暑い日の「鬼」退治
久しぶりの更新です。w
「暑ーい」
「今、クーラー入れたから」
うちわを手にパタパタと扇ぐ酒々井つゆりに苦笑しつつクーラーのリモコンを置いた。
もう日は落ちてだいぶ経ったが日中暑くなってしまった部屋は、すごい暑さだった。
ぶおーっとクーラーが動き始めるのを確認してキッチンへ向かう。
グラスに氷をどっさり入れてそこに冷蔵庫から出した麦茶を注いだ。
「ほい、つゆり」
「ありがとー」
俺のこともパタパタと扇ぎながらつゆりが麦茶を受け取った。
少しだけ冷たい風が身体に当たって心地いい。
「もう熱帯だよ。ねえ、熱帯」
「はは、気持ちはわかるよ」
「いつから日本は熱帯になったの、ねえ」
「確かにこのところの気温は異常だよなあ」
ニュースでも連日、各地で最高気温の更新が伝えられていたし、10年に一度のみたいな表現も頻繁に使われていた。
「晩ご飯、どうする?そうめんとかにしちゃう?」
「あー、でも栄養も取らないとって思うなあ」
「お?つゆりにしてはまともなことを」
「何よ、それ」
「冗談だよ」
そう言っておでこにキスした。
「おでこのキスでごまかされないぞー」
「はは。でもさっぱりしたものがいいよなあ。それでいてスタミナもつくものかあ」
冷蔵庫の中身を思浮かべる。
「豚肉があったな。豚肉冷しゃぶのポン酢とか?」
「あ、いいな、それ。それがいい」
つゆりがあっさりと笑顔になった。
「じゃあ、しばらくお待ちください。お姫様」
「さきに姫はシャワーを浴びて来ていいかしら?」
「どうぞどうぞ。部活で汗もかいたことでしょうし」
「うむ、苦しゅうない」
そう言ってつゆりは今度は俺のおでこにキスして立ち上がった。
俺は苦笑しつつ空になったグラスを手にキッチンへ向かった。
それにしても本当に連日暑い。
つゆりのおばあさんはちゃんとクーラーを使ってくれているだろうか。
一度熱中症で倒れたことがあって以来、ちゃんとクーラーをつけるようになったはずだけれど。
クーラーがだいぶ部屋の温度を下げてくれた。俺は冷蔵庫を開けて料理の準備を始めた。
◇
「あー、美味しい。ポン酢開発した人、天才」
思わずそう言うと、上梨が笑った。
「誰だよ、それ」
「知らない。でも感謝」
「まあ、確かにこういう時にはありがたいけどな」
暑さに負けて、さすがの上梨も少し食欲が減退していたみたい。
「おばあちゃん、ちゃんと食べてるかなあ」
「三角総菜も夏バテ防止のお惣菜とか出してたし、大丈夫じゃないか?」
「あー、あれもよかったね」
上梨が買って来てくれた梅を使ったお惣菜はとても爽やかで美味しかった。
「息子さん、いい感じじゃない?」
「そうだね、夏バテ防止総菜のアイデアも息子さんってことだもんな」
「まあ、私には上梨がいるから大丈夫だけど」
「明日はつゆりの当番だからな。期待してる」
「三角総菜に頼ります」
もう素直にそう言っちゃう。
私がそう言ったところでスマホが鳴った。
食事中はスマホをいじらないルールだけど、私は電話をして来た相手がおばあちゃんだと上梨に見せた。
「どうぞ」
上梨が笑って言った。
私はスマホに出た。
「もしもし、おばあちゃん?夏バテしてない?」
『余計なお世話だよ、つゆり。上梨もいるかい?』
「いるよ。上梨に用なら代わるよ」
『いや、スピーカーにしとくれ』
高齢者なのにスピーカーとか知っててすごいなあ。
私はスマホをスピーカーにしてテーブルに置いた。
『上梨も聞こえるね?』
「はい、聞こえます」
上梨も箸を置いて答えた。
『実は頼みごとがあるんだ』
私は思わず上梨と顔を見合わせた。
