(2/10)調子を狂わせる同期
大学生になると髪は腰の位置までになった。髪の毛を染めて茶色にした。なんだかチャラいサークルに入った。
サークル仲間が酔うと彼女に抱きついたり、胸を揉もうとしたり、キスしようとするのでその度
「セミかっ!」
「セクハラ死ねっ!」
「酔っ払いウセロッ!」
と殴り
「デカイんだよお前っ!」
「コケタだけだろ!」
「そんなとこにいて邪魔なんだよ!」
と逆切れされるので
「うるせえチビッ!!」
「コケテんじゃねぇ!!」
「邪魔はアンタだっ!!」
とさらに平手で殴るという『だいぶ間違った男性対応』を覚えてしまったのだった。おまけにそのまま会社員になった。
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会社でも問題はなかった。
とりあえずニクニクマシマシのラーメン食べて、『がっはっはー!』と一緒に笑って、カラオケで流行りの軽薄な歌を熱唱してれば男友達はできた。
その、彼女の『アタシの対応これでOK』をもろくも崩してしまったのが同期の花沢光彦だ。
彼は1度も『デカイ女』と言ってこなかった。
それどころか、ずっと『女の子』として扱うのですっかり調子を崩してしまったのである。またなぜか年中話かけてくる。しかもカワイイ。
ある日は彼女の髪の毛について聞くのであった。
「中原さん。髪の毛長いよねーっ」と。
なんでコイツ『中原、馬の尻尾かよ』と言ってこないのか。そうしたら『誰が馬だ! 髪の毛で絞め殺すぞ!!』と言ってやれるのに。『長いよね』と言われたら『そうですね』と言うしかないではないか。
ああっ。もうっ。もどかしいっっ。
「そうだけど」とぶっきらぼうに言うしかなかった。
「お手入れとかどうしてるの? 洗うのも大変だよね」と続けられた。女子なのか。
「洗うのに30分。乾かすのに1時間かかる」とまたまたぶっきらぼうに言うしかなかった。まぁまぶしい笑顔。見てらんない。
「へぇー。手間かかってるんだねー。さすが女の子だわー」
だ、か、ら! 『女の子』って言うな! 調子狂う!!『お前がそんな女みたいにしてどうする。似合わねぇ』って言ってくれ!
そしたら『女なんだよっ』って言ってぶん殴って……ああ!
それと同時に『触ってみてもいい?』っていってくんないかなーと思った。言ってくれなかった。いや、自分から『なに? 珍しいの? 触ってみる?』って言えばいいのか。普通の『女子』はそうするのか。
言えない。口が裂けても言えない。
ちなみに、それから1年後めでたく恋人同士になってから『あの日のことを覚えてる?』と聞いてみた。
「覚えてるよー。超ガッカリしたわー」とミツヒコに言われた。
「もう『そうなの? 触ってみる?』って言ってくれないかなと思ってさー」
やっぱり!! あの日のアタシよ!! そう言えばよかったんだよ!! タイムマシンに乗って教えてやりたい!!
「でもいいよー。今は触り放題だからー」と言って『ふふふ』と笑うと髪の毛を1束とってスリスリした。なんかもう『お役に立ててなにより』という感じだ。髪の毛伸ばしてよかったなーと思う。
【次回】 死ねっ!古典女!




