第五十四話 空を舞う魔機人-マギナ-
どこまでもマイペースなミオンです。
それでは本作品をお楽しみください。
というわけで飛行試験のためにホワイトハーバーの外までやって来ました。
先駆者であるダリベさんに変形時の感覚については聞いてるんだけど、変形する瞬間に感覚が切り替わるらしい。
変形し始めるとコックピットに座ってるような感覚に切り替わって、レバーやらなんやらで機体を操作する感じになるんだとか。そりゃ感覚が残ったまま変形したら大変なことになるだろうしね。
ダリベさんは変形する際にセリフを言ってたけど、事前に決めておいたキーワードを言うことで変形するそうだ。
キーワードは決めてあるから、早速変形!
『モードシフト!』
スラスターを噴かせて飛び上がる。
瞬間、体を動かしている感覚が切り替わった。確かに椅子に座ってレバーみたいなのを持ってる感触があるね。
私の身体はその間にも変形を続け、最後に腰が180°回転し、背面が上を向く。翼が展開され、格納されていた砲塔が顔を出す。
二丁のライフルを持った手首が回転し、上向きになる。これでライフル二丁、翼の砲塔が二つの計四つの砲撃が可能になった。
とりあえずスラスター全開でどれくらい速いのかとか、飛んでいられる時間はどれくらいなのかとかを調べないとね。ちょうどいいからここから自由工場まで飛んで行けるか試してみようっと!
『いっけぇ!』
スラスターを全開にした瞬間、ドゥン! と身体全体にGのようなものがかかる。一瞬で最高速まで加速したブラッドラインは、私の想像をはるかに超えて速かった。
あっという間にホワイトハーバーから離れた私は、その速度を維持したまま高度を上げる。確かに衝撃は感じるけど、動かせないほどじゃない。
空に棲息する鳥型モンスターを横切り、置き去りにしていく。通り過ぎた後に私の存在に気付くものの、そのモンスターが追いつくことはなかった。
速い。これが風になるってことかな? 地上でCモードになっている時も速いと思っていたけど、これはさらに速い。
この加速でENがどれだけ消費されてるのか確認するけど、思った以上には減っていなかった。この速度を維持したままなら、ゲーム内時間で二時間くらいは飛びっぱなしでいられる。速度が速い分通常のブラッドラインよりも装甲が薄いのが難点か。
次は武装を試してみよう。近くにいた五匹ほどの鳥型モンスターの群れを発見し、その内の一体に照準を合わせてトリガーを引く。
二丁のライフルから放たれたビームマシンガンは鳥型モンスターのHPをみるみるうちに削っていき、私が通過する頃には光の粒子に変わっていた。連射モードの調子はよさそうだね。
モードを切りかえて単発に。横向きにスラスターを噴射させて向きを変え、モンスターを二体照準に捉える。
『もらった!』
放たれた光の一撃が鳥型モンスターの胴体を的確に貫き、その身体を粒子に変えた。単発状態の威力も申し分なし、と。
最後は翼の砲塔だね。再びスラスターを噴かせてターンし、残りの鳥型モンスターをロックオンする。
トリガーを引けば、ライフルから放たれるものとは比べ物にならない威力のビームがモンスターを貫き、一瞬で光に変えてしまった。
oh……これ下手したら普通のチャージショットより強いんじゃない?
それから幾度かの戦闘を挟み、F・ブラッドラインの性能を確かめていく。モードシフトの掛け声で人型に戻り加速しながらサーベルを振るったり、スラスターを噴かせてターンしている時に人型に変形して照準を合わせてライフルを連射したり、機体にできるギリギリの動きを探していく。
人型状態でもその加速力は健在で、ブラッドラインの中でも一番と言っていいほどの速さだ。問題があるとすれば武装のレパートリーの少なさかな。
Fウィング装備時のブラッドライン・Xやブラッドライン・Cに比べると、攻撃手段の少なさが目立つ。
まぁF・ブラッドラインに多彩な攻撃手段は求めてないから問題ないっちゃ問題ないんだけどね。そのための【即時換装】のアーツなんだから。
そして、F・ブラッドラインの大体の性能を確認し終えた時には、もう既に自由工場は目と鼻の先だった。
私はそのまま工場の周囲を旋回し、発着場を探す。この装備のままダンジョンに潜ってもいいけど、あくまでこれは空中戦用のパーツだからね。鳥型モンスターとの戦いで戦い方は掴めたから、わざわざダンジョンに挑む必要もナッシング!