おばあちゃんがこんな言い方をするのは珍しい。
「おばあさんからの頼みごとと言うことはそういう話ですね?」
『そうだよ』
「内容を聞かせてもらえますか?」
『暑さで氷が溶けちまったのさ』
「はい?」
私と上梨は思わず異口同音で突っ込んでしまった。
◇
「うわ、涼しいっ」
「本当だ。すごいな」
鍾乳洞に入ると一気に気温が下がった。
そとのじりじりと焼かれるような日差しが嘘のように一気に肌が冷えていく。
「こんなに涼しいのに溶けちゃったんですか?」
先を歩く加茂さんに聞いた。
「そうなんだよ。ここは涼しいんだがね。「封氷」のところはそうでもないんだ」
「例の崩落が原因で?」
「そうだよ。外気が流れ込むようになってしまってね」
栃木県の某所。
この鍾乳洞には「鬼」が封じ込められているらしい。
文書などは残っておらず近くの神社が管理するこの小さな鍾乳洞には、その昔、鬼が氷に封じ込められたと言う口伝が残るだけだった。
線状降水帯による集中豪雨で、この山で土砂崩れが起きたのがおよそ1か月前。その時に鍾乳洞の中でも崩落が起きた。
鍾乳洞の奥で鬼を封じている氷が溶け出していると知らせを受けて加茂さんが視察してその事実を確認した。
土砂崩れの現場に入ることも出来ず、鍾乳洞の中を封鎖する工事も出来ない。
ならばいっそ、鬼を退治する方向で話を進めようと考えた加茂さんが酒々井のおばあさんに連絡を取ったのだった。
「つゆり、足元気を付けて」
「うん、わかって、ひゃあ」
「ほら」
さっとつゆりの手を取った。
観光用に整備された鍾乳洞ではない。足元はでこぼこしている上に濡れている。
「つゆり、あんたも少し武道の修行しなさいよ」
「武道が何の関係あるんですかー」
つゆりが後ろから続く桐野ひかりさんに文句を言った。
「あるに決まってるじゃないの。足さばきは武道の基本よ。ねえ、未散?」
「そうですね。間違いなく役には立ちますね」
「未散ちゃんまでー」
桐野ひかりさんの後ろには今回付き人として桐野未散ちゃんがつき従っている。
実を言えば、未散ちゃんはすでに斬魔刀を渡されて、立派に独り立ち出来ているのだが、今回は「鬼退治」と言うことでこのベストメンバーなのである。
「ここの「鬼」は大したことないだろうけど、対峙する前に転んで怪我したんじゃ笑えないわよ」
「うー」
つゆりが唸った。
「ひゃあ」
しかしさらに後方から悲鳴が聞こえた。
「おっとと」
恐らくつゆりが滑ったのと同じところで武田さんが滑ったのだろう。それを支えたのが須賀原さん。
「もう一人いたか」
「いやいや、彼女は生業としているわけじゃありませんから」
「何言ってんのよ。鬼退治なのよ」
「だからー。彼女はあくまでサポートメンバーですから」
「須賀原、可愛い彼女が出来たからって甘やかしてんじゃないの?」
「え?」
「え?」
俺とつゆりは思わず声をあげた。
「そう言う関係になったんですかー?」
つゆりが立ち止まって後ろへ向かって言った。
「立ち止まるな、馬鹿」
「だってー」
ひかりさんに小突かれてつゆりがまた歩き始めた。
「それにしても上梨はずいぶんとしっかり修行したみたいね」
「はあ、まあ、そうですね」
「どうなの、加茂さん」
ひかりさんが俺達を通り越して先を歩く加茂さんに聞いた。
「優秀ですよ。もう私が教えられることも少なくなって来ました」
「ふーん。まあ、こんな感じだもんね」
「ひかりさんも随分と上達されて」
今度は須賀原さんが言った。
「ふん。気を垂れ流しすんなって誰かに言われたしね」
「そんな言い方はしてませんよ」
