やるなら徹底的な離間工作を
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「呆れるわね。徹底的に相手派閥に嫌がらせをしてきたんじゃない。結局は12月の初めまでみっちりと活動してきたのね」
「仕方がないだろう? 向こうも人手不足だって言うし、そろそろこの近辺で人を買うのも色々とバレ始める頃だと思ったんだよ」
「それにしても、ウェンリー兵士長は面白い発想の持ち主ね。盗賊を雇おうとしたハインリッヒも大概だけど、やる事がえげつないわね」
「だな。その点には同意する。俺でもあそこまで悪辣な、用意周到な作戦は思い付かないからな。流石にあそこまでやったら、本気で町が壊滅状態になるんじゃないかって思えてくるから恐ろしいよな。多めにお金を持っていったけど、結構使ってしまったんだよな」
あの後、盗賊団とは別行動をしていたんだけど、町に着いたとたんに、余っている食料とマジックバッグを大量に買おうとウェンリー兵士長が言い出した。
理由は簡単である。余剰を買う事によって、本当に食糧難の状態を作ろうとしていた訳だ。しかもマジックバッグを補充してまで買い漁った。これを村でもやらかすんだから、まあ恐ろしい。村の食料は、本来であれば町に売られるはずだったのだ。
これによって、町は食料不足になり、盗賊団の家族が噂を流し、移民する人を助長する作戦である。それで、手に入れた食料で次の盗賊団を懐柔する。
そうすると、持っていったはずの食料が減らないんだ。水は共同井戸から汲めばいいんだし、支援する度に食料が出ていくはずが、最終的には食料は増えている状態で帰ってきたからな。
冒険者を雇うための支度金や物資を買い漁ったために、資金は減ったが、正直な所微々たるものである。それで住民が買えたのであれば、十分な支出だ。
最終的には盗賊団を40個ほど懐柔し、新領地に送り出している。盗賊団だけで1000人を超える人数だ。家族を含めると、1万人に到達するんじゃないだろうか。そこに、食糧難が来て、噂を聞いた人々が押し寄せる。完璧な策だ。
移民は増えるだろう。それも間違いなくな。民衆を支えるために貴族が支出を絞るとこうなるという現実を見せられた感じだな。
食料が足りないというのは、本当にやばい。少しの工作であっという間に町や都市が壊滅的打撃を受けるんだからな。
軍事も平時もまずは食料だと言うのが今回の件でよく解った。食料が無くなったらどうなるのかは、今回の件で本当によく解った。
民衆を切り捨てないといけない事態にはしたくないものだな。民衆を敵には回せない。味方で居て貰わないと困るんだよ。
その点、ミッチェルハーロウ公爵派閥は農業を主要産業の1つにしている。これは本当に正解だ。農業無くして、人口の増加はあり得ない。
人口を支えるものは、食料だからだ。そこに必要な物として塩や水が入ってくるんだけど、まずは食料。これが無いと始まらない。
塩に関しては、足りない訳がないんだよな。ちょっと前に魔道具の大規模改修をしたんだから、まだまだ塩は余っている状況、足りなければ魔道具を増やせば良いだけである。他の2家も十分な塩を産出しているし、何も問題はないだろう。
乗合馬車も機能しているしな。メインは塩の販売なんだけど。あれだけ領地が増えたんだ。消費する塩も増えて当然。大規模に人を集めたからな。それは仕方がない。
それに、護衛も60日の旅だ。集まるのかとも思ったんだけど、結構集まっているらしいんだよな。言い方は悪いが、120日程度の生活は保証されるんだ。
食事が保証されて、お金が発生する。これは初級以下の冒険者にとっては美味しい仕事らしい。積極的に護衛依頼を受けて貰えているんだそうだ。
