第五十六話 第二回イベント1
イベント本編開始です。
それでは、引き続き本作品をお楽しみください。
時が経つのは早いもので、色々と準備を重ねていったらあっという間にイベント当日となった。
イベントの特殊フィールドにはPT単位での転移になるので、私はいつものPTではなく臨時のPTを組んでいる。
メンバーは、第一陣から私とヴィーン、それに親方。
第二陣からはマノンとタクト姉弟に、親方の弟子の獣人族のアルをメンバーに入れている。
アルは犬系の獣人族で、デザインのセンスやものづくりの器用さなんかから親方にビシバシ指導を受けているんだとか。
今回のイベントは部隊単位じゃなくて、PT単位で楽しんでもらうことにした。サバイバルだからね。そこは楽しまないと損でしょ。
ま、違うサーバーに送られるかもしれないからそうするしかないってのもあるんだけどね。私としてはそっちよりも、一週間フリファンにログインしっぱなしっていうのが嬉しい。
今後のイベントはこういう形にしてもらいたいね。いっぱいゲームができるし。
そんな私たちは、現在ホワイトハーバーの広場に集まっている。ホーム用の転移ポータルを購入したから、浮遊大陸間を楽に移動できるのがいいね。もし次の浮遊大陸に行くことがあるなら、始まりの町に新しくギルドホームを買うことも視野に入れておこう。
最初に貰ったホームは小さいからすぐ売っちゃったしね。買う時になったら大きいやつを買いたい。
私としては、散華の森に建物を建てられないかなーとか思ってるけど、あそこ普通にモンスター出るし無理だよね。最奥ならなんとかなりそうな気もするんだけど。
ま、今はホームの話はいいや。イベントの話に戻ろう。
基本的なことはイベントのお知らせに書いてあったものと同じなんだけど、当日発表された内容があるからそれを説明していく。
まず、イベントポイントについて。これは、どれだけそのサーバー内でイベントに貢献したかを表すポイントなので、積極的にイベントに貢献しましょうということらしい。
イベントを邪魔するようなプレイをした、もしくは悪質なプレイと判断された場合にはポイントが減り、タチが悪いものはGMとの熱いOHANASHIがあるみたいだね。私たちもそう判断されないようにしないと。
そして、ランキング上位者に配布されるアイテムだけど、これは選択式で、多種多様なアイテムを取り揃えているという。その中にはアプデ後に追加される浮遊大陸でしか手に入らないアイテム等もあるみたいなので、頑張って上位にくい込みたいところだ。
各サーバー内のランキングによって選択できるアイテムが減っていくみたい。目指せ一位だね。
また、サーバー毎のランキングの方でもアイテムが選択式で配布されるそうなので、個人ランキングを上げつつサーバーランキングも上げていこうかな。
アイテムについてはお知らせの通り。事前に三種類のアイテムを指定して、そのアイテムのみをイベントフィールドに持ち込めるようにする。それ以外のアイテムは、イベントが終わったら戻ってくるので問題ない。
私は結局通常のブラッドラインの腕部パーツに、右肩に取り付けるディ・アムダトリアと、左肩に取り付けるマギユナイト・ライフルにした。
準備期間に作ったあれこれはF・ブラッドラインの各所に取り付けてあるので、使う時になったら説明しようと思う。色々と本気で作ったから、使う時が楽しみだ。
あとは、問題があるとしたら満腹度システムかな。
私たち魔機人には満腹度なんてないんだけど、ヴィーンや親方、アルなんかは食べ物が必要だ。それらを現地でちゃんと確保しないと大変なことになっちゃうね。
イベントフィールドについたら、なによりも食料を探さないといけない。
ちなみに、満腹度システムが新しく追加されたことにより日の目を浴びるようになった《料理》スキルだけど、意外にも親方やアルが持っていたりする。正直、親方が料理するところは想像ができないんだけど、スキルレベルはそこそこ高いんだとか。親方の手料理、ちょっと食べてみたかったな。
そして、なによりも大事なのが、スキルの取得について。
イベント中にスキルをSPを使って取得すると、イベントポイントが減算されるという。
ここに関しては、仕方ないよねってところはある。だってサバイバルなのにスキル取得し放題だと、サバイバルって感じがしないもんね。
私としてはこの書き方からして、イベント中はSPを使用しない方法でスキルが取得できるんじゃないかと踏んでいる。スクロールや巻物なんかにスキルが封印されてて、それを使うことで覚えることができる……みたいな。