「同じことよ」
「まあ、そうですけど」
「見えない」俺には分からないが、以前のひかりさんは結構気を垂れ流しにしている感じだったらしい。
「でもね、須賀原。気を出さないようにするのも一長一短よ」
「そうなんですか?」
「そうよ。今までは雑魚がいたらみんな消えてたのに、私が気を押さえているからいちいち祓わないといけないんだから」
「ああ、なるほど」
「ま、それは未散が片手間にしてくれてるからいいんだけどさ」
話の途中で加茂さんが止まった。
「ここで一応儀式がある」
すでに話は聞いていたので、全員が立ち止まって待つ。
加茂さんが祝詞を唱えて、この先に我々が入ることを許すみたいなことを言った。
「ここは代々、加茂家が管理していたんですか?」
須賀原さんが聞いた。
「そうですね。委託みたいな形です。神社からの。と言っても4年に一度確認に来るだけでしたが」
「どうなんだい?やばいのが封じられているかんじなのかい?」
「よほどしっかり封じてあるのか、あるいは「鬼」の力が元々弱いのか、弱まったのか」
「あまり感じないってことか」
「そうですね。島根県のに比べると明らかに小粒です」
「でも何もいないって感じじゃないんですね?」
聞いたのは武田さん。
「ああ、かすかだけど感じるよ。たぶん武田さんだとギリギリ分かるかなって感じかな」
「そうなんですね」
でも武田さんも須賀原さんのもとで修業していると聞いた。「見える」力も磨かれているかもしれない。
要するに相変わらず「見えない」のは俺だけなのだ。
◇
加茂さんが祝詞を上げたところからさらにぐんぐんと気温が下がって、寒いとすら感じ始めたのに、いつの間にか気温が上がっていた。
なるほど確かにどこかから外気が流入しているみたい。
「あそこです」
加茂さんが止まって言った。
狭くなっていた鍾乳洞のルートがここだけ少し広い。
見れば氷の塊があって、そこにしめ縄が掛けられていた。
しめ縄は新しい。
「あのしめ縄は新しく?」
「そうだ。調べに来た時に氷が溶けて小さくなっていたせいで、しめ縄が外れていたのでね」
「よくこんな場所に「鬼」を封じることが出来ましたねえ」
上梨の言葉にうんうんと頷いた。
「もう口伝しか残っていないので、定かではないんですがね。どうも贄とされた巫女がおびき寄せたみたいです」
また、贄か。
昔の風習だとしてもあまり聞いていて楽しい話ではない。
「封印には加茂家も関わったのですか?」
「加茂家の源流みたいな一族が関わったみたいですね。記録がないので分かりません」
「まあ由来はいいさ。要は祓ってしまえばいいんだから」
ひかりさんが言った。
そのための今回のオールスターに近い布陣なんだもんね。
「で、この後は?」
「氷を溶かします。ある程度溶けたらたぶん本体が出て来るので、桐野家のコンビで祓ってくささい。祓いきれないようなら酒々井上梨コンビで」
「ふん。斬魔刀が2本もあるのよ。楽勝よ」
ひかりさんが言った。
確かにそうであって欲しい。
「ひかりさん、あまり大言壮語しないでください」
「何よ、未散。自信がないなら帰りな」
「自信はそんなになくても帰りません」
「ふん。まあいいわ。さあ、早く済ませましょう」
頷いた加茂さんが何かの粉末を氷に掛けた。融雪剤みたいなものだろうか。しばらくすると氷が溶け始めた。
「須賀原さん、そろそろ」
「おう」
須賀原さんが数珠を出してお経を唱え始めた。
それに合わせて武田さんがおりんを鳴らす。
「え?」
「あら?」
驚いた。
武田さんのおりんの音が須賀原さんの読経と見事にリンクしてそのパワーを増大させていた。
