第五話 勝利者へのご褒美
もしかして、文章量多すぎですかね……。
少し調整するべきか……。
〈EXボスモンスター【アーティファクト・ソードマン】を倒しました〉
〈《刀剣》スキルのレベルが上限に達しました〉
〈一部スキルの派生先が解放されました〉
〈パーツ[錆び朽ちた]シリーズに情報が追加されました〉
〈武装[錆び朽ちたソード][錆び朽ちたブレード]に情報が追加されました〉
〈EXアーツ【スパイラル・ブレイカー】を習得しました〉
しばらく座って休んだ私は戦闘後のログを確認していた。それによると、どうやらあのボスロボットの名前は【アーティファクト・ソードマン】というらしい。《刀剣》スキルのアーツを使用するその姿は、正しくソードマンだね。
さらに私の《刀剣》スキルがカンスト、つまりはレベル30になったようだ。《刀剣》スキルの派生先のスキルも開放された。これは後で確認かな。
パーツに情報追加……これも要確認ね。とりあえず後回しで。
それにしても、EXアーツ? 普通のアーツとは違うのかな。兄さんからも聞いたことがない。とりあえず詳細を確認してみよう。
【スパイラル・ブレイカー】
EXアーツ
自身に回転を加えて空中から突撃する。【スパイラル・アタック】の空中版アーツであるが、その威力は全くの別物と言っていい。
なるほど。元々【スパイラル・アタック】っていうアーツがあって、それを空中で行うアーツが【スパイラル・ブレイカー】ってことか。空中からの突撃だから地上版より威力も高い。空中に飛ぶ手段と空中で回転する手段、その上相手に突撃できる手段がないと覚えられないアーツなのかな?
今の私だと一発打つのが限界だろうなぁ。スラスターとバーニアに使うENが洒落にならない。それでも、私が使える唯一のアーツだ。顔がニヤけてきちゃう。ニヤける顔できないけどね!
それで、パーツと武装になにか情報が追加されたんだっけ? 前はキャパシティだったけど、今回はなんだろう?
[パーツ・頭部]錆び朽ちた頭部 レア度:EX
DEF▽ MDEF× 魔力伝導率:F-
長い年月を経て錆び朽ちてしまった頭部。かつての優美な姿とはかけ離れている。視界が悪く、各種耐性も軒並み最低である。
[パーツ・胴部]錆び朽ちた胴部 レア度:EX
DEF▽ MDEF× 魔力伝導率:F-
長い年月を経て錆び朽ちてしまった胴部。かつての優美な姿とはかけ離れている。非常に脆く、各種耐性も軒並み最低である。
[パーツ・腕部]錆び朽ちた腕部 レア度:EX
ATK▽ DEF▽ MDEF× 魔力伝導率:F- キャパシティ:4/10
長い年月を経て錆び朽ちてしまった腕部。かつての優美な姿とはかけ離れている。仕込まれたギミックは辛うじて作動するもののその動きはぎこちなく、各種耐性も軒並み最低である。
[パーツ・腰部]錆び朽ちた腰部 レア度:EX
DEF▽ MDEF× AGI▽ 魔力伝導率:F-
長い年月を経て錆び朽ちてしまった腰部。かつての優美な姿とはかけ離れている。非常に脆く、各種耐性も軒並み最低である。
[パーツ・脚部]錆び朽ちた脚部 レア度:EX
DEF▽ MDEF× AGI▽ 魔力伝導率:F-
長い年月を経て錆び朽ちてしまった脚部。かつての優美な姿とはかけ離れている。非常に脆く、各種耐性も軒並み最低である。
[武装・剣]錆び朽ちたソード
ATK△ 魔力伝導率:F-
長い年月を経て錆び朽ちてしまった武装。剣の形をとっているが、元々は違う用途で使われていた。今では鈍器としての使い道しかなさそうだ。それでも、丸腰よりはマシだろう。
[武装・刀]錆び朽ちたブレード
ATK△ 魔力伝導率:F-
長い年月を経て錆び朽ちてしまった武装、刀の形をとっているが、元々は違う用途で使われていた。今では鈍器としての使い道すらなさそうだ。それでも、丸腰よりはマシだろう。
魔力伝導率……軒並みF-だけど、つまりこれってENの消費効率ってことよね? 伝導率が高ければ高いほど少ない消費でENが使えると。スラスターとかバーニアとかほんの少し動かしただけですごいEN使ったもんなぁ。F-ってのが最低ランクだとして、最高ランクはどこまで高いんだろう? S? SS? 少なくともA以上よね。新しいパーツなんかを造る際には魔力伝導率にも注目しておきますか。
さて、お次はドロップアイテムだね。ロボット系だし、《パーツクリエイト》に使えるような素材が出てくれればいいけど。《鑑定》さん頼むよ!
