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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
4章 survival 超次元の生存競争!

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第135話 強制再現

 そして次の日。


「きゅーてくちゃんねるにようこそ!本日はAWP-002さんとの戦いに向けて、戦術の補強を重点的に頑張っていきたいと思います!」


----

>戦術の補強?


>現地の調査と安定パターンの構築はこの前やったじゃん


>レベルの努力は裏切らないぞ


>レベル上げ回はよ

----


「なんでそんなにみなさんレベル上げを見たいんですか……望遠鏡を覗いて狙撃するだけですし配信としては最悪の部類でしょうに。今回の戦術補強、それは——【マクロ】です!」


 【マクロ】には無限の可能性がある。事前に想定しておいた最適な行動パターンを即座に実行することもできるし、能力を上げて記録を行うことで、普段の能力値では到底行えない素早い動きを常時再現することも可能。まさに汎用性は最高峰のシステム!


「そんな【マクロ】をいじり倒して本番に備えようというのが今日のテーマです!」


「でもそんなの堂々と配信して大丈夫なの?相手にパクられちゃわないー?」


「この程度のアイデアはわざわざ配信を見るまでもなく思いつく発想なので問題はありません!」


----

>問題ありまくりで草


>その程度のテクニックで勝てるわけねーだろ


>ネタ切れですね失望しました卍さんのチャンネル登録を外します

----


「ちなみに今回のゲストはめりぃさんです!めりぃさんの【シャーマン】と【ナイト】には付与(バフ)スキルもありますし、実はサブで【メイジ】も育成しているとのこと!今回の企画にはぴったりのぱーふぇくとな人材なのです!」


「【ナイト】も『騎乗(ライディング)』兼『指揮官(コマンダー)(ビルド)で育ててるからAGI増加の【ファストコマンド】を撃てるんだよー!」 


【コマンド】自体は実はボクの持っている【将軍の旗槍】でも発動できるのだけど、黙っておこう。


 今回の目的である【マクロ】を記録する際の手順を説明する。


 まず、猫姫さんお手製の食パンを食べる。【『ディオニューソス』】によってAGI増加の効果を極限にまで高めた逸品だ。


 その次にめりぃさんが【シャーマン】のスキルである【アセンション】を使って風属性の精霊をボクとめりぃさんに憑依させる。


【アセンション】

[アクティブ][キャラクター][支援][魔法]

消費MP:4 詠唱時間:10s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[自身]の召喚した[スピリット]を[キャラクター]に[憑依]させる。[スピリット]は[対象]の持つ[詠唱時間]10s以下の対応する[属性]の[スキル]を[獲得]し、[対象]は対応する[属性]の[ELM]を[増加]させる。

[獲得]した[スキル]は[再詠唱時間]を[対象]と[共有]する。


 これにより風属性のELMを上昇させた状態で【メイジ】の付与(バフ)スキル、【スピードアップ】をかける。【スピードアップ】は風属性なのでELMの恩恵により出力が増加するというわけだ。


【スピードアップ】

[アクティブ][キャラクター][風属性][支援][魔法]

消費MP:2 詠唱時間:5s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[キャラクター]の[モーションスピード]を[増加]させる。


 その次にお徳用に加工したAGI増加効果を持つポーションを【オートユーザー】で服用する。さらに【サイキック】のスキルである【エンハンス】によってAGIを引き上げる。


 最後に【女神像】を経由して【ナイト】にクラスチェンジしためりぃさんが【ファストコマンド】を撃ち込んで準備完了!効果時間である3秒の間に新たな【マクロ】を記録するだけ。簡単でしょ?


「手順の解説は完了!ではめりぃさん、馬を召喚してください!」


「……さっきの説明に馬の話はなかったよねー?」


「馬ですよ、馬。馬こそが今回の【マクロ】における最重要アイテムなんです!」


「最重要アイテムの解説がなかったよねー!?」


 最重要アイテムだから意図的に解説しませんでした。怒りの感情表現(エモート)を表示させているめりぃさんに追加の説明を行う。


「さっきまでの説明によって付与されたすべての支援(バフ)を【サイキック】の【シェアリング】によって馬に共有すればOKです。簡単ですね」


 とりあえずやってみることになった。


 まずはめりぃさんに馬を召喚してもらう。そして猫姫さんからいただいた食パンを頬張ることによってAGIを上昇させた。


 次に【アセンション】で風属性ELMを高めて【スピードアップ】を受ける。もちろん、発動前に【イグニッション】を挟んでおくことも忘れない。さっきは説明してませんでしたね。