今までそういうアイテムはなかったからね。ここで実装、って言われても驚かないかな。
あとは、モンスターの強さか。
今回のイベントフィールドでは、区域によって出現するモンスターが変わっているらしく、強さも区域ごとに分かれているらしい。
第二陣でも楽に倒せるモンスターもいれば、第一陣でも苦戦するようなモンスターもいるようだ。
素材はイベント限定の素材と、通常の素材があるという。
これは是が非でも色んなモンスターを狩らねば。そして作らねば。
とまあ、長々と語ったけどこんな感じかな。
ま、イベントの進め方としては早めに食料を手に入れて、どこかで拠点を構築するって感じになる。あとは、現地で会ったプレイヤーと協力したりね。
サーバーランキングを上げるためには、個人プレイはおすすめできないし。もし個人ランキングしか見てない人がいたら、その時はなにも見なかったことにしよう。うん。
そして、時間がやってくる。
広場に集まった無数のプレイヤーたちの身体が輝きだし、光に包まれたその姿をかき消していく。
光が収まり目を開けると、そこには文明の姿はなく、ただただ鬱蒼と広がるジャングルの姿があった。
「おぉ、本当にジャングルじゃねぇか。ここで一週間暮らすってわけだ」
『む、あのジャングルの木は素材にできるのかな?』
「……いや、できねぇな。オブジェクト扱いだ」
『そっかー。残念』
「……素材を探すのもいいんだけど、まずは私たちのご飯を探すところから始めようじゃないか。アイテムの鑑定は親方に任せよう。こういうイベントだと、アイテムの効果が分からないのは定番だからね」
『それもそうだね。じゃあ各自、この場所を起点としてマップを開きつつ各方向を探索。発見したアイテムは全部インベントリに突っ込んで、なにかあった場合にはPTチャットで連絡すること。他になにかある?』
『私たちは特に』『ないっス!』
「私も大丈夫だよ」
「俺とアルも大丈夫だ。メンバーの仕分けはどうする?」
『正直まだどんな強さのモンスターが出るか分からないから、第一陣と第二陣の2人ずつで行こう。私とタクト、ヴィーンとマノン、親方とアルで。親方も戦えるもんね?』
「ハッハッハ。OC製の武器があるんだ、そんじょそこらのモンスターには負けねぇよ」
『おっけー。じゃあ、探索開始!』
各人がそれぞれの相方と探索を開始する。私はマノンの弟のタクトとだ。
タクトには採取を任せて、私はまずマップを埋めようと思う。ジャングルの上空は木々が生い茂ってるけど、隙間がないわけじゃない。ところどころ陽の光が差し込んでるからね。
『というわけでタクト。私はちょっくら上空からマップ埋めしてくるから、しばらく採取を任せても大丈夫かな?』
『もちろん大丈夫っスよ。あ、でももしモンスターとの戦闘になって勝てなさそうなら呼んでも大丈夫っスか?』
『というか、その場合にはむしろ呼んでくれないと困るかな。すぐに駆けつけるから、勝てなさそうなら全力で逃げてね』
『はいっス』
タクトのパーツはアーキタイプマギナから変わっていて、見た目はスーパーロボットのように見える。自分なりに色々とギミックを考えたらしく、第五部隊の人たちに色々と教わって作ったんだとか。
素材も自分で取れるものを使ったらしい。別に倉庫から使ってくれてもよかったんだけどね。
なので、結構重厚感を感じる機体になっている。その分スラスターを多く積んでいて、重さをカバーしたとのこと。
『じゃ、行ってくるね!』
『はいっス!』
『モードシフト!』
私は軽くジャンプして、自身の身体を飛行形態へと変形させる。タクトが目を輝かせてこっちを見てるけど、この子はずっとこんな感じだ。何度見せても尊敬の眼差しというか、キラキラとした視線を向けられるのはちょっと恥ずかしい。
私はスラスターを噴射させて、飛翔する。そのまま高度をぐんぐんと上げていき、伸びた枝や葉を突っ切って外へと飛び出す。
……いやはや。結構このゲームでファンタジーな景色には見慣れたつもりだったけど、これは凄いや。
私の眼前には、どこまでも広がる大森林や、翼竜などが棲息している切り立った山々、下から上に上っていく川など、まさにファンタジーの大自然といった様相か広がっていた。この景色だけでも、このイベントに参加した価値があったかも。おっと、とりあえずスクショスクショ。
さて、ここからどうしようか。試しに森の上を飛んでみると、私のマップにジャングルの情報が追加されていく。どうやらこの高さでとんでもマップは埋められるみたいだね。
それじゃあENが尽きないようにある程度マップを埋めていきますか!
