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・・・ここは一体何処なんだーーー!?



私は高坂 桜。つい最近21歳になったばかりの女子大生。

しかし、今私は凄く混乱している。

だって、目の前には見知らぬ街並みが広がっているから。

しかもその街の造りはどう見ても日本では無い。例えるなら、前テレビで見たヨーロッパのどっかの国の中世っぽい建物だった。・・・例えになってないような・・・。

呆然としながら周りを見回し、ふと自分が手のひらサイズの小さなノートを持っている事に気が付く。


あれ?これ私が趣味で書いてる小説のノートだ。・・・どうして私こんなの持ってこんな所に立ってるんだろう?


私は持っていたノートをじっと見つめて、この状況になるまでを思い出す。


───夜中に自分の部屋でこの書いてた小説が漸く書き終わり、満足と共にもう一度最初から修正箇所が無いか読み直してたはず。そのうち、眠気が襲ってきてそのまま意識を失ったまでは思い出した。

そして次に目覚めたら、何故かこの場所で立っていたのだ。

今着てる服はその時着ていた部屋着の半袖Tシャツに膝までのスカートとルームシューズ。背中まであるストレートの髪はゴムで一つにまとめてある。

ちなみに夢かと思い頬っぺたをつねって痛みを感じたので、これは夢では無いことはすでに確認済み。

やっぱりどう考えてみてもこの状況に説明がつかない。

私がう~んう~んと唸っていると・・・。


「きゃーーーー!!」


何処からか女の人の悲鳴が聞こえてきた。

私は声のした方を探すと、細い路地の向こうで多くの人が大通りでザワザワ騒いでいるのが聞こえてくる。

その様子からここは裏通りで、だから人が居なかったのだと一人納得した。

とりあえず人が居ることに安心しながら、悲鳴が気になったのでその細い路地を抜けて行く。

そして大通りに一歩足を踏み入れて私は固まった。

そこに居た人々はどう見ても日本人では無かったから。様々な髪や瞳の色をした人達がいっぱい居たのだ。しかし、一人も私と同じ黒髪に黒色の瞳の人は居なかった。


・・・本当にここは何処なの?


戸惑いながら人々を見渡すと、みんなある一点に視線が集中している事に気が付く。

私はその視線の先を辿って見て驚いた。


「うわぁ~美少女!」


そこには、地べたに座り込んでいる一人の美少女がいたのだ。

腰まである桃色のフワフワウェーブの髪と美しく大きな青い瞳。

彼女の服装は茶色のワンピースに腰に白いエプロンをしていて、周りには花が散乱しているがどうやら花売りの少女らしい。

彼女が涙を溜めて不安そうな表情で見上げている事に気が付き、その視線の先を見てさらに驚いた。


「うぉ~美青年!」


そこに居たのは紺碧の髪に茶色い瞳の美青年。

黒い騎士の様な服装をしていてそれが凄く似合っていて格好いい!

騎士は彼女を庇うように前に立ち、抜き身の剣を目の前で尻餅を着いて怯えた表情をしている柄の悪い男に突き付けていた。


なるほど!この状況からするに、あの柄の悪い男が彼女に悪さしようとしてあの騎士が助けに入ったんだろう・・・あれ?なんかこの場面最近何処かで見たような?・・・いや、見たと言うか読んだような・・・・・あ!


私は持っていたノートを急いでめくった。そして最初の方の文章を読んで驚愕する。

そこには・・・。


『街で花を売っている事に因縁をつけてきた男に、桃色の髪の少女は突き飛ばされ地面に倒れた。その拍子に花は周りに散乱してしまう。さらに男は手を伸ばし少女を掴もうとした。しかしそこに紺碧の髪をした騎士の男が颯爽と助けに入ったのだ。騎士は激怒して襲ってくる男を軽くいなし、そして地面に倒れた男に抜き身の剣を突き付ける。』


私は驚きつつノートと目の前の光景を何度も見比べた。


そしてこの文の続きだとこの後騎士がこう言うんだよね・・・。


『「二度と彼女の前に現れるな。もし現れたら容赦はしないと思え!」』

「二度と彼女の前に現れるな。もし現れたら容赦はしないと思え!」


一緒!!!!!


騎士は剣を横に軽く振ると、柄の悪い男の頬に薄く一筋の傷が付きそこからツーと血が垂れる。

男はひきつった悲鳴を上げて慌てて立ちあがりその場から逃げていった。


私が信じられないものを見るようにその光景を見ていると、騎士は剣を鞘に仕舞いまだ座り込んでいる彼女に手を差し伸べる。

彼女は惚けた表情で騎士の顔を見つめながらその手を取り立ち上がった。


「大丈夫?怪我は無いか?」

「・・・あ、は、はい!大丈夫です。助けて頂きありがとうございます!」

「それは良かった・・・ただ売り物の花が・・・」


騎士が周りに散らばった花を見回す。


「・・・仕方がないです。今日は諦めて明日また頑張ります」

「そうか、なら明日買いに来ることにしよう」

「え?」

「あの男が本当にまた来ないかどうか確かめる為と、君から笑顔で花を買いたいから・・・ちなみに君の名前を聞いても良いか?」

「ア、アイラです・・・あの、失礼で無ければ騎士様のお名前も伺っても宜しいでしょうか?」

「ああ、シルバだ」

「シルバ様・・・」


そう言って二人は見つめ合い二人の世界に浸っているが、私はそんな事を気にしている場合では無かった。


アイラにシルバ!?名前まで一緒じゃない!!どう言うこと?こんな偶然あり得ない!


「なんだこの騒ぎは!」


私が混乱して頭を抱えていると、突然声が辺りに響き一瞬にして周りのざわめきが止む。

声がした方を見ると、馬に乗りながら沢山の騎士を引き連れて近付いてくる男が見えた。

どうやら先程の声を発したのはこの男の様だ。

男は金色に輝く髪に意思の強そうな碧の瞳をしていて凄い美形な顔立をしている。


「カイル王子!」


シルバは馬上の男の姿を見て声を上げた。


「カイル様」

「王子様だ」

「カイル王子様!」


そう人々が口々に呟きそして次々と頭を下げていく。


「・・・カイル王子?まさかこのキャラまで一緒だなんて・・・やっぱりここは・・・」


私はそう呟きながらカイルを唖然と見つめていた。

すると、私の視線に気が付いたのかカイルと目が合う。

カイルは怪訝そうに私を見てきたが、私は視線を外せないでいた。

すると、私のスカートの裾を軽く引っ張られているのに気が付く。そちらを見ると隣にいたおばさんが頭を下げながら、少し私の方を見つつ引っ張っていたのだ。


「ちよっとあんた、なにボーと突っ立てんの!早く頭を下げないと!」


そう小声で言われてハッと周りを見渡すと騎士以外の人達はみんな頭を下げている。もちろんアイラも。

これはまずいと思いすぐ他の人に習って私も頭を下げた。


うう、何かまだカイルに見られている様な・・・さすがにちょっと目立ってしまった。


「ふん・・・」


カイルは鼻で笑った後興味を無くした様に去っていきシルバに状況説明をさせた。そしてそのままシルバを伴ってその場を去っていったのだ。

王子が去った事でまた辺りに賑わいが戻り人々は普段の生活に戻っていく。

アイラはシルバが去っていった方を頬を赤らめながら見ている。


私はと言うと混乱する頭でフラフラしながら、とりあえず一人になって考えたいとその場を後にしたのだった。

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