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卍荒罹崇卍のきゅーと&てくにかる配信ちゃんねる!  作者: hikoyuki
4章 survival 超次元の生存競争!

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第118話 エリンの錬金工房

 『ぱーふぇくと』なステマ活動を無事に終えて足早に塔を後にする。どんどんテンポよくお便りを消化していかないといけないからね。


「さて、続いてお便りの紹介です!『こんにちは卍さん』こんにちは!『私は今、悩んでいます。好きな人がいるのですが、その人は私のことを嫌っているようで、いつも私にそっけない態度をとっているのです。この前なんかあんたのことなんか好きでもなんでもないんだからねっ!と言ってチョコレートを投げつけられました』死んでください。はい、次のお手紙入りまーす」


----

>死んでくださいは草


>お悩み相談を受けるだけでカードがもらえる優良依頼なのに


>これは毒舌卍さんモード

----


「続いてのお便りです。『こんにちは卍さん』こんにちは!『あたし、好きな人がいるのですが、恥ずかしくていつもそっけない態度をとってしまうんです。この前なんか勇気を出してバレンタインチョコを渡そうと思ったのに、チョコレートを投げつけて逃げてしまいました。どうしたら素直になれるでしょうか?』ここは文通コーナーじゃないんですよ?1つ前のお手紙の人と話し合って死んでください」


----

>相思相愛かな?


>なんでピンポイントに2人とも卍さんに依頼してんの?


>投げやりな回答に笑うわ

----



「続いてのお便り!『こんにちわんこそば』こんにちわんこそばー!『ただいま、最新アップデートで追加されたエリンの錬金工房というクエストを攻略中なのですが、必要とされるアイテムが多すぎて手に負えません。助けてください。報酬はカード2枚です』おっ、普通の依頼ですよ!こういうのでいいんですよ。喜んで引き受けますよ!アプデも絡んでるみたいですしね!」


 恋愛相談を送ってくるどこかのお二人さんは見習ってほしいですね、まったく!


 今回の依頼を送ってくれたプレイヤーさんはクエストの開始場所である【ノーグッド】にいるとのこと。さっそく向かいましょう。



「ということで着きました、【ノーグッド】!今回のアプデで追加された街ですが、来るのは2回目になりましたね。エリンの錬金工房のクエストはこの街の外れにある家で受注できるそうです」


 親切なことに依頼者さんは座標でその場所を教えてくれている。特に迷わずにたどり着くことができた。


 そして【錬金工房】と思しき建物の前には1人の女性が立っていた。おそらく依頼主さんだろう。


「こんにちわんこそばー!きゅーてくちゃんねるでー……寿美礼さん!?」


「卍さん、こんにちわんこそばー。今日はよろしく頼むわね」


 忘れた方のために解説を入れると、寿美礼さんは【鑑定屋】を営むNPCの業務を行っていたAIの方だ。つまりプレイヤーではない。そんな寿美礼さんがなんでこんな依頼を送ってきたのだろう?


「クビになったのよ。なんでも新しい人材を雇ったとかなんとかで。失礼しちゃうわよね。だからプレイヤー側として参戦することにしたの」


「世知辛いですね……」


----

>悲しい


>やめろ!!現実の話を関係ないゲームに持ち出すな!!


>現実の話だけど関係あるゲームの話だぞ


>クビにしてきた会社のゲームに参加するってどういうことだよ


>優勝賞金強奪してざまあするんだぞ

----


「これからは私みたいなAIのプレイヤーが増えると思うわよ。このアップデートをきっかけにね」


 このアップデートをきっかけにAIのプレイヤーが増える……?そういえばAIに関する更新内容があったような……。


「まあそのことはいいわ。今回はクエストのお手伝い、よろしくね」


「わかりました!ちょっとボクも受けてきていいですかね?」


「まあ、その方が話が早いわよね、2人分の素材を集めましょうか」


 というわけで【錬金工房】に入ると、突如として部屋の中央で爆音が鳴り響く。


「どわあああ!なんですか!?」


 音のした場所を見ると、巨大な大釜から黒い煙のようなものがもくもくとあふれ出している。錬金に失敗してしまったということなのだろう。そして、その釜を恐る恐る覗き込む幼い少女——エリンさんの姿がそこにあった。


「あちゃー、失敗失敗。材料が間違ってたのかなー。ありゃ、冒険者さん?ちょうどいいところに!報酬は出すからさ、代わりの材料をとってきてくれない?」


「いいですけど……何を作ってるんですか?」


「よくぞ聞いてくれました!この天才錬金術師であるエリンが作っているのは……スキルの【スクロール】です!」


「【スクロール】?」


「ありとあらゆる生命が持つ根源のエネルギー、スキル。それを抽出して組み換えることによって擬似的に新たなスキルが作り出せる……はず。たぶん」


「ずいぶん自信が無さげですね……」


「まだ作ってないんだもん……。おねがいっ!この画期的な素晴らしいアイデアのために投資だと思って!ねっ!?」


「まあ、わかりました。集めてきますよ。何を集めてくればいいんですか?」


「えっとね。【ダイゴブリンの耳】が10個と【魔法のタコ墨】、それから【光の王冠】。あと【ジュエルラビットのふわふわ毛玉】!」


「タコ墨は持ってますし、耳もこの前のボス戦で確保してますね。けれど、【ジュエルラビットのふわふわ毛玉】ですか……。【光の王冠】に至っては聞いたことすらありません。新アイテムでしょうか?」


 【ジュエルラビット】はかなり珍しいモンスターだ。出現範囲は全域。つまりどんなモンスターがいるエリアにも出没するボーナスモンスターのようなものなのだけど、当然ながら出現率がすごく低い。エリアが絞られていないのも相まって、狙って討伐することは不可能に近い。


「【ジュエルラビット】の【カード】は持ってるんですけどねー。これを売ってくれた人、毛玉も持ってたのかな?」


「偶然に頼るというのは現実的ではないわね。やっぱり誰かから購入するしかないのかしら」


 とりあえず【カード】を売ってくれた人の名前は覚えていたのでチャットを送ってみることにする。


卍荒罹崇卍 >すみません、先ほど【ジュエルラビット】のカードを購入した者なのですが、ふわふわ毛玉って持ってません?よろしければ売っていただけないでしょうか


たかし >持ってるけど俺もそのクエストクリアするつもりだからなー。たぶん市場にも出回ってないと思うよ


 ですよねー。とりあえず返事を返してくれたお礼を言ってチャットを閉じ、寿美礼さんに会話の内容を説明する。


「やはりこのクエストのためにふわふわ毛玉の需要が上がっているみたいですね。自分たちで入手するしかなさそうですよ」


「残念ね。【ジュエルラビット】が簡単に見つかるいい方法はないかしら。養殖とか?」


「養殖するにも最初の1体がいなければだめじゃないですかー、本末転倒って奴ですよ。…………いや、待てよ?」


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