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第七十話 第二回イベント15

第二回イベント、七日目開始です。今回は短めです。

それでは引き続き本作品をお楽しみください。

 あれから五日目、六日目と大きなトラブルもなく過ぎていった。

 この二日で悪魔打倒のための試作魔機装(マギアーム)はほぼ全てのプレイヤーの手に渡ったと見ていいだろう。

 ビールの実を見つけたことで羽目を外しすぎた生産職プレイヤーのみんながフルールさんの監督の元にせっせと働いていたのは面白かった。もちろん私も作れるだけ作ったつもりだ。


 全ては明日、七日目に全てが決まる。

 できるだけのことはやったはず。寝て起きたら悪魔との戦いだ。しっかりと休まないとね。

 今日も騒いでいた一部の酔っ払いたちを横目に、私は就寝した。


 *********************


 ――誰かが外で叫んでいる。


 んー、まだ、もう少し寝れるはず……。


 ――外から爆発音が聞こえる。


 あー、もう、うるさいなぁ。もう少し寝かせてってば……。


 ――衝撃でベッドが揺れて、地面に激突する。


『あいたっ!?』


 ベッドで寝ていた私は、なぜか床に頭をぶつけて目が覚めたようだ。

 機械の身体だから痛みはないはずなのになんで痛いんだろう……不思議だ。

 しっかし、さっきから外がうるさい。誰かの怒鳴り声や、爆発音、風が吹き荒ぶ音が頭に響く。


『もう、どこの誰かな。こんな朝っぱらから騒いでるのは』


 もしかしたら酔っ払いが酩酊のステータス異常にかかって暴れてるのかもしれない。もしそうなら注意しないと。

 私は窓を開けて、外で騒いでるプレイヤーに注意をしようとして――


「ギチギチ!(くらえ!)」

『うっわぁ!?』


 ――窓を開けた瞬間に飛び込んできた羽根蟻の一撃を間一髪のところで躱した。

 窓枠を派手に破壊しつつも攻撃を空振った羽根蟻はそのまま部屋の壁に突き刺さり、派手な音を立てて壁を破壊した。

 ちょ、どうなってるのこれ!? なんでいきなり蟻が襲ってくるの!?


 私が混乱している間にも、羽根蟻は体勢を整えて私にその鋭利な顎を向けてくる。心做しか不意打ちを避けられて憤慨しているようにも見えた。

 ギチギチと音を鳴らして、私を威嚇している。

 あーもう、よく分からない状況だけど、一つだけ言えることがある。

 こいつらは私の安眠を邪魔した。

 私の安眠を邪魔していいのは、私に殺される覚悟のあるやつだけだってことだぁ!