[素材・アイテム]壊れた装甲板 レア度:R
衝撃で壊れてしまった装甲板。もとは何かしらの機械の装甲として使われていた。特殊な金属で造られており、一般的な鍛冶師では加工することもままならない。
[素材・アイテム]壊れたフレーム レア度:R
衝撃で壊れてしまったフレーム。もとは何かしらの機械のフレームとして使われていた。特殊な金属で造られており、一般的な鍛冶師では加工することもままならない。
これは……素材アイテム! しかも説明文から見るに魔機人のパーツの素材としてピッタリじゃない! 《パーツクリエイト》起動!
しかし、この素材アイテムたちも《パーツクリエイト》の素材庫には入らなかった。お決まりの素材の条件を満たしていません、だ。
んー、なにがいけないんだろう。条件? でもソードマンはちゃんとしたロボットだ。魔機人と見た目上ではなにも変わらないはず。それなのに弾かれる? 壊れてるのがいけないのかな。
なにか見落としてる気がするんだよね。むむむ……もしかして、素材庫に入れるにはなにか下準備みたいなのをしないといけないとか? 料理に下ごしらえが必要なみたいに。
だとしたら、なにをしたら下ごしらえになるのかな。魔機人は魔力を動力源に動くロボット。で、さっき魔力伝導率っていう新しい情報が追加されたわけだね。
……よし、魔力ならぬENを通してみよう。このENだって元を正せば魔力だし。魔機人のパーツの素材にするために魔力に親和性のある素材じゃないといけないってのも頷ける話ね。
私はインベントリから壊れた装甲板を取り出して、スラスターにENを送った時のようにエネルギーの流れを感じとる。そして、ゆっくりと、満遍なく染み渡るように装甲板へENを注ぎ込んでいく。
さて、《鑑定》さんお願いします!
[素材・アイテム]魔力の籠った装甲板 レア度:EX
魔力が篭り、加工ができるようになった装甲板。適切な工法を用いれば魔力で動く機械の装甲として使えるだろう。
『キタ――――――ッ!』
やりました! やってやりましたよ私は! 素材に魔力を注げばそれが魔力の籠った素材に変質するわけね!
くぅぅ! これは早速、手持ちの素材に魔力を込めなければ!
……と思ったのはいいんだけど、壊れた装甲板を魔力の籠った装甲板に変えるだけで最大ENの半分を使ってしまった。かなりENを食う作業ね。これはガレージに戻ってゆっくりとやりましょうか。多分だけど、魔力伝導率が低いからこんなにENを消費するってことだよね。魔力伝導率の高いパーツを作成するのは急務だ。
私はインベントリに装甲板をしまい、元来た道を戻ろうとして、止まる。その視線は、壊れたままのソードマンの残骸に向いていた。
んー、おかしい。モンスターは倒したら光の粒子になって消えてしまうはず。それなのに、この場にそのまま残ってる?
恐る恐る近づき、残骸に向かって《鑑定》する。
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(上) レア度:SR
非常に珍しいアーティファクトの上半身の残骸。かつての勇猛な姿はどこにもなく、今では物言わぬ屍となっている。元々生きてはいないので屍と言っていいのかはわからないが。
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(下) レア度:SR
非常に珍しいアーティファクトの下半身の残骸。かつての勇猛な姿はどこにもなく、今では物言わぬ屍となっている。元々生きてはいないので屍と言っていいのかはわからないが。
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(剣) レア度:SR
非常に珍しいアーティファクトの剣の残骸。かつてはその刃であまたの命を切り刻んできたが、今では見る影もない。新しく武器として生まれ変わることを望んでいる。
これは……また、とんでもないものを。これ自体が魔機人のパーツとしてとても優秀なものじゃないですか。ソロでダンジョンボスを倒したとはいえ、こんなものを貰っていいのかな? 貰うよ? 私、貰えるものはなんでも貰っちゃう主義だよ?
