(7/10)誓います、誓います
ところがである。
なんとこの『鯛焼き5匹』が花沢の『卑屈コンボ3連チャンドーン!!』を溶かすのである。
花沢は面食らった。もう帰途についているので会社で配るわけにもいかない。
そのまま家に持って帰り4匹を冷凍した。そして全てを3日に1度約2週間かけて食べた。
食べながら気づいた。味が全部違う。
アンコと、チョコと、イチゴホイップと、抹茶と、チーズ
食べながらミツヒコは思ったのだという。
まぁ……中原さんにとってオレは『アリ以下』なんだろうけど嫌いではないらしいなぁと。
もう1回くらい頑張ってみようかなぁと。
その1回が、あの、中原紗莉菜がキムチを食べまくったあと花沢に見つかった1回だ。
花沢に誘われて2人は喫茶店で初めて対面で話をした。
紗莉菜は『こんな臭い息で大好きな花沢くんに会ってしまった』とパニックになり、頭がいっぱいになって緊張をどこかに置いてきてしまった。
普段の『過剰な自意識』が今回ばかりは働かなかった。
いつもならぶっきらぼうに答えるのに花沢の「ちなみにオレみたいなのタイプじゃない?」という言葉にうっかり本心を見せてしまったのだ。
『タイプです』とうなずいてしまったのだった。
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翌週の初デートで映画2本を見たけれど、帰り難くて2人橋の真ん中で並んで川面を見ていた。
4月のちょうど寒さから暖かさに切り替わるタイミングで風も気持ち良かった。そうは言ってももう夕日も沈むし帰らなければいけない。
豊かな風にあおられてザザーッと水面に波が立つ。
「ちなみになんだけど中原さんさぁ」
横顔を見せていたミツヒコが紗莉菜の方に向いた。
「うん」とうなづいた。やっぱりまだうまく話せない。2人でいることに慣れない。
「オレ、中原さんの彼氏になってもいいかなぁ?」
紗莉菜は今までの『反省』を総動員した。ひどい態度。好きすぎてそうなっちゃったんだけど花沢を傷つけてしまった自分のあんまりな態度。
「うんっっ」とうなづいた「いいよっっっ」と。
もう思い切り言った。小学校3年生の『ポール』だってがんばるときはがんばるのだ。
ところがミツヒコは一枚上手だった。
「じゃあ。中原さんはオレの彼女になると『誓って』くれる?」と言ったのだ。
『誓って』という言葉に若干の違和感はあったが勢いで「もちろんだよっっ」と答えた。
「じゃあ『誓いのキス』をしてくれる?」
えええ〜〜〜〜っ!!!!
血が逆流する。アタシからキスするってこと!?
高校時代にカラオケボックスで女友達とふざけて『ポッキーゲーム』しかしたことないのに!?
ずっと男と見ればぶん殴ってきたというのに!?
はい。残念でしたー。酔った勢いで無理矢理向かってくればぶん殴ることもできたのにミツヒコ相手には無理でーす!!
あの『エロ猿たち』より3枚くらいは上手でーーーす!!!
ミツヒコが紗莉菜の両ウデに手を添えた。
「誓ってくれるんだよね!?」
すっごい柔らかい『圧』がある。
はいはいはいはい。誓います誓います。もう誓いますよーーっ。
【次回】初めての、自分からの、キス




