い目の顔から紙をわしゃわしゃと丸めたような笑みを爆発させる。

「前に旅行こうって言ったの覚えてるか。さっきもその話をしてたんだけどさぁ。中々意見がまとまらないんだよ。お前たちはどっか行きたいとことかある?」

「旅行?」

 不思議そうに聞き返す千花。

 一業たちとの争いのことで精いっぱいだったからか、それとも単純に聞きそびれていたのかは知らないが、僕もそんな話など聞いた覚えはない。だが桂場はこちらの反応など一切構わず話し続けた。

「スタイルと皐月は飯メインで北海道がいいっていってるんだけどさ、俺と日比野は京都に行きたいと思ってるんだよ。せっかくの夏休みなんだし、観光らしい観光がしたいじゃない」

「俺は海がいいけどね」

 ひょっこりと緑也が己の願望を挟み込んだ。

「海は無理だよ。だって怪我に染みるからあたしおよげないもん。見てるだけなんて絶対に嫌だし」

 包帯の端を引っ張りながら口を尖らせる日々野さん。確かにそれはもっともな意見である。緑也も困ったように頭を掻いた。

 そのままどこに行くかの議論でもめ始める五人。一体何しにここへ来たのだろうか。屋上とはいえここは病院なのだ。あまり騒ぎ立てはして欲しくないところなのだが。いつのまにか千花までその環に加わり、さらに議論を白熱させていく。

 僕は少し皆をたしなめようかと思ったのだが、楽しそうな千花の横顔を見て、言葉を喉の奥に押し留めた。考えれば、これまで千花はずっと逃げるだけの人生を送ってきた。誰かと本気で外出を楽しみ、和気あいあいと過ごすのはこれが初めてなのかもしれないのだ。

 そう考えると、邪魔をしたくないと思ってしまった。

「なあ、穿」

 柵に寄り添いながら彼らを見ていると、緑也が輪から抜け、横に並んだ。胸を広げ、柵に巻き付けるように腕を伸ばす。

「お前は希望とかないの?」

「僕は、別にどこでもいいよ。候補が決まらないときに、皆の要望が重なる場所を選択するさ。急に言われても、当たり障りない場所しか思い浮かばないし」

「かぁ、これだから都会人は。もっと遊び心を持とうぜ。言える時に言わないと、後悔するぞ」

「都会人は何の関係もないと思うけど」

 僕は苦笑いを浮かべた。

 緑也は笑い合っている日々野さんと千花を見ながら、

「……それにしても、お前、ほんとよく千花を見つけられたな。北区の駐車場に監禁されてたんだろ」

「うん。運よく千花が犯人の端末を盗めてね。それで僕に電話してきたんだ。警察にも連絡したんだけど、居てもたってもいられなくて勝手に行動しちゃった。おかげでこのざまだよ」

 僕は包帯だらけの自分の体を見下ろした。

「でもお前がこっそり侵入して千花を逃がそうとしなかったら、今頃千花はここにいなかったかもしれないんだろ。犯人たちはサイレンを聞いて逃げたみたいだけど、それでも十分すぎるほどの活躍じゃねえか」

 千花、そして真理と事前に打ち合わせた話を、緑也はあっさりと信じてくれたようだった。

「そうだね。犯人がまだ捕まっていないっていうのが気がかりではあるけれど」

「一度失敗したんだ。もうこの町にはこねえさ。度重なる妙な事件の影響で、しばらくは警察の見回りも相当多くなるって話だしな」

 正直、千花が誘拐されたという事実を残しておくべきかどうか、僕たちはかなり迷った。誘拐を認めてしまえば警察や学校の記録、友人たちの記憶にも情報が残るだろうし、仮に真壁教授の信者がこの町を訪れれば、その事実を元に千花が目をつけられる可能性が高い。

 だが、いきなり多くの記憶操作を行うと、どうしても個人個人の記憶に矛盾が生じ、不都合が多発してしまう場合が多くなってしまう。真壁教授がこの町から出られなくなってから、彼の信者が何もせず手をこまねいていたとも思えない。もしあの時点で真壁教授の信者が町の中にいて、かつ千花の誘拐に関する何かしらの話を聞き及んでいれば、その事実が消えたということは逆に千花に注意を向けさせてしまう結果に繋がる。

 だから僕たちは、千花を今回の一連の騒動の被害者の一人として扱うことにした。

 “触れない男”や“五業”など、彼らによって誘拐未遂や実際に姿を消した者たちは何人も存在する。そういった犠牲者の一人として千花が外部から見えるように、警察や周辺住民の記憶を改ざんした。応急処置ではあるものの、少なくともしばらくの間はなんとかなるだろう。何せ追っ手がいたとしても、彼らの注意は全て逃亡中の“一業”に向いているはずだから。

 文化センターの破壊は表向きには倒壊事故。そして教授の信者たちには、カナラと一業の争いに見せかけることにした。実験体たちを倒したのはカナラと一業で、超次場の奪い合いによってあそこで仲たがいしたと、そういう筋書きだ。

