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北の方にある砦が落ちたという報告が飛んできた。やっていることは解る。戦果が上がったことは喜ばしい事だ。余りにも無茶苦茶をやらかしてなければだが。
ウェンリー兵士長とは、色んな作戦を立てたりする仲である。常道から奇抜な作戦まで、色んな事について語り合った。
戦争を模した盤上では、一度も勝てた試しがない程に優秀な兵士長だ。この兵士長が冒険者だったというのだから、とんだ拾いものである。
兵士長を選んだ時もそこまで意識したつもりはない。兵士に誰が兵士長が良いかを聞いただけだからな。その中から5人選んだんだよ。大隊長からは選んでいない。隊の組み分けを変える訳にはいかなかったからな。
兵士長とは、有事の際の緊急措置の為の席だ。スタンピードやら戦争やら、何かと派兵をするときに中心になれる人物を選んだつもりだ。
大隊長は年齢で選んだからな。中隊長もいるが、それとも別枠。まあ、ウェンリー兵士長は中隊長も兼ねているんだが。
冒険者時代も、なかなかに優秀な冒険者だったようだ。主に指揮官としてだが。戦闘は中の中。そこまで強い訳でもないんだが、索敵と作戦行動を担当していたようなんだよ。
冒険者ではここまで感が強くなってきたころに兵士が募集されて、今の地位まで駆け上がって来たらしい。正直、なんでこんな奴が冒険者なんかやっていたんだろうかってくらいに優秀なんだよな。雇用できて本当に良かったと思っている。
「さて、北の砦が落ちたようだな。首尾よく支援物資を潰せた成果だろうな。ここには飢えて気力の無くなった兵士を皆殺しにしたと書いてある」
「生かしておくものでも無いですしね。後々の事を考えると、殺しておくのが無難でしょう。今後一切逆らえなくなるくらいまで追い込んでおく方が良いんですけど、それには兵士も時間も足りませんからね。出来る事だけをするまでです」
「出来ることが多すぎるのも考えものだな。それで? 南の砦にも仕掛けているんだろう? そっちの状況はどうなんだ?」
「こっちも明日には落とせる予定です。支援物資も断っているし、煮炊きの煙も5日ほど上がっていません。こちらももう少しでしょう」
「そうか。北と南の砦を守っている貴族家は何処になるんだ? ああ、勿論自陣営の話だぞ? 確かこの辺り一帯はミッチェルハーロウ公爵派閥に任せられていたと思うが」
「北はマリンネグロ伯爵家ですね。6つの砦を任されているようです。南はマクファウスト侯爵家ですね。こっちは18の砦を任されているようです」
「なるほどな。何方も話の解る所で良かった。これで子爵家なら少しばかり解らない可能性があったからな。俺の記憶力はそこまで良くない」
「はっはっは。まあ、何処でもいいって訳では無いですが、マリンネグロ伯爵家もマクファウスト侯爵家もやりやすくていい。攻めは任せて貰うと言わせてもらったが、反応は良かった」
「そりゃそうだろう。そもそも守れと言われていたんだ。何故攻めていると思われるに違いない。それで? ここからの筋書きはどうなっている?」
「そうですね。とりあえずは南北に砦を順に落としていく訳なんですけど、言っていたように、商人の襲撃と補給部隊の殲滅をやってますので、じきに砦も落ちます」
「……おい。何処までの補給部隊を潰して回っているんだ? 後は商人もどの程度まで殺して回っているんだ?」
「商人は見かけたら全て、ですね。どうせこの辺に領土を貰う訳でもないんでしょう? なら徹底的にやった方が良いと思いまして。後は村からも余剰の食料を買い付けてますよ? 商人が持っていた金を使っているので、敵国がやっているとはバレていないはずですけど。それと、補給部隊に関しては、何処までも広げていますよ。とりあえず、砦5個分くらいの範囲を馬で走らせてます」
