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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
4章 survival 超次元の生存競争!

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第127話 アイテム即時発動

 アイテムを回収してポーションを揃えてから、ボクはさらに南下し始める。目的地はこの戦いの最終地点、マップの中央へ!


「と、その前に」


 活動可能エリアを隔てる境界線。真っ赤な線がじわじわと内側に狭まってきているのを少し観察してみる。


 どうやらこの外に出ると継続ダメージを受けてしまうそうなのだけど……試しにちょびっとだけ。半歩だけ外に出てみる。その瞬間、HPがみるみるうちに減っていく。


「おおう、かなりダメージが大きいですね。やはりこれは基本的にエリア内で活動するのがデフォのようです」


 それから改めてマップをひたすら南下していく。


 もちろんプレイヤーがいたら寄り道して積極的に戦いを挑んだ。初戦は不慣れなせいもあって戦いづらかったけれど、アイテムがあればいくらでもやりようがある。よしむねさんから手に入れた剣を【キネシス】で振り回し、【パイロキネシス】とセットで遠距離からガンガン削っていく。


 そして今も1人のプレイヤーを仕留めようとしたところで——即座に横へ飛んで背後からの攻撃を回避する。


 ボクが避けたことで岩の弾丸が弱っていたプレイヤーに命中し、HPは全損。撃破報酬のボーナスアイテムは背後のプレイヤーに渡ることになった。


「横取りとは感心しませんね?」


「バトルロイヤルの醍醐味は乱戦とハイエナ。これ、常識っしょ?」


 背後にいたのは木製の杖に茶色のローブを着たプレイヤー、『土竜桜』さん。ボクは彼の方に向き直りながらも考察を続ける。


 先ほどの弾は事前に詠唱しておくことで任意のタイミングで岩を放つことができる【カタパルト】だろう。『よーいどん』で始まるPvPでは活きることが少ないが、対モンスターや乱戦においては鬼のように強い。おっさんも使っていましたね。


【カタパルト】

[アクティブ][12回][投射][土属性][攻撃][物理][魔法]

消費MP:6 詠唱時間:20s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。この[効果]は[詠唱後][12回]まで[任意]の[タイミング]で[発動][できる]。


 そして【カタパルト】を使うということは【空飛ぶスパゲッティモンスター】を一撃の下に葬り去った【グランドグラビトン】の詠唱も終えている可能性が高い。接近戦は危険か。


【グランドグラビトン】

[アクティブ][接触][土属性][攻撃][魔法]

消費MP:12 詠唱時間:40s 再詠唱時間:30s 効果時間:4m

効果:[キャラクター]に[ダメージ]を[与える]。この[効果]は[詠唱後][任意]の[タイミング]で[発動]できる。


 土竜桜さんがボクに杖を向けると、ボクの足元が急激に隆起していき、土の槍が飛び出してくる。勢い良く上空に弾き飛ばされるボク。


「【ファストスペル】を切ってきましたか……っ!」


【ファストスペル】

[アクティブ][自身][支援][奥義][魔法]

消費MP:0 詠唱時間:0s 再詠唱時間:6h

効果:[自身]が次に[発動]させる[詠唱時間]30s以下の[魔法]の[詠唱時間]を0sにする。


 【アーススピア】だ。相手を上空に撃ち上げて無防備な状態で追撃を行う優秀なスキル。【エアジャンプ】を獲得していないプレイヤーに対しては一方的に優位を取れる。


 追撃として放たれた【カタパルト】を2段ジャンプで回避し、地面に着地する。そして【パイロキネシス】を相手に向けた。


「アイテムのリソースがない【サバイバル杯】では得意の回復もお披露目できないっしょ?」


 ボクの残りHPを確認して勝利を確信する土竜桜さん。そして弾丸の如き速度で距離を詰めてくるが——即座に最大値まで回復したボクのHPに驚き足を止める。


「内容量が増えても【オートユーザー】なら問題なく使えそうですね」


 アイテムの品質にこだわらず、量だけを増やせば効果も増加させられる〈お徳用アイテム〉。普通に飲もうとすれば一苦労だが、【オートユーザー】なら演出を無視して効果を『発動』させられる。


 【オートユーザー】は再詠唱時間(リキャストタイム)が経過するたびにアイテムを自動で発動させるスキルだが、説明文に『スイッチ』と書かれているスキルは任意のタイミングで効果の有効化・無効化を切り替えることができる。無駄な消費を抑えつつ、任意のタイミングで回復ができるなら便利に扱えそうだ。


 気を取り直したのか再びボクに肉薄しようとする土竜桜さんだが、一度動きを止めたのは悪手でしたね。


「ぐおぉっ!?」

 ボクの目の前に設置した(トラップ)が起動し、大きなダメージを与える。【お徳用ポーション】を3つ、【オーバードーズ】で判定させた特製罠。まともな防具もない【メイジ】が耐えられるはずがない!