まあ、まだ1往復程度しかしてないんだけどな。ただ、帰ってきた馬車には、今回の件は伝えてある。盗賊団も交渉に応じるし、なんなら住民に出来るから、積極的に交渉してくれと頼んである。多分だが、新しい盗賊団も発生しているだろうからな。
食料を買い占めてきたからな。新しい盗賊団が出ても不思議じゃない。それらと交渉をして、住民になって貰えれば儲けものだ。
更にはマクラーレン侯爵家ではポーションが余っているという噂も流している。そして、マクラーレン侯爵家では、タダで乗れる乗合馬車なるものがあるらしいとの噂も流している。
これも全部ウェンリー兵士長の指示だ。定期的に盗賊団が出来るのであれば、定期的に住民を増やせますね? そして、ポーションが足りない冒険者が馬車を利用しますよね? 移民が定期的にやって来てくれるんですよ。良い事ですね。などと言っていたせいだ。
因みに、商人にもミッションが与えられている。食料とマジックバッグを買い占めていってくれと。持って帰ってきたら精算するよと。そう言っている。
塩の売買のついでに、色々と買っていくと、最後にアルローゼンで精算してもらえる。もしくは御者が盗賊団を懐柔するときに買ってもらえる。
確実に売れる商品にしてしまったのだ。当然だが、確実に儲かるのであれば、商人が飛びつかない訳がない。
そんな訳で、敵対派閥には同情することになってしまったんだ。なんという悪辣さ。ウェンリー兵士長は魔物だったのかもしれない。
そして、食料品は王領に売りつけると。なんと、王領では食料品が足りていないらしい。これは鍛冶師と鉱山冒険者を増やすために全力を注いでいるので、その他に回す余力が無いんだそうだ。
更に良い事に、他派閥の貴族家も食料が欲しいらしい。大魔境を開拓するのに、食料は必須だろうなあ。3割増しくらいで売りつけている。
勿論、王領には定価以下の金額で売っているぞ。王族とは縁を繋いでおく必要があるからな。ロレシオのお嫁さん候補も王族の娘だしな。歳は1つ下なんだが、学校でも上手くやれているらしい。向こうの学校が終わり次第、アルローゼンに来るらしいのだ。
準備をしておかなければならない。まあ、ラウレーリンが全部手配しているんだけどな? 勿論、高級品の山になっているぞ。
ベッドもかなり奮発して作っていたし、ヴェノムスパイダーの糸で作られた布もかなりストックしているという情報を貰っている。
懐柔する気満々なんだよな。まあ、上手くやってくれれば良いんだけど。ロレシオがどう思っているのかだよな。問題はそこである。一応意思確認はしたが、実際会ってみて嫌だったという事もあるだろうからな。
使用人からの連絡では、仲良くやっているらしいが。内面、どう思っているのかは解らないからな。その辺は帰ってきてから聞いてみよう。
そんな訳で、色々と準備はしている。そして、ウェンリー兵士長がやばいという事だ。敵じゃなくてよかったよね。敵だったら、内政のダメージだけで相当な苦労をさせられていると思うんだよな。相手になっている貴族家には、同情するが。
でも、派閥間抗争だから仕方がないんだよ。どう頑張っても味方にはならないんだよな。派閥を見限ってこっちに来るのであれば、歓迎はするけど。
その判断が出来るのかどうかだよな。領民の事を何処まで考えているのかだよ。貴族の本質はそこだと思うんだよな。
領民のために、周囲全てを敵に回せるのか。そういう判断が出来るのであれば、歓迎しようと思う。その決断はかなり勇気の必要な事だし、周囲を頼れない内政が始まるからな。まあ、こちらからはちゃんと支援はするけど。
その辺、乗合馬車は便利よな。支援に向かわせても何も不自然に感じないし。そういう効果もあったのかと思っている。
まあ、それでも暫くは平和に内政が出来そうだな。新領地の人口問題も何とかなる可能性も出てきたし。ロレシオが帰ってきたら、1年間は勉強に新領地を任せても良いよな。




