鍛冶師の苦悩
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「どうしてこうなった。確かに声をかけたのは俺だが、本当にどうしてこうなった?」
俺事ハインリッヒは頭を抱えていた。悪い知らせがあったわけではない。むしろいい知らせがあった。魔石の使用について、目途が立ったというのだから、不味い訳ではない。
だが、予想外の事に何故そうなったのかも考えているわけだ。鍛冶師に丸投げをしたのは、確かに俺だ。だから、俺の所に報告が来るのは、当然なんだが、本当に、何でそうなったんだ?
時は遡り、鍛冶師に魔石を使ってもらう様に商業ギルドに話を付けてから、暫くしたころ。都市の主要な鍛冶師連中が集まって頭を抱えていた。
「招集に答えてくれたことを嬉しく思う。まあ、半分くらいは、来なかったんだが、半分も集まれば良い方だと思っていたからな。これはこれで良いとは思っている。でだ、問題は、うちの店だけに来た訳じゃないとは思っているんだが、お貴族様から、魔石を使えってのが伝えられたと思っている。この件で皆を呼び出したわけだが、大体同じ状況だよな?」
「おう。俺んところにも同じ要望が来たぞ。魔石をどうにかして使ってくれって話だろ? いや、どうにかしようにも、炉にぶち込む以外の方法が無いとは思うんだがよ」
ここに集まったのは、この都市の鍛冶師たち。全員ではない。とりあえず、声をかけて集まった者たちだけだ。数にして15と言ったところか。
弟子の数も含めると、これどころでは無いんだが、その店のトップが集まっている。それでも、この都市の半分の鍛冶師しか集まっていないんだ。課題は、何処も同じなんだが。
普通は、集まらない。何故なら商売敵だからだ。鍛冶師は足りていない訳ではない。冒険者が多いと言っても、武器や防具の更新は、それ程頻繁では無いからだな。
故に、これだけ集まったのは、奇跡といってもいいかもしれない。同じことに、頭を悩ませている者同士、とりあえず、話がしたかったのは、当然の事だとも言える。
何せお貴族様からの命令なんだ。実際は、命令どころか、試してくれとお願いされているだけなんだが、普通にしていたら、お貴族様から指令が飛んでくる事なんて、殆どないんだ。
だから、何が何でも結果を出さないといけないんじゃないかと思われてしまっている。これは、商業ギルドを噛ませたのも、悪影響の1つなんだが、お願いと命令の何方でも無い様な伝え方をしてしまっていた。そんな伝え方をされたら、命令にも聞こえてしまう。
「おう、その件だ。最初は炉にぶち込んで見たんだが、火力が上がったのはそうなんだが、それ以外に何か変化があったかと言われたら、無かったからな」
「そりゃそうだろ。出来るもんは出来るし、出来ないもんは出来ないんだ。それは変わらんだろ? 火力を上げたって言っても、所詮は鉄だ。それ以上にもそれ以下にもならねえよ」
「合金を使うんなら、多少は変わるのかも知れねえが、鉄に銀を混ぜることもあんだろ? 配合比率は極秘だから言えねえが、皆やっている事だろう?」
「まあな。銀も割と重いからな。重さを武器にするような大剣とかは、銀を入れることも多いな。まあ、それでも、一部の冒険者だけだがな。力で戦う奴らには、鉄が軽すぎるってだけの話だ」
「俺んとこも混ぜてるな。流石に、配合比率を話す気にはなれないがな」
「大体同じか、冒険者の要望に答えるから、比率もあったもんじゃないんだけどな。鉄と銀の合金くらいは、皆やっていることだし、そもそも、銀だけで作ってくれって奴もいるだろ?」
「いるなあ。どっちが良いかっつったら、解らねえってのが本音だがな。費用は倍じゃ利かねえからな。相当に稼いでいる奴らが銀の武器を使うんだろ? 俺んところでもそうだからな」
「銀の加工には、そりゃあ魔石が沢山必要だがよ、そういう事じゃねえんだろ? お貴族様が言っているのは、もっと使えって事なんだろ? そりゃあ、無理じゃねえか?」
「俺も解らん。新しい金属が出てくりゃ何か変わるかも知れねえが、そんなゴーレムが出たっつう話は聞いたことがないぞ? 鉄もゴーレムから取っているんだから、ゴーレムだよな?」
「そりゃそうだろ。だがよ、新しいゴーレムが出たら、騒ぎの1つや2つじゃねえぞ。魔境が変わっちまっているって事なんだからよ。それこそ、お貴族様が考えることだろうよ」
「だな。俺らが考える事じゃねえ。俺たちは鍛冶師だ。職業はバラバラかもしれねえが、完全に領分が違うな。そっちは、お貴族様に任せておけば良いだろう」
「そうだな。目下、問題は、魔石をどうやって使うかだろう? 何かいい案を持っている奴は居ないのか? この機会だ。思ったことは口に出していけ。ここだけの秘密にしとこうや」
「まあ、それもありだろうな。それじゃあ、とりあえず、1つだけな。お前らは、魔石で剣を作ってみたか? 俺は作ろうとした。作ろうとしたが、出来なかった。スキルが反応しなかったな」
「お? お前もやってみたか。俺もやってみたな。とりあえず、炉の温度を上げてみて、試してみたんだが、武器にはならなかったな。いや、まあ、解っちゃ居た事なんだがよ」
「俺も試したな。結果は同じだったが。溶けねえし、スキルも反応しねえ。魔石を使うのは無理だと思うぞ? まあ、とりあえずでやってみただけなんだがよ」
皆、それぞれに色々とやっているみたいである。それでも、解決策は見いだせなかった。だからこそ、恥を忍んでこの会に参加しているとも言える。
職人としては、一人前を豪語する彼らでも、お貴族様の命令は絶対だと思っていた。実際は、そんな事は無いんだが、命令だと思い込んでいた彼らは、悩んでいた。