え、錆びついてるんじゃないかって? 確認したら錆びていない部分を素材として使えるらしいことがわかった。つまり、大丈夫ってことね。錆び朽ちてるのと錆び付いてるのでは大きな違いがあるらしい。
特に問題も起こらなさそうなので私はアーティファクトの残骸たちをインベントリへしまい込む。うぇへへへ、涎が止まりませんなぁ。
『さて、帰って《パーツクリエイト》でも……うん?』
ほくほく顔(ロボットだから表情はないけど)でボス部屋を後にしようとした私だけど、ふと違和感を覚えて周囲を見渡す。壁には相変わらずよくわからない機械類が取り付けられ、明かりであろうランプが不思議な光を放っている。これらの機械類はオブジェクト扱いで持っていくことができなかった。
何度かこのダンジョンに挑戦してる中で「壁の機械を持っていけたらパーツ作成に使えるんじゃね?」と思った私は、剣を使って壁の機械を剥がそうとしたり壊そうとしたの。結果は言わずもがな失敗で、まあそうだよねと納得した。
でも、この部屋にはなにかある。ボス部屋に隠し部屋が存在していた、なんてRPGではあるあるだし、もしかしたらもしかしちゃう?
んー、違和感……違和感……どこがおかしい? 今までと明らかに違う箇所があるはず……。
『……なんで気づかなかったんだろう?』
私はダンジョンの出口とは反対側に歩きだす。ボス部屋の一番奥の壁際、そこに明らかにボスを倒す前には存在しなかった扉がポン、と置いてあったからだ。見たところ、なんの変哲もない木製の扉なんだけど……。
『明らかに周囲と浮いてるよね、これ』
周りが機械に溢れた近未来チックな内装なのに、そこにぽつねんと置かれているのは木製の扉。グラフィック置き忘れたのかな? それともバグ? 今日サービス開始だから、バグだとしてもおかしくはないけど。でも、VRMMOのバグって致命的じゃない? とりあえず運営にメールだしとこ。
それはそれとして扉に近づくと、ドアノブになにかメモのようなものが貼ってあるのが見えた。なんて書いてあるのかな?
『たった一人でこの試練に打ち勝った者に、この部屋の中身の全てを譲渡する。我らの希望、どうか受け取って欲しい。我らが作り上げた魔機人の未来に幸があらんことを』
ふむ。つまりこれはバグでもなんでもなく、このダンジョンをソロでクリアした私に対するご褒美? この書き方からするにこの部屋の主は魔機人の製作者? 幸があらんことを……って私、錆び朽ちてたけどなぁ。
あ、運営から返事きた。バグじゃない……よし、なら入っても大丈夫だね!
ドアノブを軽く捻ると、キィという音を立てて扉が開く。ちょっと雰囲気あるなぁ。周りとのギャップがすごいけど……ええい、女は度胸! いざ突入!
『すっご……』
ドアノブを引き中に入った私を待っていたのは、色とりどりの宝石だった。謎のランプに照らされた宝石はそれぞれ異なる輝きを放っており、幻想的な雰囲気を醸し出している。思わず、感嘆の言葉が出てしまったほどだ。とりあえず、《鑑定》しよか?
[素材・アイテム]改良型八九式魔導石 レア度:UR+ 魔力保有量:10000/10000
はるか昔に魔機人のパーツ、及び武装に使われていた魔導石。この魔導石が使われたパーツや武装を扱える者は英雄のみである。かつての賢人たちは改良に改良を重ね、最高峰の魔力保有量を持つ魔導石を作り上げた。その特性上、どの属性にも対応できるまさに理想の魔導石が完成した。今では失われた製法で、作り出すことは不可能に近い。
[素材・アイテム]八九式魔導石 レア度:UR 魔力保有量:5000/5000
はるか昔に魔機人のパーツ、及び武装に使われていた魔導石。この魔導石が使われたパーツや武装を扱える者はエリートのみである。かつての賢人たちは改良に改良を重ね、高位の魔力保有量を持つ魔導石を作り上げた。その特性上、あらゆる属性に対応できるまさに理想の魔導石が完成した。今では失われた製法で、作り出すことは不可能に近い。
[素材・アイテム]八八式魔導石 レア度:UR- 魔力保有量:1000/1000
はるか昔に魔機人のパーツ、及び武装に使われていた魔導石。その時代では一般的な魔導石であり、賢人たちはこれを改良することで八九式魔導石を作り上げた。
一度属性を定めるとその属性の魔導石となる。今では失われた製法で、作り出すことは不可能に近い。
『あびゃばばばばばばばばばばば!?!?!?』
《鑑定》内容がとんでもなさ過ぎた。これは宝石なんかじゃなかった、もっとやばいものだった!