 カナラを捕まえることは困難だから、連中はこぞって逃げた一業を追うことになる。こちらにとって都合の良すぎる話だから完全にうまくいくかどうかは不安が残るけれど、今はその作戦にかけるしかない。僕たちが生き残るにはその嘘を貫き通す以外どうしようもないのだから。

「そういえばさ。俺、お前が千花を北区の工場から救出してたとき、あの文化センターの近くにいたんだぜ」

 腹の前に組んでいた五指をほどきながら、緑也が楽しそうにこちらを見た。

「文化センターの近くに? 何で」

「お前の親父さんから俺と遊んでるって聞いてさ。まさかと思って探しに出たんだよ。ま、結局見つけられなかったけどな。でも、俺があそこから離れた数分後に例の半倒壊事件があったからさ。驚いちまった。もう少し遅くあそこに残ってれば、瓦礫が頭に当たってたかもしれないからな」

 なんと、彼はあの時あの近辺にいたのか。危ないニアミスだ。もし僕たちが文化センターに入るところで緑也と出会っていれば、ひと悶着あったかもしれない。その場面を想像し僕は苦笑いを浮かべた。

 白熱していた議論に疲れたのか、千花が日比野さんたちの元からこちらに戻ってきた。それを見た緑也がすかさず彼女に質問する。

「どう? 決まった?」

「駄目。みんな自分の主張を全く曲げないもん。誰かがまとめない限り、永遠に議論し続けてるかも」

「たく、しょうがねえな」

 小さなため息を吐きながら、千花と入れ替わる様にスタイルの横へ入っていく緑也。なんだかいつもよりも落ち着いた雰囲気をまとっているように見えた。

 僕は千花に話しかけようとしたのだが、体を動かそうとした瞬間腹部に激痛が走り、思わず身をくの字に折り曲げた。裂傷こそ糸で縫い合わせてはいるものの、傷が完全にふさがったわけではない。じりじりとねちっこい痛みが神経を駆け上がり、僕の脳を殴りつける。

「大丈夫……?」

 僕の肩に手を置き、覗き込むように顔を近づける千花。

「うん。ちょっと痛んだだけ。心配は……」

 そのとき、ふと左斜め前の棟に知った顔を見つけた。開け放たれた窓から眠そうに外の様子を眺めている。少し白髪の混じったその目つきの悪い顔を見て、僕は千花に向き直った。