 そして【オートユーザー】でポーション……ではなく【タブレット】を服用する。


 【タブレット】は効果時間と引き換えに瞬間的な強化出力が高いので、【マクロ】の記録には最適。顔よりも大きい【タブレット】を作ってもらったのだ。


 どう考えても戦闘中に歯に仕込めるような代物ではないけれど、【オートユーザー】なら関係ない。もちろん【タブレット】を使うなんて手順の説明はしていなかった。


----

>説明してないこと多すぎだろ


>さも当然のように解説してないことをやりだす卍さん


>配信者失格定期


>そんな定期はない

----


 さらに【エンハンス】を起動してAGIを高めて【ファストコマンド】を受ける。最後に【シェアリング】を起動して準備完了!ボクは馬に飛び乗って【マクロ】の記録を開始する。


「さあ、全速力で走ってください、お馬さん!」


 召喚者ではなく【パーティ】メンバーであるボクの命令だが、その意図を汲んで全速力で走り出す【ナイト・ホース】。


 あらゆる支援(バフ)をその身に受けた【ナイト・ホース】の走り——その速度は弾丸よりも速く、音よりも疾く!速度の補正を受けた圧倒的な物質干渉力で周囲に衝撃波を撒き散らし、なおも加速する!


 やがて各種支援(バフ)スキルが効果時間を終え、段階的に失速し始めた頃に【マクロ】の記録を停止した。


 距離が離れすぎたので【コールグループ】でめりぃさんを召喚する。


「速すぎだよー!」


 さすがに付与(バフ)を盛りすぎましたかね?でも、速いにこしたことはありません。威力も速度も速いのが正義ですから!


「協力ありがとうございました、めりぃさん!それでは試しに使ってみましょうか。【マクロ】名は«疾風迅雷»で」


 ただひたすらに直進するだけの【マクロ】だから、下手な場所で使うと木々に接触しかねない。【マクロ】は途中でキャンセルすることもできるようだけど、圧倒的な速度を制御することは困難を極める。


 幸いにして先ほどまでお馬さんに乗って走ってきた道には障害物がなかったので、試し打ちするなら元の道を戻ってみようか。ボクは【ナイト・ホース】から降りて、背後を振り返る。


「あれ?お馬さんに乗らないのー?それじゃあ意味がないんじゃ」


「それも含めての実験ですよ。では——«疾風迅雷»!」


 【マクロ】の起動と同時に颯爽と馬に跨るモーションを経て、凄まじい速度で加速するボク。


 モーションの再現を行うのが【マクロ】なのだから何もおかしくはない。しかしそれを見ていた視聴者さんからのツッコミがコメント欄に流れ始めた。


----

>エア乗馬やめろ


>今世紀最大のバグだろこれ


>ふざけてて草


>ステータスの違いを無視してモーションを再現するスキルだからね仕方ないね


>走っていたのは馬であって卍さん自身は何のモーションも行ってないんだよなぁ


>これってふっ飛ばされるモーションとかそういうのを記録するのも有りなの?


>有りだぞ


>これからはプレイヤー全員がこの狂ったマクロを平然と活用してくるという事実


>AIに餌を与えないでください!!!

----


「どこがおかしいんですか?ただ同じ動作を再現してるだけですよ?」


 環境に左右されてモーションの再現ができないようなら【マクロ】機能の意味がない。あらゆるタイミングで条件を無視して再現を行える——これが【フォッダー】における【マクロ】の本質なのだ。


「ようやく追いついた……。【マクロ】って奥が深いんだねー。あたしもいくつかアイデアを思いついたよー!」


 ぴこん、と豆電球の感情表現(エモート)を表示させてアピールしてくるめりぃさん。なんだか聞いてほしそうにしているので、お望み通りに聞いてあげよう。


「どんなアイデアですか?」


「えっとねー。ジャンプをする【マクロ】とか」


「あっ……」


----

>アイテール終わったな


>既に何百回と終わってるので……


>エアジャンプも死んでないか?


>いや待て、マクロは同じ動作しかできないから一方向にしかジャンプできない筈だ


>じゃあ10パターンくらいのジャンプマクロを使い分ければ……?


>フォッダー終わったな

----


「さすがですね……。至極単純な発想ですが、ボクは思いついていませんでした。さすがは『戦場のフードファイター』です」


「『戦場のフードファイター』であることと今回の件は関係がないようなー?」


「なんですか?新しい二つ名がほしいんですか?それなら『【黄金の才(ユニークスキル)】を破壊した女』というのはどうでしょう」


「そんな物騒な二つ名はいらないよー。猫姫ちゃんに嫌われちゃうじゃん!」


テクニックその79 『強制再現』

記録した【マクロ】を発動させると、記録時にあった筈の要素が存在しなくても動作の再現を行ってくれます。

記録時のAGIの数値を無視して再現できる〈永遠の黄金時代〉の発展形みたいなものですね。

なんでもありなので、恐らくは〈ホームタクティクス〉に次ぐ【フォッダー】の代名詞として君臨するでしょう。


マクロその5 『疾風迅雷』

最大限に高められたAGIを活用して直進するだけの【マクロ】です。

規格外の速度なのでコントロールが難しいのが欠点ですね。

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