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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
11.5章 Draw 神引き・パワカもなんのその!

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第494話 分水嶺

 」さんの鋭い指摘を受けて、ボクは思わず考え込む。


 そもそもボクが『確信』という力を受け入れられないのは、〈魂の言葉(ソウルワード)〉でもないのに簡単にゲームや現実(リアル)の法則を捻じ曲げてくるところだ。


 強い信念があれば【モーションアシスト】のフォローも合わせて、多少の道理は押し込める。《神なる行動(ディバインアクション)》もまたゲームのシステムを無視した現象を押し付けてくるが、ボクとしてはその仕組みに疑問の余地はないと考えている。


 しかし帝王龍さんや猫姫さんにそういった確固たる信念は存在しない。


 不可能を可能にしてやるという意思ではなく「いや、普通にできるでしょ、常識だよ?」という冷静さのままに超常を引き起こしているのだ。


 〈魂の言葉(ソウルワード)〉の仕組みとは完全に相反しており、これまでに積み重ねられた判例とは全く異なる法則……。


「まあ〈ロールプレイング〉の理屈は私も確かにおかしいと思うですけど……実際にできるから仕方ないのです」


 」さんの主張に賛同を示したメグさんも、できるものはできるのだと認めている。


 これはまさに『確信』によってもたらされた力ではないだろうか?


「そもそも〈ロールプレイング〉って最初は〈魂の言葉(ソウルワード)〉でしたからね。いつの間にか当たり前のテクニックになってしまったのですが……。なるほど、確かに似たようなものですね」


 ボクは世界の時間を停止するという常識外れの事象に対して、勝手に線を引いていただけだ。けれど、当たり前だと思ったことを当たり前のように引き起こすことができるというのは、すでに証明済みであり既知の概念だったのだ。


 それを踏まえた上で、じゃあ世界の時間を止めるということまで当たり前だと思い込めるかは別の話ではあるが——。


「逆に猫姫さんのやっていたことは別にそうおかしなことではありませんね。ただ勘違いしてるだけでしょ、あれ」


 世界の時間は止められないが、栽培を料理の一部として定義するくらいなら今のボクにとっては容易いことだ。そのことを理解した瞬間に、世界への視点がかちりと切り替わった気がした。


 この仕組みの事はこれから〈コンフィデンス〉と呼称する事にしよう。


「まあそんなことはどうでもいいのです。猫姫さんとあきなさんはどうなったのです?またすぐにログインしてくるのです?」


 メグさんが話を軌道修正する。そうでしたね、すぐに考察に思考が偏るのがボクの悪い癖だ。


「うん、かいせんをかいふくさせたからすぐにもどってくると思うよー」


 」さんがそう言うや否や、猫姫さんがログインしてきた。


「急に回線が切れてびっくりしましたの、みなさんは大丈夫ですの?」


「まぁ、大丈夫ですよ。ある意味でこのゲームにおける最強の存在を目の当たりにしてしまいましたが……」


 」さんが本気を出したらどんなプレイヤーも勝ち目はないだろう。うちの灑智も圧倒的なエネルギーで『VRステーション2』を破壊していたが、無動作で自由に他者をログアウトさせられるこの力は他の追随を許さない。ちょっと強いだけの全能使いなんて、彼女の前ではまさに有象無象(フォッダー)だろう。


「あら、あきなさんはいらっしゃいませんのね?」


「猫姫さんと同じタイミングで回線が切れたのです。……けど、戻ってこなくてもおかしくないのです」


 確かにメグさんの言うとおりですね。猫姫さんは今ものほほんとしているが、あきなさんは自身へ向けられた殺意を自覚していた。普通ならすぐにログインしてこようとは思わないだろう。


 しかしそんな予想とは裏腹に、次の瞬間にはあきなさんがログインしてきた。


「……」


 ボクは『異形』の表情を読み取ることができないが、それでも明らかにしょんぼりと落ち込んでいる様子がうかがえる。触手が地面に垂れ下がっており、感情表現(エモート)でもないのに、どんよりとした空気がまわりに沈んでいる。


 下手な慰めは意味をなさないだろう。


「それにしても先程の相手は強敵でしたの。あんな【黄金の才(ユニークスキル)】の持ち主がいたとは……」


「いえ、あれは【黄金の才(ユニークスキル)】ではないですよ。ただの自称です」


「……なんでそんなことをするんですの?」


「〈魂の言葉(ソウルワード)〉の一環ですね。この言葉は【黄金の才(ユニークスキル)】と同じくらい強いぞ、むしろ【黄金の才(ユニークスキル)】なんだぞ、と己を錯覚させることによって出力を増加させているのでしょう」


 【黄金の才(ユニークスキル)】の持ち主のみが抱える、絶大なる優位性による自信……それを自己への催眠によって後付けしているのだ。


「……卍さんならわかるのかな?あの人は——どうしてあたしを——」


 あきなさんがボクに向けて疑問を投げかけた。


 〈ロールプレイング〉を行使して彼の人となりを把握したボクならばその質問に答えられる。


「……まあ、月並みな話ですよ。つい最近、世間を騒がせていたあなたのお父さん——いえ、それも正しくありませんね。あれは『異形』に対する純粋な殺意でしょう」


 言葉を濁すことも考えたが、彼女自身も察していたことだ。あえて正直に話すことにした。


「そっか……」


 ボクは【フレンドリスト】を確認して——明日香さんはログインしていない、か。


 それでも彼女に連絡を取る必要がある。これは『異形』の今後を左右する分水嶺だ。

テクニックその145『コンフィデンス』

魂の言葉(ソウルワード)〉とは似て非なる法則です。心の底から願うことによって特異な事象を引き起こすのではなく「いや、当たり前だよね?」と思っていることによって実際に世界を捻じ曲げる、れっきとした物理法則です。その性質上、できるようになろうと思って実現できる事ではなく、特殊な教育環境や精神状態を持つプレイヤーが無意識のうちに『確信』を抱くことによってのみ成立します。

魂の言葉(ソウルワード)〉とは似て非なるものとは言いましたが、〈魂の言葉(ソウルワード)〉で引き起こされる事象があまりにも当たり前のものとして世間に定着すると、この現象によって単なるテクニックの1つに落とし込まれる……のかな?


魂の言葉(ソウルワード)その13 『アザトース』

黄金の才(ユニークスキル)】の持ち主のみが得られる絶対的自信を自身に刻み込む〈魂の言葉(ソウルワード)〉です。《アザトース》の場合は全能系の出力を大幅に増加させることができるようです。また、それに付随して己の〈コンフィデンス〉への信頼を底上げしているようですが、こちらについては恩恵を得られているのかは不明ですね。なにせ実際に人が死んだ状況は観測されていませんので。

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