ポーション解禁
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全ての家の発表が終わって、ざわざわとしている中でも、ミッチェルハーロウ公爵は堂々とした佇まいでそれらを見ていた。直ぐには収まらないだろうからな。
まずは現実を直視しないといけないんだから。寝耳に水状態の貴族たちを大人しくさせるにはまずは時間が必要だという事をよく解っている。まあ、ミッチェルハーロウ公爵もこの成果の現実を受け止めるのには時間がかかっただろうからな。
一通りざわつきが収まりつつあるところに、ミッチェルハーロウ公爵が声をかける。ここからの話が解っているこちらとしては、聞き逃してもらっては困るんだよな。
「さて、転封となった者の中でも領地の追加があった者と、完全に移動したものが出てきたのは解ったと思う。さて、これからの問題の話をしようか。主要産業の話だ」
まあ、だろうな。その話が始まる事は解っていた。どう考えても主要産業を立て直すまでには時間がかかる。下手をすると30年がかりで主要産業を決めることもあるだろう。
その位には重大な問題だという事なんだよ。移動をしなかった貴族家の方が有利であってはならない。それは誰もが思う事ではある。
「今回、完全に移動をしてもらった者たちについては申し訳なく思うが、新たな産業を探して欲しい。だが、そんな事に時間を取られてしまっては何も出来ない。故にこちらで1つ産業を用意した」
ざわつきが大きい。産業を用意するというのがどれ程の事なのかを解っているのは貴族だ。これが大した産業でなかった場合は、10年以内に産業を見つけないと内政の軌道にすら乗らない。それでは領地運営上不味いのだ。
俺たちは高みの見物を出来るんだけど、他の知らない貴族にとっては衝撃的な内容だろうな。まさかそんな事が出来るのかって感じで。
出来てしまうんだから仕方がない。出来てしまったんだから仕方がないんだよ。これからはミッチェルハーロウ公爵派閥全体でやっていく産業になる。ポーションを作って他派閥に売るという産業が出来上がる。これは凄いことなんだよ。
「それが、ポーションを製造する技術である。職業によらず、ポーションを誰にでも作れるように、マクファウスト侯爵家とマクラーレン侯爵家がしてくれた。そうだ。大量のポーションはそうやってして作られていたのだ。それをミッチェルハーロウ公爵派閥で共有する」
ざわつきが更に大きくなった。ポーション作成の解禁である。今までは錬金術師や医師、薬師等の職業でしか作れなかったポーションを技術で作れるようになる。
これは革命的と言っても良い。それ程にポーションというものは貴重で、売るなんてとんでもないものだったのだ。
その常識が、今日、この場で、覆される。
「マクファウスト侯爵家とマクラーレン侯爵家が共同で開発した内容だ。間違っていては困るという事で、まずはミッチェルハーロウ公爵家、バズビーテイラー辺境伯家でも作成可能なのか、量産が可能なのかの試験を行った。実際に受け取ったポーションを使っていただろう? それが成果だ」
そうだな。ポーションを初めは買っていただろうが、途中で支援になったはずだ。それだけの量産化に成功したという事である。
勿論、マクファウスト侯爵家とマクラーレン侯爵家がタダでミッチェルハーロウ公爵家に渡したわけではない。対価はちゃんと貰っている。
今回は許可しただけだけどな。これは早急にするべきだった事案なんだ。もっと早く普及させるべきものだったんだよ。
俺はそう思う。誰でもポーションが作れるという環境を作る方が良いと考えていたんだよ。独占できることはするべきだが、ポーションは広く普及されるべきものだ。
魔境を攻略しようと思ったら必要不可欠の物だからな。それを1つの家で独占するなんてとんでもない。早く共有するべきだったんだよ。
