戦争の足音
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「シュトナイザリオン王国が動いているわね。今度は本気でこちらに攻めてくるみたいよ。王都から全貴族に派兵要請が来ているもの。これは本気で不味いわね」
「シュトナイザリオン王国って隣国だよな? 確か反対側にも国があるから、戦力は半分しか用意できないって言われてなかったか?」
「そうなのだけれど、どうも向こうの国と同盟を結んだみたいなのよ。向こうの国も反対側の国に戦争をするつもりらしいわ。これがラスコシッラ公爵派閥が掴んだ情報みたいね」
「まあ、別に構わないけど、巻き込まないで欲しいんだよな。やるなら辺境伯だけで、それぞれの派閥でやって欲しい所なんだけどな」
「仕方がないでしょう? 向こうは前回負けているもの。しかもこっち側が仕掛けるように策を打っている状態なの。相当頭にきているんでしょうね。今度は国を挙げて攻めるって言うんだから、相当なものだと思うわよ?」
止めて貰いたい。頭にきたから戦争するってのは、本当に止めて欲しいんだよな。戦争したって利益にはならないだろうに。
しかもそんなに月日は経っていないのに再戦である。何か策があるのかは知らないが、全力で来るというのであれば、こちらも全力でってか。
と言うか、あれ? 前回の30か所の戦争では、不戦協定が結ばれたんじゃなかったか? そんな記憶があるんだけど。
「なあ、不戦協定が結ばれていなかったか? それを無視して攻めてくるって話になっていないのか? それだと、かなり問題と言うか、国同士で定めたものを反故にするのは余程の事がない限り駄目なんじゃなかったのか?」
「ああ、不戦協定の話ね。あれは前回の戦場での戦争行為を禁止するものだもの。今回は前回の戦争場所とは違う場所での戦争となるわ」
「ええ……。そんな事が有りなのか? と言うか、全面的に不戦にしておけば良かったのに、その30か所だけなんて微妙な事をやったのはなんでなんだよ?」
「それは勿論、戦争をする気満々だったって事なんでしょうね。何方から持ちかけた話なのかは知らないけれど、近々戦争をする気だったと言う事よ。今回の事があるし、向こうから言い出したことなのかもしれないわね」
「……なんでそれで条件を飲んだのかだよな。もう一度戦争しますよって言っているのとほとんど変わらないだろうに。という事は? こっち側は全然準備が出来てない状態なのか?」
「出来ていたらこんな知らせを今頃になって送り付けてこないでしょうね。今から準備だもの。開戦は早くて2か月後よ」
は? 2か月後!? いやいやいやいや、準備も何も、殆ど何もない状態で軍を送り出さないといけないじゃないか。
幸いなことに、軍備はしっかりと整っているんだけどさ。恐竜渦魔金製の武器もある程度の数は用意できているし、戦う事になっても、まず大丈夫だろうとは思うんだけどさ。
兵士は、5000人送り込むだろう? 訓練だと預かった軍も連れていかないといけないだろうな。鎧が間に合っていない兵士が沢山いるが、これはもう仕方がないか。
裏方に回せばある程度は危険が減るだろうし、死んでもらっては困るんだけどな。とりあえず、冒険者が何人集まるのかによって状況が変わってくると思うんだよ。戦場限界の事も考えると、15万人くらいには集まって貰わないと困る。
今の俺たちだと、1つの砦を守るだけで精一杯だ。冒険者15万人を含めてもその位しか出来ない。……そう言えば、今回の戦争の規模はどうなんだろう?
