占領開始
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砦が順調に落ち過ぎている。北が8つ、南が7つ落ちている。既にミッチェルハーロウ公爵派閥の軍は占領を始めている。後は後詰の兵を待っている状態だ。
普通は砦を落としてから後詰の兵士を要求するから、何十日も待つ必要があったんだけど、そこはこのウェンリー兵士長が手を回していたからな。結構な数が送られてきた。
「流石はラウレーリン様ですね。ハインリッヒ様の予想を大きく超えて来ましたか。ここまで用意していただけると、広範囲で占領が出来ますね」
「まったくだな。まさか200万人規模で集めるとはな。この分だと領地内の冒険者の半分はいなくなっているはずだぞ」
「旧アワーバック伯爵領からも大量に呼んでくれたんでしょうね。ありがたい事です。しかも、手紙にはミッチェルハーロウ公爵派閥に手紙を送って後詰を送る様に手配してくれている。幾つかの予定を繰り上げる必要がありそうですね」
「いやいやいや、予定を繰り上げるって出来るのか? 今でもかなり急いでやっていると思うんだが? これ以上に急いでどうする」
「急いで占領しないと後ろが詰まってきますからね。さて、そうなってくると砦を攻めるのを早める必要がありますね。少しばかり無茶をしてもらわないといけないかもしれません」
「兵士をすり減らすような事はしてくれるなよ? 今までの兵士の損害は0だ。冒険者含めてな。まあ、0ってのもおかしな話ではあるんだけど、余り殺さないでくれよ? 後々面倒になってくるんだから、生きて返してくれることを願っているよ」
「生きては返しますよ。ちょっと強引に砦を落とすだけです。煮炊きが無くなる前に攻め落とすので、作戦が必要になるんですが、それについても考えてあります」
「作戦ねえ。そんなに都合のいい作戦があるのか? なんで今までやらなかったと言う事にもなってくるんだが、何をやるつもりなんだ?」
「今まではそこまでする必要が無かったからやってなかっただけですよ。まず作戦ですが、砦を超える高さの土壁を四方に展開します。それで後は水属性魔法で水を大量に土壁の中に送り込めば良いんですよ。鎧を着ていない兵士なんていないでしょう? 確実に水死体ができます」
「……確実に殺しに来ている作戦じゃないか。しかも安全性もある。早期に砦が落ちるだろうな。まあ、水死体を片付ける方が面倒そうだが」
「それは向こうの守備軍にやって貰いましょう。砦が水浸しになるので、砦が使えなくなるんですが、使う必要も無くなりましたからね。存分にやれます」
「確かに後は占領軍として運用するだけだろうからな。別に野営でも構わない訳だし。だが、敵兵が可哀そうになってくるんだが?」
「可哀そうなのは仕方が無いですよ。戦争ですから。戦争に参加している兵士は、生きていても死んでいても可哀そうなのには違いないんです」
「言いたいことは解るがな? それをお前が言うのかと言うのもあるんだぞ? ウェンリー兵士長。好きにやれと言ったかもしれないが、ここまでやるとは思ってもいなかった」
「私の仕事は、最低限度の消耗で最大限の戦果だと思ってますからね。出来る限りやってみせますよ。後詰が届いたので、展開させている訳なんですけど、薄く広くを心がけて占領をしていきます。無駄に時間をかけても無意味ですしね」
さて、ラウレーリンから200万を超える援軍が届いたわけなんだけど、これを使って占領に入る訳なんだよ。やって貰う事は、前の戦争と変わらないんだけどな?
外周に戦争に参加しても良いと言っていた兵士を送り込んで、向こう側の守備兵を殺して回る。主に町や都市での話になる。
村には兵士を置いていたりはしないだろうから、村は放置。村長が反抗的であれば殺すって感じだな。それ以外は放置でいい。
町や都市も行政区画の所が反抗的なら殺してしまうのが良いだろう。無駄に殺す必要は無いとは思うんだけどな。できればそのまま統治して欲しい。
問題があるとするならば金なんだけど、金なら幾らでもあるからな。それを使ってガンガンと占領をしていくんだよ。維持費なんて考えなくても良い。考えるだけ無駄な金額が積み上がっているんだから、どんどんと占領場所を増やしていくだけなんだ。
ただ、200万人を超えると言っても、侯爵領を1つ分も占領できない。だから、ラウレーリンは他の貴族家にも占領軍を送れという指示書を出したという訳なんだろうが。
歩調を合わせてくれるのかどうかだよな。マクファウスト侯爵はまず間違いなく援軍を送ってくれるだろう。色々と知っているからな。
知らない貴族家がどう動くのか、なんだよな。特に一番西側、戦場に近いのがマクファウスト侯爵家とマクファウスト子爵家だ。ここの援軍は早く来るだろうが、他の所の援軍だよな。特にバズビーテイラー辺境伯家の援軍がいつ来るのかだよ。
開拓中に送れるのかが心配だな。開拓中の冒険者や兵士も全部こっちに入れてくるのであれば、相当数の占領領域を確保できるんだけど。
そこまでしてやる義理があるのかどうかだよな。こっちとしては、戦勲が欲しいから全力で色々とやってはいるんだけど。
「ふむ。報告ではやはり殆どの兵士が参加しているようですね。無理も無いですけど。ここまで大規模にするにはそれくらい必要でしょうから」
「だろうな。占領が楽でいい。潜伏させると面倒だが、それも織り込み済みだろう? どうやるのかまでは思い付かないが」
「潜伏しても、兵士としてはできることは無いんですよね。下手に殺しても味方の場合がありますから。潜伏されたら放置するだけです」
「あー、そうか。動くに動けないか。自分の命も危なくなるし、そもそも冒険者が味方なのかどうかの判断がつかないか」
「そういう事ですね。味方のと言うか、自国の冒険者を殺してしまう危険性もありますし、冒険者って基本的に1人で行動しませんから。複数人と戦う事になるんですよね。それで勝てるだけの実力があるのであれば、そもそも戦争に呼ばれてます」
「というと、今いる兵士は実力不足でそこにいる可能性が高い訳だ。それに、まずもって少数の兵士で占領をし返すことは無理だしな」
「無理ですね。しかも冒険者も全員が敵になりますから。そもそも冒険者にお金を出しているのは占領軍です。それを解放したからって直ぐに王都からの支援が飛んでくるわけでもないんですよ。お金の出所を潰されたら、冒険者も全員敵になります」
「そうなると、占領し返すってのも現実的じゃないんだな。難しい所ではあるんだろうけど。潜伏されても放置が一番いいのか」
「ええ。放置しても何もできないんですよ。やってくれたら、返すだけなのでそれでも別に良いんですが、国への信頼と言うか、忠誠と言うが、そういうものが無くなるでしょうから何もしないのが正解なんですよね」
「なるほどな。それで俺たちはどんどんと占領地を増やしていくと。何処まで行く予定をして居るんだ? その辺も考えがあるんだろう?」
「占領は南北に大きく占領していきます。砦の背後を占領する形ですね。そうすると、後詰の冒険者たちが安全になるので。危険な方には他の貴族家からきた後詰に任せますよ。その位の強かさは必要だと思いますけど」
正論だが、一応は味方だからな? ミッチェルハーロウ公爵派閥の貴族家なんだから。何処まで占領したら、敵が危機感を持って砦を放棄するのか。
その辺が一番の問題だと思うんだよな。情報を封殺している訳ではないから、抜けていく情報もあると思うんだよ。
まあ、ウェンリー兵士長がわざと見逃しているんだと思うけどな。見逃さないように包囲網を敷くこともできるはずだからな。




