曾孫の顔見せ
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「お久しぶりでございます。お爺様、お婆様。ロレシオでございます。この度は面会の機会を頂きありがとうございます」
「お初にお目にかかりますわ。エミリアです。ロレシオにはいつも良くして頂いておりますわ。そして、こちらが曾孫のマリクになります」
「うむうむ。良く来たの。ゆっくりとしていくがいい。アルローゼンよりも発展はしていないかもしれないが、見るものはあるだろう」
「そうね。ラウレーリンが大きく育てた領都の方が大きいかもしれないわね。でも、見てみるのも勉強よ。違う所を見て、色々と感じて頂戴」
「そこまで言ってもらわなくてもいいですわ。治めるものが違えば、その都市の様は変わるものです。そこに優劣などないでしょうに」
色々と言いたいことはあるけど、怖い話である。向こうからは、何か隠し事があるんだろう? 何を隠しているんだ? と聞かれているのに、それはお互い様だろう? と言ってのけている当たり、流石はラウレーリンだ。俺なんて話す事も出来ない。
ただ、ロレシオもエミリアも、そしてその跡継ぎ候補のマリクも。ちゃんと迎え入れられたようで何よりなんだよな。
初曾孫って訳では無いらしいんだけど、やっぱり子供は可愛いそうで。気持ちは滅茶苦茶解るんだけどな。マリクがもの凄く可愛いんだよ。
ロレシオもこんな感じだったっけ? ……いや、ロレシオの時は俺みたいなのが産まれるんじゃないかって心配をしてたんだったな。俺みたいにはならなかったが。その代わり、フランチェスカがちょっとどころではなく変だったんだけど。
まあ、孫は良いよな。可愛くて。昔を思いだすなあ。ポーションを作っていた孫の顔を今でも思いだせるくらいには可愛かった。……あの後はどうなったのかは解らないんだけどな。
逃げられたなんて思っていない。こんな沿岸部では無かったし、こんなにも暖かい地方でも無かったからだな。
でも、何でこんな和やかなシーンなのに、ラウレーリンは親子で不穏な会話を楽しんでいるんだろうか。不穏な会話が悪い訳では無いが、心臓に悪いのでなるべくしないで欲しいんだけど。楽しんでいるから良いってものじゃないんだよな。
探りを入れられているが、ラウレーリンも話す気は無いみたいで、平行線なんだけどな。ロレシオが苦笑いをしている。解る。解るぞ。
もうちょっと穏便にな? 同じ派閥なんだからやり合っても仕方がないんだよ。まあ、向こうの言いたいことも解るんだけど。
どう考えても食事事情の事を言われている。何を秘密で栽培しているのかって話だよな。主に甘味の話なんだろうけど。
何方も秘密にしておかないといけないものなんだよなあ。まずは寒い空間を作らないといけない訳なんだよ。それが面倒と言えば面倒だが、作ってしまえばこっちのものと言う感じなんだよな。メールベールは栽培に関しては簡単だし。
ロズマリーフに関しては、絶対に解らないとは思うけど。知っている方がおかしいのだ。普通だと存在しない植物なんだし。
けど、甘味って人気があるよな。もの凄く突かれている。それを綺麗に躱すラウレーリンも凄いんだけど、なんだかなあ。
それでも、宝飾品の品質は下手したら負けている可能性があるので、そっちを聞き出そうとラウレーリンも攻勢をかけているんだけど、のらりくらりと躱されている。
似たもの同士、完全に親子だよな。ラウレーリンは母親に似たんだなってのがよく解る。ご隠居様は、既にそちらの会話をスルーして、マリクを可愛がっている。スルースキルがあるとは。どう言った職業なんだろうか。
「ラウレーリン。その辺にしておいてくれ。頼むから。俺の心臓と胃が持たない。今にも悲鳴を上げそうなんだよ。今日の晩御飯の味も解らないかもしれない」
「全く。こんなことで参っていたら今後も困るわよ? この位の事は出来て当然なの。少しでも情報が欲しい時は、探りを入れるべきことなのよ?」
「そうね。欲しい情報というのは、何を犠牲にしてでも手に入れる方が良いのよ。それでも被害は少ない方が良いから、真剣になるのよね」
「勘弁してください。親子でガチガチにやらないで欲しいんですよ。今日は孫と曾孫の顔見せに来たんですから、そっちを楽しんでください」
「親子だからやるんじゃない。ハインリッヒも慣れておく方がいいわよ。親子だからラインを超えてガチガチにやれるの。流石に他家に対してこんな距離で牽制をしつつ、情報をくれなんて言えないもの。その辺は弁えているわ」
「そうよ? どうしても欲しい者以外は、家族にしかこうやって詰め寄らないわよ。でも、いいわよね。甘いものはどうしても高いもの」
「それに関しては仕方が無いですわ。ミッチェルハーロウ公爵家が絞っているのですから。新たに見つけるのにはかなりの時間を使ったもの」
「あら? という事は、複数あると言う事なのですね。ミッチェルハーロウ公爵家が何を作っているのかは解っていないのね」
「……そうですね。複数ありますわ。ミッチェルハーロウ公爵家が同じものを作っている筈がありませんもの」
「あらあら。そうしたら色々と探ってみる必要がありそうですね。複数あるのであれば、こちらも既に持っている可能性もあるのですから」
「それはあり得ますが、私たちの物は確実に無いですから、それは答えを出しておきましょうか。見つかるといいですわね」
うーむ。親子のやる会話ではない。砂糖が重要なのは解るけど、そこまで言うのかって問題があるんだよなあ。確かに甘いものは美味しいんだけど、無いと困るって訳では無いんだよ。楽しみではあるのは解るんだけど。
もう少し穏便な会話にならないかな? 俺もロレシオの方に行きたいんだけど、行くタイミングを逃したからな。こっちに居ないといけなくなってしまった。今から逃げると、こっちに総攻撃が飛んできそうな気がするし。
気配を薄くして、やり過ごすしかないんだよな。曾孫よりも砂糖なご隠居夫人な訳なんだけど、なんだかんだと作れそうな気がするのは気のせいではないと思う。多分だけど、知られていないだけで、既にあると思うんだよな。
問題は、植物知識になる訳なんだけど。俺がこれを育てたから解ったことだもんな。砂糖なあ。現在は1種類しか見つけてないけど、どうなんだろうね?
まだまだある気はしている。砂糖の様な何かが採れる作物があるとは思う。甘味は3種類しか無いけど、まだまだ見つけられそうだよな。
うふふ、あはは、とまあ不穏な会話が続いている。止めてくれるのは何時になる事やら。砂糖が高いのはミッチェルハーロウ公爵家のせいなんだから、矛先をそっちに向けてくれないものかね? こっちは売る気は無いんだよ。
そりゃあね。売れるわけがないんだよな。大量生産をしようと思ったら出来るけど、無理して増やす必要も無いんだよな。まあ、領地内にはしっかりと広めていきたいとは思っているんだけど。
ロズマリーフの雫の方が沢山採れるので、そっちを領地内に広めていっているところだしな。砂糖はまだまだ高級品です。
その内見つかるとは思うんだけどな。何かしらの砂糖が。植物知識からも植物の知識を取り出しては書き留めて言っているし、その内当たると思うんだよな。
それがミッチェルハーロウ公爵家が作っているものとは限らないんだけどさ。何で作っているんだろうな? そんなに難しいものでもないとは思うんだけど。




