第七十九話 第二回イベント24
話数が間違っていたので修正しました。
第二回イベント、七日目続きです。
引き続き本作品をお楽しみください。
そして、来週から投稿本数を五本から四本に変えさせていただきます。
理由としては、新作を考える時間がほしいというのが一番大きいです。
投稿の曜日は、月水金日の四日になる予定です。
『ふぅ』
グレモリーを中心に置きつつ、周囲を飛びながら私は息を吐く。
さて、戦うと言ってもどうするか。
さっきまでグレモリーと対峙していた前衛のタンクプレイヤーたちは、遠くに離れた場所に連れていかれて状態異常回復薬を飲まされている。
ヴィーンやぬんぬんさんは離れてるから軽度の毒状態だけど、どうやらこの状態異常を起こすフィールド内にいると状態異常回復薬を飲んでも一時的に状態異常が消えるだけであまり意味がない。
もちろん、グレモリーから離れれば離れるほど状態異常は弱くなっていくから、重度の状態異常を受けたプレイヤーを下げて状態異常回復薬を飲ませるのには意味がある。
HP減少でこの嫌なオーラが取れてくれるといいんだけど……そう上手くいくかな。
時たまフレンズではなく私自身を狙ってくる魔法陣ビームを避けながら、私はグレモリーの頭上を旋回し続ける。
……いつまでもこうしてても埒が明かないよね。
グレモリーとの戦いではとにかく速さが大事だ。となると、モードシフトできる今のブラッドラインじゃないと厳しそうだね。
ヒットアンドアウェイでちまちま削っていくか……残りHPバーは一本半ほど。
よし、行くか!
『ふっ!』
私は飛行形態のままグレモリーに向けてスラスターを噴かして突撃する。
そんな私を握り潰そうと、グレモリーは巨大な両腕を伸ばしてきた。
私はそれをバレルロールで回避し、さらにグレモリーに近づいていく。
くっ、巨体のくせに動きはやっぱり俊敏だね……!
「ちょこまかと!」
『それが取り柄なんでね!』
「ぐっ!」
グレモリーの懐まで潜り込んだ私はその場で人型形態にモードシフトし、サーベルで切りつける。
何度かグレモリーの腹部を切りつけた後に飛行形態にモードシフトして離脱。
そしてやっぱりというか、私を狙った魔法陣ビームを当てようとしてもグレモリーに当たることなくビームが捻じ曲がってしまう。
「何度やっても、私が私の攻撃に当たるなんて!」
『ですよねー』
んー、どうにかして両腕を換装、マギユナイト・ライフルとディ・アムダトリアのチャージ攻撃を当てたいところだけど……難しいね。
あれならかなりのダメージを与えられるはずだけど……。
私はショートライフル二丁とウィングバレル二つをグレモリーに向けて発射する。
「ちっ……」
顔を庇うように両腕をクロスさせてビームをガードするグレモリー。私の放ったビームがその両腕に直撃するものの、目立ったダメージはなさそうだ。
ダメージを与えるなら、胴体か顔ってところだよね。腕や足は太くなって硬そうだし、翼のある背中は論外。
生半可な遠距離攻撃だと今みたいに防がれるから、やるなら近距離攻撃かどデカい遠距離攻撃か……。
死に戻り覚悟で、超近距離戦を挑んでみるしかないか。こっちの近距離武器はサーベルが二本と、頭部のツインテールパーツにある隠しサーベルが二本。
あとはディ・アムダトリアが使えればリングで増幅させたサーベル……スパイカーもあるっちゃある。
でも、ディ・アムダトリアを使うのはまだ先だ。今は機動力の方が大事だからね。
さて。じゃあいっちょやったりますか!
『ミオン、行きまーす!』
私は再びスラスターを噴かしてグレモリーに接近する。
どうやらグレモリーは魔法陣ビームと両腕を使って、私を追い込もうとしているようだ。
私は急停止からの急降下や急上昇、旋回やバレルロールなどかかるGはお構いなしにグレモリーの攻撃を避けて近づいていく。
「このっ、このっ、すばしっこい!」
『掴まれたら一巻の終わりでしょうが! そりゃ避けるよ!』
「大人しく捕まりなさいっ!」
『捕まれっていわれて捕まるバカはいないよ!』
再びグレモリーの懐までたどり着いた私は人型形態にモードシフトして、四本のサーベルで切りつける。すると、二本の時よりもダメージは大きくグレモリーが痛みを感じるかのように声を漏らす。
……四本ならいけそうだ。このまま超近距離で戦う!
