カイル・ラズ・ミネルバ⑤
12時に1話更新しているのでまだ見ていない方はひとつ前からどうぞ。
俺は怒りのまま宿屋の食堂に入っていった。
しかしサクラはそんな俺を気にすることなく軽い感じで挨拶をしてくる。
俺はそれに怒りを増しながらサクラに何故贈り物を受け取らなかったのか問い詰めると、量が多すぎでそして着ていく所が無いから要らないと言ってきた。
ならば着ていく為に舞踏会などに招待をしようと言ってもそれも断られる。
そしてサクラはこれ以上自分と一緒にいると噂がさらに広がって俺が困るからと言ってきたのだ。
・・・噂が広がる?むしろ今は大歓迎だ!
だがさらにサクラは泣きそうな顔になり俺がどこかの王女か令嬢を妃にすると思っているのだ。
そんなサクラの表情に心が締め付けられる思いになり、サクラに噂になる事は特に気にしなくて良いと伝えた。
その言葉にキョトンとした表情で俺を見てくる。
俺はじっとサクラを真剣に見つめつつ、妃は身分で選ばず俺が望んだ女を妃にすると言った。
さすがにサクラの瞳を見つめて言ったので、俺が妃に望んでいる相手が誰か気付くと思ったのだが、サクラは何を勘違いしたのか俺が望めば誰でも妃に出来るから自分と噂になっていても問題無いと勝手に結論を出したのだ。
サクラの合ってるような微妙に違うような考えにガッカリしたが気を取り直し、とりあえず直接サクラが欲しがる物を贈り物にしようと考えついたので遠慮するサクラを連れ街に繰り出したのだった。
俺は街にある行きつけの宝飾品店にサクラを連れてきた。
店内に入り店主に声を掛けた後、俺は首飾りが展示されいる場所に向かう。ガラスケースの中にはいくつか首飾りが飾られていてどれもサクラに似合うと思った。
サクラは遅れて店に入りキョロキョロと辺りを見回して俺に気付き近付いてくる。近くに来たサクラにこの首飾りの中だったらどれが良いか聞いてみるが、サクラは首飾りを見て驚愕の表情のまま固まってしまう。何故そんな表情になるのかよく分からなかったが、もしや一つに決められないでいるのではと思いなんだったら全部買ってやると言ったのだが全力で拒否られた。
ならば首飾りが嫌いだったのかと思い、反対側のガラスケースに飾られている指輪にするかと問うと、そっちも要らないと必死に拒否され俺の腕を取って店から連れ出されたのだ。
どうやらあの店の商品が気に入らなかったようだから、それならばと俺は他の店に連れて行くことにした。
あの後何店舗か回ってみたのだが、どの店でもサクラは最初の店の時と同じ反応をしてどれも欲しがろうとはしなかったのだ。そんなサクラに俺は段々機嫌が悪くなる。
ムカムカした気持ちのまま無言でサクラと共に露店が建ち並ぶ通りを歩いていると、突然サクラが足を止め露店にあった薔薇の形をしたペンダントを手に取り目を輝かせながら眺めだした。
サクラはペンダントについて店主と話しさらに興味深く眺める。
その様子からそのペンダントが気に入ってるようだと気付き、俺はサクラの手からそのペンダントを奪い取った。
サクラはこんなのが欲しいのか・・・。
突然の事に驚くサクラを無視し店主に金を払ってサクラの手にペンダントを乗せる。
サクラはじっと手に乗るペンダントを見つめた。
・・・何だ?欲しくなかったのか?
そう思っているとサクラは徐にペンダントを首にかけ満面の笑顔で俺にお礼を言ってきたのだ。
な、何だその笑顔は!!か、可愛すぎるぞ!!!