「いつの間にこんな」
「しっかり修行されていたってことでしょう?」
「いや、こりゃ須賀原限定だろ」
「そうかもしれませんが。いいじゃないですか」
「ふん」
ひかりさんと未散ちゃんがそんな会話をしている。
「すごいの?」
「すごい」
ピンと来ていない上梨が聞いて来た。
「そろそろ「開眼」しておこうか」
「そうだな」
「見えない」上梨にも見えるようにしておく。
どのタイミングで何が出て来るかわからないもんね。
「ちょっと失礼」
上梨が私に杖を預けて舟漕ぎ運動を始めた。
ほんの数回で上梨の身体が光を帯びて、そしてお腹から胸に光が増していく。
「チートね、相変わらず。って言うかすごすぎるわよ」
「もっとですよ」
ひかりさんの言葉に加茂さんが笑いながら言った。
その加茂さんは周辺に盛り塩をして、さらに札も貼り付けていた。
ちなみに押し掛けて住み込みの弟子になっているオカルトハンター豪は、出張中らしい。
なんだろう、出張って。
さらに加茂さんが粉末をどばどばと氷に掛ける。
「なかなか出ないわね」
「うーん」
だいぶ氷が小さくなったのに、何も出て来ない。
「ちょっと、須賀原。お経止めて」
ひかりさんの言葉に須賀原さんが読経を止めた。
「あんたと武田のお経が強力過ぎて出て来られないのかもしれない」
「はあ、なるほど」
須賀原さんと武田さんが視線を躱して小さく微笑んだ。
ああ、恋人って感じ。
私は上梨を見た。
上梨は「何?」って顔だった。
もう。
◇
「あ、何か出て来ますね」
ほとんど溶けた氷の奥から何かが出て来る気配がした。
でも、これは何だろう。
島根県で鬼に対峙した時に比べるとほとんど圧を感じない。
「あー、未散」
「はい」
「あんただけでやんな」
ひかりさんが言った。
「え、でも、鬼ですよ」
「鬼だったもの、だよ」
「鬼だったもの?」
「そ。長い年月、封印され続けたことで、すっかり弱体化してんのさ、こいつは」
「そんなことってあるんですか?お寺のは長い年月を封印されていても、しばらくしたら力をつけていますよね?」
「元々ここに封じられるくらいだから大した鬼じゃなかったとか?」
上梨さんが言った。
「あー、そうかもね。そもそも氷に封じられるなんて間抜けな話だし」
「ダメだったらフォローしてくださいよ」
「いるもんか」
そう言いつつ、ちゃんと斬魔刀を手にしてはくれている。
「じゃあ、失礼します」
須賀原さんが読経と止めてしまったので、しんとしている中でなんか緊張する。
「未散ちゃん、がんばって」
「はい、ありがとうございます」
酒々井さんが励ましてくれた。
私は斬魔刀「青龍」を鞘から抜いた。
鍾乳洞の中に設置されたライトに反射して刀身がきらりと光った。
◇
「うわあ、綺麗」
思わず声を出してしまった。
須賀原さんに視線で注意されて、慌てて口を塞いだ。
桐島未散ちゃんが手にした日本刀がうっすらと光っていた。
美しいと思った。
未散ちゃんが斬魔刀を構えるとさらに刀身が光り出す。
ああ、彼女の身体も光を帯びているんだわ。
舟漕ぎ運動をしていた上梨君が光っていたのにも驚いたけど、彼女もずいぶん光っている。
こんなに光っているのに、普通の人には「見えない」のだから不思議だなあ。
「あー、ダメだな、未散」
「え?」
「少し抑えて。出て来ないよ、こいつ」
「わ、分かりました」
未散ちゃんがひかりさんに言われてふうと息を吐いた。
未散ちゃんの光がすうっと消えていく。
「出るぞ」
今度は須賀原さんが呟いた。
どこ?
どれ?
まさか、あれ?
