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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
2章 despair 小数点のその果てを!

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第57話 慣性飛び

【START!!】


 試合開始と同時にボクは即座に家を召喚。開始の号砲が鼓膜を鋭く震わせた。同時に明日香さんも家を召喚した。ここまでは読めている。少なくともこの大会の環境では家を使わない時点で舐めプだ。使い方こそ違うが、ああああさんも当然のように家を絡めた戦術を用いてきた。


 それと同時に明日香さんが【エアジャンプ】を駆使してこちらの屋根に飛び移ろうとしてくる。ゆうたさんはそれを迎撃すべく、宙を飛ぶ明日香さんに槍を投げ込む。槍が風を裂き一直線に突き進むが——突如、進路を変え、めりぃさんの方に向かって吸い込まれるように飛んでいった。


 【アトラクト】は本当に厄介ですね。遠距離攻撃は逸らされてしまいます。特にめりぃさんが使う【アトラクト】はなおさら恐ろしい。


「あはっ♥」


 こちらの屋根まで乗り込んだ明日香さんはゆうたさんをめがけて一直線に駆け抜ける。燃える屋根の影響によって継続ダメージを受けている様子だが、致命傷には至らないだろう。


 【アームズスイッチ】で装備を盾に切り替えたゆうたさんが【ハードアーマー】を張りつつも盾で受け止めようとするが、一瞬で後ろに回り込んだ明日香さんが無防備のゆうたさんを張り手で弾き飛ばす。


 派手に吹っ飛ばされながら家から転落していくゆうたさん。やはり純粋なアバターの操作技術では明日香さんに分があるらしい。


 けれど幸いにもこの至近距離だ、ノータイムで放たれるこの魔法は避けようがない。


「【フルバーニング】!」


 その瞬間、ボクを起点として炎が爆発するかのように燃え広がる。


 ボクのHPと引き換えに明日香さんにも大ダメージを——与えられていなかった。


 確かにダメージ自体は出ているが、想定よりも少ない量。おまけに物質干渉力が足りず、弾き飛ばすことすら叶わなかった。


「《おねえさま変転》——おねえさまのお力を象徴する技ですわ♥」


 ダメージを抑え込む〈魂の言葉(ソウルワード)〉!?


 【帝神の加護】によって強化された【フルバーニング】は【ソウルフレア】をも凌ぐ破壊力を持つはずだ。


 【ナイト】ですら耐性なしで正面から受ければ消し炭になるというのに、ゲージ的には3分の1以上も残されている。


 さすがに明日香さん相手に接近戦でガチれる気がしない。【エアジャンプ】で後方に下がりつつ、牽制の意味を込めて【フラムブレッド】を撃ち込むが、もはやこの程度の攻撃は避けるにも値しないらしい。そのまま一直線にボクに向かって突撃してきて——。


「【ガードジャスト】!」


 【ホームリターン】で復帰したゆうたさんが割り込み、今度こそ盾で受け止める。盾と刃がぶつかり火花が散る。そこから即座に剣で袈裟斬りにし、明日香さんを後退(ノックバック)させた。金属が軋み、腕に重みが走る。


「【シャープウェポン】を重ねがけした一撃はどうだ?」


「なかなかですわね♥さすがに私も1人で2人を相手にすることはできませんわね♥……めりぃさん!」


「準備OK!【アセンション】!」


 後方で控えていためりぃさんのスキル宣言と共に青い精霊が明日香さんの中に溶け込むように消えていく。


その隙を見て、ゆうたさんが【猪突侵】で接近し、横に薙ぎ払うが、ひらりと攻撃を避けて再び後ろに回り込もうとする。


 その動きを読んでいたゆうたさんは薙ぎ払いの勢いのままに身体の軸を回転させ、背後へと回った明日香さんに攻撃を当てた。吹っ飛ばされる明日香さんの先にいるのは——ボク。


