住民候補が俺を待っている
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結果的には、60人規模の盗賊団だった。その内40人近くが確職前。これはちょっと問題が大きすぎると思うんだが、どういう事なんだろうか。
どう考えてもおかしいんだよ。食料が足りないのに子供を作るなってのは、まあ出来たものは仕方が無いとは思うんだけど、普通はスラムでも食糧支援くらいはするぞ?
最低限度でも、領民が飢えない程度の食料は貴族の意地で何とかすると思うんだけど。他の貴族に借金をしてでも食料は与える筈なんだが……。
だってそうだろう? 確職したら有用な職業でしたって事が起こりうるんだよ。それなのに、確職前の子供を捨てる意味が解らない。
確職した子供が、使えない職業だったから捨てられるというのは、ちょっと可哀そうではあるが、解らないではないんだよ。でも、確職前の子供を捨てる? あり得んだろう。
まあ、捨てられているものは拾ってみる価値はあると思うんだよな。とりあえず、食料と水の支援をして食わせたんだが、肉も食い慣れていないんだろうな。干し肉だから噛みちぎれないみたいなんだよ。大分弱っているな。
「なあ、どう考えてもおかしいだろう? 領民が飢えているのを見ている貴族は居ないはずなんだが、何があったんだ?」
「解らねえ。俺たちも知らねえんだ。でも、いつも食料を持ってきてくれていた人が、もう出せないって言ったんだよ。これ以上の支援は無理だって言ったんだ」
「ハインリッヒ様、恐らくですがあの件でしょう。大魔境を開拓するって準備しているじゃないですか。多分、あれに食料も含まれているんじゃないですかね? そうでなければ、確職前の子供を捨てるなんてことにはならないはずです」
「あー、あれか。あれの所為か。という事は、末端から搾り取る様にしている訳だ。……失敗する未来しか見えないな。末端を切り捨ててまでやる事じゃない」
「でもですよ? 逆に言えば、これはチャンスでもある。大分寄り道することになりますが、色んな領地を回りましょう。こいつらと同じ境遇の奴らが沢山居るって事になります」
「それは、確かにそうだな。食料は足りているし、水も問題ない。12月までかかると思って準備をしていたからな。まだ6月だ。寄り道しても十分に帰れる。周辺から買うのも限界に近いだろうし、ここら辺で人を漁っていくか」
「そうしましょう。使える人手なら歓迎できますし、そもそも食料なんて余っているんですからどうとでもなります。領民を迎えに行きましょう」
「そうだな。それが良い。資金的にも余裕があるし、支援体制も整えられるからな。問題は何処にどれだけ配置するのか、だが」
「そこは代官の腕の見せ所でしょう。なるべく均等に配置してもらう事で良いじゃないですか。差配は代官任せでも上手くいくと思いますよ? 割と優秀そうでしたし」
「そうだな。どうせ俺がやったところでいい方向に進むとは限らないんだから、代官に任せるか。遅くなってもこれなら言い訳が出来るしな」
「すみません、旦那方。その、大変いいにくいんですが、もう少し食料を出してもらっても良いですか? 子供らがまだあるなら食べたいと」
「お? おお、すまんすまん。足りなければ言ってくれ。余裕はあるからな。腹いっぱいに食わせてやってくれ。ただ、そうだな。お前たちの今後についてもあるから、食事が終わったら一度こっちに来てくれ。支援の物資と手紙と地図を渡す」
手紙は必要だろう。ちゃんと筋を通しておかないとな。代官に悪いし。まあ、人材不足なんだから諸手を挙げて賛同してくれるとは思うけどな。
地図も無いと無事に目的地に着けないからな。この辺りの周辺の地図と、真っ直ぐの道を書いてやれば何とか辿り着けると思うし。
最悪、北上していけば領地には辿り着くだろう。隣もマクファウスト侯爵家の飛び地だしな。融通は効くだろうし、そっちもそっちで人材不足だろうからな。