「ここまでお膳立てされていると、負ける方が難しくなってくるな。と言うか村にまで買い付けに行っているのか? 商人を潰しておいて、そこまでやるか?」
「そこまでやるでしょう。戦争ですよ? 徹底的にと言ったら徹底的にです。叩けるところで叩いておかないと今後に響きます」
「なあ、お前は何処まで先を目指している? この分だと、今回の戦争も大勝してしまうが、何処までの領地を取ろうと思っているんだ?」
「勿論、シュトナイザリオン王国の国土全てをと考えてますけど、まあ無理でしょうね。辺境伯家を潰すくらいが精一杯じゃないですか? その辺で両軍ともに悲鳴を上げ始めるでしょうし。物資が足りないのは何処も同じですよ」
「お前は、本当にそういう所だぞ? 国を落とすとか考えるか普通。精一杯で辺境伯家を潰すとか、辺境伯家の領地の規模を考えて言っているのか?」
「まあ、多くても侯爵家の領土を15個分でしょう? その位は落とせますよ。この辺一帯はミッチェルハーロウ公爵派閥の領域なんでしょう? ならば補給物資は足りるでしょう?」
「まあ、足りるだろうな。問題があるとすれば、金銭面だけだろうな。都市町村を占領するとどうしても費用がかかるからな」
「そこは半分くらいは王領から出して欲しいとは思いますけどね。半分でも出してもらえると、もっと奥まで行けるんですけどねえ」
「無理だろうな。資金が潤沢にあるミッチェルハーロウ公爵派閥に出す金は無いだろう。他の派閥の面倒を見るので精一杯じゃないか?」
「どうせ睨み合いをしている派閥の面倒なんて見なくても、砦なんて落とせやしませんよ。攻城兵器を多方面にばら撒いてどうするんだって話です。そういうのは1点に集中させる方が強いんですよ?」
「それは確かにそうだろうな。それに、攻城兵器なんて持っているのは辺境伯家くらいなものだ。しかも反対側の辺境伯家から攻城兵器を持ってくる馬鹿は居ないだろう? 実質、前の時の攻城兵器と同じ数しかないだろうな」
「そんな訳ですから、絶対に落ちないんですって。だから、その分の金をこっちに回してくれるだけでいいんですけど、王族にそこまでの力が無いんですよね?」
「無いらしいぞ。俺も詳しいことは知らないが、貴族家から舐められている程度には力がない。ラウレーリンも相当な無能だと言っていたな」
「もうちょっと上が賢いと良いんですが、ままならないですね。ここで睨み合いも余り得策では無いんですけど、もうちょっと砦を落として味方を引き込まないと難しいですかね。後はラウレーリン様が何処までの援軍を送ってくれるのかですけど」
「ん? そんな事も報告で上げていたのか? 軍事関係の話はこっちに来るようになっていたが、10日目の報告ではそんな事まで書かれていなかったはずだが?」
「15日目の報告に書いたんですよ。ただ、ハインリッヒ様がこっちに来ることになっているとは思わないじゃないですか。だから、ラウレーリン様に届くと思いますけど、ハインリッヒ様の見立てではどうですか? どの位の援軍が来ると思います?」
「戦争に加担する冒険者ってのは案外少ない。ただ、送ったのは占領に関しての冒険者を欲しただけだろう? それなら、ラウレーリンなら集めてくれると思う」
「ラウレーリン様は出すのは出すでしょうね。問題はその数ですよ。占領をするにも数が必要ですから、何処までの数が来るのかで、今後の方針が変わりますね」
「性格的な話をすると、やり過ぎるという事に対して抵抗が無いようにも感じている。それにマクファウスト子爵家の財政事情は大体解っているだろう? 援軍を寄こすとしたら、冒険者が50万人で済めば少ない方だろう」
ラウレーリンの性格から考えると、中途半端は嫌うからな。少なく見積もって50万人は確実。アルローゼンからしか募集をかけなかったとしても、これくらいは出してくれるだろう。
俺だったら、アルローゼンから100万人は引っ張るな。占領するにしても、これだけの短期間で成果をあげてきているんだ。期待を込めて100万人は送るだろう。