まあ、ラウレーリンも駄目だって言っていたからちゃんと言わなかったけどな。独占した方が儲かるのはその通りだ。貴族的にはそれで間違っていないんだよ。
流石に他派閥にもって考えるのはちょっとって思ったけどな。明確に敵対している所もあったし、そういう所に教えても利益にならないどころか、マイナスになる可能性もあったからな。アワーバック伯爵とかアワーバック伯爵とかアワーバック伯爵とか。
「ポーションの量産化の技術を解禁する。完全に転封になった者については、既に町と都市で、バズビーテイラー辺境伯家が量産化を始めている。心配することは無い」
バズビーテイラー辺境伯家にも教えてあったから、早急に対応できたのはそういう事だろうな。素材の栽培方法から、量産の魔道具化までの工程を既に行っていると。
その方が早く普及するからな。とてもいい考えだと思う。準備をしてくれたバズビーテイラー辺境伯家には感謝だな。結構な労力だと思うんだよ。
「その他の貴族家にも、ミッチェルハーロウ公爵家もしくはバズビーテイラー辺境伯家から技術者を派遣する。1年以内にはポーション各種が量産可能になるだろう。そして、その素材の育て方もしっかりと教え込むつもりだ」
素材は採取してくれとは言えないからな。量産したければ素材は必須。ちゃんと畑で取れるようにしておかないと、供給が間に合わない。
マクファウスト侯爵家とマクラーレン侯爵家が出張らないのは、これ以上何かをすると、内部で割れる可能性があるためだ。
一番の懸念材料はそこなんだよ。ミッチェルハーロウ公爵派閥が割れる。この事態が一番駄目なパターンだ。内部に亀裂があるだけでも危うい。
当然だが、他派閥はそういう所から切り込んでくるからだ。亀裂を大きくするところから始めてくるだろう。寄子の取り込みは不可能だからな。誰も勝ち馬から降りるなんてことは無いんだよ。勝っている限りは、寄子は逃げない。
だから、上位者たちの亀裂を作り、内部から崩壊させていくのがやり方としてはベターだろうと思う訳だ。
特に今回昇爵したマリンネグロ侯爵家に関しては、一波乱あるかもしれないという事で、戦争が終わってから直ぐにポーションの作成方法を教えていたらしい。
あの戦争で勝ち過ぎて飛び地を貰ってしまった事件で、もしかしたら不味いかもしれないという事で教えていたんだと今回聞かされた。俺はラウレーリン経由で知っただけなんだけど、早く教えてあげれば良かったのにと思ってしまった。
「ポーションを作り、冒険者を呼び込み、魔境での狩りを活性化させ、余剰を他派閥の貴族に売り込むことで、税の問題と外貨の獲得を同時に行うものとする。これに関しては、他派閥に決して漏らさぬように厳重に管理をしてもらいたい」
当然だけど、他派閥には内緒だからという事なんだよ。他派閥と繋がりがある貴族家の方が少ないんだけどな。でも無い訳じゃない。
俺たちの所の寄子もそうだ。アンジェリオニジ公爵派閥の貴族家との繋がりが若干残っている。隣の貴族家とか特にな。
そんな所にもバレないようにするんだぞという御達しだ。バレても問題ないんだけどな。積極的に広めていかないだけで、盗まれる分には仕方がないと思っているから。
その位知っていても大丈夫だと思う訳なんだよ。どうせ誰かが植物知識を育てることを決めたら、素材の栽培方法はバレる訳なんだから。
錬金術の方はバレるのかは解らないけど。錬金術師に関しては、そう言った知識系のパッシブスキルは無いみたいなんだよな。なんでないんだろう。
「今日を境に、ミッチェルハーロウ公爵派閥は確実に躍進する。他派閥から頭3つは飛び出ただろう。早々挽回できる差ではない。だが、これで留まる事は決してしない。今は領地をしっかりと治めることをしてもらう。だが、20年後には更なる開拓をしてみせようぞ」
代が変わっていると思うけど、まあそれは言わないで良い事だからな。次の代でまた躍進するのか。ロレシオに代替わりしていると思うが、楽しみだな。




