第3次ダートエミュー戦争
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さて、関係各所に話を通して現地にやって来た訳なんだけど、土塁も堀も罠の溝もかなり広範囲に作ってある。これだけ作れば大丈夫だろうとは思わない方が良い。
まだ時間はあるんだから、ひたすら作るんだよ。見通しのいい場所だからな。平原って訳でも無いんだけど、林でもない。木は生えているんだけど、地平線が見えそうな感じなんだよ。まあ、木の葉っぱが邪魔で見えないんだけどさ。
偵察は密に。こういう時は馬を使うんだよな。こういう時でないと馬の出番が無いんだよなあ。だけど、必須だもんな。アルマーテラー準男爵家も今は馬を増やしている筈なんだよ。
こういう時のために20頭くらいは飼っていても良いと思えるよな。絶対に使うからなあ。特に誘導するときなんかは無いとダートエミューの速さに負けるんだよな。
現状、出来る限りの事はやったつもりだ。補給も届いているし、軍の配置も終わった。今は釣り出しの最中なんだ。結構向こうにいるみたいなんだけど。
数は1500万で、なんと特殊個体が何体かいるみたいなんだよな。特殊個体も出てくるよな。これだけ長い間放置してたんだから仕方が無い事ではあるんだけど。
特殊個体とは、群れが大きくなり、長く続くとたまに現れる個体の事なんだよ。よくキングなんて言われるんだけど、それが何体かいるらしいな。基本的にはその個体の上位種なんだから、強さ以外はほとんど変わらないと言われているんだけどな。
話によるとなんだよな。ダートエミューの特殊個体だから、ダートエミューキングになるのか? それが頭が良かったら、もの凄く危険なんだよな。
ダートエミューは頭が悪い。ゴブリンよりも悪い。だから突っ込んでくるしかない訳なんだが、キングが統率していたらどうなるのかは解らない。
回り道をする等の知恵が働くようになっているのであれば、負けも覚悟に入れないといけない。溝地帯を回り込まれたら乱戦になるからな。堀も土塁も回り込まれるって事を意味するんだよ。それは非常に不味い。
だが、今更作戦を変えるなんてことは出来ないんだよな。釣り出しに行っているんだし。相手が馬鹿だという事を信用しないといけないんだよな。
ゴブリンキングになっても、ゴブリンはゴブリンなんだよな。頭は良くないし、図体がデカいだけのゴブリンらしいからな。ダートエミューもそうだと良いんだが。
……地鳴りがここまで聞こえてきた。そろそろ、あ、馬が見えたな。走り込んでくる。馬は賢いからな。溝の無い真っ直ぐの道を駆け抜けてくる。
ダートエミューは、見事に転んでいる。回り道をしようとしている個体は見つからない。大丈夫そうだな。とにかく数が多いんだ。今回は前回とは布陣が違うぞ。
土塁の上にも兵を配置している。土塁に10万、両翼に20万の軍を配置しているんだよ。今回は簡単に乗り越えられる事も考えている。
前回も危なかったからな。今回は前回よりも数が多い。推定1500万、3倍だ。だが俺は2000万居ると思っている。誰にも言ってないがいると思って対処を考えている。
1人につき20体倒せば終わりだ。罠で死んでくれている個体も居る筈だから、実質10体程度倒せば終わりの筈なんだ。
地鳴りと共にダートエミューが突っ込んでくる。正直怖い。だが、顔には出さないし、声にも出さない。余裕だという風に見せている。
馬が土塁を通り過ぎたところで、土の道を破壊してもらう。そうすれば、後は罠に突っ込んでいくダートエミューに止めを刺していくだけなんだ。簡単な作業だ。前回と同じように戦いが終われば何も言う事は無いんだよ。
罠に大量に掛かりながらも突っ込んでくる。それだけでも大量に死んでいっている。まだ大丈夫だ。まだ遠い。まだまだ罠で数を減らせる。
