馬と魔道具
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「あと馬はさ、必要じゃないのか? 馬車に必要ってのも解るし、騎兵も魔境では使いにくいのも解るけどさ。絶対に一定数は必要だろ?」
「需要があるのは当然よね。でもそれだけじゃ弱いって事でしょ。年間にどの位の馬が必要になるのか解る? 馬の適正年齢は2歳から8歳よ」
「1頭当たり5年として考えて、1つの家でどうだろう。馬車に使うだけでも50頭くらいは必要だと思うから、年間10頭くらいか?」
「そんな所ね。マクファウスト侯爵家で年間20頭、マクファウスト子爵家だと年間4頭って所かしら。そこまで必要にならないのよ。商人も歩きが多いしね」
「まあ、マクファウスト侯爵領は移動に関しては1日で歩ける距離に村か町を置いているから、そりゃそうなるよな。馬に使う経費の方が勿体ないって事なんだろうけど、1頭で乗り回すのであれば、荷物も早く届くし、利益は上がるんじゃないの?」
「それだとマジックバッグの量が制限されるでしょう? 商人は手ぶらで歩いている訳じゃない。荷車を引いているのよ? まあ、冒険者が引くことも多いけれど」
「ああ、そうか。マジックバッグがあるけど、マジックバッグを運ぶために馬車にすると速度も出ないし、2頭は必要になってくるのか。それだと冒険者に任せておいた方が良いのかもしれないな。護衛費用で運搬もって感じなんだろうし」
うーん。馬も必要が無いのか。必要がないって言い方はおかしいか。需要はあるが、それ程でもないと。それでも価値はあると思うんだがな。
使い方次第なんだとは思うんだけど。昔か? 昔は商人には幌馬車は必須だったからな。マジックバッグが無かったんだから。
マジックバッグが出来たのだから、荷馬車にしなくとも商人が運べてしまう。マジックバッグは重さも関係なくなるからな。なんでそうなっているのかは、未だに解らないんだけどさ。重さも感じない、時間も経過しないっておかしいだろうと。
それにだ。荷車も魔道具に出来るんだよな。なんと言うか、軽くなるって言うか、速度が出るって言うか? 引いている感覚が無い荷車もあるんだよな。高いんだけど。
多分だが、そういうのを売りにしているのがケスラシュミット準男爵家なんだろうな。因みに馬を主産業にしている方がアルマーテラー準男爵家である。
「魔道具で幌馬車を作るのはどうなんだ? 移動速度も上がるいい感じのを。荷車でもあるだろう? あれと同じ感じには出来ないのか?」
「それは私がお答えしましょう。魔道具で作る事は可能です。荷車と同じようなものですから。ただ、魔石の消費量が増えるのです。1日で銅板5枚くらいの魔石が必要になります」
「荷車の5倍から10倍が必要になるのね。それなら荷車の方がいいのではないかしら? 商人もなるべく安くしたいでしょうし。需要はあるとは思うのだけれど」
「そうですね。魔道具の馬車の需要はあります。主に貴族用としてですが。ですが、馬車はそう壊れる様なものではないのです。10年は使用可能です。なので、あまり売れないのです」
「あー、そうか。魔道具は壊れないと更新しないからな。かといって壊れやすい魔道具が必要なのかと言われたら必要がない。結果、長持ちしてしまうから需要が少ないと」
「馬も魔道具も頻繁に出ていくものでは無いものね。どうしようかしら。馬で引く魔道具の馬車を大量に売るとして、何処に売るのかよね」
「なあ、こういったらなんなんだが、魔道具だけで動かないのか? 馬を必要としない魔道具の馬車があれば便利だなとは思ったんだが。まあ、そうすると馬が必要なくなるんだけどさ。魔道具でそういうのは作れないのか?」
「商品としてはございます。馬を必要としない馬車はあるのですが、魔石を大量に使いまして。どうでしょう、マクファウスト侯爵領を横断するのにも魔石を金貨数枚分は使うかと思います」
「……移動速度はどうなんだ? 正直な話、マクファウスト子爵領では魔石は余っているといっていい。早いのであれば購入も検討してもいいのでは?」
