乗合馬車の本当の効果
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「そう言えば、夜会は良いとして、ミッチェルハーロウ公爵家も領土を獲得するんだろう? そっちは大丈夫そうなのか?」
「大丈夫じゃないから積極的に奴隷と称して人員を買っているんでしょう? それに他の貴族家も大量に昇爵するわ。それに人を宛がわないといけないから」
「ああ、派閥長だから、自分の領地のこと以外にも気を配らないといかないのか。ん? 俺たちの寄子はどうなるんだ?」
「流石に昇爵を見送るわよ。大開拓が始まった後に入ったんだもの。貢献度も何も無いわ。昇爵は見送りね。もっとも、昇爵したから良いという簡単な事でも無いんだけども」
「だよなあ。産業を1から作り直さないといけない家も出てくるだろうしな。転封もやるんだろう? まずもってだけど、地元に産業があるタイプの家は軒並み産業の転換を求められるだろうな。俺たちが関わった所だと何処だ?」
「マクファウスト侯爵家の寄子のアキンボルト準男爵家が転封になるわね。あそこは白磁器が主要産業だったから、粘土が取れなければ生産出来ないわ」
「ああ、あそこが転封になるのか。男爵に成れるのは良いとしても、主要産業の変更は痛いな。白磁器は結構な人気商品だっただけに辛い所だろう。転封先にも粘土が取れる鉱山があればいいんだけど、その辺はどうなんだろうな?」
「詳しい所までは解らないわね。他は昇爵はあれど、基本的には転封で大移動になる事は無かったわ。大移動になっていたら、殆どの貴族家が産業の作り直しだもの」
「だよなあ。領民を連れて出ていく訳にもいかないし、その地の産業を引き継ぐことはするだろうしな。とりあえず、アルマーテラー準男爵家が動かなかって良かったと思うべきだろうな。あそこが動くと、馬の入手先が無いんだよな」
「大事なお得意様だものね。今後も買い込むんでしょうけど。まだまだ馬を増やす気なんでしょう? 馬車便を増やさないといけないものね」
「そうなんだよな。馬車便はどうしても増やさないといけない。飛び地への移動が出来ないとか止めて欲しいからな。移動は出来た方が便利だ」
「そして、利用者の99%が商人になるのね。割と便利らしいわね。護衛日も一括で済むし、マジックバッグを馬が運んでくれるから、楽だし早いと評判ね」
「だから商人はそもそも自分の馬車を用意して、商隊を作って皆で移動をすれば、費用は格段に抑えられるんだって解って欲しいんだけど」
「皆の行先が同じならいいけれど、違うんでしょう? それにまったく同じルートで商売をするのであれば、商品が丸かぶりになるじゃない」
「それでも出し抜きつつ商売できると思うんだけどな。今は乗合馬車の方が便利だから、皆そっちを使うんだろうけど」
「けれど、文官もちゃんと文官学校へ送り出しているもの。商売人以外も使っているのは確かよ? まあ、馬車が空席でも荷物を運ぶのに使えるから、結局は商売に使うのだけれど」
「そうなんだよな。でもそうじゃないんだよな。もっと移動をして欲しいんだよな。旅行という楽しみが貴族にしかないのが問題なのかね?」
「平民が旅行なんて聞いたことが無いもの。貴族くらいじゃないかしら? しかも貴族側も仕事で移動する場合が殆どで、遊びに行くなんて滅多に無いのだけれど」
「あと、使っているのは王都からくる難民と、冒険者なんだよな。色んなところからアルローゼンに集まってきているんだよ。何処にも宣伝していないのに、何で乗って来るのかね? それが未だに解らないんだよな」
「……ハインリッヒ。貴方本当に解ってないの? 貴族家がその都市と王都を往復させるためだけに馬車を運用しているのよ?」