「ごめん。ちょっと抜けるよ」

 千花はキョトンとした顔をしたが、階下の彼の姿を見つけ、悟ってくれたようだった。僕の肩から手を放し、そっとそれを下に下ろす。

「あの人も、この病院に居たんだね」

「まあ一番近い病院だからね。ありえない話じゃない。緑也たちにはうまく言っといてもらえるかな」

「うん。わかった」

 千花は静かに頷くと、優しい笑みで僕を見上げた。

 僕は安心さえるために彼女に微笑み返し、そっと屋上を後にした。



 病室に入ると、そこには真理しかいなかった。

 風が入り込んだ影響で、複数のカーテンが空気の中を泳ぐように揺らいでいる。

 なんと声をかけるべきだろうか。別に親しい間柄ではないが、かといって縁の薄い相手というわけでもない。迷った末、僕は先ほどの千花の言葉を繰り返すことにした。

「やあ、君もこの病院にいたんだね」

 僕の声を聞いた真理は、外を眺めたまま声を出した。

「俺のほうはとっくに気が付いてたよ。いつも屋上が騒がしかったからな」

「クラスメイトなんだ。こっちにきてから仲良くなった」

「知ってるよ。お前の記憶で見た」

 拳を交えたときのことを言っているのだろう。僕が彼の過去を見たように、彼も僕の人生を流し見たのだ。

 僕は若干気まずさを感じつつも、彼の立っている場所に歩み寄った。

「カナラは? 彼女はここにはいいないの?」

「あいつは事後処理で忙しいらしい。俺たちの記録を消したり、目撃者を探して記憶を改変したり、真壁教授の信者たちの姿を探したりとかな」

「……彼女と話すことはできる?」

 事件の黒幕は追い払ったが、まだカナラとのわだかまりは残ったままだ。せめて一度だけでも、僕は彼女と会って話をしたかった。

 真理はゆっくりと振り返り、少しふてくされた顔で僕を睨んだ。

「心配しなくても、お前が退院次第、すぐに会えるさ。例の、あの灯台がある公園の下で待っているそうだ」

「あの公園に?」

「人目に付きにくいし、近づく人間の姿を一望しやすいからな。真壁教授の信者のことを考えると、悪い考えじゃない」

「そうか。わかった。ありがとう真理」

 僕が礼を言うと、真理は不機嫌そうな表情のまま小さく頷いた。彼は感情がすぐに顔に出るタイプの人間のようだった。

 僕はベッド横の荷物を確認しながら、

「君はこれからどうするの? もう二業も、お父さんを追いやった犯人も居なくなったけれど」

「ああ。だからもうやることは一つしかない。俺は親父を助けに行くよ」

 断言するように真理は言った。

「幸いにも俺の存在はまだ教授の信者に知られてはいない。もともと冤罪なんだ。適当な証拠をそろえれば釈放させられる。カナラがいれば簡単に」

 彼の気持ちを考えれば当然の結論だろう。僕は納得し、頷いた。

「でも、助けた後どうするの? カナラがいる以上、危険がついて回ると思うけれど」

 真理はわずかに黙り込んだあと、何でもないように口を動かした。

「親父から俺の記憶を消せば問題はないさ。記憶さえなければ、教授の信者がいくら親父を怪しんだところでどうにもできない。ただの無害な中年男に過ぎないんだからな」

「……君はそれでいいの? やっとお父さんを開放させられるのに」

「あの人はもう十分過ぎるほど苦しんだんだ。そろそろ楽になってもいいだろう。俺が一緒にいれば、いつまでも過去の記憶が付いて回る。このほうがお互いのためになるんだよ」

 もう二度と、父親とまともに会話をすることはない。顔を合わせることもない。けれど、それが父のためだと信じて真理はそう言っているのだ。

 僕は何か意見を言おうとしたが、真理の顔を見てそれを押しとどめた。彼はそういった当たり障りのない言葉など、すでに理解したうえでこう言っているのだ。これ以上部外者である僕が余計な台詞を吐いても彼の気分を害するだけだ。そんな言葉はこの場に相応しくはない。

 僕は息を吐くと、背を彼に向けた。せめて本心から励ましの言葉を口に出す。

「……上手くいくことを願ってるよ」

 真理はぶっちょう面を浮かべたまま、

「ああ。そうしてくれ」

 と、多少穏やかな声で頷いた。





3


 退院したその日、僕はすぐに千花とあの灯台下の公園へと向かった。

 時刻は五時半。ちょうど夕刻時だ。カナラと再会したときと同じように、金色の輪っかが海の向こう側へと落ち始めている。

 この時間になってしまったのは、別に雰囲気を出そうとか、再会時のシチュエーションに合せたとか、そんなあざとい真似をしたわけではなく、いろいろと警察や学校との事務処理があって遅くなってしまったからだ。

 別に明日でも良かったのだけれど、ただじっと家で待っていることに我慢ができなかった。カナラのことが気になってどうしようもなかったから。

 二人で海沿いを進み、白い巨塔の付近へと近づいていくと、遠目にも、真黒なスカートをはためかせているカナラの姿を目にすることが出来た。不用心にも、幻覚で姿を隠す気はまったくないらしい。

 近づく僕たちを見て、カナラはにっこりと笑った。懐かしい、向日葵のような穏やかな笑みだった。

「久しぶり、二人とも」

 憑き物のとれたような元気な声。真理の記憶の中で目にしていた彼女とは大違いだ。まるでこの三年間の歳月なんてなかったかのような気さえしてくる。

「お久しぶりです。カナラさん」

 千花が小さく微笑み彼女の目を見た。複雑な思いがあるのだろう。いつものようにどこか控えめな声だった。

 カナラは僕たちの姿を軽く眺めると、

「傷の具合はもういいの?」

「うん。激しい運動は禁止されているけれど、日常生活を送る分には問題ない。まあ、それでもちょっと変な態勢をとると痛みが走るけどね」

 僕は肩と腕、腹部に巻き付いている包帯を見せた。

 小首を傾け、申し訳なさそうにこちらを見るカナラ。僕は思い出したように言葉を付け加えた。

「そういえば、真理から聞いたよ。彼のお父さんを助けに行くんだって?」

「うん。あいつにはだいぶ助けられたから。結局私にできることは、いつだってこの力を使うことしかない。だからせめてもの恩返しにと思って」

「お父さんを助けたあとはどうする気なんですか」

 千花が丁寧な口調で聞いた。

「正直に言って、何も考えてないんだ。私にとっての人生は、逃げることだけだった。どうやって生きようか。どうやって隠れようか。どうやって命をつなぎ留めようか。それしか考えてこなかった。私の体を支配していた一業はもういないけれど、結果的には何も変わらない。私には目的も望みも何もないのだから」

「三年前ならともかく、今の君の力なら、十分に真壁教授の信者たちの目をごまかせられるはずだ。何でもできる。やろうと思えば何だって。君は狭い世界の中でしか生きてこなかった。だからこれから色々と知っていけばいいさ。真理だってついているんだから」

 僕の言葉を聞いたカナラは僅かに複雑そうな目でこちらを見返した。その視線にどんな思いが籠っていたのかはわからない。どんな意味があったのかはわからない。

 しばらくして、彼女は踏ん切りがついたように穏やかな表情を浮かべた。

「あなたたちはどうするの? 一業や真壁教授はもういないけれど、それでも今回の出来事は消すことの出来ない大きなトラウマになったはず」

「トラウマなんて今さらだよ。むしろすっきりしてる。何故君が逃げていたのか。何故千花が僕のことを知っていたのか。何故、僕に“蟲喰い”なんて現象を起こすことができたのか。色々と悩んでいたことが明らかになって、つっかえていたものがとれた気がする。この力との付き合いだって、今に始まったことじゃない。何とか折り合いをつけてやっていくさ」