「……仕方ない。全てこのデク人形に集中させる!」
グレモリーはそう言うと、フレンズたちの対処をさせていた自立式魔法陣ビームを全て私に向けて集中させるようだ。
もとから私を狙っていた魔法陣ビームと合わせて、かなりの数だ。これを避けながらサーベルで戦うのは厳しいけど……!
『フレンズを自由にさせてくれるなら、話は別だ!』
「減らず口を!」
私はビームの発射に合わせて、飛行形態にモードシフト。ツインテールパーツからサーベルを出しながら、グレモリーの身体の周囲を飛び回る。
ツインテールサーベルをグレモリーの身体に押し当てながら、ビームを避けた。そのままグレモリーの身体をぐるりと回るように移動していく。
また、自由になったフレンズたちをグレモリーの周囲に展開させて、攻撃を行わせる。狙うは顔面ただ一つだ。
ただし、目だけは狙わない。前回ゲロカスビームをくらった時、確か目を攻撃してあの状態になったはずだからね。今のこの状態でゲロカスビームなんて相手にしてらんないよ。
「こ、このっ、ぐぅぅぅ!」
グレモリーは痛みに表情を歪ませる。さすがにずっとサーベルを押し当ててるのは効いてるみたいだね。
ビームを避けながらだと、これくらいしかできないし……こっちだって一歩間違えたら速度を出したままグレモリーの身体にぶち当たることになる。そうなったら普通にこっちが大ダメージを受けるだろうし、ハラハラドキドキもんだよ。
チラッとHPバーの様子を見てみると、私の努力が通じたのか一本半だったバーが一本と五分の一ほどにまで減っていた。
今度から大きい敵と密着して戦う時は、サーベルを振るんじゃなくて突き立てたまま移動しながら戦うのがいいかもね。今でも結構ギリギリだから、これ以上の攻撃密度や攻撃速度の敵が相手だと厳しそうだけど。
グレモリーはどうにかして痛みの元凶である私を握り潰そうとするものの、私を捉えることができていない。
捕まらない私に苛立ち、めちゃくちゃに腕を振り回すだけだ。
……まぁ、それが怖いんだけどさ。振り回す速度が半端ないから、避け損なったら終わりだもん。
それに、魔法陣ビームは未だに私を狙い続けている。と言うより、さっきよりも数が増えてる気がするんだよね。
徐々に包囲網を狭められてる感じがして、楽観できない。
このままだと捕まるのも時間の問題だ。早急になんとかしないと……っ!?
『ぐっ!』
考え事をしていたからか、前方に展開していた魔法陣に気づかずにビームに当たってしまった。
それにより体勢が崩れて、他のビームもまともにくらってしまう。
絶え間なく撃ち込まれるビームの嵐。一撃一撃のダメージは大したことがないが、それを何度もくらうとなると話は別だ。
私は思わずモードシフトで人型形態に戻ってしまう。
そして徐々に、ゆっくりと私のHPとパーツの耐久値が減っていく。
なによりも、この場に釘付けにされてるのがやばい!
このままこの場にとどまってたら、グレモリーの腕が伸びてくる。でも、この弾幕は……!
「もう、逃がさない!」
ビームをくらい続ける私にグレモリーの魔の手が伸びる。
なにか……なにかない!?
腕部を換装して左腕のシールドを使う……それだと多少ダメージが落ちるだけで根本的な解決にはなってない!
試作魔機装をインベントリから出す? 出してどうするの? 乗り込む暇なんて与えてくれるわけがない。
ゆっくりと引き伸ばされた時間が、刻々と時を刻んでいく。
もうグレモリーの腕は目の前だ。
万事、休すか。
私がそう思ったその時、どこからか叫び声が聞こえる。
『――ぉぉぉぉぉぉぉおおおおりやぁぁぁああああ!』
そして感じる確かな衝撃。
なにかに突き飛ばされる感覚とともに、ビームの弾幕から逃れる私。
『ギルマスは、やらせねぇっス!』
そして私が見たのは、魔法陣ビームを背中に浴びながら真正面からグレモリーの腕と対峙する、タクトの姿だった――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




