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第8話 幻獣をプレゼントされました



 自宅で犬を飼いたいという紫音の願いに寄り添う形で、魔王陛下が連れてきたのは、カーバンクルという幻獣の仔だった。


 好奇心いっぱいにクリクリとよく動く黒い瞳と額に赤く輝く宝石、フサフサと感情に任せて素直に揺れる長めの尻尾……。


 モフモフ成分高めで愛らしい外見を持ったカーバンクルの兄弟は、一方的に異界に召喚され魔族を救う役割を負わされた少女の心をきっと慰めてくれるはず。


 そんな思いを込めて、ちょうど宰相のところで生まれたばかりの仔を貰って来てくれたらしい。


 大きさとしてはリス程しかなく紫音の肩に乗れるほど小さい。だが、彼らは魔法をよく操る種族のため、成長すれば立派に護衛も務められる。




 魔王に抱き抱えられて大人しくしているモフモフ兄弟を、彼女にソッと手渡した。


「ほら、シオン」


「う、うん。……うわぁっ、可愛い~!!」


「ふふっ、気に入ってもらえたみたいだね」


「ホンマおおきにっ。めちゃ嬉しいわぁ」


 早速モフりながら、ニコニコとお礼をいう紫音。


 カーバンクルの兄弟も、彼女の匂いを嗅いだり頬っぺたを舐めたりと新しい主人に興味津々だ。額にある宝石も、彼らの感情に合わせるかのようにピカピカ点滅している。少し興奮しているようだ。


「どういたしまして。シオンが教えてくれたイヌは、残念ながらこの世界にはいないけど、でもこのカーバンクルは、性格が穏和で主人に忠実、人懐っこくて一緒に遊ぶのが大好きなんだ。だからちょうどいいんじゃないかと思ってね」


「何やホンマに外見以外は犬とよう似てはるんやなぁ」


「うん、そうだね。それとカーバンクルって、きちんと絆を結ぶことが出来れば声が聞こえるようになるから」


「声が聞こえる? それって話せるようになるんかいな」


「う~ん、ちょっと違うかな。心が繋がって相手の考えていることが読み取れるようになるってことだよ」


「何やて!? それってテレパシーみたいなもんやんっ、最高かっ。ウチ、頑張ってこの仔らと信頼関係作るわ」


「うん、それがいいよ。ほら、まずはこれを上げてごらん」


 そう言って魔王は、いくつか美味しそうな果物を差し出した。


「カーバンクルの好物なんだ」


「うん、おおきに」


 手のひらに乗せて、驚かさないようにそっと二匹の口元に持っていく。


「きゅい?」


「きゅう……きゅ」


「……んきゅ……!」


 フンフンと匂いを嗅いでから夢中でがっつき、嬉しそうに鳴き声をあげている。ふさふさの尻尾も機嫌よくパタパタと揺れていた。


「ふわわわ、めっちゃ可愛い」


 嬉しそうに笑う紫音とモフモフした幻獣の組み合わせは可愛いに過ぎる。


「はあぁ癒されるぅ。召喚してよかった……」


「ん? 何か言うた?」


「ううん、なんでもないよ。あ、そうだっ。裏の森にもいいモフモフがいるんだよ。よかったら今度、見に行かない?」


「是非お願いします!」


「ふふっ、了解っ」


 期待で思わず食い気味に返事をしてしまった紫音に、近いうちに必ず時間を作るよと、魔王陛下は約束してくれた。






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