極上の美酒
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今回の料理大会は、荒れた。まだ始まって4回目である。それなのに優勝した料理が酒という時点で少しおかしなことになっている。
作ったのは、いつもの主婦層でもなければ、料理店を経営している者でもない。普通の酒屋をしている男が優勝を飾ったのだ。
第4回目にして男性が優勝をしたというのは初めての事なんだが、何よりも料理と言うには少し違うだろうという酒というものを持ち込んでの優勝だった。
勿論だが、俺も味見をして、酒を選んでいる。それ程に衝撃的な酒だった。酒精が強いにも関わらず飲みやすく、ほのかに感じる甘味。喉を通る爽やかさに、鼻を吹き抜ける香り。どれもこれもが狂えるほどに素晴らしかった。
もう一口と思った。そう感じてしまった。ついつい手が伸びてしまったほどだった。それだけに、勝者は酒となってしまったんだが、あれを出されたら、他が勝てない。
世界一美味い酒がどんなものかは知らない。知らないが、あれよりも美味い酒があるのかと聞きたくなるような味だったのだ。
そんな酒をどうやったら作れたのか。聞かずにはいられなかった。当然のごとく、ラウレーリンも聞いた。そして、まさかそんなもので酒を作ったとは思いたくも無かった。
酒の材料は、ロズマリーフの雫にソーマだという。どうしてその組み合わせになったのか、理解に苦しむところではあるんだが、酒屋としては確かに仕入れやすい物だとも思った。ソーマは特定の者には売っているのだ。
アムリタと違い、ソーマは売りに出している。アムリタは厳重に管理しないといけないものではあるんだが、ソーマに関しては売り出しても良いだろうというのが、俺とラウレーリンの判断だ。
何せ魔力を回復する量が尋常で無く多いのだ。エリクシールと比べても多いその量は、スキルを頻繁に使う者たちに取って役に立つだろう。そう思って売り出したものである。
売れ行きは、実はそこまでよくない。既にエリクシールである程度満足できていたんだ。それ以上に回復すると言われて喜んだのは、農家系と酒屋系だけだったのだ。
だから、酒屋にソーマがある事はそこまで驚くことではない。料理大会に出るために、ロズマリーフの雫を購入することもおかしくはない。だが、その2つを混ぜて、酒にするのは予想外と言うか、想定外と言うか。どうしてそうなったと思わざるを得なかった。
確かに、ソーマはよく飲むものだろう。酒屋とは、頻繁にスキルを使う職業筆頭なのだ。今でも15日に1日はお祭りという行事が行われているんだよ。
冒険爵はそれくらいには出ているし、むしろそれでも少ない方だ。纏めてする事が慣例になってきている。飛び地ではまだ出たことは無いが。
むしろ出たら出たで困るのだが。スクリューホーンとユキポヨで冒険爵が出た方が驚きである。それならば、まずはこちらのグランドドラゴンを倒してくれた方が良い。
精神的な安全があるからな。スクリューホーンも倒せないことは無いが、グランドドラゴンよりは強いし、ユキポヨは論外。そんな訳で、冒険爵はアルローゼンでしか出ていない。
だが今はそんな事よりも酒だ。ソーマを酒にするとは何事だと思うし、ロズマリーフの雫を酒にするとは何事だと思う。
2つとも高価なもので……いや、ロズマリーフの雫は高価という訳ではないんだが、ソーマはもの凄く高価なものである。酒屋系は安く仕入れることも可能ではあるんだが。
聞けばその男、酒に執念と言うか、妄執と言うか、とにかく酒にとことん入れ込むタイプらしいのだ。既にアムリタも何処からか仕入れて酒にしたことがあるという。何処から手に入れたんだろうな? 厳重に管理をしているはずなんだが。
そんな訳で、色んなもので、色んな組み合わせを試した結果、ソーマにロズマリーフの雫を混ぜて酒にしたものが一番美味いと豪語したのである。
