戦争の後始末
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終わってみたら16時間も戦い続けていたのか。どおりで足が動かないはずだ。スタミナポーションも暗視ポーションも使ってたからな。時間の事なんて忘れていた。
絶えず襲い掛かって来るってのは怖すぎる。魔物には恐怖という感情は無いのかね。恐怖よりも人間を襲わなければならないという本能が勝ってしまうんだろうか。
真相は解らないけどな。魔物の事を考えても無駄なんだよ。そもそも魔物に聞けるわけがないんだから。話が出来たら、それはそれで嫌なんだけど。
会話ができない。だから魔物との戦いはある意味納得が出来るんだよな。別の生き物だって解っているから。これが人間同士の戦争なら、どうなっているのか。俺は正気でいられる自信がないぞ。相手だって人間なんだからな。
魔物だから許されるのであって、人間同士の争い、戦争は許されるのか? その辺りの事については、考えないようにしたい。結論が出ないだろうからな。
まあ、働かない者をいろんな形で使っている側としては、もう手遅れなんだろうけどな。既に手は汚れているんだ。理由が違うだけなんだろうな。
働かない者は有害である。家族が養う分には何も問題はない。だが、家族が見放したらそれまでだ。社会で養う事はする。が、その分自分の体で支払ってもらう事になる。
働けない者は仕方がないが、働かない者はどうしようもないもんな。戦争はそういう人たちを使うのと似ているのかもしれない。そう思わないとやっていけないって考えもあるとは思うけどな。精神が持たないと思うんだ。
人間同士の戦争には出たくないな。魔物だから精神的疲労もそこまでではないと思えるんだから。これで魔物が会話出来ていたら、戦えたんだろうか。
戦えたんだろうけどな。結局は戦わないと生き残れないからだ。襲い掛かってくる以上は、倒さないといけない。それが普通なんだよ。
あー、なんか疲れと安心から色んな事を考えてしまっているな。とりあえず、今やりたいことは寝たいって事かな。この状況を放置してか?
血と肉の海が広がっている。せっせと解体している冒険者や兵士たち、マジックバッグに詰め込んでいるのはここの村人たちだ。商人も手伝っているけど。
ダートエミューの肉と羽毛を買い取る権利を得るためには、手伝わないといけないと言う事は、事前に話してある通りなんだよ。買い付けるのであれば手伝えと。そうしないと終わらないからな。この海だか山だか解らないものを処理するには。
買い付けに来ている商人はとりあえず23人。町の方に引っ込んでいる商人たちも明日には来るだろう。明日に来ても問題ない。終わらないからな。
推定1500万、体感2000万の魔物を解体しないといけないんだから、時間がかかる。冒険者ギルドの様に本職じゃないから、ある程度は仕方がないんだよ。
50万人の兵士を連れてきているんだから、1人40体程度解体すれば終わるんだ。1体解体するのに3時間くらいかかるんだけど?