氷の下からにょろっと蛇みたいなのが出て来た。
ち、小さい。
「加茂さん?」
「あ、いや、すまない。まさかこんなのだとは思っていなくて」
ひかりさんに言われて加茂さんが恐縮していた。
「上梨」
「ん?」
「拍手して」
「え?」
「拍手。えいって」
「ああ」
つゆりちゃんに促されて上梨さんが手を広げた。
ぱあん
鍾乳洞に拍手の音が反響して響いていく。
「あ、消えた」
「ったく」
こんな弱い「鬼」ってあり?
◇
「で、なんでまた宇都宮餃子なんだい、土産が」
おばあちゃんがそう言って笑った。
「スタミナつけてもらおうと思って」
「もうこの年なんだ、餃子をもりもり食べられないよ」
「食べられる分だけでいいですよ」
「そうだよ。食べられない分は私達が食べるから」
上梨がそう言ってキッチンへ向かった。
わざわざお昼前に報告に来たのは、お昼ご飯に餃子をご馳走するためなのだ。
「つゆり」
おばあちゃんが私をじっと見た。
「何?」
「今の話を聞くと、今回、あんた何もしてないじゃないか」
「え?あ、えーっと?」
「働かざる者食うべからずだよ。ほら、手伝っといで」
「は、はあい」
私は慌てて立ち上がってキッチンへ向かった。
「今回働いてないから手伝って来いって言われたー」
「ははは。まあ、俺も大したことしてないしなあ。拍手しただけだし」
「恐らく拍手だけで「鬼」を祓ったのは上梨が初だと思うよ」
「鬼だったもの、だろう?」
「だとしても」
もうフライパンは熱くなっているみたい。
「羽根、つゆり作れたっけ?」
「ううん。出来ない。教えて」
「了解」
上梨に教えてもらった羽根つき餃子の作り方を教えてもらった。
我ながら上手に出来た気がする。
「お待たせー」
トレイにご飯と餃子とスープを乗せて運んだ。
「へえ、羽根つきなんだね」
「うん、私が作ったんだよ」
「ふうん。やるじゃないか」
「え?」
「何だい?」
「い、いや、なんか普通に褒められたから」
思わず驚いちゃったのだ。
「まるで私が普段全然褒めないみたいじゃないか」
「えーっと?」
「さあ、いいから食べましょう」
上梨、ナイスタイミング。
結果、私の作った餃子は結構上手に出来ていたみたいで、また褒められてしまった。
どうしよう、何か腰が落ち着かない。
おばあちゃん、暑さにやられちゃったんじゃないよね?
◇
「桐島未散は見た。その武田ってのと会ってみたいね」
「あ、やっぱり?」
おばあさんの言葉につゆりが食いついた。
餃子はそんなに食べられないと言っていたおばあさんだが、結構がっつり食べていた。
老いてなお健勝というところか。
「須賀原との親和性がもたらした可能性もあるが、もしかしたら才能があるのかもしれない」
「うんうん。私もそう思った」
つゆりが視線を送って来た。
「そうですね。彼女には祓う力もあったのは間違いないでしょうね。あのおりんの音は単独でも祓う力があるのは間違いないです」
「上梨も太鼓判か」
「ちょっと、おばあちゃん。私の太鼓判は?」
つゆりがじたばたしていた。
「どうだって?」
「こっちに出張の予定はしばらくないってさ」
「そっかあ」
須賀原さんに連絡してみたが、なかなか酒々井のおばあさんに武田さんを引き合わせる機会はなさそうだった。
「まあ、縁があれば、会えるよ、きっと」
「そうだな」
つゆりの言葉に頷いた。
「さてと」
そう言ってつゆりが抱き付いて来た。
「ん?」
「上梨君も、餃子を食べてスタミナがついたんじゃないかなあ?」
「ニンニク臭いけど?」
「うわ、それ言う?それ、私も同じなんだけど」
「そっか。じゃあキスしても平気だな」
そう言って笑いながらキスをした。
さりげなくクーラーのリモコンの温度設定を一度下げて、そのままベッドに倒れ込んだ。




