第六十二話 第二回イベント7
第二回イベント、二日目最終話です。
引き続き本作品をお楽しみください。
「それって、どういう……」
『んっと、ここからじゃ見づらいよね』
私は設計図が表示されているモニターに近付いて、キーボードを触る。どうやらこのキーボードを操作して設計図を拡大表示することができるみたいだ。
私は設計図の全貌をホログラム映像にして投写する。
①と名前につくだけあって単体だと設計図としては使えたものじゃないけど、説明する分には問題ないだろう。
『これで見えるかな』
「ほんとだ……」
「これは腕と足、か?」
『見た感じ、ここにある設計図はそれしかないね。書いてある説明文を見たら分かるんだけど、これらは魔機人以外の種族が乗ることを前提に作られてるっぽい』
「つまり、残りの設計図を集めれば私たちがロボに乗れるってことです?」
『そういうこと』
私がぬんぬんさんの言葉に頷くと、みんなは「おぉ……」と感嘆の声を上げていた。
腕と足の長さから考えて、全体的な大きさは5mくらいだろうか。目算だから、早く他の設計図も回収したいね。
「とりあえず、ここでやることは終わりましたね。一度拠点に戻りましょう」
『カンナヅキさんたちとも話し合わないとね。残りの二箇所がどの種族に対応してるかも分からないし』
「よし、帰るぞお前ら!」
「「うぃー」」
ルフさんがメンバーをまとめて歩き出す。私たちもここに来る道中にモンスターが出てこないのは分かっているので、ルフさんたちの後について行く。
長い一本道を戻り、ボスの間まで戻ってくる私たち。そこで待機していたプレイヤーたちにも帰還の指示を出し、蟻の巣穴から脱出する。
外でモンスターを狩りながら待っていたみんなも引き連れて、私たちは大森林区域の拠点へと帰還した。
帰ってきた頃には空は茜色に染まっており、今日の探索はここら辺で終わりのようだ。
完全に暗くなる前に拠点まで戻ってきた私たちは、早速情報を共有することにした。以前にも会議をした建物に集まったのは、カンナヅキさんにフルールさん、それと私だ。
他のプレイヤーは生産職プレイヤーに装備の修理を頼んだり、戦利品を渡して新たな武器を作ってもらおうと声をかけている。
その様子を尻目に、私は扉の先にあったものをカンナヅキさんに共有した。
「なるほどな。大まかな話はチャットでは聞いていたが、そんなものがなぁ」
『だから、早めに他の二箇所の設計図も解放しておきたいんだよね。件の悪魔がいつ出てくるか分からないけど、こんなに露骨にプレイヤー側に設計図を渡すってことは、十中八九出てくるだろうから』
「それもそうだな。だが、喜べ。草原区域も山脈区域も、扉の手前までは行ったそうだ」
「ボスは倒せたのですね?」
「ああ。どっちもこっちより楽な相手だったそうだがな……無限に湧き続ける蟻を倒しつつ巣穴を進まないといけないとか、とんだ苦行だぜ」
『それで、扉の先には進んでないんですか?』
「それがな。進みたくても進めないらしい。スクショは貰ってるから、これを見てくれ」
カンナヅキさんに渡されたメールを開くと、それには二つの画像が添付されていた。
一つは、ゴツゴツとした岩の扉の前に、ゴツゴツとした岩でできた台のようなものが置かれている画像。
扉には翼のマークが描かれており、それ以外に特筆するべきものは写ってなかった。
もう一つは、お城の城門のような豪華な扉の前に、これまたオシャレな装飾の施された台が置かれている画像。
城門のような扉には二本の角のようなマークが描かれており、それ以外に特筆するべきものは写ってなかった。
ふむ。つまり、このマークに対応した種族を連れていけばいいってことか。
私がカンナヅキさんにそう話すと、「なるほどな」と顎に手を当てた。
「実はな、この扉を見つけたPTには人族しかいなくて、そこら辺を試すことができなかったそうだ。明日は色んな種族を連れてくって聞いたぞ」
『それなら、草原区域のリーダーのクラッドさんを連れていけばいいと思うよ。この翼のマークに当てはまる種族が、今のところ翼人しかいないからね』
「おお、言われてみればそうだな。よし、クラッドには俺から連絡しておこう。それで、山脈区域の方なんだが……これは魔人か?」
『だと思う。ぬんぬんさん以外の魔人をあんまり見たことがないからなんとも言えないけど、角の生えてる種族って魔人と特定の獣人だけだと思う。マークや扉の装飾から動物って感じがしないから、あれは魔人の角でいいとは思うんだけど』