「私も穿くんと同じ気持ちだよ。理由がわからないから怖かった。得体がしれないから怖かった。でも今なら、全部知ってる。向き合うことが出来る。……あなたの分身が頭の中にいるしね」

 それを聞いたカナラは酷く申し訳なさそうに目を伏せた。

 風に流されて、前髪が大きく上がる。

「ごめんなさい。あなたたち二人には本当に酷いことをしたと思う。私は死にたくなかった。そのためにあなたたちを利用した。勝手に自分の記憶を植え付けて、勝手に超能力者として覚醒させた。あなたたちには心底恨まれてもしかたがないと思っている。私のせいで人生が台無しになった」

 僅かに目元を潤ませながら、

「もし望むのなら、真理のお父さんを助けた後、何でも償いを……――」

「いいよカナラ。そんなことは」

 彼女の本気の涙を見て、僕は若干焦りながら答えた。

「真理と四業の記憶を見たからわかる。あれは事故だった。君はまだ力をコントロールできてはいかなかったし、そうしなければ助からなかった。仕方がなかったんだ。君はこの町に来てしまった僕を何度も助けようとしてくれた。都会へ送り返そうとしたり、六業との争いのときにだって一業の支配を破って和泉さんの記憶に干渉させた。君がいい人間なのは良く知ってる」

「カナラさん。やったことはやったことだよ。あなたにはその責任があるし、私たちを苦しませたことは事実だから。でも今あなたが何をしたって失った私たちの時間は帰っては来ない。その罪はあなたが今後一生抱えて持っていくしかない問題だと思う。そう思い続けてくれることが、私たちに対する一番の罪滅ぼしなんじゃないかな」

 多少きつめの口調ではあったものの、千花の声には優しさが籠っていた。そう叱責することで彼女が歩いて行けるように。前に進めるように。

 僕たちの台詞を聞いたカナラは、一瞬息を詰まらせたあと、申し訳なさそうに再度謝った。

「本当にごめんなさい。本当に……」

 夕日が薄くなり、周囲の明るさが遠ざかっていく。

 その光が完全になくなるまでカナラは頭を下げ続けた。




4


 千花と別れ、家の近くまで戻ったところで、端末に着信があった。画面を確認すると、“修玄”という文字が表示されている。

 ――修玄さん? 何のようだ?

 真壁教授の信者に関する報告だろうか。不安を感じつつも、僕はそれを耳に当てた。

「やあ、穿くん。元気にしてるかい?」

 穏やかな人当たりのいい声。どうやら悪い話ではないらしい。僕は一息つき、端末を持ち直した。車の邪魔にならないように道の端へ寄る。

「こんばんは修玄さん。どうしたんですか」

「ちょっと、君に伝えないといけないことがあってね。今から会えないかい?」

「別に構いませんけど、電話じゃ駄目なんですか」

「大事な話なんだ。電話じゃ伝えきれない」

 僕は多少用心しつつ、

「わかりました。じゃあお寺に向かえばいいですか。少し時間はかかると思いますけど」

「いや、その必要はないよ。実は、もう近くまで来てるんだ」

 背後からクラクションが鳴る。振り返ると、一台の車の中で修玄が手を振ってた。



 既に外は真っ暗である。雨こそ降ってはいないが、天気はあまり良いとは言えず、月も雲の向こう側へと身を潜めていた。その暗闇の中を見慣れた街並みが通り過ぎていく。

「それで、どこに向かっているんですか」

 窓辺に頬杖を突きながら僕が聞くと、修玄は困ったようにえくぼを見せた。

「心配しなくても別に誘拐したりなんかしないよ。それほど遠くにいくわけじゃない。すぐに着く。この先に大きな企業病院があるでしょ。そこに向かっているんだ」

「企業病院? 何のためにそこへ?」

「君に会って欲しい人がいるんだよ」

 どこか遠慮がちに修玄は言った。

 僕は修玄のことを完全に信用したわけではない。何か思惑があって、真壁教授たちと敵対していたという可能性も考えられる。

 千花を呼ばず僕だけに声をかけたのは、記憶を読まれる危険を考えてのことだろうか。疑惑は浮かんだが、もうすでに車に乗ってしまった以上、今さら降りることはできない。

 僕の家も名前も家族構成も、彼は全てを知っている。ここで逃げたところで意味はない。だったら敢えて相手の思惑に乗ってみるというのも一つの手だ。そうすれば少なくとも目的だけは把握することができる。

 もちろん修玄のことを信じたいという気持ちはある。彼はある意味命の恩人だし、彼がいなければ僕たちは真壁教授や“触れない男”たちの正体を知ることなんてできなかった。当然千花を救うこともだ。