『お前は許さん!』

「ギチっ!?(うわぁ!?)」


 腕部から持ち手を取り出し、サーベルで羽根蟻に切りかかる。まさか攻撃されるとは思ってなかったのか、驚いたようにその場を飛び退いた。


『逃がすかっ!』

「ギチチーーっ!?(助けてーーっ!?)」


 羽根蟻は私の攻撃を回避するために羽根を羽ばたかせて距離を取ろうとした。しかし、ここは室内。

 しかもそこまで広くない一室だ。たとえ壁が壊れたとしてもその広さは羽根蟻か飛び回れるほど広くはない。

 私は羽根蟻に右のサーベルを投擲し左の羽根を貫き、すぐさま左のサーベルを抜き、羽根蟻を切りつける。


「ギチ……っ!(そんな……っ!)」

『お前の顎ごときで、サーベルを防ぐなどっ!』


 顎の刃で受けようとした羽根蟻だったが、私のサーベルはその顎を難なく切り裂き、返す刀でもう片方の顎も切り落とす。これでもうこの羽根蟻は顎で攻撃ができなくなった。

 本来ならフレンズで追撃したいところだけど、寝起きだから背部パーツは付けていない。


『はっ!』

「ギチチーーっ!(いやーーっ!)」


 私は羽根蟻に近付き羽根に突き刺さったサーベルを掴み、左の羽根を切り落とす。

 片方の羽根が切り落とされてバランスが崩れたのか、羽根蟻の動きが鈍る。

 すかさず私は羽根蟻の背に跨り、二本のサーベルを背中に突き立てた。


『これでっ、止め!』


 インベントリからショートライフルを二丁取り出し、羽根蟻に向けてトリガーを引く。

 穴だらけになった羽根蟻は、その身体を光の粒子に変えていった。

 ……ふぅ。とりあえず倒せたみたい。

 私は一息ついてから、床に突き刺さったままのサーベルを回収し、背部パーツを装備した。


 うん。これがあると安心感が違うね。

 さてさて、それでどうなってるのかな。どうしてモンスターが……しかも、蟻型モンスターがこの拠点にいるんだろうか。

 外の騒ぎはモンスターが攻めてきたから……ってことでいいんだよね。

 考えごとをしていると、再び爆発音がして家が揺れる。

 ……とりあえず、外に出て状況の確認からかな。


 ちょうど破壊された窓枠があるので、そこから外へと飛び出す。滞空しながら、外の様子を窺った。

 そこは戦場になっていた。いくつかの家は焼け落ち、今でも燃えてる家がある。


 周囲の森からは絶え間なく蟻たちが湧き出してきており、飛び回っている羽根蟻もチラホラと見えた。

 プレイヤーたちはそれぞれでいくつかの団体に分かれながら蟻たちと戦っており、戦況は悪くはないけどよくもない。そんな風に見える。


 ……この状況で寝てたってのは、ちょっと申し訳ない気持ちになるね。起こしてる暇もなく蟻たちが攻めてきたってことなんだと思うんだけど、遅れた分はちゃんと働かないと。

 それにしても、どうして突然蟻たちが……ああ、今日が七日目だからか。

 確かこいつら、悪魔の手先とかなんとか言われてたっけ。だから悪魔を倒そうとしてる私たちを襲いに来たと。


『まずは手近なやつから倒していって、数を減らしながら合流していこう』


 私は腕部パーツを変更し、ショートライフルからマギユナイト・ライフルとディ・アムダトリアへと武装を変更する。こいつらを使うのも久しぶりな気がするね。

 照準を適当に合わせて蟻たちを薙ぎ払う。同時にフレンズも全基射出し、プレイヤーたちの援護に向かわせた。


 蟻たちをある程度間引いたところで、私はあることに気付いた。そういえば、試作魔機装使えるんじゃない?

 ここなら大森林区域だけど広さは十分にあるし、周りは敵だらけだ。最悪、家が壊れても問題はないだろう。

 固まってるプレイヤーたちが使うと大きさ的に他のプレイヤーの邪魔になりそうだけど、私が使う分には問題ないはず。


 そうと決まれば早速周囲の蟻たちを一掃して安全を確保する。

 インベントリから試作魔機装を取り出して、コックピットに乗り込んだ。

 ガコン、とコックピットが試作魔機装の胴部にハマり、背中をコネクタで繋ぐ。


 モニターが点灯し、周囲の様子を確認できるようになった。

 先ほど一掃したはずの蟻たちがまた寄ってきていて、あまりにもキリがない。

 でも、蟻たちを倒すには数を減らし切るしかないから、嫌な戦いだ。


『このぉっ!』


 飛びかかってくる蟻を踏みつける。それだけで蟻は光の粒子に変わっていった。

 次の蟻は殴り飛ばす。それも光の粒子に変わる。

 どうやら、通常の蟻は試作魔機装に乗ってれば一撃みたいだ。なら、武器を使って広範囲に攻撃していこう。

 私は試作魔機装の腰部に取り付けられているブレードとバズーカを手に取る。ブレードは右手に、バズーカは左手には持たせた。


『これでもっ!』


 ブレードによるなぎ払い。これで何体かの蟻が光に変わった。


『くらえっ!』


 バズーカによる無属性魔法砲撃。その威力は凄まじく、固まっていた蟻たちをまとめて光に変えた。

 うーん、バズーカは威力はあるけどちょっとEN(エネルギー)消費が激しいね。ここはブレードで片付けていこう。

 戻って来たフレンズを翼に格納しつつ、ブレードで周りの蟻たちを駆逐していく。


 ある程度の数を片付けたところで、他のプレイヤーと合流し、何人かに試作魔機装に乗ってもらい、数と大きさの暴力で蟻たちを殲滅していく。

 そのまま別のプレイヤーたちと合流、何人かに試作魔機装に乗って殲滅速度を上げていってもらう。

 そうしてほぼ全ての大森林区域のプレイヤーと合流した時、蟻たちの姿はほとんどなくなっていた。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

続きもどうぞお楽しみください。

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― 新着の感想 ―
[一言] わざわざ蟻に喋らせたって事は伏線かな。 出てこなくなったPKとかが変異させられたとか、実は蟻は手先じゃないとかって感じ?
[気になる点] んー、うんー、考えすぎかな 試作魔装機使ってるし
[一言] わざわざ羽蟻に副音声翻訳で喋らせる必要あったか?(ʘᗩʘ’) 中途半端にコミカルにするならモヒカンバカのヒャッハー口調にしとけば良かったのに(?・・)
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