クラークの嫁、ラッテ
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「あたしはラッテ=バズビーテイラーです。確職したため、正式にこちらに来ることになりました。えっと、今後ともよろしくお願いします?」
「ええ、よろしくね。緊張しなくても大丈夫よ。というよりもクラークと同い年でしょう? 確職もかなり前に済ませていたはずだけれど?」
「そうなんですけど、こちらに来るタイミングがあわなくて、ですね。その、本当にあたしでよろしかったんでしょうか?」
「よろしいも何も、侯爵家よりも辺境伯家の方が立場的には上なのよ。それは解っていると思うのだけれど?」
「いや、そういう事じゃないと思うぞ。なんというか、学校で接点が余りなかったけど、何でこっちが指名したのかが解らないって感じだぞ? ラッテを指名したのはこっちだからな。そうラウレーリンから聞いているんだが?」
「指名はしたけれど、最終的に決めたのはバズビーテイラー辺境伯だもの。こちらとしては、クラークが覚えている名前を挙げただけよ」
「多分そこだろう。なんで名前の印象が残っていたのか、だろう? 同期にバズビーテイラー辺境伯家の傍流の子供が他にも居たんだろう?」
「えっと。そうです。あたしの他にも女の子で3人いたはずなんですけど、それでもあたしに指名が来たという事が解らなくて」
「そういう事ね。それはクラークが選んだからね。他の3人の名前も候補には挙がったわ。その中から一番誰が良いのかを聞いた結果なの。選ばれたのがラッテだったわ。理由なんかは聞いていないから、本人から聞く方が良いのではないかしら?」
「本人から聞くのか? それは危険じゃないか? 真剣に決めたのであれば、恥ずかしいだろうし、そういう理由が無かったら傷つくだけだぞ?」
「そ、そうです! 本人からは聞けないです! その、嬉しくはあったんですけど、その、聞くのはちょっと……」
うん。そうだろうな。こう、見ている感じ、クラークに好印象を持っているような感じがするんだよ。その辺は学校で何があったのかは解らないんだけど、何かがあったんだろうな。クラークも指名をしたという事は嫌っていないって事なんだろうし。
でも、それ以上に気になるのは、辺境伯家の傍流とはいえ、こんなに弱気な気質で大丈夫なんだろうかって所だろうな。
ラウレーリンも結構な圧力があるからな。それとは全くタイプが違うんだよ。なんというか、押し切られそうな感じがする。
これがロレシオの、跡取りの嫁ってなるのであれば、ちょっと心配だったかもしれない。けどまあ、クラークの嫁さんだしな。その辺は表舞台に上がる事は無いと思う。
ロレシオに何かあった場合、当主に上がるのはクラークじゃなくてエミリアだろうからな。決定では無いんだけど、多分そうなる。
一応、クラークは予備として置いておくのが確定しているので、そういう事なら軍事関係の仕事をやって貰えばいいかと割り切っているんだけど、そこで嫁さんが強いとエミリアと対立しそうになるんだよな。今回はならないみたいだけど。
どう考えても辺境伯家の人間とは思えないくらいには消極的な人柄である。先頭に立って歩くって感じの人ではないんだよな。
何方かと言えば、歩いて行っているのに、置いて行かれそうな感じがするんだよ。待ってって言いながら追いかけてきそうな感じと言えば良いのか? 言ってはいけないのかもしれないが、幸薄そうな感じなんだよな。
「まあ、いいわ。今後の事に関してを決めましょうか。当面は内政の仕事についてもらうわ。クラークが軍事関係の仕事を覚えているから、そっちに任せようかしら?」
「軍事関係の仕事を任せるのか? それは構わないぞ。やる事も徐々に増えているからな。事務屋が欲しいと思っていたんだよ」
「ラッテは、今までにどんな仕事をしてきたのかしら? 今からは事務処理が多くなるとは思うけれど、それらが苦手なのであれば他の仕事を与えるわ」
「えっと、むしろ事務処理以外が苦手と言いますか。その、軍事関係でも後方支援であれば得意なんですけど、前線に出てってなると、難しいです」
「まあ、そうだろうな。印象からそんな感じはした。問題ないぞ。むしろ兵站の管理を担当してもらえると非常に助かる。兵站の管理が一番重要なんだが、俺もクラークも得意ではないんだよな。部隊を運営する上で必須の事だとは思うんだけど」
「当然よね。補給が無ければ兵士は戦えないもの。ポーションならまだマシだけれど、食事が無いと本当に戦力が機能しないもの」
「そうなんだよな。補給が一番の問題点だ。そこを担当できる人材が来てくれただけでも、こちらとしては大助かりだ」
ウェンリー兵士長が常々言っていることなんだけどな。補給は万全でなければならないと。無いと戦えないんだから仕方がない。
花形は確かに前線で戦う兵士なんだ。だが、それらを十全に使うためには、補給が必ず必要になってくるんだ。
それを疎かにしたら、勝てる戦いも勝てなくなる。ウェンリー兵士長は常に補給の事を考えているんだよ。継戦能力が無い軍隊は、負ける未来しかない、だそうだ。それだけ補給、兵站を重要視しているんだよ。後方支援をしてくれるのであれば、助かる。
いや、実は俺もクラークも前線の指揮を担当するために、その辺が若干苦手なんだよな。俺よりもクラークの方が出来るんだけど。
ウェンリー兵士長曰く、補給に関しては専門家を何人か作るべきだと言う話で落ち着いたくらいには、俺とクラークの適正が無かったって事にはなるんだよ。
それを補佐してもらえるのであれば、大変助かる。補給関係のスペシャリストは必要なんだよ。俺とクラークの苦手な部分を補ってもらえるのであれば、その分の事を別の事に使えるからな。苦手な部分をやるよりも、得意な部分をやる方が効率が良いのだ。
「俺もクラークも補給に関しては、あまり得意な方じゃない。だから、補給や兵站に関係した仕事が得意なのだとしたら、大歓迎だ。今は補給や兵站に関してのスペシャリストを育成している所なんだけど、そこに加わって貰えると助かる」
「は、はい。あたしこそ、戦術や戦略には疎くて申し訳ないのですが、補給や兵站の管理については任せてください」
「いい人材じゃないか。クラークも自分が足りないと思った人を選んだんだろうな。俺はそうじゃないかとは思うんだが、どうだ?」
「さあ? そこまで考えているのかは、私は解らないわね。でも、苦手な部分を補える関係はいいわね。破綻しにくいもの」
そうだろうけど、破綻するって言わない方が良かったんじゃないかな? ラッテも若干ビクッてなってたぞ? 怖い人だと思われてそうだな。
ラウレーリンは怖い人ではないんだけどな。他人に厳しく、自分にもっと厳しいってだけで。悪気はないし、自分以上を他人に求めることはしない。自分で出来ない事を他人に押し付ける様な性格ではないんだよ。
人に頼るって事が苦手な性格なんだよな。難儀な性格だと思うぞ? まずは自分でって考えになるからな。頼れば良いんだけどな。
俺も頼りがいがあるのであれば良かったんだけど、出来ることは限られているし。俺って基本的に錬金術しか出来ないからさ。
それでも何とか内政が回っているのはラウレーリンが頑張っているからだ。俺は出来る事しか出来ないんだよ。もっと出来た方が良いんだろうけど。




