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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
3章 Crossing 重なる世界!

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第95話 攻略開始

 そしてそれからボクたちは発泡スチロールの城塞を完成させるために数日をかけた。


 図面自体は速攻で店員さんが仕上げてくれたのだけど、ただ発泡スチロールだけで終わらせるのではつまらない。そこから容量をオーバーしない範囲でさらなる拡張を続けていたのだ。


「【セントリーライトニングボルト】を塀に設置したぞ!」

「ちゃんと床だけは【エアジャンプ】対応にしておこうか」

「食堂作ったよー!!」

「すごいこと考えた。自爆機能をつけよう」

「『不壊』だから自爆できないんだよなあ」

「ギロチン作ったぜ!」

「図書館も作ったからみんな読んでね」

「【ロボットマスターズ】用のVRルームできたー」


----

>いらねえ……


>糞施設多すぎて笑う


>50層で一生暮らす気かな?

----


 半分以上は意味のわからないものが取り付けられて容量を圧迫してしまっているが、【アイテムマスター】を取得したおっさんがなんとか丸ごとしまい込む。


「さて、準備は整った。おけまる水産ってやつだね!」


 というわけでおっさんを引き連れて先行してダンジョンに潜り込む。今回は未踏破階層以外はお呼びではない。速攻で50層に到達して砦を設置するためだけに用意された最強のPTなのだ!


 チェックポイントとして用意されている31層からのスタートだが、50層までは非常に長い道のりとなる。そんなのバカ正直に潜ってられない!ボクとしてはそれでもいいのだけど、参加者にも時間というものがあるからね。


「【テレポート】で壁抜けできることはわかってますからね。どんどん行きますよ!」


 最短距離を【テレポート】で瞬時に抜けていくボクとおっさんと()()1()()。この踏破方法はあかりちゃんが配信で行っていたものとほぼ同じ。【ホームリターン】と【テレポート】の違いはあるけれど。


 ただこの方法を使っていたあかりちゃんは【テレポート】先にいたモンスターに出会い頭にぼこぼこにされてしまっていた。運が良ければそんなこともなく進めるし、【パスファインダー】ならそのリスクも減らせるけれど、そんなリスクを皆無にする最強の助っ人が今日は仲間だ。


「久々に使わせてもらうぜェ?【『クロノス』】!」


 モンスターに遭遇したら速攻で時間を止めてもらった上で、担いでもらって余裕の逃走!【黄金の才(ユニークスキル)】の権能は【A-YS】の中でも健在だ。


「あの日以降も時間が止まったことがありませんでしたけど、もしかして自重してるんですか?」


「突然止まったら迷惑じゃねえか。仕方ねーだろ」


----

>優しすぎる……


>下手なプレイヤーより遥かにまともな課金勢


>これ課金勢が優勝しても良くない?


>終焉暗黒混沌帝王龍さんのファンになります


>すごい名前だな

----


 超強力なはずなのにある意味では【『アイテール』】に匹敵するレベルの不遇スキルですね。本人の性格上の問題なのだけど。


 今まで幾度となく苦戦をしてきた数々の難関を完全にスキップしていき、ついに49層に存在する下り階段——つまり、50層への道が見えた!


「降りた瞬間に取り出してくださいよっ?」


「わかってるさ!1秒でも隙ができたらモンスターの群れにパルメザンチーズ状に分解されてしまう!」


 そんな謎のジョークを聞き流しながら50層に駆け下りると、


 四方八方から矢やら剣やら魔法やらが一緒くたになって襲ってくる!!


「きょわわー!!!!!」


 と叫んでいるうちにボクたちを取り囲むように巨大な城壁が地面から飛び出して、その攻撃を受け止めてくれた。


「なんですかあれっ!?パルメザンチーズ状になるってガチじゃないですか!」


「そりゃガチだよ。俺は生まれてから一度も嘘をついたことがないよ。——それはともかく」



卍荒罹崇卍 >準備できました!!!


 ボクがチャットメッセージを送ると同時に、一斉に何十人ものプレイヤーが50層に出現する。……実は配信を見ていた人たちがフライングしてチャットより先に現れてしまっていたのだけどご愛嬌。


「開門ー!」


 プレイヤーの掛け声と共にモンスターの侵攻を阻んでいた門が開かれ、雪崩のように敵が押し寄せてくる!


 そして待っていましたと言わんばかりにゴブ蔵が【ダイダルウェイブ】で派手に押し流す。ただの【ダイダルウェイブ】ではない。これまで見た中でも明らかに最高の威力を持つ、質量の暴力だ。


 重量級のモンスターも含めて全部まとめて押し出してしまった。


「〈闇増幅器(ダークアンプ)〉の威力はバッチリですね!」


「ゴブゴブ!」


「あーしの指令(コマンド)が効いたんだよ?」


 ただし、押し流されていない奴らもいる。それはあまりにも圧倒的な体躯を誇るゲーム中最強のモンスター。【ダイゴブリン】だ。


 しかし【ダイゴブリン】は押し流されていったモンスターたち以上に悲惨な状況。なぜなら体が突っかえて門に入れないからだ。最強の物理攻撃と鼻息を持つ強力なボスモンスターも、こうなってしまってはなすすべがない。


 事前に新しいフォルダさんによって配られていた最大HPの割合ダメージを与える装備によって無防備なゴブリンたちを次々と屠っていき、そのままプレイヤー軍が門の外へと進軍していく。


 一方で城壁に上がっていた遠距離攻撃組は【空神の加護】を最大限に活用して、押し流されたモンスターに追い打ちをかけていく。大量に配備された【セントリーライトニングボルト】や【アクアスプリンクラー】も合わせて、雨のように弾幕が降り注いだ。


 そんなこんなで初手では比較的優位を取れたが、50層がそんなにチョロいわけがない。最初に反撃を受けたのは遠距離攻撃組。


「【聖雷様】の雲がっ……あんなに!?」


 数え切れないほどの雲が空を飛び交い、稲妻の雨がプレイヤーを襲う。


 そんな絶体絶命の状況に対してめりぃさんが動いた。


「精霊さん!」


 めりぃさんが命じると、ふわふわと浮いていた精霊が【アトラクト】を発動させながら雷から逃げ惑う。【アトラクト】がターゲットの誘導スキルである以上、いくら逃げても雷は追い続けるだろう。


 だが、遠距離攻撃を一手に受け止める盾役(タンク)の花形スキル。それを一番に使いこなすのがめりぃさんというプレイヤーだ。


 精霊はめりぃさんの指示を受けて地上にいるモンスターの群れに一直線に近づいていく。稲妻の雨を引き連れたまま。


「【ナチュラルリリース】!」


 宣言と共に精霊が弾け飛び、範囲魔法へと転化する。これにより、ターゲットを見失った稲妻がモンスターたちを滅ぼし尽くすのは自明の理。


 ゴブ蔵の【ダイダルウェイブ】と数々の遠距離攻撃、そして雷の嵐を受けたモンスターの大群は1匹残らず壊滅した。


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