 わずかに残ったHPを【サイハンド】の手刀で削り取り、戦闘は無事に終了。急いでアイテムを回収していく。


「このローブ……土属性ELM強化のスキルが付いていますね。一歩間違えれば大火力でやられていたかもしれません」


 【サバイバル】にアイテムは持ち込めないから、たまたま生産したアイテムに自分の(ビルド)と合った効果が付いたのだろう。このルールは運の要素も重要な要因(ファクター)になっていそうですね。

 

 こうして強敵たちをはねのけ、一足先にマップの中心にたどり着いたボク。とりあえず根こそぎ素材をかすめ取っておき、【ストレージ】から家を取り出しておく。


 さて、次に何をするかというと……。


「さーて、この辺りに(トラップ)をガシガシ仕掛けておきましょう!【トラップハンター】!【トラップハンター】!」


----

>おいやめろ


>これが効率厨の発想だ!


>エリアが狭まるなら最後には強制的に真ん中に全員集まるからな


>中心にのこのこやってきたアイテムマスターをぶち殺す定石とか生まれそう


>ふざけるなチャンネル登録外すぞ


>練習試合の参加者さんお疲れ様です

----


 付近にまだ誰も来ていないことは確認済み!配信を見て情報は流出しているだろうけど、今から止めに来たところでもう遅い!この辺りを(トラップ)地獄に変えてやりますからね!


 踏むだけで猛毒の効果が5倍になる(トラップ)をあちらこちらに仕掛け、合図と同時に木製の矢が飛ぶ(トラップ)を家の全方位にセット。さらに屋根の上にはボクのHPを回復するポーション(トラップ)を設置して準備万端!


 それでも足りないと思い、ちょっとだけ遠出しながら素材を回収しつつ(トラップ)の範囲を広げていく。もし誰かが家に近づいたら(トラップ)の発動ですぐにわかるので安心だ。


 もはや近づく気さえ起きないのかしばらく誰も来なかったけれど、やがて活動可能エリアが縮小されていき、プレイヤーさんたちが半ば強制的に(トラップ)ゾーンへとやってきた。


「発射!」


 ボクの命令と共に放たれた矢が雨のように降り注ぎプレイヤー達を襲う。所詮は単発式ではあるけれど、これだけで多くのHPを削り取った。さらに、足の踏み場もないほどに敷き詰められた猛毒(トラップ)を踏んでしまった方々はHPを全損し、勝利特典アイテムとしてボクの【ストレージ】に収められていく。


 中には強引に【エリクサー】を飲んで駆け抜けてくるプレイヤーもいるけれど、リソースを切って無理やり突っ込んできたその方に対してボクはHPもMPも満タンだ。


 【パイロキネシス】と【キネシス】を活用した、自在に宙を舞う剣によって瞬く間に壊滅させた。


 しかし中にはそれでもなお生き残るプレイヤーもいて——。


「来ましたか、明日香さんっ!」


「おねえさまに良いところをお見せしますわ♥」


 ぐにゃりと身体を変形させて【パイロキネシス】をスレスレのところでかわし、空飛ぶ剣はぱくっと体内に取り込んで消化しつつ、光の如き速度でぶっ飛んでくるすらいむ明日香さん。


 けれど今のボクはプレイヤーを倒して得たボーナスアイテムが盛りだくさん!耐久力も【メイジ】だったときに比べると高いし、一撃でやられなければリソースで勝て——。


「——【アブソリュート】」


 その瞬間、身体がぴたっと停止した。


 襲い来る明日香さんを迎撃しなければならないのに、ぴくりとも動かない!これはAWP-002さんと戦ったときと同じ……!?


「《SANチェック》、です♥」


 恐怖の言葉(ソウルワード)を宣言した明日香さんから触手が出てくることはない。


 しかし——慢心から一瞬にして詰められたことによるプレッシャーが上乗せされ、ボクは完全に恐慌状態に陥った。


「ちょ!まっ、まってまってまってまって!!!!」


 そのまま明日香さんに体当たりで押し倒され、何もできずに毒に汚染されて散っていく。


 こんな簡単に負けるようじゃ、AIにはもっと勝てない。


 そんな確信を抱きながらも無様に練習試合から退場した。


 ——けれど、それは単なる諦めの境地ではなくて。


 絶対にもっと強くなる、そういう意志が込められた決心の瞬間だった。


テクニックその78 『アイテム即時発動』

【オートユーザー】や【トラップハンター】を経由すればアイテムの使用というステップを無視して効果を発動する事ができます。

大容量の瓶に入ったポーションを一瞬で飲めたり、予備動作無しに攻撃できたり、戦術的に優位な点が盛りだくさんです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話からですが、戦ったプレイヤーの名前が「よしむね」なのか「死ぬぞー」なのか分からなくなってます。 特に死ぬぞーなんてセリフとかも無かったですよね…?
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