魔力保有量はわかる。その魔導石? とやらがどれだけの魔力を持っているか。また、どれだけの魔力を込めることができるかの情報だろう。それがどれだけすごい量なのかは判別つかないけど。
それにしても数がすごい。最高峰の魔導石だけで一○○個、次点のものが五○○個、一般的なものだと一○○○個になる。レア度も最高レアリティのURだ。さっきのアーティファクトの残骸が霞んでしまうレベルのシロモノだよ? 軽く発狂しかけたね。
と、とりあえずインベントリに……一括で全部入っちゃった。これ、持って帰っていいよね? ダメって言われてももう返さないよ?
輝かしい光を放っていた魔導石を全て収納し終わり、部屋の奥へ恐る恐る進む。もう魔導石だけでお腹いっぱいなんですけど、まだなにかある感じがするんだよね。
両隣を空の棚で埋め尽くされた(魔導石を取ったからだが)部屋を奥へ奥へと進んだ私の目の前に、一つの宝箱が現れた。もう、これでもかとキンキラキンに装飾された宝箱だ。中に入ってるアイテムの想像がつかない。ちなみに宝箱はオブジェクト扱いで《鑑定》してもなにもわからなかった。開けるしか、ないか……。
『……』
言葉にならないとは、こういうことを言うのだろうか。
[素材・アイテム]作成途中の魔力結晶炉 レア度:UR+ 魔力保有量:? 魔力伝導率:?
はるか昔の稀代の天才発明家、マギアーノ・クライスドーラ博士が作り上げた魔力結晶炉。その作成途中の品。完成品は主に魔機人の動力炉として使われる。
完成の日の目を見る前にマギアーノ博士が死んでしまい、長い年月を経てもなおマギアーノ博士の研究室に残されていた。
いつの日か、自身を完全な姿へと作り上げてくれる人物を待ち望んでいる。
最高レアリティのオンパレードじゃないですか! サービス初日に手に入れていいアイテムじゃないよ運営さん!?
いや、一ゲーマーとしては喜ぶべきところなんだろうけど……なんか、手が震えてきた……。
しかも、魔機人の動力炉? 魔力を動力にしてるってそういう事か……。私の中の魔力結晶炉、取り出せたりするかな?
カションカション、と身体の中から音が響く。胸部装甲がカションと開き、中から翡翠に輝く魔力結晶が現れた。うっすらと翡翠の粒子が放たれており、感想を述べるとしたら綺麗、という感想が先ず浮かぶ。
手に持った作成途中の魔力結晶炉と見比べてみると、たしかに似ている。ただやはり作成途中だからなのか、一目見ただけだと同じものには思えないだろう。これ、プレイヤーが完成させられるものなのかな?
自分の魔力結晶炉を身体の中へとしまい、作成途中の魔力結晶炉をインベントリへ。なんだかんだ言ったけど、貰えるものはなんでも貰う主義だからね……。
私は部屋を出る前に一度だけ後ろを振り返り、木製の扉を閉じる。その瞬間、きれいさっぱりとその扉は消えてしまった。
『ご褒美にしても度が過ぎるよ……こんなの持って歩きたくない……』
いくら貰えるものはなんでも貰う主義の私でも、ここまでのものは想定していなかった。
とりあえずガレージに戻ろう。倉庫に入れちゃえば奪われる心配もなくなるからね。
『はぁ〜』
どうしてこうなったのだろう。隠しダンジョンを見つけて、ボスを討伐して、レア素材を見つけて。
とっても嬉しいはずなのになぁ。なんでかなぁ。気分が重いなぁ……。
私は足を引きずるくらいの重い足取りで、ダンジョンを後にした。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.25(4up↑) 《武装》Lv.25(3up↑) 《パーツクリエイト》Lv.-- 《自動修復》Lv22(5up↑) 《自動供給》Lv.12(2up↑) 《刀剣》Lv.30(MAX)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.13(3up↑) 《直感》Lv.24(3up↑) 《敏捷強化》Lv.22(3up↑)
残りSP43
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもお楽しみください。