「なあ、今回の戦争の規模なんだけど、どんな感じになりそうなんだ? 前回は30か所の500万だっただろう? 今回はどうなる見立てだ?」
「そうね。今言われているのは、戦場は約200箇所になるだろうと言われているわね。数は3500万人から4000万人。相手側のほぼ全力よ」
「それって大丈夫じゃないんじゃないか? こっちもかき集めるんだろうけど、そんなに防衛箇所があって、守り切れるのか?」
「さあ? とりあえず割り当てられているのは砦を1つね。そこを守り切るだけでいいわ。それ以外の事はやらなくても良い。でも、そうね。落とせるのであれば、敵側の砦を落としましょう? 戦勲も貰えるのであれば貰っていきましょうか」
「いや、簡単に言うが、砦を攻めるには攻城兵器が必要だろう? そんなものは無いぞ? 砦を落とすのは不可能じゃないか?」
「攻城兵器が無ければ落ちない訳ではないわ。恐竜渦魔金製の武器を使えばいいのよ。あれで破壊できないものの方が少ないわ。欲張れるのであれば欲張りましょう。もっとも、砦を落とすだけで精一杯だとは思うけれどね」
あー。あれを使うのか。まあ、落とせないことは無いよな。攻城兵器みたいなものではあるからな。威力がおかしいのが長所だし。
だからって、簡単に落とせるとは思わないんだよな。落とすつもりなら、兵士はもう少し連れて行った方が良いだろうな。7000人に行かせるか。2000人を飛び地から連れていこう。
「後は特出するべきことは書いてあるのか? 砦を1つ任せられたのは解ったけど、本当にそれだけでいいのかって話になるだろう?」
「砦を守るのは、マクファウスト子爵家とその寄子たちで1つね。寄子からも戦力を集めないといけないのだけれど、そこまでの余裕は無いでしょうね」
「無いだろ。むしろあったらおかしいだろう。余裕のない貴族家を寄子にしたんだから、戦力を隠していましたって言われた方が困るだろうな」
「そうねえ。では、各家には25人の兵力を出してもらう事にしましょうか。その位が限界でしょうからね。元アンジェリオニジ公爵派閥とは言えども、戦力を持てるだけの家ではないものね。それにスタンピードも怖いから、出したという実績だけを作らせましょう」
「戦功なしでは可哀そうだからな。かといって200人規模で出せって言うのも資金的に無理だろうし、妥当な所だとは思うぞ。4家で100人もいれば十分だろう」
「そうね。連絡はハインリッヒから行う事。物資に関してはこちらで用意をすると言ってあげた方が良いでしょうね。兵数以外はこちらで準備しましょう」
「そうだな。それで何とかなると思うし。で? この砦の位置は何処にあるんだ? その地図も欲しい所だぞ。間違えて配置しましたでは済まされないだろうからな。守れなかったら敗戦の責任を押し付けられそうだからな」
「そうね。とりあえず、これが地図よ。ラスコラシッラ公爵派閥の方の砦が割り振られているわね。これでアンジェリオニジ公爵派閥の方に配置されていたら、王の素質を疑うわ」
「疑うも何も、王として認めていた方が驚きだよ。とりあえずは準備するぞ。冒険者もかき集めて、とりあえずは1つの砦を死守。余剰があれば、敵砦の奪取もしくは破壊で。15万人くらい集まってくれることを願うしかないか」
戦争だとよ。なんでまた戦争になるんだよ。しかも全面戦争だ。大魔境の攻略部隊はどうするんだろうね? あっちはバズビーテイラー辺境伯家が指示するんだろうか。
こっちはこっちでやれるだけの事をやるしかないか。出来ることは結構多いんだよな。兵士諸君が何故か全員魔法を使えるんだから。5000人の魔法部隊とか前代未聞の事だとは思うぞ。普通の兵士は魔法を使えないはずだからな。
冒険者を集めて、とっとと砦に向かわないと、戦争で落とされてからでは話にならない。寄子たちにも連絡はするが、遅れてくる分には仕方がないと思った方が良い。
余力はあるから良いものを。無かったらどうするつもりだったんだろうな。子爵家で1つの砦を受け持つのは難しいと思うんだが。
普通はだがね。普通じゃないから問題ない。王領軍も出てくるんだろうけど、まあ何とかしようか。守るだけじゃない所も見せてやろう。




