報告は済ませた
OFUSE始めました。
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ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
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さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
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出来た剣の持ち手に布を巻きながら、準備をする。試し切りはしないといけない。作った武器の性能は見ておかないといけない。何をどうやって作ったのかを確認しない事には、鍛冶師としては、眠れない日々を過ごすことになる。一体、自分たちは何を作ったのか。
気にならない訳がない。だからこそ、体が焼ける思いで作ったこの剣がどうなるのかを見届けないといけない。性能が良ければ、自分で作らないといけないからだ。
強い武器であって欲しいと願う反面、強ければ、作らなければならないという葛藤が有りながらも、結局は、強く有って欲しいと願うのが鍛冶師である。
魔石の消費をして欲しいという願いが叶えられるのかは、この剣が有用かどうかで決まってくる。ぼこぼこになっている鉄鎧を前に、漸く準備が終わった鍛冶師が正対する。
「……なあ、斬っても良いんだよな? 普通の剣なら泣く覚悟をしないといけないんだが、まあ、大丈夫だよな? 良い剣であってくれよ。頼むから」
「やるしかないだろう。とりあえず、1度で良い。斬ってみてくれ。そこから考えようや。刃こぼれがするかしないか。しないとは思うが、解らねえからな」
「折れたら今日1日どうにもならねえような気がするな。そんな事にはならねえとは思うが。合金の時点でかなりやばいものの雰囲気が出てたからな」
「やるしかないか。とりあえず、離れておいてくれ。一応な。何事も無いとは思うが、念のためだ。それじゃあ、斬るぞ。泣いても笑ってもこれで決まる訳だ。いくぞ、ふん!」
剣を斜めに振り切ると、鉄鎧が支えの木の丸太ごと斬れた。それも綺麗に真っ二つに。鉄鎧が地面に落ちて、ガンっという音を立てた。
「は?」
「「「「「「は?」」」」」」
良く解らない空気がその場を支配する。何が起きたのかを冷静に考えるには、時間がかかる。普通はあり得ないからだ。鉄の鎧が切り裂かれるなんて事は、あってはならないからだ。
鉄の鎧は、正規の軍隊でも採用されているくらいの強度があるんだ。それをいとも簡単に切り裂いてしまえば、それはもう戦争にならない。虐殺と言ってもいい。
全身金属鎧を着こんでいても、関節の部分は、どうしても皮にならざるを得ない。だから、戦争では、その関節を狙った攻撃をしないといけないし、剣術もそういう箇所を狙う剣術になっている。
防御も同じだ。守るべきところを守るのは、鎧の役割であって、そうならない様に、防御をするのが一般的だ。鎧で受けることは普通なんだ。全てを回避出来る訳が無いからな。
だが、この剣はどうだ。鉄鎧が切り裂かれてしまっている。これであれば、何処を攻撃しようが、致命傷になる事は、間違いない。鉄を切り裂いたという事は、そういう事だからだ。
これが現実。今作った剣は、虐殺の為の道具だという事だ。これが意味することは大きい。繊細な剣術と荒々しい剣術が対等以上に戦えるんだから、もの凄い剣であるのには、変わりない。
そう。この剣を前にしたら、鉄の剣も、もしかしたら、銀の剣も役には立たない。そして、鎧までもが、切り裂かれる。戦い方が、一変することになる。
「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ⁉」
「いや! ちょっと待て! 何だその剣は! おかしいだろ! 鉄の鎧と丸太が真っ二つだと⁉ 力を入れるにしても、おかしいだろ! どうなってやがる!」
「何でそうなった! その切れ味はおかしい! 絶対におかしい! 何なんだそれは! 何なんだそれは⁉ 鉄鎧が皮紙でも切り裂く様に⁉ おかしいだろ!」
まあ、気持ちは解らんでもない。混乱はするだろう。どうしてこうなったと言いたくなるだろう。自分たちは、一体何を作ったのかと。結果が異常事態になっている。
鉄鎧を丸太ごと切り裂いた。これが事実だ。普通はあり得ない。どう考えてもあり得ない。圧倒的な現実を前に、とりあえず、あり得ないと叫ぶしか出来ない。
武器としての性能はどうだとか、そんな事を言っていられる余裕もない。自分たちは何を作ったのか。それが解らない。いや、解っていることはある。目の前の結果が、それが全てだ。
暫くは、意味のない事を言い放つ事しか出来なかった。とにかく、あり得ないと叫ぶことしか出来なかった。だが、非情にもこれが現実である。鉄を切り裂いた。これが現実だ。
「はぁ、はぁ、はぁ。落ち着け。落ち着いたか? 俺は落ち着いている。とにかくだ。これを、この事態を現実として、受け入れなければならない。これは、なんだ?」
「俺たちが作った、剣、だよな? ああ、どう見ても剣だ。それ以外の何物でもない。それが剣でなければ、何が剣と言えるのかって話だよな」
「そう、だな。剣であることに、変わりは、変わりはないはずだ。今までの剣とは、何もかも違う気がするが、それが槍だって事にはならない。剣なのは剣だろうな」
「鉄を切り裂く剣か。いや、丸太ごと斬ったんだよな。刃こぼれは、するわけがないか。それで刃こぼれがしていたら、余計に解らなくなっちまう。何なんだこれは?」
「だが、報告には十分な物が出来上がったのは事実だろう。報告をしないといけないよな? ……どうやって報告をするのかが、問題になる訳だが」
「……なあ、思い付いちまったから言うけどよ、鞘はどうするんだ? 鉄を切り裂くんなら、鉄では作れんだろう? またあれをしないといけないのか?」
「「「「「「……」」」」」」
報告はしないといけないだろうが、現物を届けるのには、鞘は必要だろう。槍や斧では無いのだから。また、同じことをやらないといけないと考えるのは当然だった。
そして、無言で耐火ポーションを買いに行くのだった。この作業を生身でやるのは危険すぎる。耐火ポーションがあるんだから、それを飲んでする方が良いのは、その通りだろう。
その後、鞘を作って、報告書を作成し、商業ギルドへと届け出た。魔石を沢山消費することも出来たし、報告に足る現物も用意できた。結果は喜ばしい事ではあったが、今後は、似たような事をやらないといけないと言うのが、若干の憂鬱だった。