まあ、できればマクラーレン侯爵家に来てもらいたい。人材獲得競争は熾烈なんだ。ミッチェルハーロウ公爵派閥は絶賛人手不足だからな。居ないよりも居てくれるだけでもありがたい。子供でも何でも仕事は沢山あるんだよ。
「ウェンリー兵士長、とりあえず周辺の地図と、道のりの地図を書いてやってくれ。俺は代官に宛てた手紙を書くから」
「解りました。それにしても、人材が余っている所は余っているんですねえ。こっちはあんなに足りない足りない言われましたからね。ちょっと贅沢にも思えますよ」
「言ってやるな。嫌味にしても、ちょっと強すぎる。大魔境の開拓の余波がこんな所にも出てきているとは思わなかったけどな」
「この分だと、10日分くらいの食料と水を200人分くらい持たせないといけないでしょうなあ。多分ですけど、普通に家族総出で移動しますよ? 下手をすると町の10分の1くらいが移住する可能性もありますけどね。60人の盗賊団を助けたせいで」
「考えては居たけど、その位移動してもおかしくないんだよな。60人全員が血縁って訳ではないだろうし、同じ町出身かも怪しいからな。なんだかんだ言いつつ集まったら、それくらいになるかもな」
「こっちとしてはありがたい事ですけどね。数千人規模で移動してもらえると多少の人手不足の解消になりますし」
「だよな。何処で何をしていたとか、関係ないからな。働けるのであれば働いてもらえば良いんだよ。それで万事解決。人手不足はもうちょっとかかると思うけどな」
「後はついでに噂も流してもらいましょう。マクラーレン侯爵家では、食料も仕事も余っているんだと。冒険者も沢山求めているんだと。ついでにポーションも余っているらしいと。そんな感じで、町中に噂を流してもらいましょうよ」
「悪辣だなあ。流石はウェンリー兵士長だ。町を空にするつもりか? 正直な話、町の住民が10分の1も動いたら、機能不全を起こして、本気で全員が移住する可能性があるぞ?」
「でも、結局は他派閥の貴族家でしょう? ミッチェルハーロウ公爵派閥であれば、そもそも食糧難なんて起きていないはずですから、それで乗ってくるのは他派閥の貴族家だけです。何も問題はありませんよね?」
「問題はないな。何も問題ない。他派閥の貴族家が泣きを見ても、俺たちは困らないしな。堂々と引き抜いてやろう。よし、手紙は書けたぞ。地図はどうだ?」
「簡単にですが、この辺の地図と真っ直ぐの道は書きましたよ。これで到着できるでしょう。多少は土地勘があるでしょうから、この地図があれば迷わないでしょ」
盗賊君たちには悪いが、宣伝も一緒に行ってもらおう。そうしたら一気に住民が流れ込んでくるんだろうが、別に問題ないよな。ついでに冒険者も雇って護衛してもらうように入れ知恵をしておかなければ。冒険者も引き抜きたいし。
居ないよりは居た方が良いだろうからな。まあ、盗賊と出くわしても、もしかしたら、同じ境遇の人たちかもしれないし、どんどんと広めて貰えば芋づる式に住民が増える。
しかし、これで大魔境の開拓をして、今後はどうする予定だったんだろうな? どう考えてもそっちの方に人手も準備した方がいいはずなのに。確職前の子供とか大歓迎だよな。農家系統の職業が出てきたら即戦力だからな。
「そんな訳でだ。このマジックバッグにある程度の水と食料を用意した。君たちの仕事は、引き連れたい人たちを引き連れ、冒険者を雇い、噂を流してもらう事だ」
「解った。解ったが、本当にこれだけで良いのか? もうちょっと無茶な要求もあると思っていたんだが……」
「何、出来る範囲で良いんだ。君たちという労働力を確保できただけでも上出来なんだ。ああ、盗賊と出くわしたら、そっちも説得してみてくれ。住民は大歓迎だ」
後はこの一帯の準男爵家や男爵家の領地を一通り巡回して、盗賊にならざるを得なかった人たちを懐柔するだけだ。これも内政の1つだからな。




