漸くと終わりが見えた
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魔物の大氾濫が始まってから、3年が過ぎてしまった。士気は当初の8割程度を維持しているが、難しい。非常に困難な状況だ。
魔物に関してはそこまで脅威ではない。油断をしなければやられない程度の魔物しかやって来ていないのだ。まだまだ余裕はある。
あれからは悪魔を殆ど見なくなっているがな。月に1体出てくるのかどうかという所になっている。悪魔の処理も順調に進んでいる。それに関しては問題ないとも言えるんだが、この状態が何時まで続くのかだよな。
後方も結構な事になっているらしく、何度もスタンピードが発生しているらしい。戦力は残して来てあるとはいえ、不安でしかない。
それでも何とかしているのだから流石である。厳しい訓練はしてきているからな。冒険者も後続が育ってきている証拠でもある。いい知らせもあるものだ。
「報告! 報告! フランチェスカ様が元凶の討伐に成功した模様です! 現在はその配下の悪魔との交戦が主になっているとの事! この大氾濫ですが、後1年程度で終わる予定だそうです!」
「漸くか! ……ただ、油断は出来ないか。警戒レベルを引き上げさせる。ヤケクソの特攻があるかもしれない。今以上に警戒させろ。ここまで来て負けましたでは話にならないぞ。油断は禁物。全ての部隊の気を引き締めさせろ」
「あり得ますね。悪魔がどのような存在なのかは今一つ解ってないですし、警戒しておく方がいいでしょう」
「ですね。でも、後1年で終わると言うのは伝えない方がいいでしょう。後2年と言う事にしておきませんか? その方がもし延びたときにも言い訳が出来ないですし」
「それもそうだな。伝令、各部隊には後2年でこの戦いが終わると言う風に触れ回ってくれ。頼んだぞ」
漸く終わりが見えたか。ここからが大変だぞ。ヤケクソになられるのが面倒だ。死は決まっている。ならば華々しく散ろうという考え方を持っていると、どうしても怖い。可能性としては無いとは言えないんだよな。
なんだかんだと3年も戦ってきているんだ。向こうが、領都がどうなっているのかが心配な所だ。何もかもを任せてきたからな。
出来ることは全てやってきた。その結果がこれな訳だが、まだまだやれることは多いと感じるな。戦闘に関しても、まだまだ改善できるところはある。
それを知る事が出来たのも大きな収穫だ。俺達はまだまだ強くなれる。その可能性があると分かっただけでも今回の大氾濫の防衛に参加した意義があった。
「結局、勇者様が何とかしてくれたわけですが、我々としても踏ん張りどころですね。ここからが大変でしょうから」
「ですな。……これだけの魔物を処理するだけでも大変です。適宜処理はしているのはしていますが、追いついてないですからな」
「そこは仕方がないだろう。専門家がいる訳でもないんだ。素人ばかりだとも言うつもりはないが、それでも数が多すぎる。処理し切るのには数年はかかるでしょうね。……あのマジックバッグの山ですからなあ」
「気持ちはよく解る。だが、放置する訳にも行くまい? 折角の資源なのだ。使わなければ勿体ない。既に兆は超えたのか? 途中から数えるのも億劫になって来ていたからな。誰も正確な数は把握していないだろう」
「でしょうね。とんでもない数の魔物が手に入ったのは事実です。それを生かす方向で考えないといけない訳ですが、暫くは冒険者も休むでしょうし、それの埋め合わせになれば良いんじゃないですか? それだけの数がある訳ですし」
魔物の素材を山のように積まれているマジックバッグの中から回収するのは骨がおれるとは思うんだがな。全部を資源にしないと勿体ないだろう?
折角倒した魔物なのだ。資源として欲しいのは当然の事なんだ。食べられるものは食べるし、道具に出来るものは加工する。
それが冒険者ギルドの仕事と言えばそうなのだが、これだけの量だ。どうやって捌き切るのかが問題だろう。それだけ多いのだから。
アルローゼンの冒険者ギルドでも年単位で時間が必要になりそうな気がする量だ。適宜持っていってもらっているとはいえ、まだまだ山が無くなることはない。
しかし、大氾濫を抑えきったのは良かった。大きな損害も特には無かったみたいだしな。……戦死者には見舞金を出しておかないといけないだろう。
その辺りはラウレーリンと相談をしつつの話になるんだろうな。家族がいない場合もあるが、名誉だけは与えておく必要があるだろう。
慰霊碑でも作るのかね? 魔物の大氾濫が終わった際に、終わった記念に何かを作るべき気がするんだけど、何が良いのかだよな。
後は記録としても残しておかないといけない。こういうことがあったという事を、後世に残していかないといけないからな。
記録がないってのが一番の問題だ。こういうことがあったという事をしっかりと記録に残していって、次に備えないと。
次が来ることは確定しているといっても良いんだよ。こんなことが毎回起きるのかって言われたら、起きると思われる。今回が特別だとは思わない方が良い。
だってそうだろう? 1500年前にも1度同じような事がやらかされているんだからな。あの時は職業も無く、勇者も居なかったから全滅に近い被害が出てしまったんだろうと思われる。まあ、何とかなったからこうして生きているんだけど。
俺の知っている昔の更に昔にもあったのかは不明だ。そんな記録は聞いたことも無いんだよな。それでも起きたことが事実だ。受け入れなくてはならない。
「記録を残すためにも戦うしかない。まずは最後まで戦い、勝ち残るしかないんだ。勝ってから後の事を考える方が良いだろう。まだ終わっていないんだ。油断して負けましたでは話にならないからな。全てが終わってからの話になる」
「それもそうですね。兵士の諸君にも、冒険者の諸君にも頑張って貰わないといけないですか。勿論、クラーク様にもですが」
「戦場で指揮を執る人間がいるだけでも違いますからね。その点、マクラーレン侯爵家は恵まれましたよね。こういった機会も与えられたわけですから。まあ、大変不本意ではあると思いますけど。どうしても経験を積めない人は居ますからね」
「これだけの経験を積めたのは幸運でしょう。後は生き残るだけです。クラーク様にも厳重に注意をされた方がいいかと」
「そうですな。ここまで来たからと言って油断をしてはいけないでしょうからな。最後の最後に指揮官を狙う可能性はあります。警戒しておく方がいいでしょうな」
「指揮官潰しか。既に手遅れな気もするが、そうしようと思う輩もいるかもしれないか。特に悪魔の考えることは何かが解らないからな。クラークには周りを固めておくように言っておこう。解っているとは思うが、念には念を入れておいた方が良い」
ここまで来て死にましたでは話にならないからな。折角いい経験を積めたんだ。今後に活かすためにも生き残らなければならない。
まあ、そんな近い未来にそんな事が起きて堪るかって話ではあるんだけどな。何事も備えておく方が良いのは確かだが。
しかし、フランチェスカは何処まで行ってきたんだろうか? 大分元凶を殺すのに時間がかかっていたように感じたが。
なんとなくなんだけど、居場所が解っていたのであれば、すぐにでも突撃しそうな感じがするんだけど、どうなのかね? 一体どこに元凶が居たんだろうか。