タクトの位置を常に確認しつつ、私はマップを埋めていく。ヴィーンや親方たちが向かった方とは逆の方向に進んでいかないとね。
しばらくジャングルの上を飛んでいて分かったのは、このイベントフィールドがかなり広いということ。もちろん普通の浮遊大陸よりは小さいんだろうけど、プレイヤーがサーバーごとに分けられていることを考えるとかなりの広さになるね。
ある程度マップ埋めが終わったところで、少し遠くの方にある山からなにかがやって来るのが見える。山にいたのは翼竜っぽかったんだけど、空を飛んでるこっちに気づいたのかな?
そのまま滞空して待っていると、かつて戦った擬態翼竜よりもさらに一回りは大きい翼竜が翼を畳み、ドリルのように回転しながらこちらに突撃してくる。
『あっぶない!』
私はそれを回避し、お返しとばかりにショートライフルの連射をお見舞いする。さすがにそれは痛かったのか、畳んでいた翼を翻してこちらの射撃を避けていく。
だけどそのデカい図体では全てのビームを避けきることはできず、徐々に傷の数を増やしていった。
んー、結構強い、かも。少なくとも第二陣のメンバーだとソロは厳しいかな。この翼竜には空を飛べるっていうアドバンテージがあるから、一PTでも厳しいかもしれない。
ま、ここで一体は倒しておきますか。どんな素材が取れるかも気になるし。
私は逃げる翼竜を追いかけ、ビームの連射を浴びせていく。少しずつ距離を詰めていき、翼竜がビームを避け損なって動きを止めた瞬間に肉薄する。
『モードシフト! かーらーのっ、サーベルでっ!』
瞬時に人型形態に戻った私は、ライフルを腰にマウントしてサーベルを抜き放つ。そのまま翼竜の両翼を切り裂き、機動力を削いでいく。
痛みに喘ぐ翼竜は私を振り返り、ブレスを吐こうとするも時すでに遅し。モードシフトして飛行形態になった私は既に離脱を終えており、もはや避ける力を持たない翼竜にビームのシャワーを浴びせる。
あっという間に穴だらけになった翼竜は、その身体を光の粒子に変えていった。
『結構しぶとかったな……』
やっぱり通常兵装だと火力が足りないのかもしれないね。ま、それをおぎなう秘密兵器の数々なわけですが。
さて、ドロップアイテムの確認確認っと。
今回手に入ったのは、翼竜の肉に、翼竜のテール肉、翼竜の鱗に翼竜の爪だ。
翼竜の肉は三つで、それ以外が一つずつ。
[食材・アイテム]翼竜の肉 レア度:R 品質:B+
翼竜から手に入る肉。その味は普通の肉を凌駕し、肉の味に魅せられた美食家たちが後を絶たない。
調理するには《料理》スキルが必要。
[食材・アイテム]翼竜のテール肉 レア度:SR 品質:A
翼竜から手に入る希少な肉。その味は翼竜の肉をさらに上回り、希少性と美味さのあまりにオークションでは高値で売買されている。
調理するには《料理》スキルが必要。
肉類はわかりやすい食材アイテムで、説明欄を見てるだけでヨダレが止まらなくなりそうだ。くそっ、魔機人だとこの肉を味わうことができない……!
残りのアイテムは普通に素材アイテムだね。爪や鱗なんかは普通に使えそうではある。
んー、よし。決めた。タクトの方も大丈夫そうだし、ちょっとこの翼竜を狩ってこよう。どうせなら美味しいものを食べた方がいいだろうしね。私は食べられないけど!
どうにかして味覚を搭載した頭部パーツを作りたいけど……作りかたが皆目見当もつかない。どこかにヒントでも眠ってるといいんだけどね。
そのあと私はみんなと合流する前に、素晴らしい素材を持つ翼竜を乱獲するのであった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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