戦線を抜かれる
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大氾濫が始まってから1年が経とうとしているが、収まるどころか酷くなっていっている。魔物の強さがどんどんと強くなっていっている。まだまだ中級冒険者で倒せる魔物が殆どだが、偶に上級の魔物が混じってくるようになった。
それでもマクラーレン侯爵家は余裕をもって倒せている。問題は他の貴族家なんだよな。マクファウスト侯爵家は例外としても、他の貴族家が苦戦し始めている。
マクラーレン侯爵家とマクファウスト侯爵家は冒険爵を沢山排出している。その所為で冒険者の強さが異常なんだよな。だから、まだ比較的戦えているんだよ。
ただそれでも、後ろに通してしまった事例が1度も無いのが凄い所。戦線はしっかりと維持されている。苦戦しながらも何とか倒し切っているのだ。
「補給も問題ないし、このままだったら何時まででも戦線は保てるが、流石に1年間も戦闘しっぱなしってのは辛い所がある。士気も徐々に下がってきている」
「それは仕方がないかなと。戦争でもそうですが、長期間の戦闘行為をやる場合はどうしてもそうなります。まあ、まだ終わりが見えないってのがやばいんですけどね」
「むしろここまでよく耐えている方だと思いますね。他派閥ではやらかした所が多数あるって話ですし」
「アンジェリオニジ公爵派閥とメラントスカーニ公爵派閥、ダルバダラゴーナ公爵派閥だな。東側はそんなにって話じゃなかったのかって言いたくはなる。それでも押されているんだから仕方がない事ではあるんだがな。どうにかしてやることは出来ないし」
「魔物が多すぎるのが問題なんですよね。ここまで来たらもう数がどうのこうのとは言ってられないですから。数えるのも止めてしまいましたし」
「報告! メラントスカーニ公爵派閥の戦線が一部やられました! 現在、内部に魔物がなだれ込んでいる模様! 王軍がこれを止めようと展開している状態だそうです!」
「何処までなだれ込んでいる? メラントスカーニ公爵派閥の後方にはマクファウスト侯爵家の領地と、マクラーレン侯爵家の領都があるんだ。何処で食い止めていられている?」
「現在子爵家の領地で止めているようです。それ以上の情報は入って来ていません。ただ、かなり強い悪魔が複数体出てきたとの報告が上がっています」
「やはり、弱い方を集中的に狙ってきているのか。こちらでは殆ど悪魔は見なくなっているからな。強い悪魔と言えば勇者を当てないといけない訳なんだが、勇者が何をしているのかは解っているのか? その辺の情報があれば教えて欲しい」
「はっ! 勇者様は悪魔を倒すために大魔境へと進んでいるそうです。元凶を倒さないと終わらないそうで。ミッチェルハーロウ公爵家からの情報です」
「となると、防衛に勇者は使えないと言う事か。弱ったな。それで、ミッチェルハーロウ公爵家から何か言われていることがあるのか?」
「はい。悪魔の討伐例が多いのは圧倒的にマクラーレン侯爵家です。なので、悪魔の処理に兵を出せないかと打診を受けております。勿論ですが、拒否されても問題ないそうです。ただ、これ以上進まれると厄介になる可能性があるため、出来るだけ受けて欲しいとのことでした」
「当然そういう話は来るだろうと思っていたが、士気が下がってきているこの状況でか。しかし、ここで兵を出さないという選択肢はない」
「出すのは出せますが、どうやって出すのかが問題でしょうね。ここから何人も出すのは正直難しいかと。兵士をそれだけ抜いてしまうと問題が起きます」
「かといって冒険者を向かわせるのも怖いですし、やはり兵士を送り込むべきでしょう。後方の事を考えると、援軍を出さないのは悪手でしょうし」
「でしょうな。マクラーレン侯爵家の領都があります。そこまで攻められると補給が滞る可能性があるでしょうし、今の状況でも若干の不安はあります」