 しかし善悪や立場なんて簡単に裏返る。例えそうではないと確信してはいても、用心だけはしておく必要があるのだ。それがこの二か月で僕が学んだ教訓のひとつだった。

 海沿いを曲がり、大きな建物が見えてくる。この近辺で力を持っている大企業の系列病院。完全予約制で多額の診察料がかかるため、学生や老人などが訪れることは少ないが、最先端の設備や機材が整っており、他の病院で手の打ちようがない患者は、必ずここに運び込まれることになっているらしい。

 フェンスに囲まれた駐車場に降り立ち、修玄を見上げる。彼はエスコートするように、手のひらを入口へと向けた。


 こつこつと、階段を上がり上を目指す。一般患者用の棟を抜け、さらに奥にある別の棟へと足を踏み入れた。もう病院の中というより、こちらは企業の研究棟のようだ。

 ……大丈夫だ。いざとなったら“蟲喰い”を使えば。どれだけ固いガラスや壁だろうと、僕は何でも壊せる。

 不気味な雰囲気に恐怖感を感じつつも、それに耐え修玄のあとに続く。いくつか応接室のような場所の横を通過したところで、修玄が足を止めた。

「ここだ。ここで待っている」

 固い表情で僕を見下ろす修玄。その顔を見て、僕はある種の予感を感じた。

 銀色の冷たいノブを掴みゆっくりと回す。扉を押し出しながら中に入ると、二度と顔を見たくないと思っていた人物がそこに座っていた。


「真壁――……教授……!」

 僕は警戒心を露わにその名前を呟いた。

「やあ穿くん。傷は順調に回復しつつあるようだね。よかった」

 真壁教授はまるで仲のいい甥っ子に接するような態度で僕に話しかけた。

「教授、そんな、何で……?」

「まあ、座り給え。細かい話はそれからだ」

 小さなテーブルを挟んだ目の前のソファーを指さし、微笑む真壁教授。敵意はないように見えたが、恐ろしく不気味である。僕は抵抗力を失ったかのように、そこへ腰を引き落とされた。

「どういうことですか。あなたは千花に――……」

「記憶を奪われたか? 見くびらないでくれ。仮にもカナラを相手にしていたんだ。あらゆる対抗策は打ってある」

 真壁教授はワイシャツのボタンを外すと、そこから脈打つ腫瘍をこちらに見せた。

「五業のレプリカだ。彼の能力は現象というよりも、何度も行われた実験と使用された細胞によって生まれた体質に近いものだった。だからこうして複製体を作ることもできた。もちろん性能は大幅に劣化しているがね」

 真壁教授は両の指を膝の前で押し合わせ、

「私はこの町に入る前に自分の記憶をこの腫瘍にコピーさせていた。所謂バックアップというやつかな。私本体の脳の記憶が失われても、この腫瘍を接続することでそのバックアップ時点までの記憶を再現することが可能なんだ」

 何だと、そんな……!

 どっと冷汗が湧き出てくる。最悪の事態だ。修玄は裏切ったのだろうか。脳が思考で覆いつくされ、頭がパニックになりかけた。

「私に君たちとの接触の記憶はないが、町を調べてすぐにわかったよ。逃亡した一業とは別に二組の男女がいるとね。記憶操作の残滓から片方がカナラであることはわかったが、もう一方は全くの未知だった。そこで修玄に連絡して事実を聞いたんだ。――なに、彼を責めることはない。実験体たちが撃破されたときの不在状況、各住民たちの生活背景から君たちの名前と顔はすでに特定していた。あとは事実を知りたかっただけなんだ。実際にこの町で何が起きたのか」

 一体この男は僕をどうする気なのだろうか。今はカナラも千花もいない。もし頭をジャックされれば、抵抗はできない。微かにつながっている精神のパイプから、千花が何かを察知してくれるといいのだが。

 無意識のうちに手を握りしめていたらしい。それを見た真壁教授は軽やかに笑った。

「無意味に暴れてくれるなよ。心配するな。私に君を害する気はない。その気があるのなら、こんな歓談の場などもうけずにとっくに身柄を拘束している」

「じゃあ、何のために僕を呼んだんですか。仲間になれとでも?」

 家族を人質にし、カナラを捕獲する手伝いをさせる。とっさに浮かんだ考えはそんなところだった。

 僕にとってカナラは古い友人だ。とても裏切るなんて真似はできない。だが、父さんや姉の御奈。やっと意識を取り戻しつつある母の身が危険にさらされるとなれば、迷わざる負えない。

 血を呑む思いで睨みつけていると、真壁教授は指をほどき、目の前のカップを一口すすった。

「やはりお茶は紅茶に限るな。日本茶や中国茶は香りと味に花がない」

 真壁教授はもったいぶる様にカップをテーブルに置き、

「私はね。今回の事件を客観的に見て、あろうことか、その黒幕があのあわれな一業だということを知って、考えを改めることにしたんだ。私の作品たちは現象こそ優れたものであったが、それを生かしきる発想力と意志の多様性に欠けた。添え木を当てすぎてしまったんだ。生物の発展はその多用性と広さからのみ生まれるものだ。特定の遺伝子だけでは環境の変化に耐えきれず、あっさりと絶滅してしまう」