「本当に速いのであればの話ね。それと安全面もかしら。魔物と遭遇したら壊れるようではいけないもの。ある程度の頑丈さは必要でしょうね」
「速さですか。移動に必要な時間は馬車の10分の1になるかと思います。あくまでも直線であればとの話ですが。魔物も轢き殺せるくらいの強度はあります。なので魔境の近くで使ってもらっても構いません。……ただ、人だった場合どうなるのかという問題と、道がマクファウスト侯爵領の様に整備されていれば良いのですが、整備されていない道では揺れが大変なことになります」
「……遠くから人と魔物の区別はつくのか? 10倍速いのであれば、10倍の判断力が求められるんじゃないか? 商人や冒険者を撥ねそうな気がするんだが」
「まず間違いなく人が死ぬわね。それと、道を整備してある貴族領は案外少ないの。お金に余裕があるか、お金を度外視して整備をしないといけないもの」
うーむ。難しい問題だよな。10倍速いのは魅力的だ。ミッチェルハーロウ公爵領の領都に2日で到着する速さだな。凄まじい速度があると言う事なんだよ。
金貨か金板程度の出費で済むのであれば、それでも安いとは思う。問題は道路の整備だろうな。マクファウスト侯爵家の様に整備している貴族家は少ない。
速いと言うだけに惜しい。使いどころは沢山ありそうな気がするんだが、道路の整備か。他派閥の貴族の領地内も通るからな。指示するのも難しい。
ただまあ、そんな魔道具が普及したら馬は必要なくなるよな。安全面から考えても馬なしの馬車は導入できないとは思うが。専用で走らせる所が必要になると思うぞ。
そんなものを今から整備するとなると、もの凄い金と労力が必要だな。馬の必要ない馬車のための道が必要になってくる。それを整備させるのは、何十年かかるのか。
現実的では無いよな。そして、年に何回その魔道具を使うんだろうか。数回使えば良い方だろ。なんでそんなに急いで向かわないといけないのか。そんなときがあるのかどうかだよな。馬を必死に走らせる方がまだいいんじゃないか?
馬なら色んなときに使えるし、比較的に安全だろう。馬の最高速度は歩くときの5倍程度の速さが出るだろうから、そっちの方が良さそうである。
「なあ、馬を各都市町村に配備するとどうだろう? 文書の伝達くらいなら5倍の速さにならないか? そうすると本家とのやり取りがスムーズになると思うんだけど。それに馬を休憩させる為にもいいんじゃないか? 休憩場所で乗り継いで行けば良いだろう?」
「そうね。色んな所に配置しておけば連絡体制は整うかもしれないわね。魔道具の馬車では少し不安が残るわ。早すぎるのも考えものね。有効に使えるとは思えないもの」
「そうなると、馬の需要は100倍程度になって来るかもな。各都市町村で2頭は欲しいだろう? 道路の整備も終わっているんだから、馬も速く走る事は可能だろう」
「そうね。馬の需要も上がるわね。それで、アルマーテラー準男爵、馬の用意が出来るまでにどの位の時間がかかるのかしら?」
「そ、そうですね。フェルポント男爵家の様に資金を貸していただけるのでしたら10年で何とかなるかと思われます。流石にそれ以上早くすることは不可能かと。馬の交配もありますので、その位はお時間を頂きたいと思います」
「他領から馬を買ってもいいわ。他派閥からも許可しましょう。それであればどの位で達成できると考えますか?」
「そ、それですと……7年、いや6年で何とかなるかと思います。もしも大量に買えた場合はもっと短くなるかと思います。ただ、大量に買うのは難しいかと。馬の生産をしている貴族家があまり多くありませんので」
「いいわ。6年後、マクファウスト侯爵家の情報網を強化するように進言しておくわ。それまでに馬を増やしておいて頂戴」
いやー、馬は何とかなりそうだな。情報網の強化は有益と言えばそうだしな。連絡が早い方が良いのはその通りなんだよ。後6年後か。まだまだ先の話だな。