味方だったものを踏みしめて前進してくる。中には踏みしめて転んで踏みつけられて死ぬ個体も出てくる。それは想定内。そうやってして数を減らすつもりなんだから、どんどんと減っていってくれ。直接戦うのは1000万もいない方が良い。
20m、10m、5mと徐々に縮まっていき、堀を埋め尽くさんが如くの数が押し寄せる。そして、両翼に広がっていく。ここまでは順調だ。
だが、やはり数が多すぎる。土塁の上に登ってくる個体が増えてきた。奥からはまだまだ襲い掛かってきている。数が多いってのは本当に厄介だ。対策だけで何とかなる数じゃない。
それでも1体1体兵士が雑に処理していく。雑で結構。首さえ刎ねれば死ぬんだから。身体を傷つけても意味がない。ダートエミューは身体を幾ら傷つけても死なないくらいに生命力が強いんだ。だから首を狙うしか無いんだよ。
俺の目の前で戦闘が行われている。3mも無い所で戦っている。血飛沫が飛んでくる。それも無視だ。威厳を保ちつつ、指揮を執る。
伝令が走る。両翼でも戦闘が始まったみたいだ。両翼はこっちよりも戦闘が激しい。罠で減らせていない、突撃状態のダートエミューを相手にしないといけないからだ。
精鋭の多くは両翼に配置している。俺を守るためにも特殊装備で武装した兵士が10人ほどいるが、戦力を遊ばせておく余裕はない。
両翼で無双してもらう予定なんだ。強力な打撃以外は無効化する特殊金属だ。そう簡単にはやられないと思っている。
武器も特殊金属なんだ。地竜魔銀製の武器だからな。長いから特殊金属と言っているんだけど。長すぎるんだよ。もうちょっと名前は無かったのかな?
綱渡りに見えて、安心した戦場。処理の速度も落ちていない。どんどんと命を刈り取っていく。負傷している人はすぐさま下げる。そして治療をしたら交代要員として待機だ。いつでも行けるように準備をしてもらわないといけない。
全員で倒すんだ。ミスをしたら誰かがカバーする。ミスしない人間なんていないんだ。致命的なミスをやらかさない限りは大丈夫だ。
致命的なミスの代表格が致命傷を受ける事。エリクサーでもどうしようもない怪我を負う事。それ以外であれば大丈夫。兵士も冒険者もそこまで軟じゃない。修羅場は何度も潜ってきているはずだ。だがそれを笑うように、ダートエミューが突撃してくる。
いつ終わるのか。まだ終わらないのか。精神的疲労と肉体的疲労が襲い来る。俺はただ立って指示を出しているだけだ。なのに、永遠なのではないかと思わせる時間が過ぎているように感じる。
戦っている者たちはそれ以上の時間を感じているはずだ。切っても切っても次から次へと現れてくる。無限の様な錯覚を感じているだろう。
だが、確実に終わりは近づいてきている。無限の群れではないんだ。1歩、また1歩と、敵を倒すたびに終わりに向かっている。それを鼓舞し、奮起させるのが俺の仕事だ。未来はあるんだと、結果は必ず出ると。そう言い続けている。
まだ終わらないじゃない。もう終わるんだと思わせる。精神が、心が折れたら負けなのだ。大丈夫。俺たちは負けない。こんな所で負けはしない。
確実に1体1体切り捨てる。特殊個体のダートエミューもいたが、図体が大きいだけだった。首を刎ねれば死んだ。脅威ではない。
確実に終わりに近づいている。終わりは見えた。両翼に前進の命令を出した。ここで決める。これで最後だ。疲労もあるだろう。数えきれない傷もあるだろう。それでも前進させる。前へ前へ進ませる。終わりを信じて進ませる。
しかして、第3次ダートエミュー戦争は幕を閉じた。前進した先に終わりがあった。全てを飲み込み、生き残ったという結果だけが物語っている。
こんな馬鹿げた数を相手にしないといけないのはこりごりだ。一体何体のダートエミューがいたんだと思わせる様な死体の山。
これを処理しないと帰れないんだけど。でも、ちょっとだけ待って欲しい。足が動かないんだ。立っているだけでも奇跡としか言えないんだよ。みっともない姿は見せられないからな。




