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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
2章 despair 小数点のその果てを!

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第58話 物質干渉力=火力理論

 ボクが【〈ミュージックハウス〉】を取り出すと、即座にゆうたさんがボクの隣に瞬間移動し、めりぃさんに斬りかかる。通常攻撃とはいえ本来なら間違いなく痛手となる一撃だろう。


 しかし【誘いのレクイエム】の効果によりHPは減少せず、ラーメンで回復しようと考えていためりぃさんの箸が止まる。


 次の瞬間、明日香さんが【ホームリターン】でゆうたさんの背後に現れるが——その動きは読めている!


 明日香さんの出現地点にボクの放った【アンプルアロー】が突き刺さり、小規模な爆発が起きた。


 当然ながらダメージも衝撃も発生しない。爆発を無視して【サイハンド】をゆうたさんに撃ち込む明日香さんだが、ゆうたさんもまたその攻撃を無視してめりぃさんをひたすら剣で叩く。


「ゆうたさん、やめてよー!」


「やめろと言われてやめる奴はいないな」


「えいっ♥えいっ♥」


 そんなシュールな叩き合いが数秒続き、やがて均衡は崩れた。


 ゆうたさんが唐突に吹っ飛ばされたのだ。明日香さんが撃ち込んだ数回分の【サイハンド】による攻撃が今になって発動し、前方に勢いよく吹っ飛ばされる。


 ゆうたさんの目の前にはめりぃさんがいる。めりぃさんもまた同じようにダメージ判定が行われたが、高い物質干渉力を持つ彼女は吹っ飛ばされるまでには至らなかった。そして、吹っ飛ばされたゆうたさんと勢いよく衝突する。


「うっ」


 ダメージ判定はないが、唐突な体当たりにめりぃさんがうめき声を上げる。


 さらに、遅れて判定を受けたゆうたさんに明日香さんも衝突する。


「あんっ♥」


 無傷なのはボクだけだ。


「なにこの光景?」


 別に狙っていたわけではない。【誘いのレクイエム】は例外的な仕様が多すぎて闘いながら動作を予測することが困難なのだ。


 ダメージ判定が生じないから攻撃の危険度もわからないし、いつ適用されるかもわからない。その結果として今回のような派手な巻き込み事故が発生してしまったわけだ。


 どうやら誰もこちらには注意を向けていないようなので、ボクは【〈ミュージックハウス〉】をしまい込み、ぽつりと静かにスキルを宣言する。


「……【フルバーニング】」


 次の瞬間、激しい爆発が起きて明日香さんのHPを全損させる。爆風が砂を巻き上げ、熱が頬をなでる。ゆうたさんは炎耐性装備によってそのダメージを大きく軽減し、めりぃさんは即死こそ免れたものの大ダメージを負った。


急いでラーメンを食べて回復を図るめりぃさんだが、彼女はどちらかといえばサポートが主軸のプレイヤーだ。さすがにボクたちを相手に逆転することはできないだろう。


 配信的にはかなり微妙な流れだけど、一応これでボクたちの勝利——。


「ちょっと待ったー!あたしはまだ諦めないよー!【サモン・ホース】!」


 そう宣言しためりぃさんは馬を召喚し、即座に飛び乗る。そして前脚でゆうたさんに鋭い蹴りを打ち込んできた。


 バックステッポで後方へ下がり、蹴りを回避したゆうたさん。しかし間髪を入れずに馬が走り出して体当たりを仕掛ける。


 その瞬間——自分の目を疑うような現象が生じた。


 本当に一瞬の出来事だった。まるで【テレポート】でも発動したのかと疑うほどの勢いでゆうたさんが吹っ飛ぶ。そのまま【闘技場】の壁に叩きつけられて、ゆうたさんのHPが一撃で全損する。


 ——今思えば、めりぃさんが物質干渉力の勝負で負けたのを見たことがない。同じ【ナイト】であるゆうたさんは【サイハンド】数発でよろめくのにもかかわらず、彼女はどんな破壊力の一撃を受けてもその場に留まり続ける。


 盾役(タンク)だから物質干渉力が高いのではない。めりぃさんが異常なんだ。


 おそらくはすべての装備が物質干渉力に特化するための構成になっている。


 本来ならばそこまでの物質干渉力を追求する必要はない。物質干渉力がいかに高くてもダメージは上がらないのだから。しかし多大な物質干渉力によって跳ね飛ばされ、壁に叩きつけられたときに受けるダメージは、速度が参照される。


 ゆうたさんは攻撃力ではなく、地形ダメージによって瀕死に追いやられたんだ。


 盾役(タンク)(ビルド)のめりぃさんがダメージレースで攻撃役(アタッカー)(ビルド)を圧倒する姿はもはや恐怖でしかない。なんで今までそうやって戦わなかったの!?


「さーて、卍さんも跳ね飛ばしちゃうよ!精霊さんたち、援護して!」


 めりぃさんの声に合わせて周囲をふよふよと飛んでいた精霊たちがめりぃさんに付与(バフ)スキルをかけ、ボクに向かってビームを放ち始める。同時にめりぃさんの馬がボクを目がけて突進し始めた。


 精霊の攻撃はそこらの継続ダメージにも劣る威力でしかないけれど、ちりも積もれば山となる。


 ——けれど、そんなものにかまっている暇はない。めりぃさんを避けなければ!


 突進してくるめりぃさんを【テレポート】で避けて【ブレイズスロアー】を飛ばす。炎弾が空を駆け抜けて、めりぃさんに命中しかけた、そのとき。


「ハヤブサ1号!【テレポート】!」


 めりぃさんがそう叫んだと同時に、ボクの目の前にめりぃさんが出現する。


「【テレポート】まで使えるんですか!?」


 即座に【ホームリターン】で自宅の屋根に戻るが、めりぃさんが馬に指示を出すと、馬が全力の跳躍でこちらに飛び移ろうとする。


 まずい、このままでは物質干渉力だけで圧殺されてしまう……!


テクニックその47 『物質干渉力=火力理論』

物質干渉力とはあくまで相手の剣を弾き飛ばす、体当たりで相手を吹っ飛ばす、というような要素に関わってくる数値であり、これが高くてもダメージが大きくなるわけではありません。

しかしそれによって弾き飛ばされた事によって壁に叩き付けられた場合は速度に応じた地形ダメージを受ける都合上、ダメージが増加するのです。このシステムを利用して、絶大な物質干渉力によって大ダメージを与える事ができます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最近似たような理論にお世話になってるからとても分かるわぁ・・・ (強制移動で打ち上げて落下ダメージで殺す。地形ダメージは防御無視多いし。)
[良い点] 毎度おなじみの後書きテクニック。 [一言] それはそれとしてメリィさんの物理干渉力はラーメンを啜るため説を提唱したい。
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