「……何が言いたいんですか」

「簡単に言うとだね。カナラや君、蓮見千花。そして六条真理の存在を知って、私は新たな推論を立てた。超能力の拡散と発展には、養殖よりも放牧のほうがいいのではないかとね」

 相変わらず人を人とも思わない言い回しだったが、僕は真壁教授の伝えようとしている言葉の意味を察知することができた。

「それはつまり、僕たちに手は出さないってことですか」

「そう捉えてくれて構わない。私がここへ君を呼んだのはその意思表示のためだ。こうして直接会って説明しなければ、君たちは今後も私やその仲間の影に怯えてびくびくと過ごすことになるだろう。それは、超能力の育成という意味でよいものだとは考えにくい。極端な添え木を押し当てているようなものだ。だから私は、今後一切君たちに関わらないことにした。遠回しに観察こそすれ、手を出すことはない。もちろん、家族や友人にもだ」

 本気で言っているのだろうか。にわかには真壁教授の言葉が信じられなかった。

「もし観察されていることに気がついたら、千花やカナラはきっとあなたたちを探しに出ます。それでも手は出さないんですか」

「極限まで追い詰められない限りはね。君たちが記憶を消した当時の私も話したと思うが、私の目的は純粋に人類の進化なんだ。種としての死へと傾いていく認識をクリアな状態に戻したい。それだけさ。その目的に弊害がないのであれば、決して干渉はしない。……君ならばわかってくれるだろう? 穿くん」

 何故か真壁教授は妙に僕を信頼しているようだった。

 家族も、家も、名前も、全てがばれている。この状態で彼から逃げ切ることは不可能だろう。僕はどことなく敗北感を抱きつつも、しかたがなくその提案を受け入れるしかなかった。

「……もし、僕の家族や千花たちに何かあれば、覚悟しておいて下さい。今度は間違いなく、記憶を消すだけじゃ済みませんよ」

「それは了承ととらえてもいいのかな。よかった。では、契約成立の握手でもしようか」

 身を前に乗り出し、手を差し出す真壁教授。だが僕はそれを無視し立ち上がり、無言で背を向けた。まっすぐに振り返らず歩いても、教授は何も言わない。ただこの状況を楽しんでいるような吐息の音だけが、扉を閉める直前、微かに僕の耳に届いた。

「穿くん。すまない。腫瘍を寄生させられて、どうしようも――」

「もういいです。それより早く車のところに行きましょう。こんな場所、さっさと離れたい」

「あ、ああ。わかった。わかったよ」

 酷く申し訳なさそうな声で頷き、先に歩き出す修玄。僕は何とも言えない気持ちでその後に続いた。



 自宅の玄関に入り深いため息を漏らす。

 靴を脱ぎ立ち上がり真横の鏡を見ると、そこに一瞬一業の顔が映った。

「えっ……!?」

 驚いて後ろに跳び下がり、もう一度鏡を見ると、いつも通りの自分の顔が見えた。少しやつれたどこにでも居そうな少年の顔だ。

どうやら錯覚だったらしい。真壁教授と再会したことで不安感が高まっていたのかもしれない。

 僕は頭を軽く振り一業の幻影を振り払うと、父の待つリヴィングへと足を運んだ。

 扉の前に立つと何やら賑やかな声が聞こえた。お客でも来ているのだろうか。実に珍しいことだが。

 扉を開け顔を覗かせると同時に、姉の御奈の笑い声が部屋に響いた。また遊びに来たらしい。何が面白かったのかは知らないが、何年も見ていない綺麗な表情で笑っている。その向かいでは父が静かにお茶をすすっていた。僕はあの父がギャクを言ったのか? と衝撃を受けたものの、その隣にいる人物を見て思わず目を疑った。母が、ごく自然に席についていたのだ。

「あ、おっかえりー」

 僕の顔を見て軽く頭を動かす御奈。僕は姉に対して反射的に頷きつつ、父の顔を振り返った。僕の視線を感じたのか父は多少照れくさそうに頬を緩めつつ、

「一時的に帰宅の許可がおりてな。家族と一緒に生活したほうが元の調子を取り戻せるかもしれないからって。とりあえずまあ、様子見として今日一日だけなんだけど」

 僕は母を見た。まるで三年間のブランクなどなかったかのように彼女はごく自然にそこにいる。

 何も言えずにいると、御奈がこつりと僕の背を叩いた。

 僕はその手に押されるように声を漏らした。

「や、やあ母さん。おかえり」

 前に会った時から時間はそれほど立ってはいない。まともな反応が返ってくるとは思えない。そんなことわかっているのに、何故か恐怖が湧き上がる。

 僕の顔をまじまじと見つめた母は、少しためらった顔で返事をした。

「あ、あら? ……えーと、ただいま?」

 悩むような、怪訝そうな表情。

 まだ、僕のことを穿だと、息子だとは認識していないのだろう。けれど前と比べて確かにその目は“僕”を見ていた。記憶の中の思いでではなく、成長した今の僕を。

 やりとりを見守っていた父が静かに口を開く。

「やっと俺のことを旦那だと認識できるようになってきたんだ。どれくらいかかるかわからないけど、こうして接していれば、そのうち前たちのこともちゃんと認識できるようになると思う。必ず」