羽毛も欲しいから毟り取らないといけないし、肉も腐らせるわけにはいかないからなるべく早く解体してマジックバッグに入れないといけないし。
ああ、徹夜だよ。眠ってないよ。それだけの事は終わらせてから眠るんだ。まあ、食事中に寝落ちする奴とかもいるけどな。俺も1時間くらい寝落ちしてた。仕方がないんだ。食事を取ると、ほっとして眠くなるんだよ。
まあ、直ぐに本能的に危険だとして叩き起こされるんだが。血の海だと言っただろう? そんな場所で寝られるほど、人間というのは強くないんだ。
血の臭いというのは、生命の危機の臭いなんだよ。そんな状態で寝られるわけがなく。村の人も同じなんだよ。家の中にまで血の臭いが充満しているんだ。
子供は眠っているけどな。こういう時って子供を羨ましく思う。危機感を覚えるのには時間がかかるんだよ。だから、子供は死にやすいんだけど、こういう時は強いよな。
大人になればなるほどに、危機感と言うか、死臭に敏感になる。こういった環境で眠れなくなるんだよ。無理やりに眠らせる薬も作れた方がいいかもしれないな。こういう時には眠れる方が良いんだ。判断力が落ちてくるからな。
特に村の人たちは眠らせてやりたいと思う。兵士や冒険者は、半分は慣れてしまっているとは思うぞ。寝落ちする回数が俺よりも多いらしいからな。
魔境で寝泊まりしているんだ。その位では眠れないなんてことはないんだよ。流石にここまで血みどろだと眠気も直ぐに覚めるみたいだけど。
最後の手段である酒はまだだ。今までは良かったかもしれない。けど、今回は流石に数が多すぎる。人数もそれだけ連れてきているんだけど、これを放置して酒盛りは出来ないよな。村の人に迷惑すぎる。冒険者も兵士も解っているから酒には手を出していないんだよ。
買ってはいるぞ? 商人が持ち込んでいるから買いはしている。飲んでないってだけなんだよ。飲む空気でも無いけどな。もうちょっと何とかならないと無理だろうな。
それでも食事だけは食べているんだよ。ふらふらになりながらも食事は食べないと生きていけない。でも、こんな時でも色々とあるんだよな。
血の臭いに引かれて魔物が出てきているんだよ。討伐はもちろんする。だが、解体するものが増えるんだよ。憎々しげに討伐しているぞ。
本音は早く寝たいだろうからな。立場と状況がそうさせてくれないんだ。俺だって眠れるのであれば寝たいさ。こんな状況で眠れるわけがないんだよな。
500万のダートエミューを処分した時とは訳が違う。あの時は大半が罠で死んでいたんだよ。死臭がそこまでしなかったんだ。だが、今回は半分以上は生き残って、首を刎ねられて死んでいる。だから血の臭いが臭すぎるんだ。
そして、変に魔物の大氾濫に慣れてしまったというのもあるんだろうと思う。これが貴族になったばかりの頃であれば、眠っていたのかもしれない。
今は、少しばかり責任というものを背負ってしまっているからな。皆が頑張っているのに、俺だけ眠るのはちょっと、と思ってしまうようになってしまった。これがもっと慣れると今度は今ねておかないと指揮が執れないという風になるのかもしれない。
今の俺には無理な事なんだ。だから、皆と同じように解体作業に勤しんでいる。辛く苦しい作業だ。こんな作業からはとっとと解放されたい。
肉が勿体ないのは解るから、先に血が抜けていない死体から解体しているんだけど、それがまあ臭くて仕方がない。
一生分の血の臭いを嗅いだ気分だ。眠気も頭の中で鳴る警鐘の所為で中途半端になっているし。このまま意識を手放してしまいたい。
義務感と責任感だけで何とかこの苦行を耐えている。中には和気あいあいと話しながら解体している人たちがいるが、あれはどういう感情なんだろうか。喋らないと精神に来るからだろうか。その気持ちも解るんだが、それ以上に喋る元気がない。
血の混じった様なスタミナポーションを飲みほす。味覚もおかしくなってきている。スタミナポーションの味も、血が口の中に入った様な感じがする。
そうではないと解ってはいるんだけど、理解していてもそう感じてしまうんだから仕方がないだろう? この戦場に毒されてしまっているんだ。
魔物の大氾濫には、スタンピードにはもう参加したくない。でも、現場で指揮を執る人がいなくなるのも困るんだよな。最低限の士気を上げる人間がいないといけないと思う訳だ。貴族様が逃げる様な凄惨な戦場と思われても困るんだよ。
これからも出ないといけないんだろうな。解っている。解っているんだけど、今だけは現実逃避をさせてくれ。毎度毎度これは嫌なんだよ。
それは、兵士も冒険者も同じだと思う。魔物の大氾濫なんて起きなければいいのにと思っていると思う。稼ぎはいいかもしれないが、面倒ごとだからな。




