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ロマンピース準男爵家でパンを語る

OFUSE始めました。

https://ofuse.me/rukea


ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。

https://rukeanote.hatenablog.com/


さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。

https://twitter.com/rukeanote

「どうも、ラウレーリン=マクファウストの夫君、ハインリッヒ=マクファウストです。本日は予定を開けていただきありがとうございます」


「いえ、こちらこそお声をかけていただきありがとうございます。ドーベルン=ロマンピースです。大したもてなしも出来ずに申し訳ない」


 日程調整を終えて、手紙で先触れを送り、なんだかんだと移動をしてロマンピース準男爵の領都に来ている。しかし、これが領都か。随分と……閑散? 衰退……ではないけど、活気が無いな。本当に領都なのかという疑問が出てくる。


 準男爵家の平均は、村が30、町が4、そして領都という感じだ。都市は領都のみとなっているのが普通だ。しかし、これは都市なのか?


 町というにしても難しい。もう少し人口が多くてもいいはずだ。もう少し建物が多くてもいいはずだ。なのに更地も多い。空いた土地で農業をしているようなのだ。


 アルローゼンにも農地はある。あるが、こんな領都のど真ん中に農地なんてない。これはかなりやばい状況だろう。酷すぎるという表現も、余り失礼に感じないほどだ。


 まあ、これから何とか出来るのかは、ロマンピース準男爵にかかっている訳なんだが。目の前の覇気の無い壮年の男性が何が出来るのか。……俺もそろそろ青年と言うには難しくなってきたけどな。


「もてなしは結構です。今は他派閥の人間ですからね。そんなところに割く余裕があるのであれば、他の事に回したい所でしょう。……それで、手紙で凡その事は伝えさせて貰いましたが、派閥を移るという話です。どうでしょうか?」


「1つ、お聞きしたい。何故我が家を選んだのか。その理由をお聞かせ願いたい。こう言ってはなんですが、末端の準男爵家です。自ら派閥を移ることはあれど、引き抜かれるほどの家では無いと思いますが……」


「率直に言いましょう。マクファウスト子爵家はまだ10年も経っていない貴族家です。マクファウスト侯爵家から分家として作られたのが始まりです。しかし、5年後には大きな転換点を迎える。領地は大きくなり、恐らくは新たな侯爵家として王国に名前を連ねることになります。しかし、新参の侯爵家であり、そもそもが子爵家からの成り上がり。寄子なんてものは持っていないのが現状です。そしてこの度、アンジェリオニジ公爵派閥と大きく敵対しました。そのことはロマンピース準男爵も解っていると思います。そして、その後の派閥の運営が厳しいものになったのも、解っていると思います。そこで侯爵家になるにしたがって、寄子を集めるのにミッチェルハーロウ公爵家が標的にしたのが、アンジェリオニジ公爵派閥です。敵対派閥であり、運営の厳しくなった所から、有望だと思える貴族家を引き剥がす、これが話の大筋です」


「なるほど。大筋は解りました。だが、我が家を引き抜く理由にはなっていません。確かにアンジェリオニジ公爵派閥は、全ての派閥に敵対をしたと聞いております。伯爵家の独断で周り全ての貴族家を攻撃し、痛打を与えようとしたことは事実でしょう。しかし、だからと言って、引き抜く対象に我が家を選んだのは、何故なのですか?」


「そうですね。私が拝見させてもらった資料の引き剥がし対象の家は100以上ありました。アンジェリオニジ公爵派閥は数だけで言うと最大派閥であり、所属貴族家が200を超える。そこから見つけ出したのがこのロマンピース準男爵家です。資料には、パンを主要産業としているとありました。私としては、それが決め手となりました」


「……主要産業がパン。それはその通りです。我が家はパンを寄親である伯爵家と、派閥長である公爵家に売っております」


「でしょう? パンを主要産業にする、それは無理とは言いません。出来ないことは無いと思います。しかし、苦肉の策でしかない。私としてはそう思いました。違いますか?」


「……その通りです。既に我が家には、主要産業と呼べるものは何一つとして残っておりません。出来ることを全てしてきたつもりです。その末にいきついたのが、いえ、最後の最後に飛びつかねばならなかったのがパンなのです」


「そうでしょうね。パンは、食料は、人間が生きるためには必ず必要になるものです。ですが、パンというものは、誰でも作れる。職業がありますが、職業がなくともパンは作れる。麦を粉にし、水と練り合わせ、窯で焼く。それだけでパンは出来上がります」