「ソウルフレ——あっ!?」


 こちらに飛んできた明日香さんはボクのスキルが発動する直前でふっと視界から消える。


 【ホームリターン】ですね。どんなタイミングからでも仕切り直しができるのは本当に厄介です。自分たちが散々活用していただけに、その実用性がよくわかる。


 一瞬にして拠点に帰還した明日香さんの方を見やる。彼女は突如として全身を青白く発光したかと思うと【アクアスプリンクラー】をすぐ真横に設置した。


 【アクアスプリンクラー】は以前にもおっさんが活用していた水属性の砲台を設置するスキルだ。


「【アセンション】で砲台を設置するつもりですか。地味に厄介ですね」


「どういうスキルなんだ?【シャーマン】は1on1では出張ってくることが少ないのであまり詳しくないのだが」


「プレイヤーに精霊を憑依させるスキルです。憑依した精霊はプレイヤーの持つ詠唱時間10秒以下の同属性スキルを獲得し、自動的に行使できる。精霊自体のINTが低い分威力は低下しますが、手数が増えるのはかなり厄介ですよ」


 精霊が行使するスキルはプレイヤーのスキルと再詠唱時間リキャストタイムを共有するため、ボクのような【メイジ】にとっては逆に足枷になりかねないスキルなのだけれど、明日香さんのような魔法は覚えているけど使わないタイプのプレイヤーへのサポートとしては非常に有用だ。 


 本来なら【シャーマン】自身に憑依させてサブ【メイジ】の魔法を使わせるというのが王道なんだけど、めりぃさんには精霊召喚以外の属性魔法がないので無用の長物。完全に【パーティ】戦に特化させることを想定した取得なのだろう。


 『精霊自体のINTが低い』とは言ったが、めりぃさんは【人馬一体】で精霊のINTを引き上げることができるのだから些細な問題だ。


 ただでさえ的確な動きで翻弄してくる明日香さんが再詠唱時間(リキャストタイム)に関係なしに魔法職業(クラス)級の威力で魔法を飛ばしてくると考えると、控えめに言って最悪である。


 そうこうしているうちに再び明日香さんがこちらの屋根に飛び移ってこようとしている。影がこちらへ跳びかかってくる。


 このままでは先の展開の焼き直し。いや、もっとひどいことになってしまう!


「【猪突侵】!」


 ここまでの決まりきった流れをぶち壊す。跳躍した明日香さんめがけて全力で殴りかかる。


「きゃっ♥」


 さすがにボクが突っ込んでくるとは予想していなかったのか、ボクたち2人は勢いよく正面衝突し……。ボクだけが一方的に弾き返される。物質干渉力の差だ。これもまたボクの戦略のうち。


「〈次元の狭間より世界を駆けろ〉【テレポート】!」


 【テレポート】によって明日香さんの背後に一瞬にして回り込む。


 けれど明日香さんに吹っ飛ばされたボクの勢いは止まらない。彼女から受けた反動によって、()()()()()()()()()()()一気に吹っ飛んでいく。


 【テレポート】によって自身の向きを変え、慣性ごと跳ぶ!


 そしてめりぃさんの家に着地するとともに、〈ホームアロー〉として改造された【〈ミュージックハウス〉】を【ストレージ】から取り出す。


 会場全体に【誘いのレクイエム】が響き渡った。


テクニックその46 『慣性飛び』

吹っ飛ばされている途中で【テレポート】によって自身の向きを変えると慣性の方向もそのまま変化します。

派手に吹っ飛んでいるときに逆にそれを移動手段にできる、なんて素敵なテクニックなのでしょうか。


魂の言葉(ソウルワード)その6 『おねえさま変転』

ダイスをひっくり返すかの如く、ダメージの乱数を変化させる魂の言葉(ソウルワード)です。恐らくボクの《運命変転》が元になっていると思われますが、感情をひっくり返すだけのボクのモノよりも強力な気がします……。

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