「各戦線から1人ずつを出してもらうしかないだろうな。流石にマクラーレン侯爵家の領都とマクファウスト侯爵家の領地を攻められるのは不味い。補給的な意味で問題が出てくる。放置はできない。伝令に伝えよ。兵士で腕に自信のある奴をここに集めろと」
「解りました。すぐにでも集めさせます。誰が指揮を執りますか? それも重要になって来るかと思いますけど」
「後方担当に兵士長がいるだろう。そいつにやらせる。ウェンリー兵士長にクラークが選んだ兵士長を1人付けていたはずだ。ウェンリー兵士長にも連絡をこっちに派遣してくれと伝えてくれ」
「解りました。その様に伝えます」
「ミッチェルハーロウ公爵家にはどのように回答しますか? 報告は必須だと思われますが、急いで手配するにしても、どのくらいかかるでしょうか?」
「30日で支度をしろと伝令には伝えてくれ。馬で移動をする。その為の馬だ。使ってやろう。集まって送り出すには60日程度の時間を貰う事にはなるが、こればかりは仕方がない。即応部隊を作っていなかったんだ。時間がかかるが、何とか持ちこたえて貰おう」
「それしかないでしょうね。即応部隊を作っておくと言うのは、リスクがありますから。確かに何かあった時に動けるというのはメリットでしょうが、何もなかった時には兵力を遊ばせているだけになりますし」
「愚痴を言っても仕方がない。やることはやるだけだ。準備に時間をかけすぎるなよ。出来るだけ早くに準備を完了させる」
勇者が出てこれないとなると、どうしても不安が残るんだけど、やるしかないからな。ここまで来て負けましたでは済まされない。
ただ、もうちょっと何とか踏ん張って欲しいとも思うんだけどな。何ともならなかったんだろうな。仕方がない事ではあるんだけど。
とにかく人員を送り込まないといけない。こういう時のために即応部隊を作っておけばという後悔はしても仕方がない事だ。
兵力を遊ばせておくことも大切なんだが、これだけ広い地域を守っていると、どうしても不可能な事を考えてしまう。兵力を遊ばせておく余裕は何処にもなかったんだ。こっちだって色々とギリギリの所を攻めているつもりだからな。
対悪魔を想定した部隊を作って運用しないといけない訳なんだけど、何処まで食いこまれているのかだよな。王軍が対応しているはずだが、横に広がられると厄介だ。補給路が分断されることは避けなければならない。
それに、後方からの攻撃を許すとなると、色々と問題が大きくなりすぎる。戦線が崩壊したのが何処なのかで色々とやらないといけないことが多くあるんだが、その辺りもミッチェルハーロウ公爵家が掴んでくれていると助かるんだが。
出たところで勝負をするしかない。出来ることはやるが、確実に倒せるとは限らない。こちらも死者を覚悟しないといけないだろう。
既に何人もの死者が出ている。アムリタもあるが、間に合わないケースもあるんだ。……それでも何とか死守できている。それを他の貴族家に求めることは、難しいだろうな。兵士の質も大した事が無いはずだからな。
後は考えても仕方がない。兎も角集めて貰わないと行動が出来ない。何処までやらないといけないのかなどは、ミッチェルハーロウ公爵家に確認だな。
悪魔だけを倒せれば良いのか、魔物の被害も食い止めなければならないのかは解らないが、300人程度を送り込めば何とかなると思うんだが。
出鱈目に強い悪魔が出てこなければ勝てるとは思われる。最悪は勇者が元凶を倒し切るまでの時間が稼げればいい。
もっと勇者を輩出してくれとは思うが、それは神様次第な所がある。限度があるのであれば、仕方がない事ではあるんだよ。
もっとも、勇者が何人いるのかなんて誰も知らないんだけどな。ちゃんと10人居るのかも解らない。他国の事も考えると、10人では足りない気がするんだけどな。