「……職業に依存した産業だけでは、我が家はどうすることも出来ませんでした。ですから、領民の最低限の食料以外を、外に売り出すことしか出来なかった」


「たかがパン、されどパン。人は食べ物が無くては生きていけない。食というものは生き物の原点であり、娯楽でもある。知っていますか? マクファウスト子爵領では、料理大会というものが存在しているのです。美味しい料理を作ったものが勝ち残る、そう言った催しをしております。最低限度の食事では、楽しむことが出来ない。生きるのに必要な分だけの食事では、楽しむことが出来ない。そうではないですか?」


「……仰ることは解ります。しかし、最低限度の食事でなければ、領民を飢えさせない方法が無いのです。伯爵家から大きな援助を受け取り、公爵家からも大きな援助を受け取り、私たちはパンを作るしかないのです」


「ええ、パンを作り続ける。これはマクファウスト子爵家の寄子になっても続けて貰いたい。その代わり、美味しいパンを作って貰いたい」


「??? 美味しいパンを?」


「ええ、そうです。さて、ロマンピース準男爵はパンを作る為には何が必要だと思いますか?」


「パンに必要な物? 麦の粉と水、後は少量の塩ですが……」


「そうですね。最低限、それがあればパンは作れます。では、麦の粉は何を使いますか?」


「麦の粉? 麦の粉は麦の粉でしょう?」


「違います。麦には種類があります。マクファウスト子爵家では、いえ、ミッチェルハーロウ公爵派閥では、麦は沢山の種類があります。その中で、どの麦を粉にしてパンにするのが適していると思いますか?」


「麦に種類が? ……解りません。その、農家の作る麦以外の麦を知りませんから」


「そう、そこなんですよ。パンを作る。大変結構。では、パンとはなんぞや。ただ腹を満たすだけのものか。違う。それは違う。パンも食事だ。食事とは楽しむものだ。ならばパンを楽しまなければならない。だが、アンジェリオニジ公爵派閥では、麦は何を育てているのかも解らない状態。それでは本当に美味しいパンを作れない。麦にも種類がある。まずは全ての麦で試してみることから始めないといけない。全ての麦で、パンとしての味が変わるのであれば、何が素晴らしいパンなのかを研究しなければならない。そして、何も麦の粉は1種類しか使ってはいけないなんて決まりはない。2種類、3種類使う事が可能だ。そして、その1種類の麦の粉の量は? どのような配合が一番美味しいのか? 調べるしか無いでしょう? まだ決めることがありますよ。美味しいパンの基準を決めないと、どれだけのパンを作っても無意味になってしまう。柔らかさは? 焼き加減は? パンの形は? それぞれにあったパンを作らなければならない。パンと一括りにするのは、食事を楽しむという事から外れてしまう。食事は楽しむものです。ならば、パンも楽しまなければならないでしょう? 貴方方のパンを作ってきた時間は本物でしょう。では、それに何を求めてきたのか。お腹を満たすことしか考えていないのであれば勿体ない。実に勿体ない。食事は楽しむものだ。ならば、パンも楽しんで食べるべきだろう。そんなパンを作る事を私は願っているのです」


「パンを、楽しむ……?」


「そうです。私がロマンピース準男爵家を欲した理由は、パンを作っていたから。これ以外にありません。では作りましょう。至高のパンを。他家に売り込めるパンを。皆から求められるパンを作りましょう。苦肉の策でしかなかった? 大いに結構。それを金のなる木に変えてみせましょう。素晴らしいパンを作れば、皆が欲しがるでしょう。腹を満たすためのパンではない。腹も満たし、味も満足させるパンを作りましょう。暗い道を歩くだけのパンではない。希望に満ちた道を歩くためのパンを作りましょう。私は、ロマンピース準男爵家ならばそれが出来ると確信しております。どうです? 一緒に最高のパンを作りませんか?」


 俺がもっとも言いたいこと、それは、楽しむことを止めてはいけないことだ。昔の俺にも言ってやりたい言葉ではあるんだが、死んで、解ったこともあるんだ。貴族になって、解ったこともあるんだ。


 それは楽しまないといけないと言う事。何の因果なのかは知らないが、2度目があった俺が言う事だ。間違いはないぞ。1度目は、それなりに楽しんだとは思うが、あれはまだまだだったと思い知ったからな。世界には色々な可能性で満ちている。


 解らないと思った奴は、パンをポーションと言い換えてくれ。俺の言いたいことは解るはずだ。ポーションだって、何も最初から完成していた訳ではないんだ。試行錯誤を重ね、今あるポーションが出来たんだ。それには長い時間がかかった。パンも、長い道のりだと思うぞ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 野望を人に語るのってワクワクします‼️ [気になる点] 美味しいパンって他領に輸出するだけの長期保存できるのかなって思いました [一言] 毎日更新ありがとうございます
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