 どこか誇らしげな父の声。

 いろいろな出来事があった二か月間だけれど、母の病状がよくなったという面で見れば、心底よかったと思う。

 父の言葉を聞いて、僕は本当にそうあって欲しいと心の底から願った。





 少しだけ風が涼しくなった。少し前まではこうして何もせずに立っているだけで汗がだらだらと溢れ出したものだが、今では逆に涼しさすら感じられるほどである。

 手すり越し、真下に広がる中庭では、いつもと同じように多くの生徒たちが移動しまたふざけ合っている。このひと夏で何かラブロマンスでもあったのか、心なしかカップルが増えているような気がした。

 たった二か月。それだけの日数でしかなかったのに、まるで一年間以上この町にいたような気分だ。こうして平和な校舎の風景を眺めていると、微かに懐かしさすら覚える。

 僕がこの町に来た理由はカナラ、いや一業による誘導だった。彼が真壁教授を騙すために用意した撒き餌。それが僕だった。

 一業の計画は破綻し、真壁教授からも狙われなくなった今、もうこの町に滞在し続ける理由なんて存在しないけれど、僕も父も不思議と引っ越しをする気にはなれなかった。母の病気を考えてのこともあるけれど、それよりもきっと気に入ってしまったのだろう。この穏やかな空気と、ここで出会った友人たちのことを。

 背後のプレハブの扉が開き、千花が屋上に出た。強めの風を気にしてか、前髪を手で押さえている。扉の隙間から緑也や日比野さんたちの楽しそうな笑い声が聞こえた。

「なに一人で黄昏たそがれてるの? かっこつけちゃって」

 扉を閉めながらくすくすと笑う千花。僕は少し苦笑いを浮かべながら首を中庭の方へと戻した。

「別にかっこつけてなんかいないよ。ただ、少し外の空気を吸いたくなっただけだから」

「そういうのをかっこつけてるって言うと思うんだけどなぁ」

 横に並び、手すりの上に腕を乗せる。そのままぼうっと外の風景を見下ろす千花の横顔を眺め、僕はごく自然な調子を取り繕って聞いた。

「僕は、このまましばらくの間明社町に住む予定だけど、千花はどうするの?」

「私? そうだなぁ。どうしよっかなぁ。……もう、隠れる必要も、逃げる必要もないんだもんね」

 力の抜けた声で千花はそう答えた。

「いろんな場所、回ってみたいかな。今度はゆっくり観光しながら」

「じゃあ旅に出るの?」

 そう聞いた僕の表情がきっと不安げだったのだろう。千花は僅かに頬をにやつかせながら、

「いつかね。ちゃんと自分で働いて、お金を稼げるようになってから。今はゆっくりしたい。やっと静かに暮らせるようになったんだもん。しばらくは平和な生活を満喫しようと思う。だから私も、あと何年かはこの町にいるつもりかな」

「ふーん。そっか」

 僕は何食わぬ調子で頷いた。

 そのまま黙っていると、千花も何も言わず穏やかな時間だけが流れた。時たま聞こえる桂場や日比野さんの大きな声が今が平和であることをよく実感させてくれる。

 ……やっぱり言わないと駄目だよな。

 僕はゆっくりと息を吐いて、千花に向き直った。

「千花、実は君に言わないといけないことがあるんだ」

「え?」

 どこか恥ずかしそうに下を向く千花。僕は気にせずこの前の、修玄と真壁教授のことを話し始めた。

 話が予期していたものとは違うと気が付き、千花は落胆したようだったが、“真壁教授”の名を耳にした途端、一瞬にして表情が変わった。

 じっと僕の話を聞き全てを聞き終えると、神妙な表情でため息を吐いた。

「――……そう。じゃあの人全然元気なんだね。あんなに頑張ってやつけたって思ったのに」

「そんな簡単にどうにかできる人なら、一業だってとっくに彼を無力化していたさ。しようがないよ。相手が上手だったってことで」

「居場所はわかっているんでしょ。こっそり近づいてもう一度記憶を消せば……」

「それは、止めたほうがいいと思よ。あの人が止めてくれているから、彼の信者や超能力に興味を持っている人たちが僕たちを狙うことがなくなっているんだ。ある意味、今の真壁教授は防波堤みたいな存在になってしまっている。下手に手を出してそれを崩すくらいなら、何もしないほうがいい。少なくともあの人は今後一切僕たちに手は出さないって言ってるしね」

「穿くんはそれを信じるの?」

「僕だって完全に信用したわけじゃないけど、あの人が圧倒的に優位な立場にいることは事実なんだ。今はもうカナラの力で町に閉じ込めているわけでもないし、もう謎の少年少女でもない。僕は家族を簡単に人質にされてしまう。言う通りにするしかないさ」