俺はその笑顔を見て顔が赤くなり動悸が激しくなる。しかしそこでハッとし回りを見ると何人かの男共がサクラを見ながら顔を赤らめていた事に気が付いた。
俺はこれ以上その男共にサクラを見せたく無いと思い、咄嗟にサクラの手を取りその場を離れる事にしたのだ。
困惑するサクラを連れ、夕暮れ時の人気の無い広場まで来てから手を繋いだままサクラに向き直る。
そうして少しイラつきながらサクラにあの笑顔を他の男に見せないよう注意した。
しかしサクラは何故俺がそんな事を言い出したのか理解出来ず逆に怒り出してきたのだ。
さらに俺が他の男に見せるのが嫌だと言ったのに、全く分からないと言った表情をしてきたので、あまりの鈍感ぶりにため息が漏れそして分からせる為サクラの後頭部を手で押え思い切ってサクラの唇を奪った。
最初は少しだけのつもりだったのだが、あまりにサクラの唇が柔らかくそして気持ち良かった為キスを止めることが出来ない。
俺はさらに唇を味わう為サクラの腰に手を回し逃げられないように引き寄せた。
サクラは俺の胸を叩いて抵抗してきたが離してやるつもりは全く無い。その内抵抗も無くなった所でキスを止め少し顔を離しサクラをじっと見つめる。
サクラは顔を真っ赤に染めながら俺を可愛く睨んできて、その顔を見て俺はもっとキスしたいと思った。
しかしサクラは何故俺がキスしたのか分かって無いようだったので、俺はハッキリと妃に望んでいるのはサクラだと告げる。
驚くサクラに絶対妃にするとニヤリと笑って宣言をし再びサクラの唇を奪う。それもさっきよりも深くサクラの唇を味わった。
満足するまでサクラの唇を味わった後困惑しているサクラを宿屋に送り、帰り際にペンダント良く似合っていると微笑みながら告げるとサクラは顔を真っ赤にさせたのだった。
次の日俺は執務室で昨日のキスを思い出しながらニヤニヤしていたのだが、そんな俺を部屋に来ていたシルバが呆れた表情で見ている事に気が付いていなかった。そして今日もサクラに会いに行こうと思っていたその時、突然街の方で大きな爆発音が聞こえてくる。俺はすぐに窓に向かい街の方を見ると黒煙が所々上がっているのが見えた。するとそこにロイが慌てたように執務室に駆け込んできてシュバイン国の襲撃だと告げたのだ。
それを聞いたシルバは焦った表情で部屋から駆け出していく。その姿を見てシルバの恋人が街に住んでいる事を思い出す。そして俺もサクラの事が頭を過り、今すぐサクラの下に駆け付けようとしたのだがロイがそれを止め指示を仰いでくる。
俺は自分の立場をすぐ思い出し、焦る気持ちを抑えロイに国民の避難と騎士を現場に向かわせる指示を出し自分も戦いの準備をする事にした。
俺は身支度を整え騎士を連れて街に向かい、逃げてくる人々に城に避難するよう声を掛けているとその中に宿屋の店主がいる事に気付くが、その近くにサクラがいない事に不安を覚えて店主の側に近付く。
すると店主は俺に気付き焦りながら近付いてきてサクラが一人で何処かに走って行ってしまったと言った。
それを聞いて嫌な予感がし、俺は店主にサクラが向かった方向を聞き騎士を引き連れて走り出したのだ。
暫く走り漸く遠くにいるサクラを発見したのだが、サクラの前に黒馬に乗ってサクラを見ているダグラス王がいる事に気付き焦りを覚えた。
俺はサクラの名を叫ぶとサクラは振り返り俺の名を呼んで安堵の表情になったのが見える。そしてサクラは俺の方に駆け出そうとしていたのだが、突如ダグラス王がサクラの腰を持ち馬上に引き上げたのだ。
サクラはあっという間に馬上のダグラス王の腕の中に捕らわれ暴れるサクラを押さえつけて近くにいた兵士に何か声を掛けた。するとその兵士は懐から筒を取り出し空に掲げて火を付けたのだ。
それは閃光弾だと気付いた時には辺り一面光に包まれ思わず目を瞑り腕で光を遮った。
その時馬の嘶きが聞こえ光で眩む目をなんとか開けてサクラの方を見てみると、今まさにサクラとダグラス王を乗せた馬が走り出そうとしていたのだ。
俺はサクラの名を叫び必死に走るが結局追い付く事が出来ずその姿を見失ってしまった。
すぐさま討伐部隊を派遣する為城に引き返したが、そこに失意の表情でシルバが戻ってきてどうやらアイラ嬢も拐われた事を知る。その後の調査で拐われたのはサクラとアイラ嬢だけだった事で今回の襲撃はそれが目的だったと思い至ったのだ。
そしてすぐにダグラス王名義でサクラと引き換えに国の引き渡しと、アイラ嬢と引き換えにシルバの命を要求する書状が届いたのだった。




