表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/26

13

今回はいつもよりかは少しだけ長いです。

細い路地を急いで駆け抜け、大通りに足を踏み出した私は驚き固まった。

目の前に黒く大きな馬がいたからだ。

まさかこんな所に馬がいるとは思わず驚いていると、馬の背に人が跨がっている事に気付きゆっくりと見上げる。

そこには銀色に輝く髪に冷淡な印象を受ける金色の瞳。黒い軍服と黒いマントを身に付けた美貌の男の人がいた。

私は思わずその男の人に魅入ってしまう。すると男も私に気付きじっと見てきた。


・・・凄く綺麗だけど冷たそうな人・・・でもこの特徴的な容姿何処かで・・・・・・あ!


「シュバイン国皇帝ダグラス王!」

「ほぉ・・・私を知っているのか」


思わず声に出してしまった私をダグラスは少し興味を持った目で見てくる。

シュバイン国皇帝ダグラスは即位後すぐに武力で他国を制圧しシュバインを今の大国までにした人物で性格は冷酷非情。


な、何でこんな所にダグラスがいるの!?普通こんな奇襲作戦(本当はアイラを拐うため)は部下だけに任せるものじゃ無いの!?


私の小説に書かれていない部分で、まさか皇帝自ら敵の王都に直接乗り込んで来てるとは思わず驚愕する。


「ダグラス様どうされましたか?」


ダグラスの後ろから馬に乗った軍人が数人現れ、ダグラスの近くで呆然と見上げている私に気付き怪訝な表情で見てくる。しかし、その中の一人がハッとした表情になりダグラスを見て言った。


「ダグラス様!この女、ミネルバに密偵させていた者の報告にあったカイル王子の女かと!」

「なっ!?」

「密偵の話では、今まで見たこともない黒髪と黒い瞳の女で街中の噂になる程の仲だとか」

「・・・本当にあのカイル王子の?」

「・・・っ!」


ダグラスは探るような目でじっと見てきたので思わず私は一歩後ろに下がった。


ヤバイ!なんか非常に嫌な予感がする!!


背中に冷や汗をかきながら今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られている。だけどダグラスのあの冷淡な瞳に見据えられて足が竦み体が思うように動かない。


「サクラーーーーー!!」


その時遠くからカイルの叫び声が聞こえてきた。

その声に呪縛が解けたかのように体が動き、声のした方に振り返る。


「カイル!!」


通りの向こうから沢山の騎士を連れ、駆けてくるカイルの姿を見て安堵と共に嬉しさが込み上げカイルの名を叫んだ。


「・・・噂は本当のようだな」


私はカイルの元へ走り出そうとしたのだが、後ろからダグラスの声が聞こえたかと思ったらいきなり腰に腕が回って引き上げられた。そしてあっという間に馬上のダグラスの前に横座りで座らされ腰を強く抱き締められている。

突然の事に一瞬何が起こったのか分からないでいたが、すぐに状況を理解して私は焦った。


「なっ!は、離して!降ろして!!」

「暴れるな・・・ここで命を落とす事になるぞ?」

「っ・・・!」


ダグラスが私の耳元に低くい声で恐ろしい事を言ってきたので思わず体を強張らせる。


「ダグラス様、例の娘手に入りました!」

「そうか・・・では全部隊に撤退の合図を」

「はっ!」


ダグラスの元に別の兵が近付いて報告をすると、ダグラスは近くの馬に乗った側近らしき男に命令を出した。

そして命令を受けた男は懐から筒を取り出し空に向かって掲げ筒の底に火を着ける。するとそこから何かが勢いよく飛び出しそして空で破裂すると辺り一面が激しい光に包まれた。


「きゃぁ!」


あまりの眩しさに目を閉じ腕で覆い隠していると突然乗っていた馬が動き出す。うっすらと目を開けると馬が後ろに方向転換をしている所だった。

光が完全に収まったのでしっかりと目を開け周りを確認しようとした時、ダグラスは手綱を片手でしっかり持ち馬の腹を蹴って走らせたのだ。


「サクラーーーーー!!」


ダグラスの横から後ろを見ると、目を手で押さえながら険しい表情でさらに駆けてくるカイルの姿が見えた。


「カイルーーーーー!!」


私はダグラスの影から必死に身を乗り出し、カイルに向かって手を伸ばすが腰に回っているダグラスの腕が強くてそれ以上動けない。そしてどんどん馬の走る速度が上りとうとうカイルの姿が見えなくなってしまう。


嘘でしょーーー!?これじゃ私とカイル、さっきのアイラとシルバの状態と同じだよ!? ・・・私一体これからどうなるのーーーーー!?