「まあ、他の飛び地ともやっているけどな。流石に旧アワーバック伯爵領の方から乗ってくることは少ないけど、王都側と旧王領側からは結構冒険者が流れてきているよな」
「そうね。そこまでわかっているのであれば、おのずと答えが出るとは思うのだけれど、出ていないのよね?」
「解らん。俺には何で集まってきているのかが解らん。移動に便利なのは解るけど、それだけだろう? 確かに商人の使用率が一番高いのは解っているけどさ。冒険者がわざわざ乗るのかって話だろう? 何で乗るんだよ」
「一番考えられることは、自分たちも護衛に雇われれば、暮らしていけるって事なのよ。他の領地はそもそもポーションが少ないの。それでも生活をしないといけないから魔境に潜るのよ。でも、馬車の護衛はそもそもポーションが要らない可能性があるでしょう?」
「まあ、盗賊が出てくるか、突発的な魔物が出てこなければ、ポーションなんて使わないで済むわな。スタミナポーションは解らないけど」
「でしょう? だから、魔境で危険を承知で魔物を討伐してお金を稼ぐよりも、乗合馬車の護衛をしていた方が安全なの。多くの冒険者はそれを狙って来ているのよ」
「なるほどな。確かにそれだと、食いっぱぐれないし、安定した収入が約束されるもんな。移動中の食事さえ何とかすれば金は入ってくるし、そもそも戦闘なんて少ないからな」
「ええ、だからそれを狙っていたのではないかと思っていたのだけれど、本当にそんな事まで考えていなかったの?」
「考えていなかったな。平民も旅行ができれば、お金も落とすだろうし良いだろう。程度にしか考えていなかった。乗合馬車を商人が使うとも予想していなかったし、冒険者が護衛依頼を受けたくて乗ってくることも想定していなかった」
「私は聞いた時に面白い所から冒険者を引っ張って来るのねと思ったのだけれど、何も考えてなかったとは思わなかったわ」
「あの時は、ウェンリー兵士長と話している時に旅行に行きたいって話を聞いてたからな。行けばいいじゃないって思ったけど、思ったよりも手段がないって事でこうしたんだよ」
「多分だけど、ウェンリー兵士長はそんな乗合馬車を運用するとどうなるのかをしっかりと予想していたと思うわよ」
「……だろうな。自分の利益の為だけにそんな事を言い出す方が珍しいからな。駄目だと言われた時にこういう効果もあるって説得する材料だったんだろう。直ぐに乗り気になったから、俺にはそんな事を言わなかったんだろうけど」
「でしょうね。さて、ハインリッヒ。ここまで色々と解って来たのであれば、次はどうするのがいいかしら?」
「いや当然だけど、領地の周回はさせるぞ? 護衛に来ている冒険者が多いのであれば、護衛の仕事を増やさないといけないし。それと、寄子たちの所にも乗合馬車を出すべきなんだろうな。方角的には西北西の方向に伸ばすべきなんだろうな」
「そうね。商人も使いたいだろうし、護衛の冒険者の確保も出来る。それに金に釣られた冒険者が普通に魔境で活動することも考えられるわね」
「だよな。考えてみたら、乗合馬車をやっているって結構な金が必要だし、それを払えているって事は、金払いが渋い訳でもない。冒険者からすると、お金をくれる貴族家の領地に行くのは必然ってなってくるよな。寄子の所にもポーションは沢山売らないといけないか」
「そうね。寄子たちから冒険者を引き抜く訳にはいかないもの。その辺の気配りは大事よ。寄子に離れられないようにしないとね」
乗合馬車にこんな効果があったのか。……まったく解らずに運用してたぞ。移動に便利くらいしか考えてなかった。
移動はもの凄く便利になったとは思うぞ。……99%の利用が商人であったとしてもだ。商人の費用も抑えられるし、いい感じだよな。
最終的にはかなりの本数を走らせるから、護衛も沢山必要だしな。今の内から冒険者が集まって来てくれるのは本当にありがたい。