「なら、こっちにはぬんぬんを派遣するしかないか。今は同じPTだし、一緒に頼まれてくれるか?」
『いいよ。その代わり、草原区域は任せた』
「おうよ。明日はフルールに拠点の守りを任せるつもりだ。草原区域には俺が行こう」
「ふふ、任されました」
『あとは、そうだね。設計図のものを作るなら、色々と採掘しなきゃいけなくなりそうだけど。山脈区域の翼竜が邪魔かな?』
「どうだろうな。そこまで上に登らなきゃあいつらも手を出しては来ないと思うが」
『聞いたことがない鉱石の名前が書いてあったから、そんな低い位置の鉱石を掘ったくらいで出てくるとも思えないんだよねぇ』
「しかし、ならどうする? さすがに第二陣のやつらに翼竜は荷が重すぎるぞ。第一陣でも、きついやつはきついな」
『なら、明日設計図を回収したあとに私が上空で翼竜を引きつけるよ。その間に採掘班には山を登って鉱石を掘ってもらう感じで』
「ミオンさん、それは……」
「いやだが、それならいけるな。ミオンも昨日翼竜とやり合って無事だったんだ。勝算はあるんだろ?」
『もちろん。もしあれだったら、翼竜との戦闘に自信のあるっていうプレイヤーを集めてもらえると助かるよ。全部私が掻っ攫ってもいいけど、それだと反感を買うかもしれないし』
「ははは、分かった。それは明日あいつらに伝えることにしよう」
『こんなもんで大丈夫かな?』
「おう。今日は疲れただろうから、ゆっくり休むといいぜ」
『いやほんと、今日は久しぶりに疲れた気がするよ……』
「カナリアさんのことは残念ですが、残りの一枠はどうします?」
「忘れてたぜ。カナリアのやつ、PKたちとつるんでたとはな……次に会った時は容赦しねぇ」
『あはは。お手柔らかにね。それと残った一枠だけど、ヴィーンを連れていきたいんだ』
「ヴィーンの嬢ちゃんなら大丈夫だろ。ミオンの方から言っておいてくれ」
『りょーかい。じゃ、私は戻るね』
「お疲れ様」
「お疲れ様だ」
『お疲れ様です』
二人と別れた私は、ヴィーンや親方のいるであろう私たちの家に戻る。中に入れば、リビングで親方とヴィーン、アルさんがご飯に舌鼓を打っていた。
……端っこの方で、膝を抱えてるマノンには触れないでおこう。
『ただいま』
「ん、ミオンか。おかえり」
「ようミオン。今日はお疲れだな」
「お疲れ様です」
『ありがと。親方とアルさんにはあとで伝えなきゃいけないことがあるから、ご飯を食べたらそのままここに残ってね』
「おう」
「分かりました」
「おや、私にはなにもないのかい?」
『ヴィーンは明日からうちのPTに入ってもらいたいんだけど、大丈夫?』
「ふむ。問題ないよ。ミオンのPTというと、例の彼女がいるPTか」
『例の彼女?』
「いや。こちらの話だよ。ともかく、明日はよろしく」
『うん、よろしく』
「それはそうと、二人に話すことは私も聞いていていいかい?」
『大丈夫だよ』
私は三人がご飯を食べ終わるのを待ってから、今日起こったことやさっきカンナヅキさんたちと話したことを伝える。
私の話を聞き終わった三人は、顎に手を当てて考えているようだった。
「なるほどなぁ。あのアナウンスはそういうことだったのか」
「僕はまたミオンさんがなにかやらかしたのかと……」
「私としても、その搭乗型のロボットは気になるところだね。明日には設計図は揃うのかな?」
『どうだろう? 山脈区域の方は私たちで行くから大丈夫だと思うから、草原区域のプレイヤーたち次第かな』
「なるほど。とりあえず私はミオンと翼竜との戦闘を映像として残しておきたいね。外から見てどんな変態的な機動をしているのか、自覚してもらういいチャンスだ」
『ああ、そういえば録画や配信もできたっけ。配信するつもりはないけど、それなら翼竜との戦闘中の様子を私視点で録画しておこうかな』
「おっ、それは俺も見てぇな。撮ったらミオンのアカウントであげといてくれよ」
「ふふっ。再生数が伸びること間違いなしだね」
『おっけーおっけー』
その後はヴィーンたちと取り留めのない話をしたりして、第二回イベントの二日目は更けていった。
ちなみに、私たち魔機人でも美味しいご飯が食べれる日は着実に近付いている。食欲はなにものにも勝るパゥワーを生むのだよ、うん。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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