私はノートに書かれていない予想外の展開に、これから先の事で不安を抱えながらダグラスに連れ去られてしまったのだった。



────ある屋敷の一室。


「・・・様・・・ラ様!・・・サクラ様!」


誰かが私の頬を軽く叩きながら名前を呼んでいたので、沈んでいた意識を浮上させ瞼をゆっくりと開ける。

目の前には、目に涙を溜め不安そうな表情で覗き込んできたアイラの顔があった。


「アイラ?」

「ああサクラ様!良かった目を覚まされて!」


そう言って私の片手をぎゅっと両手で握り締めてくる。

どうやら私はベットに寝かされていたようだ。私は上半身を起こし周りを見渡す。部屋はお城の部屋程では無いけど、上質な調度品が揃えてある事からそこそこ立派な家なんだと思った。


「アイラ、ここは?」

「ごめんなさい・・・無理矢理連れ去られ、あまりの怖さに途中で気を失ってしまったのでよく分からないんです」

「分からないなら良いんだよ。アイラは悪くないからさ」


アイラがすまなそうに見てくるが、私も激しい馬の揺れと極度の不安により途中で気を失ってしまった身なので逆に申し訳無い。


・・・しかし、アイラが連れ去られた場所ってことはもしかしてここは、ミネルバ国とシュバイン国の国境付近にある森の中に隠れて建つ屋敷だと思う。確か小説でアイラがその屋敷の一室で暫く監禁されると書いたから。そしてその監禁されてる時に一人でいると書いていなかったので私も一緒の部屋で監禁される事になったみたい。


私はベットから降り一応入口の扉のノブを捻るが当然開かず、次に窓に近付いて開くか確認したが頑丈に釘で打ち付けてあるらしくびくともしなかった。それに、窓の外を見てみるとこの部屋は三階にあるらしく仮に窓が開いたとしても降りる手段が無いのでどうにもならない。


「・・・やっぱり監禁されてるか」

「サクラ様・・・私達一体どうなるのでしょうか?」

「う~ん・・・」


サクラに拐われた理由を私から話すかどうか悩んでいると、突如部屋の鍵が開けられ扉が開きそこから一人の兵士が入ってくる。そして私とアイラをそれぞれ見てからアイラの方を見て言った。


「おいお前!ダグラス様がお呼びだ付いてこい!」

「え?」

「グズグズするな!早く来い!」

「は、はい・・・」


アイラは不安そうな表情をこちらに向けながら大人しく付いていった。


私は部屋に一人残されたので、ポケットからノートを取り出しこの後の場面を確認する。


・・・とりあえずアイラは大丈夫そうね。今頃初めてアイラとダグラスが対面し、ダグラスからいくつか質問された後アイラがシルバの人質として拐われた事を知る場面なだけだから暫くしたらすぐ帰ってくるはず。


これなら特にアイラが危害を加えられる心配は無いと思い、大人しくアイラが帰ってくるのを部屋にあった長椅子に座りながら待っていた。

そうして暫くしてからアイラが部屋に帰ってきたが顔面蒼白だったので急いで駆け寄り、体を支えてあげながら長椅子に座らせて私もその隣に座り背中を擦ってあげる。


「アイラ大丈夫?・・・もしかして何かされたの?」

「・・・・・いいえ、私は何もされてません。だけど・・・私を人質にしてシルバ様の命を狙う事をお聞きして!・・・っ」


アイラは両手で顔を覆い隠し泣き出してしまった。

私はこんな話にした事に罪悪感を感じながら、アイラが泣き止むまでずっと背中を擦ってあげたのだ。

暫く泣き続け漸く落ち着いてきたのか、顔から手を離し私を申し訳無い表情で見てきた。


「サクラ様ごめんなさい。本当はサクラ様も不安な筈なのに私ばかり悲しんで・・・」

「そんな事気にしなくて良いんだよ!好きな人が自分のせいで危険な目に合うと思えば泣くのは当たり前だから」

「サクラ様・・・」

「大丈夫!絶対シルバは助けに来てくれるから信じて待ってて!」

「ありがとうございます!私サクラ様と一緒で本当に良かったです」


まだ目に涙を溜めながら私に笑顔を見せてくれた。


・・・そう、アイラは物語上絶対シルバが助けてくれるから大丈夫なんだよ・・・・・・問題は私の方なんだよね。私話に登場してないからこれからどうなるかさっぱり分からないんだよな・・・。


そう思っていると再び扉が開き、さっきの兵士が今度は私を見て言ってきた。


「おい今度はお前をダグラス様がお呼びだ!付いてこい!」

「・・・・」


そうなる予感はしてたので私は無言で立ち上り、不安そうに見上げてくるアイラに安心させるように笑顔を見せて兵士の後に続いて部屋を出ていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