というわけで、人型に変形して発着場に着地した【自由の機翼】だけに許された秘密の入口から自由工場の中へと入っていく。これは裏道のようなもので、ダンジョンをクリアしなくても工場内部に入れるというルートだ。
しばらく通路を歩いて工場内に入ると、見覚えのある後ろ姿を発見した。
『セイリュウオーさん!』
『む、その声はミオンか。今日はどうしたのだ? そんなところから。いつもみたいに黄昏の戦乙女から来たわけではなさそうだな』
『うん、ちょっとね。新しいパーツの試運転がてら、ホワイトハーバーからここまで飛んできたんだ』
『それはまた。飛んできた……ということは、その少し形の変わったブラッドラインが新しいパーツなのか?』
『そう! 可変機能を搭載した空中戦用のブラッドライン、その名もF・ブラッドライン!』
『おお、いい名だな。ふむ、そうか。それには私との戦いで手に入れた魔力結晶炉を使っているのだな?』
『正解です! よく分かりましたね?』
『前に見た時よりも出力がだいぶ上がっているようだったから、もしやと思ってな』
『出力の違いも分かっちゃうんですか』
『まぁな。系統は違うとはいえ私とて魔力で動くのだから、それくらいは見極められるさ』
『私には無理そうですね……』
『君ならばできなくはないと思うのだが……なるほど。スキルが足りないか。ならばこのスキルを覚えてみてはどうだろうか?』
〈EXスキル《魔力視》の取得条件を満たしました〉
おおう。また唐突な。
しかし、セイリュウオーさんはプレイヤーにスキルを与えることができるのか。それは知らなかったな。
恐らく好感度とか、見えないマスクデータで管理されてるんだろうけど……こういうのは信頼の証って感じがして、凄くいい。
《魔力視》:魔力の宿った眼で相手を視認すると、魔力の流れが見えるようになる。
ふむふむ。このスキルはレベルがないタイプのスキルだね。PvPでもPvEでも役に立ちそうなスキルだ。このスキルが発動している状態で相手が魔法を使用する場合、色で属性が、輝きの強さで威力が分かるという。
魔法だけでなく魔力に反応するので、モンスターが使う技なんかにも反応してくれるのだとか。
早速SPを消費して《魔力視》スキルを獲得する。
《魔力視》スキルはON/OFFをイメージするだけで切り替えられるらしく、ONにするとセイリュウオーさんの全身を輝きが巡っているのが分かった。なるほど、これが身体を流れる魔力ってやつね。
これは私たち魔機人やセイリュウオーさんなどの魔力で動くゴーレムなんかを見ると流れる魔力が確認でき、一際大きい輝きがコアの部分なんだとか。私でいうと、胴体と背部に大きな輝きがある感じね。
でもこれはON状態に慣れるまでは大変そうだ。暫くはつけっぱで目を慣らすしかないかな。
全く……新しいブラッドラインの試運転のつもりだったのになぜか新しいスキルを獲得してしまった……あ、そうだ。スキルと言えば《片手剣》スキルがカンストしてたんだった。このままだと経験値がもったいないから派生させちゃおうかな。
[《片手剣》スキルは以下の派生先に派生できます]
・《片手剣・初級》
・《魔力剣》
おや。《片手剣・初級》は順当な《片手剣》スキルの派生先だけど、下の《魔力剣》は見覚えがないね。
《魔力剣》:魔力で作られた剣を使う者のためのスキル。属性攻撃の威力を上昇させ、消費する魔力を減少させる。
なるほど。これはマギアサーベルを使ってたから現れた派生先かな。通常のプレイだと、炎を剣に纏わせたりする魔法剣士プレイをしている人に現れるんだろうね。
さて、このまま《片手剣・初級》を取るのもいいけど、《魔力剣》も捨て難い。
んー、どうしようか。どうせなら両方取っちゃうか?
《片手剣》スキルが《魔力剣》スキルに派生させることで、《片手剣》スキルを新たに取得可能になる。またそれを取って、レベルを上げていけば《片手剣・初級》スキルも取れるだろう。
そうと決まれば行動あるのみ。というわけで《魔力剣》スキルに派生させたあとに《片手剣》スキルを再取得する。ちなみに使用SPは《魔力剣》が10P、《片手剣》は3Pだ。EXスキルの《魔力視》は20Pだね。
《黄昏の戦乙女》が30Pだったことを考えると、EXスキルはスキルごとに使用ポイント数が決まってる感じかな。
これで少しでも近接攻撃の威力が上がってくれるといいな。
『さて、じゃあそろそろ帰ろうかな』
『もう戻ってしまうのか? 少しくらいゆっくりしていけばいいじゃないか』
……そんな悲しそうな声音で言わないでおくれよ。まぁ、ここで一人でいるっていうのも辛いものがあるよね。
仕方ない。ここは話に付き合うとしますか。どうせホワイトハーバーまではそんなに時間がかからないし。セイリュウオーさんとの話は結構面白いしね!
私はセイリュウオーさんの懇願に負け、そのまま楽しい会話を続けるのだった。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.83(1up↑)《武装》Lv.79(1up↑)《パーツクリエイト》Lv.--《黄昏の戦乙女》Lv.3(New)《自動修復》Lv36《自動供給》Lv.68(3up↑)《魔力剣》Lv.1(New)《片手剣》Lv.1(New)《盾》Lv.27《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.34《直感》Lv.42《遠視》Lv.37(2up↑)《敏捷強化》Lv.63(2up↑)《魔力視》Lv.--(New)《採掘》Lv.40《鍛冶》Lv.74(5up↑)《裁縫》Lv.46
残りSP171
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




