第六十八話 第二回イベント13
第二回イベント四日目続きです。
引き続き本作品をお楽しみください。
私は、今のブラッドラインで飛べるギリギリの高度を飛んでいく。
空からの眺めは最高で、イベントフィールドが一望できる。
やはり、草原区域にある下から上に流れる川は印象的で、とてもファンタジーだ。あとであの川にも行ってみたいところだね。
でも、まずはお宝からだ。まだ見ぬ素材が私を待ってるぜ!
というわけで、山脈区域にレッツゴー!
私はスラスターを噴かせて速度を上げる。《敏捷強化》のスキルがいい仕事をしているのか、景色が流れていくスピードが早い。
いつもなら山脈区域に近付くだけで翼竜たちが襲ってくるんだけど、今日は翼竜討伐隊が翼竜と戦ってるからね。私の方には来ないようだ。
翼竜討伐隊と会うのは罪悪感が半端ないので、なるべく翼竜討伐隊に見つからないようなルートで山脈区域を目指す。
しっかし、この飛行形態は使い勝手がいいね。武装の数も申し分ない。今度から基本的にはこっちのパーツを装備しておこうかな。
四脚はロマンはあるけど使い勝手がいいかって言われたらね。可変機には勝てんとですよ。
イベントが終わって魔機装が自由に作れるようになったら色々作ってみようかな。もしかしたら変則的なものも作れるかもしれないし。
個人的にはそろそろ強化外装というか、強化武装というか、ミー〇ィアやデン〇ロビウムを作りたいね。
魔機装の搭乗者から魔力を供給するって機能を付けられれば作りやすいと思うんだよね。
それなら一々魔導石を使わなくて済むし、本体のパーツをアップグレードすれば使えるEN量は増える。
その分EN管理が重要になってくるだろうけど、そこはほら、PSで頑張ろうってことで。
あとは、ガオ〇イガーみたいな感じで魔機人を中心に変形合体とかも面白そうだ。もしやるなら、誰か実験t……ごほんごほん、テストパイロットを募ろう。
流石に魔機装を中心に作るのは難しそうだ。大きさ的に。
うん、やるなら魔機人でだね。
あとは……ミスリルが見つかったなら、あれがなんとかなるかもしれない。
今まで手に入れた素材じゃほとんど見向きもされなかったからなぁ。
あの言葉もあるし、イベントが終わったら本格的に修理していきたいところだ。
私たちの初期装備、錆び朽ちたパーツを。
あれ、《パーツクリエイト》の中に入れられるのにこちらの操作をてんで受け付けないんだよね。なら、素材と合わせてみようと思ってもどれも弾かれちゃう。
唯一反応があったのが未だ手を付けていない改良型八九式魔導石だった。
それもあって、私は改良型八九式魔導石に触れてないんだよね。下手に使って修理できないってのが一番ダメだし。
こればっかりは、他の人に言うわけにはいかないからなぁ……言ったら戦争だもん。いや、うちのギルドメンバーはそんなことないと思うんだけど、世の中には色んな人がいるからね。
用心しておくことに越したことはない、と。
あの時の言葉の、君たちが本当のなにかを取り戻した時って、本当の姿を取り戻した時だと思うんだよね。
で、私たちの本当の姿ってなんだろうって思った時に、ふと思い出したのが初期パーツの錆び朽ちたパーツシリーズだった。
そう言えば、元々の姿はあれだよなって。
それで暇のある時にちょくちょく試してたってわけだ。上手くはいってないけどね。
ここのお宝で、少しでもいい素材が見つかればいいけど……。
考え事をしていたら、いつの間にか山脈区域にたどり着いていたようだ。飛行形態のまま高高度を滞空する。
さて、山脈区域に来たけど、どこを探そうか。
どうせなら高いところから探すのがいいかもしれないね。なにもなければどんどん下に下がっていく感じで。
高度を下げつつ、地に足を着けられる場所を探していく。うーん、あまり切り立ってると常時飛んでなくちゃいけないから面倒なんだよね。それに、そんなところにはお宝はなさそうだし。
「GRR?」
『うわ、真横でPOPしたよ!』
私が一番大きな山に向かおうと方向転換したところで、運悪く真横に翼竜が現れる。
仕方ない。時間をかけたくないし、ちゃっちゃとこいつを倒すとしますか!
私はフレンズを全基射出し、その場で人型形態に戻る。
サーベルを構えて、翼竜に向かってスラスターを噴かせた。
『悪く思わないでよね!』
「GRR!」
『そこっ!』
近付いてきた私を敵と認識したのか、翼竜は翼を羽ばたかせて噛み付いてくる。
私はそれを翼竜の背中側にくるりと回って避けつつ、サーベルで切りつけた。
反撃をくらうと思っていなかったのか、翼竜の口から驚愕の声が漏れる。
「GRR!?」
『隙だらけってね!』
もちろんその隙を逃すはずもなく、全てのライフルフレンズで翼竜を撃ち抜き、ソードフレンズで全身を串刺しにした。
翼竜が苦悶の叫び声を上げた。
「GRRRRRRR!!!」
『このっ、しぶとい!』
トドメとばかりに右手のサーベルを翼竜の胴体に向かって投擲する。
狙ったところを寸分違わず穿ったサーベルで翼竜のHPが尽き、光の粒子に変わった。
刺さっていた翼竜が消滅したことで落ちていくサーベルを回収しつつ、飛行形態へモードシフトする。フレンズを全基翼に戻し、目的地である一番高い山へと向かう。
ふぅ、いきなり真横に現れた時はびっくりしたよ。もし翼竜を見つけたら、避けられそうなやつは避けていこう。どうせ素材はまだまだ余ってるし……。
しばらく目的の山の上を旋回し、降りれそうな場所を見つけたので人型形態に変形して着陸する。
一番目立つのは一際大きな洞窟だろうか。高さは10m以上はありそうな穴。中は暗闇で見通せない。恐らく、中に入らないと中の様子は分からないだろう。
……入ってみるか。
『よし、行こう』
私は頬をガシャンと叩いて穴の中に入っていく。
穴の中は思った以上に暗くなく、壁面に等間隔で松明のようなものが置かれている。まるでボス部屋に続く通路みたいだと思った。
『……はは、あながちボスがいてもおかしくなさそうだね』
なにより、松明のようなもの置かれているその壁面にはなにか巨大なもので引っかかれたような掻き傷もある。爪の大きさも尋常じゃない。それこそ、翼竜よりも大きいサイズだ。
この山が翼竜の住まいだとすると、翼竜の王とか、上位種とかがいても不思議じゃないけど。
……どうする? 戻るか?