「うーん。何かすっきりしない感じだね。まあ本当に不干渉だっていうのなら、ありがたいとは思うけど……」

 千花は困ったように自身の腕の上に顎を乗せた。腰がぐっとプレハブのほうに突き出される。

 僕は四業につけられた肩の傷を掻きながら、

「真壁教授は――あの人の目的は、超能力者とその発展によって人類の昇華を試みること。あの人が作り出した実験体たちはみな凄い力をもってはいたけれど、肉体的にはメンテナンスが必要な不完全なものだった。カナラや僕、それに君や真理を見て、“放置”するほうがその目的に近づけると判断したんだろうね」

「でもあの人が今後も何もしないとは思えないよ。平気で人を誘拐して人体実験に使うような人なのに……」

「修玄さんから僕や真理の事例を聞いて、もしかしたらカナラがいなくとも他者の超能力を開花させられる方法を思いついたのかもしれない。今度は肉体を弄ることなく。――実際のところどうなのかはわからないけど」

「本当に、そんなことが人類の浄化になるのかなぁ」

 腕に押し付けた唇を歪ませながら物思い気に千花が呟いた。

「たとえみんなが超能力を手に入れたって、結局それを使うのは今と同じ人間なのに。確かに何かしらの認識は変わると思うけど。私にはとてもそれが意味のあることだとは思えない」

「……死へ向かう意識の偏りをこれからの成長へと変換する。そういう理由だっていってたけど。そんなのは実のところただの言い訳かもしれないね。あの人は純粋に超能力に魅せられてしまったのかもしれない。かつて初めてそれを目にした瞬間から。自分の人生を、表の世界で生きられなかった自分自身を浄化したかったんだ」

 僕の台詞を聞いた千花はふわっと顔を上げた。

「自分を救おうとしなければ、救われるわけがないよ。自分と向き合ってそれを認めて、前に進むことこそが、その呪いを浄化できる唯一の形なのに」

 かつての経験を思い出しているのだろうか。千花の言葉は妙に僕の心に響いた。

 ふと上を見上げると、珍しくまだ月が見えていた。僕の好きな半透明の神秘さを感じさせる朝の月だ。僕にとっての――始まりの象徴。

「そろそろ中に入ろうか。千花」

「うん。そうだね」

 前髪を耳に掛けなおし、軽く微笑む彼女。

 古くがたつく扉を丁寧に開け、再び仲間たちとの談笑の中へと、僕らは戻っていった。

 



6


 鳥が一斉に羽ばたいた音で、ぼくは目を覚ました。

 せっかくのまどろみを邪魔されたことに若干の不愉快さを感じつつも、すぐにその感情を鎮火させる。

 何故ならば目の前に、七色の光が広がっていたからだ。夜から朝へと変わる間際の太陽の光が、海面に反射して様々な乱反射を起こし、光のパレードのように踊っている。

 ぼくは立ち上がり、手に付いた砂をほろった。

 人目につかないからとこの場所を選んで休んでいたが、意外な得をすることができた。

「……凄いな」

 無意識のうちに声が漏れる。

 飛んでいく鳥も、揺れる波も、頬を撫でる風も、昔は何一つ感じなかったはずなのに全てが美しく感じられた。全てが芸術品のようにぎりぎりのバランスでそこに存在していると認識できた。

「自由に動かせなくなって、初めてその価値がわかる、か」

 昔小さな部屋の中で読んだ、歩けなくなってしまった患者の手記の一節を思い出した。抱く感情と失った“部位”に差はあれど、その言葉の意味はしみじみと理解できる。

「……あと三か月か」

 残された時間を数え、彼誰時かはたれときの世界を目に焼き付ける。

 人形のように暮らしていた時も、自由気ままに生きていた時も感じられなかった妙な充足感がそこにはあった。

 まったく不思議なことに、全てを失い終わりが近づきつつあるというのに、ぼくは今、楽しくてしかたがないらしい。

「さて、次はどこに行こうか」

 無表情で呟いた言葉。そこには抑揚も感情もない。けれど、砂を踏みしめる足跡にだけは強い力が籠っていた。







読了ありがとうございました。


プロットを練った当初の結末と近い形で終わることはできましたが、如何せん作者の力不足のため、ストーリー展開に説明不足や違和感があったかもしれません。

続編案や、一業を主役にして各実験体たちが研究所に運ばれてからどう過ごしていたかなど、真壁教授サイドの内側のプロットなども制作してはいたのですが、色々と考えた結果、この「浄我の形」はここで完結とすることに致しました。今回この小説で学んだ反省点などは次に活かしたいと思います。


今後誤字脱字や表現の訂正、僕個人が納得のいかなかった部位の訂正をしていきますので、「この展開が気に食わない」、「ここ意味わからん!」など、気になった点があればお気軽にコメント下さい。

以上、ここまでお付き合いして頂き、ありがとうございます。

ぜひ機会があれば、また僕の小説をよろしくお願い致します。


                                           砂上巳水

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