当然、俺は絶句。ラウレーリンは頭を抱えていた。確かに美味い。極上の美酒と言われても嘘ではないと思える。
思えるだけに質が悪い。こんなに美味い酒を飲んだら、他が泥水に感じてしまう。それほどまでに美味しかった。今まで感じたことの無い幸せを心が知ってしまった感じである。これをどうしたら良いんだろうかとかなり悩んだ。
考えても見て欲しい。ソーマとは、ユグドラシルの実を使うのである。まだマクファウスト子爵家では3か所でしか作っていないのだ。
と言うか、3か所で作っているというのも、機密の問題もあるんだけども、そもそもが9割方アムリタの方を重要視して作っているのが現状なのだ。
ソーマは、本当に魔力が足りない所の為に作っていたのであって、何も酒にして欲しかったわけではないんだよな。
ただそれも、この味を知ると、な? ソーマはこのために存在していたのではないかという程に美味しい酒だ。これを作らないでどうすると言うのかと言いたくもなる程に美味しい。酒屋の男はそう力説しては俺たちの前で真剣な表情をしていた。
そして、ラウレーリンなんだが、この酒をソーマ酒と名前を付けるくらいには気に入ってしまったのだ。頭を抱えたのは、費用の事。俺とは違う悩みを抱えていた。
今後も飲むにあたってはどうすればいいのか。それに頭を抱えていたのである。ラウレーリンは定期的に飲むつもり満々だった。
だが考えても見て欲しい。ユグドラシルの実という貴重な物を使って生産したソーマを、手間暇かけて採取したロズマリーフの雫を、酒に変えても良いのか?
俺としてはそっちを気にして欲しかった。確かにロズマリーフの雫は、スキルを使えば幾らでも収穫できる。魔力と肥料があれば幾らでも収穫できるんだよ。
そして、魔力も何もソーマを使う必要はない。エリクシールでも十分なのだ。ソーマをソーマ酒に変えても誰も困る人はいない。
流石にアムリタを酒に変えられたら、俺も強く待ったをかけるんだけど、ソーマだからな。今でも若干持て余しているソーマを酒に変えても、そこまで困ることは無い。アムリタを減らしてまでソーマを作るのであれば、俺は強く止めるけどな。
これをどう扱うのか。ラウレーリンは自分で飲む気満々だし、その男も極上の美酒を作らない選択肢はないという感じだ。
貴重品を酒に変えてしまって良いのか? 未来でもっと必要になる可能性のあるものを酒に変えてしまっても良いのか? 本当に? そんな疑問が尽きない。貴重なユグドラシルの実を、酒に使っても良いものなのか。
……俺としては、反対したかったんだけどな。ラウレーリンとその酒屋の男が、1月にどの位の量を生産するのかを話し合っていたところで、抵抗を止めた。
ユグドラシルの実も貴重な筈なんだがな。ソーマも貴重な筈なんだがな。ロズマリーフの雫も貴重な筈なんだがな。それを使う気満々であり、飲む気満々の2人を止める言い訳を思い付かなかった。貴重なら作ればいいだろうと言うだけだからな。
そうして、程なくしてユグドラシルの畑を増設した。ロズマリーフの方は畑を増設しなくても、スキルを使えば幾らでも収穫できるので、作りはしなかった。
ただ、周辺の貴族家から大々的に農家を引き抜くという行為を行い、盛大に散財したという結果が残っただけだった。
周辺貴族家には、すまんとしか言いようがない。幸いなことに、周辺貴族家は全て他派閥だったことが幸いした。同派閥でそんな事をやったら、間違いなく敵対認定されていただろう。派閥から追い出されることもあったかもしれない。
農業を重要視している派閥から、農家を引き抜くなんて暴挙には出なかったことが救いだな。同派閥がいなくて本当に良かった。
まあなんと言うか、ラウレーリンにもこういう事になる事もあるんだなって思ったな。俺は頭が痛いが。当然のように、秘匿するんだろうな。




