表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
2章 despair 小数点のその果てを!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/506

第34話 世界の果て

 寿美礼さんの【鑑定屋】を後にし、今度こそ本当に本当の出発だ。【ガベジー荒野】をひたすらに北上する。


 道中では機械で作られた犬のようなモンスターやキャタピラで走行するドラゴンが出てきたけれど、所詮は街エリアに登場するお邪魔キャラ程度の存在だ。鋼鉄の牙を剥くが、実のところ紙同然に脆い。


 搭載されているマシンガンがこちらをちまちまと削ってくるのが地味に厄介だが、下手をするとソファーに座っているだけで相殺できてしまう程度のダメージだ。


 ゲーム世界の銃は、現実と違って所有者のステータスによって威力が変わることが多い。だから一般人でも高ダメージを叩き出せる現実(リアル)()()よりも汎用性に欠ける節がある。


 逆に言えばステータスの高いプレイヤーが使えば強いのかもしれないが、今のところは敵が使ってくるものしか見た覚えがない。実装されていないのだろうか。


 こうしてモンスターを倒しながら荒野を抜け、ついにボクたちは【世界の果て】へと到達する。


 見下ろすだけで背筋が寒くなるような断崖絶壁がそこにあった。


 ここから先は作られていません、と身も蓋もなくプレイヤーに制限を突きつけるオープンワールドの境界線。


 向かい側にもかろうじて同じような絶壁が見えるのだけれど、基本的には世界がただの箱庭でないことを表現しているだけの背景だろう。


----

>オープンワールドなのにこういう都合の良い地形があると萎えるよな


>↑そこでディカプルガイアプロジェクトという神ゲーがあってだな


>確かに観光スポットと言われてるだけあって他にもプレイヤーが来てるな。こんなに何も無さそうな場所なのに

----


 やはり人気の観光スポットなのか、それとも効率のいい狩場でもあるのか。視線を巡らせると、焚き火を囲んで雑談するパーティや、断崖に向けて延々と感情表現(エモート)を連打しているソロ勢など、十数名のプレイヤーが思い思いに時間を潰していた。


「今は何もありませんが、アップデートで何かが追加されたりするかもしれませんね。さて、それで【祠】はどこにあるんでしょう?」


「ぱっと見では見当たりませんね……♥」


 お便り自体がガセだということはないはずだ。他のお便りを確認したが、同じような情報提供は他にもいくつかあったので、【祠】があるということは間違いないと思う。


 ちょっとそこらの人に聞いてみようかな。そう思っていると、断崖絶壁の近くに立っていたプレイヤーが面白いことを始めた。


 そのプレイヤーは躊躇なく身をかがめ、崖へ跳躍したのだ。


 まさか自殺?なんて思う間もなく直後の行動によってその意図を理解する。


 彼は1枚の板を取り出し、足裏でバシバシと叩きつける。そう、


「【エアジャンプ】!【エアジャンプ】!【エアジャンプ】!【エアジャンプ】!」


 断崖絶壁の向こう側にたどり着こうとしているのだ。


「殺キリト戮くん頑張ってー!」


 付き添いの女性プレイヤーが応援の声を上げるたび、彼の影はひと呼吸ぶんだけ遠くへ伸びていく。


 しかし、わずかに距離が伸びたところで焼け石に水だ。理論上は無限跳躍が可能と噂される<ロードウィング>だが、実際にはMPという最大の問題が立ちはだかる。


 ジャンプを繰り返しながらも途中でポーションでMPを回復していたようだが、やはり限界は訪れる。


 【エアジャンプ】の連鎖は終わり、キリトさんは真っ逆さまに底の見えない断崖絶壁の底へ飲み込まれようとしていく。


「殺キリト戮くーんッ!!!!【コールグループ】!」


 それを見ていた推定アスナさんが瞬時に召喚スキルを発動させる。するとキリトさんはすぐにこちらに戻ってきた。デスペナルティに陥らないための保険が用意してあったようですね。


 人目も憚らず抱き合う2人を見てわずかにためらいはしたものの、思い切って話しかけてみることにした。


「すいません。もしかして、向こう側を目指していたんですか?」


「ああ、そうだ。あんなご大層に大地が見えているんだ。行かないほうがおかしいだろ?」


「MP的にはちょっと無理じゃないかなー、と思ってたけどね?」


 さすがですね。このような偉大なる冒険者がいらっしゃるとは!ヒロインも含めてセットでロールプレイしてるだけはありますね。そこらの量産ネームとは格が違いますよ!


「なるほど。そしておねえさまもこれから同じことをする必要があるみたいですわ♥ほら、見てくださいませ」


 ボクたちの会話には混ざらず、霧の帳しか映らない断崖の向こうを凝視する明日香さんだったが、話は聞いていたらしい。けれど、同じことをする必要があるってどういうことだろう?確かに興味深い検証だけど……。


 向こう側を見続ける明日香さんに倣って、同じように断崖絶壁の先を見てみたけれど……。特に目新しいものはないようだけど。


「あ、ごめんなさい、スキルを使っていたんでした♥【ギフトパス】【対象:クレヤボヤンス】」


「あっ、視界拡張系のスキルですね。ありがとうございます」


 明日香さんから【サイキック】のスキルをお借りし、もう一度向こう側を見てみることにした。


 【クレヤボヤンス】は特定の座標を俯瞰視点で見ることができるスキルだ。これを使えば遠くの様子も確認することができるだろう。


 そしてスキルを使って向こうの大地を見てみると、すぐにわかった。霧の向こうで灰色の屋根がちらりと揺らめく。


「あー、【祠】。あっち側にあるんですね」


「そうですわね、あんな露骨な建物が未実装の背景だとは思えません♥」


 気づかなかったら延々とさまよっているところでしたよ。


「向こうに行くのが目的ってことなら、協力しないか?」


「ありがたいです。一蓮托生でこの断崖絶壁を突破しましょう!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼ 他のオススメ作品 ▼
【VR】ブレイブファンタジー【神ゲー確実】
掲示板形式で進む謎のVRMMOモノ。
結月ゆかりは画面を見つめる
VR全盛時代に古きを貫こうとする謎の二次創作モノ。
サキュバスさんがおうちにやってきた
平和な謎の日常コメディモノ。
これが僕らのMMO!
現実のMMOを主題とした謎のエッセイ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