大氾濫はまだ続く
OFUSE始めました。
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「報告! こちらの応援部隊が悪魔の討伐に成功したとのことです。そのまま王軍と共に戦線を上げていくとの報告がありました」
応援部隊を招集してから今までの間で約半年。何とかギリギリの所で食い止められたみたいだな。補給も被害を受けずにここまでこぎつけた。一先ずは何とかなったと言う所だろう。
「こちらが送り込んだ部隊の被害はどうなっている? 何処までの戦力が残っているのかが問題だ。悪魔の強さが今一つ解っていないからな」
「こちらの被害は多少はありましたが、人が死ぬことはありませんでした。既に悪魔を30体程倒しているらしく、そのまま元の戦線まで戻すそうです」
「そうか。被害が少ないのであれば問題はないな。流石に精鋭で固めた部隊だ。失うのは惜しいからな。こちらにも戻したいとは思うのだが……」
「無理でしょうね。向こうの状況を考えると、また何かあった時に困ります。こちらも戦力的には穴が多少は空きましたが、それでも向こうの比じゃないと思いますよ? 戦線が一度崩壊しているんですから、結構な穴が空いている筈ですし」
「そこは王軍が埋めるんでしょうけど、それでもまだまだ足りないかと。そのまま現地で運用してもらった方がいいでしょうね」
「義理は果たしたとは思いますが、引き上げるとまた戦線が抜かれた時にどうなる事か。むしろ向こうも安定させないといけないでしょう」
「それも解る。何度も何度も抜かれては困るからな。そうなると部隊は向こうに置いておいた方がいいか。大きな貸しを作ったと思っておけば良いのかもしれないが、返ってくるとは思わんからな。現状維持でも仕方が無いか」
抜かれる度に部隊を派遣していたのでは面倒が増えるだけで、良い事は特にはない。魔物の強さがどんどんと上がっているのだ。冒険爵を貰えるだけの魔物が出てくる可能性も十分にあり得る。それの対処の方が問題になるんだが……。
一先ずはこれで行くしかない。問題は山のように積まれているが、1つ1つ片付けていくしかない。本当に何時まで戦えば良いんだろうな?
勇者が積極的に行動しているのは知っているが、何処まで行動をしているのかは解らない。さっさと元凶を倒してもらわないとこちらが持たないぞ。
兄さんにしても、フランチェスカにしても、負けるとは思っていないが、悪魔がどの位強いのかが解らないからな。前回の悪魔も相当強かったと思うんだ。そんなのを相手にしているんだろうな。
とにかく、こちらとしては耐えるしかない。耐えて耐えて耐え抜くしかないんだ。選択肢は多くない。出来ることは少ない。
「とりあえずはこれでいいとして、問題は兵士の士気が下がってきていることだ。まだまだ維持できているとはいえ、当初からに比べると徐々に落ちてきている。これについての対策が何も無いというのは不味い。何か案は無いか?」
「と言われましてもですね。既に士気の上がる方法をとっている状態です。酒の適宜解禁もそうですし、料理の質も上げてます。これ以上を求める方が難しいですよ」
「基本的には、戦う、寝る、食べる、飲むが繰り返されますからね。それ以外をねじ込むのは難しい。娼婦も男娼も使っているんです。流石にこれ以上は……」
「士気を上げるために演奏をすることもあるそうですが、そもそもそんな大規模な楽団は作ってないですしね。難しい所かと」
「難しいことは解っているが、どうしようも無いか。どうにかしたいのはそうなんだが、どうにもならないのであれば、これ以上士気が下がらないように努めるしか無いか」
「既に1年半も戦い続けているんです。士気が下がるのはどうしても仕方がない事ではないですか? 諦めるほかないと思います」
「ですね。それよりも、目標を明確に出来た方がいいかと思われますが……。勇者様は何処まで攻略したのかの情報が欲しいですね」
「まず何処の戦線の元凶を倒しに行ったのかが問題でしょう。元凶が複数の可能性も考えた方がいいと思います」
「元凶は複数であるというのは、微妙な所だろう。今回の悪魔の使い方を見るに、強い悪魔程前に出てこない。という事は、悪魔にも序列がある事になる。序列の最上位の悪魔を討伐できれば、現状の事は解決すると思うのだが」
「その場合は、悪魔での序列が変わるだけで、結局は元凶が増える事になるかと。勇者様は恐らくですが、上位の悪魔から討伐しているのかと思います。そうしないと終わらないからでしょうが、1年半もかかっているとなると、どうなんでしょうか」
「大魔境のどの辺りに居るのかまでは知りませんが、相当な奥地に居るんでしょうね。勇者様が負けることは無いかと思いますし」
「結局の所は耐えるしか選択肢が無いのかなとは思います。情報が出てくるまでは耐え忍んで、反転攻勢には出られないでしょうね」
「攻勢には出られない。魔物が魔境から出てこないのであればそれでいいんだ。移動をしているから問題なのであって、移動をして来なければそこまで脅威ではない」
「そうですね。となるとやはり防衛戦になる訳ですけど、どうしましょうか? とりあえずミッチェルハーロウ公爵家に連絡を取ってみるのは」
「そちらになら情報があるかもしれないですし、1つの手ではあります。何時までもこんな防衛戦が出来るわけも無いので、あちらでも何かしらの対処はしているのかなとは思います。……知らない可能性も十分にある訳なんですが」
そうなんだよな。ミッチェルハーロウ公爵家が確実に何かを知っているという訳でもないんだよな。知っている可能性はあるんだが。
こちらとしても勇者との繋がりはあるんだが、如何せん接点が無いんだよ。兄さんもフランチェスカもまめに連絡をくれる方じゃ無いからな。
状況が解り次第、色々と連絡が欲しい訳なんだけど、そういう訳にもいかないんだろうな。難しい所である。無理に報告してくれとも言えないからな。まずは問題の対処が第一。それ以外は優先順位が低いんだ。
ただ、後何年戦わないといけないのかをしっかりと教えてくれると助かるんだがな。未来予知で何処まで見えているのかは知らないが。
こういう状況でも耐えられると思われているからこそ、連絡がないものだと思うんだよな。それだけ俺達の軍が精強だと言う事の証明でもあるんだけど、情報は情報として欲しいんだよ。確度が確かなものしか通達は出来ないにしてもだ。
今の所、綱渡りと言う訳では無い。まだまだ余力はしっかりと残っている。その状態で何時まで戦うのかが問題な訳だ。数でどうにかなるのかという事もある。
負担が大きすぎるのが問題になっているんだが、それは何処の貴族家でも同じことだからな。こっちだけが特別という訳では無い。
強さは特別かもしれないが、同じ人間なのだ。飽きもするし、絶望もする。油断もすることもある。そうして少ないが命も散ってしまっている。ずっと張り詰めた状態を維持するのは不可能なんだ。そろそろ馴染みのある魔物からも死者が出てくる頃合いだぞ。
クラークも一生懸命指揮をしているが、それも単調になっていると聞く。大雑把な命令の方が動きやすいというのもあるんだ。
ある程度は自分で考えて動いた方が楽だと言う事なのだろう。陣形がと色々と考えていたころに比べたら、ごちゃごちゃになって来ているらしいからな。
それでも何とか耐えているのは耐えている。無理なく、被害無くは無理だとしても、最低限度の被害でどうにかしてもらいたいと思っている。
他の戦線も気になるが、まずは自分の所だ。与えられた戦場をどうするのかが一番の課題だろうな。ここは兎も角死守する。それだけなんだ。