『……いや、戻っても結局ここには私しか来れないし、だったら今奥に進んでも同じだ』
タクトとマノンだったらそこそこの高度までは飛べるだろうけど、それ用に作られてないパーツだからENの消費も半端ないし、ここまでは来れないだろう。
他の種族だと翼人くらいか。でも、さすがにここまで飛ぶことはできないだろう。
それに、今回はお宝探しだ。こういう場所の奥にこそお宝がありそうじゃない?
まあ古今東西、洞窟の奥にある宝を守るのはボスモンスターと相場が決まってる。
またボスとタイマン張ることになりそうだけど、そこはもう諦めだ。むしろ、これからもボスとタイマン張ることを考えると、慣れておいた方がいいかもしれないね。
いやまあ、本来ボスってタイマンで戦うような相手じゃないんだけどさ。今までの流れ的に、ね。
通路を進んでいくと、一際大きな空間に出る。
どれくらい大きいかな。少なくとも奥行は100mくらいありそうだけど。高さは天井が見えないくらいだ。
さてさて、奥にはなにがいるのかな。
《遠視》スキルを使って奥を見通す。
「なんじゃあ、おぬしは」
『……えっと、あの、君は?』
「初対面の竜に向かって君とは失礼なやつじゃのぅ。まずは自分から名乗るのが常識じゃろうに」
そこにいたのは、ふんす、と腕を組んで憤りを表す幼女。その髪色は燃えるような紅と冷めるような蒼のコントラスト。
瞳の色は紅と蒼の紅蒼瞳で、暗闇の中ということもあって輝いて見える。
頬は朱が差していて、もちもちしてそうだ。あとで頼んだら触らせてくれたりするかな……?
「おい、おぬし。聞いておるのか?」
『え、あ、ごめん! 貴女が可愛くってつい惚けちゃったよ』
「か、可愛いなどと言っても、わらわは騙されんぞ? 本当じゃぞ?」
ちょっと嬉しそうに、でもそれを顔に出さないようにしているのだろう。表情は引き締めているのにしっぽはブンブンと振るわれている。まるで犬みたいだ。そんなところも可愛い。
でも、なんでこんな子供がこんなにところに……って、しっぽ?
っと、まずは自己紹介からしないとダメだね。
『私の名前はミオン。貴女の名前は?』
「ミオンか。呼びやすい名じゃな。わらわは上位翼竜、紅蒼翼竜のクリムという。まさかわらわのいるところにぷれいやぁとやらが来るとは思わなんだが」
そう言ってころころと笑う幼女……クリムちゃん。
この子、私たちのことを知ってる? 運営側……いや、もしかしてセイリュウオーさんと同じかな?
それにしても、この子があの翼竜よりも上位の翼竜なんだね。上位翼竜になると人に変身することもできるんだろうか。
竜や龍とは違うん……だよね。なんか、そこら辺の話をすると怒らせちゃいそうな気がするから、とりあえず置いておこう。
「ふむ。おぬし……面白いの」
『面白い?』
「ふふ、今のわらわではおぬしになにもしてやれんが、そうさの。元の世界のこの場所にもう一度来い。今わらわに言えるのはこれくらいじゃの」
『なるほど……』
つまり、イベントが終わったあとこの浮遊大陸が通常フィールドに現れるってことね。
もう一度来い……黄昏の戦乙女を使えばみんなでも来れそうだけど、聞いてみようか。
『その時は、私一人で来た方がいい?』
「む、そうじゃの。わらわが気に入ったのはお主だけゆえ、来るのであるなら一人で来てほしいの」
『分かった』
「わらわとの約束じゃぞ」
『うん、約束』
クリムちゃんが差し出してきた小指に、私の小指を合わせる。
「うむ。約束じゃ。しかし、このまま帰すのも忍びないの。そこの採掘ポイントから掘っていくとよい。いいものがでるだろうからの」
『ありがとう!』
「では、わらわは寝るのでな。さらばじゃ」
そう言うとクリムちゃんは手を振って奥の方に行ってしまった。どうやら奥の岩が隠し扉になっているようで、そこからさらに奥へと入っていった。
んー、可愛い子だったね。約束もしちゃったし、イベントが終わったら会いに来ようかな。
さ、あまりここに長居するのもクリムちゃんに悪いから、採掘だけして別のお宝を探そうっと。
ほい、ほい、ほい……お、ミスリル鉱石が多いね。これもクリムちゃんのおかげかな。ありがたやーありがたや。
大量のミスリル鉱石を掘り出した私は、ホクホクとした顔でクリムちゃんの洞窟をあとにした。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞ、お楽しみください。




