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カイルに連れられ街のある店の前まで来ている。

その店はどうやら宝飾品店のようなのだが、店構えからしてどう見ても高そうだ。

私が戸惑っていると、カイルは気にすること無く中に入って行ってしまう。さすがにこのままでいる訳にもいかないので、カイルに続いて店の中に恐る恐る入っていった。


「いらっしゃいませ」


上品な服を着た店員の紳士が笑顔で出迎えてくれる。

私はキョロキョロと辺りを見回し、カイルが首飾りの並んでいるショーケースをじっと見ていることに気が付いた。

急いでカイルに近付くと、私に気付きこちらを見て尋ねてくる。


「サクラこの中だったらどれが良い?」

「え?」


そう言われて私はショーケースの中を見た。そこには沢山の宝石が散りばめられた豪華な首飾りがいくつか展示してある。

しかし私が気になったのは首飾りに付けてある値札だった。


・・・た、高い!!!!元の世界でもこんなの買える人なんて世界的セレブぐらいだよ!!


「どうした?選びきれないのならここにある物全部でも良いが?」

「いやいやいや!!」

「何だ?首飾りが嫌ならあっちの指輪にするか?」


カイルが反対側にあるショーケースを指差すが、ここからでも見えるほど大きな宝石が付いた指輪が沢山並んでいるのが見える。


絶対高い!!!!!!


「あ、あれも要らないから!!・・・ごめんなさい!わざわざ持ってきてくれなくて良いですから!・・・お邪魔しました!」

「お、おい!」


店員がニコニコしながら、ショーケースの指輪を取り出そうとしていたので慌ててそれを止め、そしてまだ他の宝飾品を選ぼうとしているカイルの腕を掴み強引に外に連れ出したのだった。



店から暫く離れた所で私はカイルの腕を離なす。


「そんなにあの店の商品が気に入らなかったのか?」

「気に入るとか気に入らないとかの問題では無いんだけど・・・」

「よく分からん・・・ならば別の店に行くぞ!絶対お前が気に入る物見付けてやる!」

「本当にそんな事してくれなくて良いのに~!!」


私の訴えも虚しくその後も色々な店に連れ回されたのである。ただ、行くとこ行くとこ高級店ばかりだったので結局最初の店と同じ事を何度も繰り返す羽目になったのだった。



夕方になり私達は今露店が建ち並ぶ通りを二人並んで歩いている。


「・・・・」

「・・・・」


カイルが連れて行ってくれたどの店の商品も全部断った事で、今カイルはぶすーとした表情をして無言でいるのだ。私はその様子に声を掛けることが出来ないでいた。


・・・贈り物をしたいと言うカイルの気持ちは凄く嬉しいんだけど、さすがにあの金額の物を贈られるのはちょっとな~。


どうしたものかと思案していると、ふと近くの露店に置いてある商品に目が止まった。

私は足を止めその商品を手に取る。


「綺麗・・・」


それは綺麗に装飾が施された薔薇の形をしたペンダントだった。


「お嬢さんお目が高いね!それはうちお抱え職人による手作りで一点物だよ。今までで一番良い出来だと自慢してきた程なんだ」

「確かに凄く丁寧に作られてますよね」


店主のおじさんに言われ色んな角度から見たが、本当に全部手作りかと疑いたくなる程に精巧に出来ている。

私が繁々と見ていると横からスッと手が伸びてきてペンダントを奪われた。


「あっ!」

「・・・お前はこう言う物に興味を示すのか・・・おい店主これを頂く。釣りは要らんからな」


ペンダントをじっくり見ていたカイルが店主に向き直り懐からお金を出して渡す。


「こんなに沢山!?カイル王子ありがとうございます!」

「ふん・・・ほら、これなら受け取れるだろう?」


そう言って私の手を取りペンダントを乗せた。

私はあっと言う間の事に呆然としていたのだが手に乗せられたペンダントを見つめ段々嬉しさが込み上げてくる。


「カイルありがとう!凄く嬉しい!!」

「っ・・・!」


さっそく首に掛けカイルに見せながら私は満面の笑顔でお礼を言ったのだが、カイルは私の顔を見ながら目を見開き言葉に詰まって顔を赤くしている。


「カイル?」

「・・・・」

「え?ちょっとカイルどうしたの?」


カイルは無言のまま私の手をいきなり取り足早に歩き出したのだった。ちらりとカイルの顔を伺うと何かを我慢しているような険しい表情をしている。


ただ単にお礼を言っただけなのに一体どうしたんだろう?


私は不思議に思いながら大人しくカイルの後に付いていったのだ。



夕暮れ時で人気の無い広場まで来て漸く足を止めてくれたが手は繋いだままだった。

そしてカイルは私に向き直り少し怒った表情で私を見てくる。


「・・・お前、他の男の前であの表情するなよ」

「え?」

「良いからあの笑顔は他のヤツには見せるな!」

「なっ!何でカイルにそんな事勝手に決められないといけないのよ!!」

「俺が嫌だからだ!!」

「な、何で?」

「・・・本当に分からないのか?」

「分からないから聞いてるんだけど!」

「はぁ~・・・この鈍感女!」

「なっ・・・んっ!!」


突然頭の後ろを掴まれると強引に引き寄せられそして唇が柔らかい物で塞がれた。私は一瞬何が起こったのか理解出来なかったのだがカイルの端整な顔が目の前にある事で、今キスをされている事に漸く頭が追い付く。


私のファーストキスがーーーー!!


悲しいかな年齢=彼氏居ない歴の私にとってこれは人生初のキスだったのだ。


「んっ・・・んんん!!」


私はカイルの胸を叩いて何とか離してもらおうとしたが、いつの間にか繋いでいた手を離して私の腰を抱いていた為びくともしない。

暫く唇を食まれ漸く顔を離してくれたがまだ顔は近いままだった。カイルの綺麗な碧の瞳には熱が籠っているように見える。

私は顔が真っ赤に染まっている事に気が付きながらカイルを睨み付けた。


「ど、どうしてキスなんかしたの!?」

「・・・ここまでしてもまだ分からないのか?」

「そ、それは・・・」

「俺は言ったよな?妃は俺が望んだ女・・・つまり好きな女を妃にすると」

「・・・・」

「俺が妃に望むのは、サクラお前だけだ」

「なっ!」

「俺は絶対にサクラを妃にするからな。覚悟しておけよ」

「んっ・・・!!」


ニヤリとカイルが笑うともう一度私にキスをしてきた。それもさっきよりも深く。


まさかセカンドキスもーーーーー!!


今度も暫く唇を貪り尽くされ、漸く離れてくれた時には体がフラフラだった。その後混乱する私をカイルが宿屋まで送り届けてくれ、去り際に「そのペンダント良く似合っている」と微笑まれながら言われた事で、私の顔から炎が出るんじゃないかと思えるほど熱くなったのだ。

結局私の様子を見た女将さんが夕食時の仕事は無理だと早々に判断され、私は自室のベットにうつ伏せで倒れ込みなんとか眠ろうとしたがその夜は全然眠ることが出来なかったのだった。

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